医療業界のシステム開発を外注・発注する際、どのように進めればよいかわからないという担当者の方は多いです。本記事では、医療業界のシステム開発の発注・外注・依頼の具体的な方法と注意点を解説します。
▼全体ガイドの記事
・医療業界のシステム開発の完全ガイド
医療業界のシステム開発を外注するメリット

医療システム開発の専門知識を活用できる
電子カルテ・医事会計・ORCA連携・HL7 FHIRなど、医療システム特有の専門知識を持つ外注先に依頼することで、法令対応・標準規格準拠を含めた高品質なシステムを構築できます。
開発期間を短縮できる
外注先が医療業界の開発経験とリソースを集中投下することで、院内で時間をかけて開発するよりも短期間でのリリースが期待できます。特に診療報酬改定への対応など、タイムラインが決まっている案件では重要です。
最新のセキュリティ・技術を活用できる
医療情報システムのセキュリティ要件は年々高度化しています。専門の開発会社に依頼することで、最新の3省2ガイドライン対応や、クラウドセキュリティのベストプラクティスを取り入れたシステムを構築できます。
医療業界のシステム開発の外注・発注の流れ

ステップ1:院内の要件をまとめる
外注を検討する前に、まず院内の要件を整理します。整理すべき内容は以下のとおりです。
- 対象となる診療科・部門と各業務フローの一覧
- 現状の課題と解決したいこと
- 必須機能と希望機能の優先度
- 既存システム(ORCA・PACS・検査システム等)との連携要件
- 適用が必要な法令・ガイドラインの範囲
- 対象ユーザー数・病床数・診療科数
- 予算の上限と希望リリース時期
院内の要件が固まっていないと、複数の開発会社から条件の異なる見積もりが届き、比較が難しくなります。
ステップ2:発注先候補を選定する
複数の方法で発注先候補を探しましょう。
- インターネット検索:「医療システム開発会社」「電子カルテ開発」などで検索
- 医師会・病院団体の紹介:医師会や病院協会からの推薦
- 一括見積もりサービス:IT発注ナビ、システム幹事などの比較サービスを活用
- 展示会:医療ITの展示会(Japan IT Week、メディカルジャパン等)での商談
候補は3〜5社程度に絞り込みましょう。
ステップ3:RFP(提案依頼書)を作成・送付する
RFP(Request For Proposal)は、発注側が開発会社に提案を依頼するための文書です。医療業界のシステム開発RFPには以下の内容を記載します。
- プロジェクトの背景・目的(導入する医療機関の概要含む)
- 開発するシステムの概要
- 機能要件・非機能要件(セキュリティ・可用性・医療標準対応)
- 対象診療科・ユーザー・規模
- 希望スケジュール
- 予算の目安(任意)
- 選定基準と提案期限
- 適用が必要な法令・ガイドライン
RFPを作成することで、複数の開発会社から同じ条件に基づいた提案・見積もりが届き、公平な比較ができます。
ステップ4:提案・見積もりの受領と比較
発注先候補から提案書・見積書を受領し、以下のポイントで比較します。
- 提案の妥当性(医療業界の要件を正確に理解した提案か)
- 費用の内訳・妥当性(法令対応・セキュリティ対応のコストが含まれているか)
- 開発スケジュール
- 開発体制(医療システム経験を持つエンジニアが参加するか)
- 医療機関での類似案件の開発実績
- 診療報酬改定対応を含む保守・運用サポート体制
ステップ5:ヒアリング・デモの実施
気になる会社にはヒアリング(打ち合わせ)を依頼し、提案内容の詳細確認や担当チームとの相性を確認します。過去に開発した医療システムのデモや、導入先医療機関への視察・問い合わせ(リファレンスチェック)も有効です。
ステップ6:発注先の決定と契約
発注先を決定したら、契約内容を慎重に確認します。
- 契約形態(請負 vs 準委任)
- 納期・マイルストーン
- 仕様変更が発生した場合の対応方針
- 検収条件
- 知的財産権の帰属(カスタマイズ部分のソースコード所有権)
- 機密保持(NDA):患者情報の取り扱いを含む
- 瑕疵担保(保証)期間と範囲
- 診療報酬改定時の対応責任と費用
ステップ7:開発の推進・管理
発注後は、定期的な進捗確認と仕様の確認・承認が発注側にも求められます。発注者側(医療機関)が行うべきことは以下のとおりです。
- 定例会議への参加(医師・看護師代表含む)
- 設計書・画面モックのレビューと承認
- テストへの参加(特にUAT:実際の診療フローでの動作確認)
- 院内関係者(診療科長・看護部門・医事課)への情報共有・調整
外注先の選び方で失敗しないための注意点

医療業界の知識・経験を必ず確認する
一般的なシステム開発は得意でも、医療業界特有の要件(HL7 FHIR・ORCA連携・医療情報ガイドライン)に不慣れな会社に依頼すると、後から追加対応が発生するリスクがあります。
最安値だけで選ばない
見積もり金額が最も安い会社を選ぶと、法令対応・セキュリティ対応・品質管理が不十分なシステムが納品されるリスクがあります。医療システムは患者の安全に直結するため、価格と提案内容を総合的に評価しましょう。
保守・診療報酬改定対応を確認する
診療報酬は2年ごとに改定されます。改定への対応が保守契約に含まれるかどうかを事前に確認しましょう。保守体制が弱い会社に依頼すると、改定のたびに追加費用が発生するリスクがあります。
連絡・コミュニケーションのしやすさを重視する
開発期間中は頻繁なやり取りが発生します。医療機関の業務時間に合わせた対応が可能か、医療用語・診療フローを理解したコミュニケーションができるかを初期の打ち合わせで確認しましょう。
請負契約と準委任契約の違い

医療システム開発の外注では、契約形態によってリスクとコントロールのバランスが異なります。
- 請負契約:費用は固定(成果物単位)、仕様変更は追加費用が発生しやすい、リスクは開発会社が負担。要件が明確な場合に向いている
- 準委任契約:費用は変動(工数ベース)、仕様変更に柔軟に対応しやすい、リスクは発注側も共有。要件が変わりやすい場合に向いている
医療システムは開発途中に診療報酬改定や院内ルールの変更が発生することもあるため、準委任契約の柔軟性が有効なケースも多いです。
まとめ

医療業界のシステム開発の外注・発注を成功させるには、院内の要件整理→RFP作成→複数社への相見積もり→提案比較→契約という流れを丁寧に進めることが重要です。医療業界特有の法令対応・標準規格・セキュリティ要件に精通した会社を選び、最安値だけで選ばず、開発実績・提案の質・保守体制を総合的に評価した上で発注先を決定しましょう。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
