医療業界のシステム開発を成功させるには、医療法や個人情報保護法などの規制対応、HL7/FHIRといった医療標準への準拠、既存システムとの連携を含む工程を正しく理解することが重要です。本記事では、医療業界のシステム開発の進め方・やり方・流れを、各工程のポイントとともにわかりやすく解説します。
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医療業界のシステム開発とは

医療業界のシステムとは、電子カルテ、病院情報システム(HIS)、医事会計システム、医用画像管理システム(PACS)、調剤支援システムなど、医療機関の診療・業務を支えるITシステムの総称です。
医療業界のシステムを独自開発・カスタマイズするメリットは、各医療機関のワークフローや診療科の特性に完全にフィットしたシステムを構築できる点です。また、既存のORCA(日医標準レセプトソフト)や他システムとの連携を自社要件に合わせて最適化することも可能です。
医療システムは患者の生命・健康に直結するため、一般的なシステム開発以上に品質・安全性・法令遵守が求められます。
医療業界のシステム開発の全体的な流れ

医療業界のシステム開発は、一般的に以下の工程で進みます。
- 要件定義
- 基本設計
- 詳細設計
- 開発・実装
- テスト
- リリース・移行
- 運用・保守
各工程を順番に解説します。
ステップ1:要件定義

現状の業務フローと診療ワークフローを整理する
要件定義では、まず現状の業務フローを詳細に整理します。外来受付・診察・処方・会計・入院管理など、診療プロセス全体を把握し、どの部分をシステム化するかを明確にします。
ヒアリング対象は医師・看護師・医事課担当者・薬剤師・システム管理者など複数の職種を含めることが重要です。現場での運用実態と院内規定が異なるケースも珍しくありません。
法令・規制要件を確認する
医療業界のシステム開発では、以下の法令・ガイドラインへの準拠が必須です。
- 医療法:電子カルテの保存要件(5年保存など)
- 個人情報保護法・医療情報の安全管理ガイドライン:患者情報の取り扱い、アクセス制御
- 医薬品・医療機器等品質確保法(薬機法):医療機器としての届出が必要な場合
- 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」:電子カルテ等のセキュリティ要件
システム化の要件を定義する
業務フローの整理が完了したら、システム化する範囲と要件を定義します。
- 診療記録(SOAP形式など)の入力・表示
- 処方・処置・検査オーダリング機能
- 医療標準規格(HL7 FHIR、DICOM)への対応
- ORCA(レセプトシステム)との連携
- 医用画像(PACS)システムとの連携
- アクセス権限の設定(職種・診療科別)
- 監査ログ・操作ログの取得範囲
ステップ2:基本設計

システム全体のアーキテクチャを決定する
基本設計では、システム全体の構成を決定します。オンプレミス型・クラウド型・ハイブリッド型のどれを選択するかは、医療情報システムの安全管理ガイドラインや院内のセキュリティポリシーに照らして検討します。
クラウド利用の場合は、医療情報を扱う際の「3省2ガイドライン」(厚労省・総務省・経産省)への準拠が求められます。
データベース設計の基本方針を策定する
患者情報・診療記録・処方データ・検査結果などのデータ構造を設計します。医療情報は長期保存が義務付けられているため、将来的な拡張やデータ移行に対応できる設計が求められます。
HL7 FHIRを採用する場合は、FHIRリソース仕様に沿ったデータモデルの検討が必要です。
UI/UXの基本方針を決める
医師・看護師・医事課担当者それぞれの業務特性に合わせた画面設計の基本方針を定義します。特に診察中の入力負荷を最小化するUI設計は、現場への普及率に直結します。
ステップ3:詳細設計

画面設計・API設計
各画面の詳細な仕様(入力項目、バリデーション、画面遷移)とAPIのインターフェース仕様を設計します。HL7 FHIR APIを採用する場合は、FHIRサーバーとのインターフェース仕様を先行して定義します。
医療ロジック・業務ルールの設計
医療システムの核心となる業務ロジックを詳細に設計します。
- 処方ロジック(用量チェック、相互作用チェック、アレルギーチェック)
- 検査オーダー・結果取り込みフロー
- 診療記録の更新・修正ルール(改ざん防止)
- 請求計算ロジック(診療報酬点数計算)
- ORCAとの連携インターフェース
ステップ4:開発・実装

フロントエンド開発
受付画面、診察画面、処方入力画面、看護記録画面などのUI開発を行います。医師・看護師が素早く操作できるよう、キーボード操作・テンプレート機能・音声入力対応なども検討します。
バックエンド開発
診療ロジック、処方チェック、外部システム連携などのバックエンドを実装します。HL7 FHIRに準拠したAPIを実装することで、将来的な他システムとの連携が容易になります。
インフラ構築
医療情報を扱うシステムは、可用性・セキュリティへの要求が特に高いです。クラウド(AWS・Azure・GCP)を活用する場合も、医療情報向けのセキュリティ設定(暗号化・アクセス制御・監査ログ)を徹底します。バックアップ・災害復旧(DR)の設計も必須です。
ステップ5:テスト

単体テスト・結合テスト
各モジュールの動作を確認する単体テストと、複数のモジュールを組み合わせた結合テストを実施します。処方チェックロジック・診療報酬計算など、医療業務に直結する部分は特に網羅的なテストが必要です。
ユーザー受け入れテスト(UAT)
実際の医師・看護師・医事課担当者にシステムを操作してもらい、診療ワークフローに即した動作を確認します。本番に近い環境での実証テストを実施し、現場からのフィードバックを収集します。
セキュリティテスト・パフォーマンステスト
患者情報を扱うシステムとして、脆弱性診断・ペネトレーションテストを実施します。外来ピーク時や入院患者が多い時期を想定した負荷テストも必要です。
ステップ6:リリース・移行

データ移行
既存システムから新システムへの患者情報・診療記録のデータ移行を行います。移行データの整合性確認は特に慎重に行い、移行前後のデータ検証を徹底します。
段階的リリース
全診療科への一斉リリースではなく、一部の診療科・部門から段階的にリリースすることでリスクを最小化できます。旧システムとの並行運用期間も計画します。
利用者向けトレーニング
医師・看護師・医事課担当者それぞれへの操作説明会を実施します。特に電子カルテは医師の入力負荷が大きいため、診療科ごとのテンプレート設定支援も有効です。
ステップ7:運用・保守

継続的な改善
リリース後も診療報酬改定(2年ごと)や院内規定の変更に合わせてシステムを継続的に更新します。診療報酬改定への対応は、多くの医療機関で重要な保守項目です。
セキュリティ・法令対応
患者情報は高度な機密情報です。定期的なセキュリティ診断と、医療情報システムの安全管理ガイドラインの改訂に合わせた対応が必要です。
医療業界のシステム開発を成功させるポイント

医療現場のヒアリングを徹底する
医師・看護師など現場担当者のヒアリングが不十分だと、リリース後に「実際の診療フローに合わない」という問題が発生します。
医療標準・規制要件を最初から組み込む
HL7 FHIR対応・セキュリティ要件・法令遵守は、後から追加すると大幅なコスト増につながります。要件定義の段階から設計に組み込むことが重要です。
ORCA・既存システムとの連携を早期に検討する
ORCAや既存PACSとの連携は技術的に複雑です。要件定義の段階から連携方式を確認し、開発工数を見積もることが重要です。
まとめ

医療業界のシステム開発は、要件定義・設計・開発・テスト・リリース・運用という工程を丁寧に進めることが成功の鍵です。特に医療法・個人情報保護法への対応、HL7/FHIRなどの医療標準への準拠、ORCA等の既存システムとの連携設計が、長期的に使われ続けるシステムを実現する上で不可欠です。
開発会社に依頼する際は、医療業界のシステム開発実績や、医療情報ガイドライン対応の経験が豊富なベンダーを選ぶことをおすすめします。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
