旅行・観光業界のシステムを探すと、航空券・宿泊・現地アクティビティの在庫を組み合わせて販売するGDS(グローバル流通システム)、DMOや自治体が地域の観光データを横断的に活用するための基盤、周遊促進や多言語インバウンド対応を支援するサービスなど、性質の異なる製品が候補に挙がります。名称や機能一覧だけでは違いが分かりにくく、知名度だけで選ぶと、自社・自地域が必要とする外部連携や合意形成支援に対応できず、結局は手作業が残ることもあります。
本記事では、パッケージ型とクラウド型の違いを整理したうえで、2026年7月時点で公式ページから現行の提供内容を確認できた5製品を紹介します。各製品の得意領域、課題別の絞り方、料金・契約前の確認点、デモやPoCで確認すべきポイントまで解説しますので、候補を比較する際の基準としてご活用ください。
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・旅行・観光業界のシステム開発の完全ガイド
パッケージ型とクラウド型 旅行・観光業界のシステムの違い

パッケージ型は自社環境への導入や個別構築を含む広い意味で使われる一方、クラウド型はベンダーが運用するサービスをインターネット経由で利用する方式です。旅行・観光業界のシステムとして具体的な製品を比較しやすいのは、GDSやDMO向け基盤などクラウド型・SaaS型が中心であり、本記事も確認可能なサービスを対象にしています。
パッケージ型・個別構築は自社運用と独自要件への対応が論点です
旅行会社が独自の予約フローやダイナミックパッケージングを自社サーバー上に構築する場合や、地域が独自の税制・集計ロジックを組み込んだシステムを個別開発する場合は、パッケージ型・個別構築に近い形態になります。自由度が高い反面、サーバー、監視、バックアップ、法改正への追随を自社側で担う範囲が大きくなるため、導入時の自由度だけでなく、改修を継続できる体制と費用まで見込む必要があります。
クラウド型は外部連携の維持と短期導入に向いています
GDSやDMO向け基盤のようなクラウド型・SaaS型のサービスは、自社でサーバーを調達せずに利用を始めやすく、ベンダー側による機能更新や外部システムの仕様変更への追随を受けられる点が特徴です。ただし、クラウド型を導入するだけで自社・自地域の業務が自動的に整うわけではなく、自社の旅程パターンや地域の事業者構成を整理したうえで、システム上のワークフローに落とし込む作業が必要です。
製品を比較するときの共通軸

製品紹介ページの機能一覧だけでは、自社・自地域の業務に適合するか判断できません。候補を同じ条件で比べるため、対象領域、外部連携の実績、事業者間の合意形成支援、多言語・インバウンド対応、料金体系という軸を共通の質問に置き換えることが重要です。
対象領域と外部連携の実績を確認します
「GDS連携に対応」という説明でも、航空券のみを対象にするのか、宿泊・現地アクティビティまで含むのかで、自社の旅程造成に使える範囲は変わります。DMO向け基盤であれば、宿泊・訪問・消費動向のどこまでをダッシュボードで確認できるか、他地域とのベンチマーク比較が可能かを、実際の画面で確認します。
合意形成支援と導入後のサポート体制を確認します
DMOの地域データ連携では、システムの機能そのものよりも、地域事業者からデータ提供の合意を得られるかどうかが導入の前提になります。伴走支援やコンサルティングまで対応できるか、導入後の問い合わせ窓口がどこにあるかを、資料だけでなく担当者への質問で確認することが欠かせません。詳しい評価手順は、旅行・観光業界のシステムの選定ポイント・選び方・種類で整理しています。
旅行・観光業界のシステムの主要製品

ここでは、2026年7月時点で公式ページから現行の事業内容を確認できた5製品を紹介します。掲載順は優劣を示すランキングではありません。旅行会社・OTA基幹に強い製品と、DMO・自治体向けの地域データ・インバウンド支援に強い製品とでは、比較すべきポイントが異なります。
Amadeus
Amadeusは、航空券の在庫・価格情報を扱うGDSを中核に、400以上の航空会社、210の空港運営者、230を超えるツアーオペレーターへ技術基盤を提供している旅行テクノロジー企業です。公式サイトでは、旅行代理店向けの販売プラットフォームや、航空会社向けの予約管理システムなど、旅行エコシステム全体を支える製品群が紹介されています。日本の旅行会社・OTAが航空券在庫を含むダイナミックパッケージングを構築する際の外部連携先としても検討対象になります。料金は個社との商談によって決まるため、自社が扱う航空券の規模や接続範囲を明示したうえで見積もりを取得することが適切です。
Sabre
Sabreは、航空会社と旅行代理店の双方に向けたテクノロジープラットフォームを提供するGDS大手です。公式サイトでは、顧客体験、販売・流通管理、決済、サービス提供、データ分析という5つの領域にまたがる製品群が紹介されており、OTA、TMC(法人向け旅行管理会社)、レジャー旅行会社など幅広い顧客層を対象にしています。旅行会社・OTA基幹をフルスクラッチで構築する場合の外部連携先として、Amadeusと並んで比較検討されることが多い候補です。料金は公開されておらず、対象範囲を提示したうえでの個別見積もりが前提になります。
Travelport
Travelportも、旅行商取引を支えるインフラを提供するGDS企業の一つです。公式サイトでは、旅行代理店向けの小売プラットフォームや、店舗向けのクラウドソリューション、AI対応の旅行APIプラットフォームなどが紹介されており、OTA、TMC、コンソリデーター、独立系代理店といった旅行代理店向けに特化した製品設計であることが説明されています。複数のGDSを比較検討する場合、接続できる航空会社・サプライヤーの範囲や、既存の基幹システムとのAPI連携方式を各社そろえて確認することが大切です。料金は個別見積もりが前提です。
全国観光DMP(日本観光振興協会)
全国観光DMPは、日本観光振興協会が提供する、DMOや自治体向けのデータ管理プラットフォームです。公式ページによると、地域の観光概況、国内・インバウンド旅行者の属性分析、地域の魅力分析、他地域とのベンチマーク比較という4つの視点からなるダッシュボードを備え、約30種類のデータをあらかじめ搭載しているため、初期導入にかかる時間とコストを抑えて観光戦略に活用できるとされています。2026年7月時点の公式サイトによると、2024年3月末時点で全国42都道府県での導入実績があり、2025年12月からはウェブサイト上での直接申込にも対応しています。具体的な利用料金は公開の料金表または個別の問い合わせで確認する必要があります。地域独自のPMS統合やRPAによるデータ抽出までは対象に含まれないため、その部分は別途、個別開発や外部委託で補う前提になります。
NAVITIME(自治体・DMO向け観光ソリューション)
ナビタイムジャパンは、経路探索サービスで培った技術とデータ分析力を生かし、自治体・官公庁・DMO向けの観光ソリューションを提供しています。公式サイトによると、訪日インバウンド向けには「Japan Travel by NAVITIME」を中心に、旅行前から旅行後までの各段階でプロモーションから行動分析までを支援するサービスが用意されており、あわせて観光・交通データの提供や、経路探索結果を活用した人流予測機能も紹介されています。周遊促進や多言語インバウンド対応をゼロから自社開発するのではなく、既存の経路探索基盤を活用したい自治体・DMOにとっての候補になります。料金は個別の問い合わせによる見積もりが前提です。
自社・地域の課題別に候補を絞る方法

5製品を一斉に細部まで比較するより、最も大きな課題を一つ決め、そのうえで候補を絞る方が効率的です。旅行会社としての基幹整備が課題なのか、DMOとしての地域データ活用や周遊促進が課題なのかによって、比較すべき製品群が変わります。
旅行会社・OTA基幹の整備を優先する場合
航空券在庫を含むダイナミックパッケージングやGDS・BSP連携の整備が課題であれば、Amadeus、Sabre、Travelportといった主要GDSを候補にし、自社が扱う旅程パターンを使って接続範囲と対応スピードを比較します。これらはいずれも自社の基幹システムに組み込んで使う前提の製品であるため、既存の予約・決済フローとの統合方法まで含めて検討する必要があります。
DMOとしての地域データ活用・周遊促進を優先する場合
地域の観光概況や旅行者属性を横断的に把握したい場合は、全国観光DMPが最初の候補になります。既存の全国基盤だけでは足りない周遊促進やインバウンド対応を補いたい場合は、NAVITIMEのような経路探索・人流データの提供元も候補に加え、自地域が求める機能をどちらがどこまでカバーしているかを整理します。地域独自のPMS統合やRPAによるデータ抽出のように、公式に確認できる製品だけでは対応しきれない部分は、個別開発による補完を前提に検討します。
料金・契約前に確認すべきこと

GDSやDMO向け基盤の多くは、料金表を公開しておらず、利用規模や接続範囲に応じた個別見積もりが前提です。公開価格の有無だけで比較するのではなく、契約前に確認すべき項目をそろえておく必要があります。
何に対して課金されるかを確認します
GDSの料金は、取扱う予約件数や接続する航空会社・サプライヤーの範囲によって変わることが一般的です。DMO向け基盤の料金も、対象地域の規模や利用するダッシュボード機能の範囲によって変動します。現在の取扱規模だけでなく、将来の拡張を想定した規模も伝えたうえで、各社に同じ条件で見積もりを依頼することが比較の前提になります。
データの取り扱いとサポート体制を契約書で確認します
旅行者の個人情報や決済情報、地域事業者の経営データを扱うため、権限管理、データの保管場所、契約終了時のデータ返却・削除条件を確認します。あわせて、外部システムの仕様変更やAPIの改定にどのように追随してもらえるか、サポート窓口がどこにあるかも契約前に確認しておくと、導入後の想定外の追加費用を防ぎやすくなります。特に、旅行業法や消費者保護に関わるルールが改正された際に、対応が製品側の標準機能として提供されるのか、個別の追加開発として扱われるのかは、料金交渉の前提として明確にしておく必要があります。
デモとPoCで製品一覧を最終候補へ絞る

資料比較で2〜3製品まで絞ったら、実際の旅程パターンや地域データを使ってデモまたはPoCを行います。旅行会社であれば予約・決済の担当者、DMOであれば地域事業者の代表にも参加してもらうと、導入後の行き違いを減らせます。
実在する旅程・地域データで一連の流れを試します
GDSであれば、実際に扱う航空券・宿泊・現地アクティビティの組み合わせで検索から見積提示までを通し、応答時間や外部システムとの整合性を確認します。DMO向け基盤であれば、実際の地域データを取り込んで、ダッシュボードの表示内容や他地域との比較機能が自地域の分析目的に合っているかを確認します。
導入前後の指標を記録して判断材料にします
PoC前に、旅程造成にかかる時間、地域データの収集にかかる工数、周遊ルート提案の精度などを記録し、PoC後と比較します。公開されている他地域・他社の効果をそのまま自社・自地域に当てはめるのではなく、自社・自地域の件数と業務量に基づいて効果を算出することが重要です。GDSであれば接続手数料や従量課金の従量部分、DMO向け基盤であれば追加データの取り込み費用など、PoC段階では見えにくい継続コストについても、本稼働後の想定件数を前提に試算しておくと、契約後の想定外の負担を避けやすくなります。
旅行・観光業界のシステムの製品比較で押さえておきたいポイント

製品一覧から候補を選ぶ際は、知名度や導入実績の数だけでなく、自社・自地域の業務範囲と利用規模を同じ条件で比較する必要があります。ここでは、判断が分かれやすいポイントを整理します。
独自要件が強い場合は個別開発も比較対象にします
本記事で紹介した製品は、いずれもクラウド型・SaaS型のサービスであり、自社独自の予約フローや地域固有の税制・集計ロジックまでは標準機能で対応しきれない場合があります。そうした独自要件が事業の競争力に直結するのであれば、個別開発やクラウドサービスと基幹システムを組み合わせるハイブリッド構成も比較対象に加えてください。
おすすめの製品は最優先課題によって変わります
旅行会社・OTA基幹の整備が課題なのか、DMOとしての地域データ活用や周遊促進が課題なのかによって、適した製品は異なります。まず自社・自地域の最優先課題を決め、必須要件で2〜3製品へ絞ったうえで、同じシナリオのデモまたはPoCで比較することが遠回りに見えて最も確実です。
まとめ

旅行・観光業界のシステムの製品比較では、航空券・宿泊・現地アクティビティを組み合わせるGDS(Amadeus、Sabre、Travelport)と、DMO・自治体向けの地域データ活用基盤(全国観光DMP)、経路探索・人流データを活用した周遊促進・インバウンド支援(NAVITIME)という、性質の異なる製品群を、自社・自地域の課題に合わせて選び分けることが重要です。
課題を先に決めてから製品を絞り込みます
旅行会社としての基幹整備、DMOとしての地域データ活用、周遊促進、多言語インバウンド対応のうち、最優先課題を決めたうえで、対象領域、外部連携の実績、合意形成支援、料金体系を同じ質問で比較すれば、知名度に左右されず候補を絞れます。
最後は実際の旅程・地域データを使ったPoCで確認します
資料上の機能数ではなく、自社が扱う旅程や自地域が持つデータを使って、一連の業務を実際に処理できるかどうかが重要です。関係者を交えて例外的なケースまで試し、削減できる工数と残る運用負担を測ったうえで判断してください。GDSやDMO向け基盤といった既製のクラウドサービスでは、自社独自の予約フローや地域固有のロジックまでは吸収しきれない場合があります。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、製品比較で明らかになった不足機能の整理や、旅行会社・DMOの基幹システムに合わせた個別の構築を支援しています。
▼全体ガイドの記事
・旅行・観光業界のシステム開発の完全ガイド
株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
