出張管理システム(BTM:Business Travel Management)の導入を検討するとき、多くの担当者がまず知りたいのは「自社と似た規模・業種の企業が、実際にどうやって出張手配や精算をデジタル化し、どんな成果を出したのか」という具体的な事例ではないでしょうか。出張管理は、航空券・ホテルの手配、出張申請と承認、立替経費の精算、そして月次の費用集計までが部署や担当者ごとにバラバラに行われている現場が多く、汎用の経費精算ツールをそのまま入れても出張特有の業務に合わず使われない、というケースが後を絶ちません。だからこそ、自社の業態に近い導入事例・活用事例こそが、投資判断の精度を高めてくれます。
本記事は、出張管理システム(BTM)の導入事例・開発事例・活用事例・成功事例を、発注企業の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。Excel申請・紙の精算からの脱却で間接工数を削減した事例、出張手配と承認フローを一元化した事例、既存の会計・経費精算システムと連携して二重入力をなくした事例、さらにSaaSの従量課金が規模拡大とともに膨らみ自社開発へ乗り換えたTCO事例まで、一次データとあわせて具体的に解説します。読み終えるころには、自社が「どこから着手し、どんな効果を狙うべきか」のイメージが描けるはずです。なお、出張管理システムの全体像をまだ把握していない方は、まず出張管理システム(BTM)の完全ガイドから読むことをおすすめします。
▼全体ガイドの記事
・出張管理システム(BTM)の完全ガイド
Excel・紙精算からの脱却で間接工数を削減した事例

出張管理システム導入で、もっとも分かりやすい成果が出るのが「Excel申請・紙の立替精算からの脱却」です。多くの企業では、出張のたびに申請書をExcelや紙で作成し、領収書を糊付けして提出し、経理が金額を電卓で再計算する、という一連の手作業が残っています。この手作業こそが、申請者・承認者・経理それぞれの工数とヒューマンエラーの温床になっています。
精算1件30分削減を費用対効果に置き換えた事例
Excel・紙脱却の効果をもっとも具体的に示すのが、精算処理時間の削減です。一次データの試算では、紙の入力作業を時給3,000円換算・1人あたり1か月約30分(約1,500円相当)と見積もるケースがあります。出張申請から精算までをシステム上で完結させ、領収書をスマートフォンで撮影してそのまま申請に添付できれば、申請者の入力工数と経理の確認工数が同時に圧縮されます。100名規模の企業では、この削減効果を「作業管理代として月5万円(おおむね1人分)」という形で費用対効果に置き換える考え方が有効です。
重要なのは、この削減効果を「漠然とした業務効率化」ではなく、自社の出張件数に当てはめて定量化することです。月の出張申請件数、1件あたりの申請・承認・精算にかかる時間、それに自社の人件費単価を掛け合わせれば、年間で削減できる金額が概算できます。たとえば月200件の出張があり、1件あたり申請者と経理で合計30分削減できれば、月100時間・年1,200時間の削減になります。これを時給換算すれば、システムの月額利用料を十分に上回る効果になることが珍しくありません。事例を読むときは、こうした自社の数字への置き換えを必ず行ってください。
電帳法・インボイス対応で経理の負担を減らした事例
Excel・紙脱却の効果は、工数削減だけではありません。出張に伴う交通費や宿泊費の領収書は、電子帳簿保存法(電帳法)やインボイス制度への対応が求められる対象でもあります。紙の領収書を糊付けして保管する運用では、要件を満たす保存や検索ができず、税務調査の際に必要な書類をすぐに取り出せないリスクが残ります。出張管理システムで領収書を電子データのまま保存し、適格請求書(インボイス)の登録番号を含めて記録できる仕組みは、こうした法対応の負担を構造的に減らします。
活用事例では、領収書をスマートフォンで撮影した時点で電帳法の保存要件を満たす形でデータ化し、インボイスの記載要件を自動でチェックする運用に踏み込んでいます。これにより、経理が一枚ずつ領収書を点検する作業が減り、不備があれば申請者に差し戻すフローも自動化されます。出張管理のデジタル化は、単なる省力化にとどまらず、法対応という「やらなければならないが価値を生みにくい業務」のコストを下げる効果を持つのです。Excel・紙からの脱却は、出張管理システム導入の確かな第一歩だと言えます。
出張手配と承認フローを一元化した事例

出張管理システム(BTM)が汎用の経費精算ツールと決定的に異なるのが、「出張の手配」と「承認」を一連の流れとして扱える点です。出張は、申請して承認を得てから航空券やホテルを手配し、出張後に精算する、という前後関係があります。この流れがバラバラだと、承認前に高額な航空券を予約してしまう、出張規程の上限を超えた宿泊を取ってしまう、といった統制上の問題が起きます。事例を見ると、成功している企業は例外なく、この「申請・承認・手配」の一元化に丁寧に向き合っています。
出張規程をシステムに組み込み統制を効かせた事例
出張管理の成功事例で共通するのは、自社の出張規程(出張旅費規程)をシステムのルールとして組み込んでいる点です。役職別の宿泊費上限、日当の額、利用できる交通手段のクラス、といった社内ルールを申請画面に反映させると、規程を超えた申請はそもそも入力できない、あるいは自動で警告が出るようになります。これにより、承認者が一件ずつ規程と照らし合わせる手間が減り、ルールの逸脱を入口で防げます。
この出張規程の組み込みは、ガバナンス強化の観点からも評価されます。誰がいつ、どの基準で出張を承認したかが記録として残るため、内部統制や監査への対応がしやすくなります。事例から学べるのは、出張管理システムを「精算を楽にするツール」としてだけでなく、「出張に関する社内ルールを徹底させる仕組み」として位置づける視点です。規程の電子化を要件定義の段階で詰めておくことが、リリース後の運用トラブルを防ぐ鍵になります。
出張費用を部門別に可視化して予算管理に活かした事例
手配と承認を一元化したもう一つの効果が、出張費用の可視化です。出張手配・申請・精算が一つのシステムに集約されると、誰が・どこへ・いくら使ったかというデータが自動的に蓄積されます。これを部門別・案件別・出張先別に集計できるようにした事例では、これまで月次の締めまで分からなかった出張コストを、ほぼリアルタイムで把握できるようになりました。経営層が「今月の出張費は予算に対してどうか」を即座に確認できる体制は、コスト管理の質を大きく高めます。
さらに、蓄積されたデータは将来のコスト削減施策にもつながります。同じ路線を多くの社員が使っているなら法人契約や早期予約で単価を下げる、特定の出張先が増えているなら近隣に拠点を置く検討材料にする、といった分析が可能になります。可視化された出張データは、単なる精算記録ではなく、出張のあり方そのものを見直す経営判断の材料になるのです。手配と承認の一元化は、こうしたデータ活用の土台を作る取り組みだと言えます。
会計・経費システムと連携して二重入力をなくした事例

出張管理システムの投資効果を最大化するのが、既存の会計システムや経費精算システム、給与計算システムとの連携です。出張で発生した精算データを、会計仕訳や給与の立替金として自動で連携できれば、経理が同じ数字を別のシステムに打ち直す二重入力がなくなり、転記ミスも防げます。これこそが、単独の出張管理ツールにとどまらず、システム連携まで踏み込む企業の最大の理由です。
会計連携で仕訳と支払を自動化した事例
会計システムとの連携を実装した事例では、承認済みの出張精算データがそのまま会計仕訳として連携され、立替金の振込データにも反映されます。これにより、経理は精算内容を確認するだけでよくなり、勘定科目の割り当てや振込データの作成といった作業が自動化されました。出張精算は件数が多く金額もまちまちなため、手作業では転記ミスが起きやすい領域です。ここを自動化することで、ミスの削減とスピードアップを同時に実現できます。
連携を成功させる鍵は、勘定科目・部門コード・プロジェクトコードといったマスタを両システムで整合させることです。事例では、要件定義の段階で会計側のコード体系を洗い出し、出張管理システムの入力項目とどう対応させるかを丁寧に設計していました。この一手間を省くと、連携はできても科目が合わず結局手修正が発生する、という残念な結果になります。連携の成否は、技術よりもマスタ設計の精度で決まると言っても過言ではありません。
SaaS従量課金から自社開発へ乗り換えたTCO事例
事例の中には、クラウドSaaSの出張・経費管理ツールから自社開発へ乗り換えた企業もあります。クラウドの月額相場は1ユーザーあたり300〜500円がボリュームゾーンですが、利用人数が増えるほど従量課金は膨らみます。退職者の勤怠・精算データには法定の保存義務があるため、退職者アカウントを保持し続けて課金が続く、というジレンマも生じます。利用人数が50名・100名と増えるにつれ、従量課金が固定費を上回る損益分岐点が近づいてきます。
ノーコード受託(Bubble等)での構築は初期100万〜300万円、月額のサーバー費が1万〜3万円程度で、ユーザー数に依存しない固定費で運用できます。一次データの試算では、50名以上の規模ではSaaSの従量課金より5年TCO(約160万〜500万円のレンジ)で有利になるケースがあるとされています。この乗り換え事例から学べるのは、「月額単価の安さ」だけで選ばず、自社の人数規模と利用年数を踏まえた5年総額(TCO)で比較する姿勢の大切さです。SaaSを卒業すべき規模に達したかどうかを、数字で見極めることが投資判断の精度を高めます。
複数拠点・グローバル出張に対応した活用事例

出張管理システムの活用事例は、国内の効率化にとどまりません。複数の法人・拠点を抱える企業や、海外出張が多い企業では、より複雑な要件への対応が成否を分けます。一般的なクラウドツールでは「要確認」で済まされがちな、こうしたニッチで複雑な要件にどう向き合ったかが、活用事例の見どころです。
複数法人の出張を一元管理した事例
グループ企業で複数の法人を抱える場合、法人ごとに出張規程や承認ルート、会計コードが異なるのが普通です。これをバラバラのツールで管理すると、グループ全体の出張コストが見えず、管理部門の負担も増えます。一元管理を実現した事例では、一つのシステム上で法人ごとに規程や承認フローを切り替えつつ、グループ全体の出張費用を横断的に集計できる仕組みを構築しました。これにより、グループのガバナンスとコスト把握を両立させています。
この複数法人対応は、汎用SaaSでは設定が難しく「要確認」で止まりやすい領域です。事例では、法人をまたいだ権限管理や、法人別の会計連携を要件定義の段階で明確にし、システムに作り込んでいました。グループ経営を行う企業にとって、出張管理の一元化は、間接業務の標準化とコストの見える化を同時に進める有効な打ち手になります。
海外出張の多通貨・安否確認に対応した事例
海外出張が多い企業の活用事例では、多通貨対応と渡航者の安否管理が重要な要件になります。現地で外貨建ての領収書を精算する際、レート計算を自動化できれば、申請者と経理の双方の手間が減ります。事例では、出張先の通貨で入力された金額を社内基準レートで自動換算し、円建ての精算データに変換する仕組みを実装していました。海外出張特有の煩雑な為替処理を自動化したことで、精算のスピードと正確性が向上しています。
さらに、海外出張では「誰が今どこにいるか」を把握できる体制が、危機管理の観点から欠かせません。出張申請データを基に、渡航先・滞在期間を一覧で把握し、緊急時には安否確認システムと連携して所在を確認する、という活用も進んでいます。出張管理システムは、コスト管理だけでなく、社員の安全を守る危機管理インフラとしての側面も持つのです。複雑な要件に対応した事例は、出張管理の可能性が単なる精算自動化を超えて広がることを示しています。
業種・規模別の活用事例と段階導入の進め方

出張管理システムの活用は、企業の規模や業種、出張の性質によって最適な形が変わります。自社に近い条件の事例を参考にすることで、導入の進め方がイメージしやすくなります。規模別・段階別の事例から、無理のない導入の道筋を学べます。
規模別に最適な入り口を選んだ事例
小規模な企業の事例では、まず無料または安価なクラウドサービスでスモールスタートし、効果を確かめてから本格導入に進むケースが多く見られます。一次データでは、企業規模別の月額試算として5〜49名で約1,450〜14,210円、50〜99名で約14,500〜28,710円、100〜199名で約29,000〜57,710円という目安が示されています。自社の規模に合った月額レンジを把握し、まずは小さく始めて現場の反応を見る、という入り方が堅実です。
一方、出張が多く人数も多い中〜大規模の企業では、最初から自社開発を視野に入れた事例があります。SaaSの従量課金が人数増とともに膨らむため、ユーザー数に依存しない固定費型のノーコード受託やフルスクラッチが、5年TCOで有利になるからです。規模が大きいほど、独自規程への対応や既存システムとの深い連携も求められ、作り込みの価値が出ます。自社の規模と出張頻度に応じて、入り口を見極めた事例から学ぶことが多いはずです。
段階的に機能を広げて定着させた事例
定着に成功した事例に共通するのが、いきなり全機能を一斉導入せず、段階的に広げた点です。まず申請・承認のデジタル化から始め、現場が慣れたところで精算機能、続いて会計連携や費用分析へと範囲を広げる。この段階主義は、現場の負担を抑えながら、確実に定着させる進め方です。一度にすべてを変えようとすると、現場が混乱して従来のやり方に戻ってしまうリスクがあります。
段階導入では、最も効果の大きい業務から着手することがポイントです。出張頻度の高い部署や、精算の手間が大きい領域から先行導入し、「これは楽になる」という小さな成功を積み重ねます。その実感が社内に広がれば、横展開がスムーズになります。データ移行も同様に、一部から段階的に進めることでリスクを抑えられます。段階的に定着させた事例は、無理なく確実に成果を出す導入の王道を示しています。自社の業務に当てはめて、どこから着手するかを考える材料になります。
まとめ

出張管理システム(BTM)の事例を振り返ると、成功の鍵は「Excel・紙の精算からの脱却で工数を定量的に削減し、出張規程をシステムに組み込んで統制を効かせ、会計・経費システムと連携して二重入力をなくす」という一連の流れに集約されます。精算1件あたりの削減時間を時給換算してROIを示し、電帳法・インボイス対応で法対応の負担を下げ、部門別の費用可視化で予算管理に活かす。さらに、複数法人の一元管理や海外出張の多通貨・安否確認といった複雑な要件にこそ、自社の業態に合わせた作り込みの価値が表れます。
事例を読むときに大切なのは、「どのツールを入れたか」ではなく「自社の出張業務と規程にどれだけ寄り添ったか」という視点です。SaaSの月額単価だけでなく、人数規模と利用年数を踏まえた5年TCOで比較し、自社にとって最適な構築方法を選んでください。riplaはフルスクラッチ受託とノーコード受託の両面から、出張業務の実態に即した要件整理と、現場に定着するシステムづくりを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。
株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>


株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
