倉庫のハンディターミナル画面が古く、新人教育に時間がかかっている一方で、どこから手を付けてWMSをリニューアルすればよいか分からず、比較検討が止まってしまう担当者も少なくありません。
フルスクラッチで自社独自の画面を作る方法、パッケージの標準UIをそのまま使う方法、ローコードでカスタマイズする方法など、選択肢によって費用感や開発期間、現場への定着のしやすさが大きく異なります。
自社の課題に合わせてこれらのアプローチを絞り込み、比較する視点を整理することが、WMSのリニューアルの選定ポイントです。
本記事では、WMSのリニューアル選定前に整理すべき自社課題、3つのアプローチの種類、比較すべき7つの評価軸、パッケージ標準UI・フルスクラッチ・ローコードの選び分け、PoC・プロトタイプ検証の進め方を解説します。これから比較検討を始める担当者の方が、候補を2〜3案まで具体的に絞り込めるように整理します。
本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。
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・WMSのリニューアルの完全ガイド
WMSのリニューアル選定前に整理すべき自社の課題

最初に行うべきことは、製品カタログや事例集を集めることではなく、現在の画面のどこで作業が滞っているかを特定することです。課題を一文で説明できる状態にしておくと、比較すべきアプローチと不要な機能が見えやすくなります。
課題の洗い出しには、管理者の視点だけでなく、実際にハンディターミナルを操作する現場スタッフへのヒアリングが欠かせません。管理者が把握している課題と、現場が日々感じている不便さは一致しないことも多く、両方の声を集めることで、リニューアルの優先順位を誤りにくくなります。
操作性と教育コストの課題を切り分けます
ハンディターミナルの操作に時間がかかる、聞き直しが多い、繁忙期に新人が増えるたびに教育負担が増すといった状況は、画面の操作性に起因する課題です。まずは、どの画面のどの操作でつまずきが起きているかを、現場ヒアリングやログから洗い出します。
同じ操作でもスタッフによって所要時間が大きく異なる場合、画面設計よりも教育資料の分かりにくさが原因になっていることもあります。課題を画面起因か教育資料起因かに分けて整理すると、リニューアルで解決できる範囲を見誤りにくくなります。
ブランドイメージと他システムとの比較を確認します
取引先や見学者に見せる端末画面が古い、他社の倉庫と比べて見劣りするといった課題は、ブランドイメージ起点の課題です。一方、基幹機能そのものに不満がある場合は、リニューアルではなくモダナイゼーションや刷新の検討が必要になるため、課題の切り分けを誤らないようにします。
課題が複数ある場合も、すべてを同時に解決しようとせず、優先順位をつけることが重要です。教育コストの削減を最優先にするのか、ブランドイメージの改善を優先するのかによって、比較すべきアプローチの重みづけが変わります。関係部門で優先課題をすり合わせてから比較検討に入ると、後戻りが少なくなります。
WMSのリニューアルの3つのアプローチ

WMSのリニューアルの進め方は、大きく分けるとパッケージ標準UIの活用、フルスクラッチによる自社独自UI開発、ローコード開発によるカスタマイズの3つに整理できます。それぞれ費用感、開発期間、現場適合度が異なるため、自社の業務がどこまで標準的かを見極めてから選びます。
3つのアプローチは排他的な選択肢ではなく、部門や拠点によって使い分けることも可能です。たとえば主要拠点はパッケージ標準UIを使いつつ、特殊な出荷条件を持つ拠点だけローコードで調整するなど、混在させる進め方も検討できます。
パッケージ標準UIを活用するアプローチ
多くの現場で検証・洗練された標準UIをそのまま利用する方法です。初期費用や月額費用を抑えやすく、短期間で導入できる点がメリットですが、自社特有の業務フローに合わせたカスタマイズには限界があります。標準的な物流業務が中心で、初期コストを抑えてスピーディに効果を検証したい企業に向いています。
標準UIを選ぶ場合でも、ボタン配置や表示項目の並び順を数点だけ調整できる製品と、ほぼ手を加えられない製品があります。自社の業務でどうしても譲れない画面要素があるなら、契約前にどこまで調整可能かをデモで確認しておくと、稼働後の不満を減らせます。
フルスクラッチで自社独自UIを開発するアプローチ
自社の特殊な業務フローや独自のノウハウに100%合わせた画面を、ゼロから設計・開発する方法です。自由度が高い反面、初期費用は数千万円規模、開発期間は1年以上に及ぶこともあり、要件定義や設計の質が低いと、かえって使いにくい画面になってしまうリスクもあります。物流が競争優位性の源泉となる企業や、特殊な商品特性・複雑なオペレーションを持つ企業に向いた選択肢です。
フルスクラッチを選ぶ場合は、開発会社に丸投げするのではなく、現場のピッキング動線や例外処理を発注側が具体的に言語化できるかが成否を左右します。要件があいまいなまま開発を進めると、完成後に「使ってみると分かりにくい」という手戻りが発生しやすくなります。
ローコード開発でカスタマイズするアプローチ
フルスクラッチほどの費用をかけず、既製のWMSをベースに画面や帳票のレイアウトを柔軟に調整する方法です。現場担当者自身がドラッグ&ドロップ操作で数日から1週間程度で画面を修正できる製品もあり、標準UIでは物足りないが、フルスクラッチほどの投資は難しい企業の折衷案になり得ます。
ローコードのメリットは、稼働後に現場の要望へ素早く対応できる点にあります。一方で、調整できる範囲は製品の設計思想に依存するため、どこまで自由に変更できるのかを事前に確認せずに契約すると、結局ベンダーへの発注が必要になる場面が残ることもあります。
比較すべき7つの評価軸

候補となるアプローチや製品は、現場の操作性、教育コストへの影響、費用と期間、拡張性、既存システムとの互換性、ブランドイメージへの寄与という軸で比較します。同じ質問を各案へ当てはめて確認すると、印象ではなく適合度で判断できます。
操作性と教育コストへの影響を確認します
第一に、実際の画面をパート・アルバイトなど多様な人材に操作してもらい、説明なしでどこまで進められるかを確認します。第二に、教育資料の作り直しにどれだけの手間がかかるか、既存のマニュアルをどこまで流用できるかを見積もります。
操作性は、デモ担当者が操作する様子を見るだけでは正確に判断できません。可能であれば、実際に現場で働くパート・アルバイトスタッフに触ってもらい、迷った箇所や質問が出た箇所を記録すると、資料上の説明だけでは見えない使い勝手が分かります。
費用・期間・拡張性を確認します
第三に、初期費用と開発期間を、パッケージ標準UI・ローコード・フルスクラッチの各案で並べて比較します。第四に、稼働後に画面や帳票を追加・変更する際、ベンダーへの都度発注が必要か、自社でローコード編集できるかという拡張性も確認します。
費用は初期費用と月額費用だけでなく、画面変更のたびに発生する追加開発費、教育資料の作り直し費用、問い合わせ対応にかかる社内工数まで含めて比較すると、実際の総保有コストに近づきます。
既存端末との互換性とブランドへの寄与を確認します
第五に、現行のハンディターミナルをそのまま使うのか、スマートフォン・タブレットへ置き換えるのかによって、必要な投資範囲が変わります。第六に、リニューアル後の画面が取引先や見学者にどのような印象を与えるかも、比較の材料に加えておくと、投資判断の説明がしやすくなります。
第七に、稼働後の保守体制も確認します。画面に不具合が起きたときの問い合わせ窓口や対応時間、法改正やOSアップデートへの追随方針は、パッケージ・ローコード・フルスクラッチのいずれを選ぶ場合でも、契約前に確認しておきたい項目です。
比較結果は、担当者ごとの主観的な採点にせず、確認方法まで統一しておくと後から見返しやすくなります。「デモで確認」「資料で確認」「現場ヒアリングで確認」のように根拠を記録し、未確認の項目は点数を付けず保留にしておくと、選定理由を社内で説明しやすくなります。
パッケージ標準UI・フルスクラッチ・ローコードの選び分け

標準的な物流業務が中心でスピードを重視するならパッケージ標準UI、独自の業務フローが競争優位に直結するならフルスクラッチ、その中間を狙うならローコード活用が候補になります。
判断基準は業務の標準度合いと投資余力です
自社の業務がどの程度標準的な物流フローに当てはまるか、独自の作業手順にどれだけ価値があるかを整理します。標準フローが中心であれば、無理にフルスクラッチを選ぶ必要はなく、パッケージ標準UIやローコードで十分な効果を得られることが多いとされています。
段階的にローコードから始める選択肢もあります
最初からフルスクラッチを選ばず、まずはパッケージ標準UIやローコード機能を持つ製品で画面を刷新し、運用しながら本当に必要なカスタマイズ範囲を見極める進め方もあります。段階的に検討すると、初期投資を抑えながら、将来的にフルスクラッチへ移行するかどうかの判断材料を蓄積できます。具体的な候補製品を確認したい場合は、WMSのリニューアルのパッケージ・クラウド製品一覧を参照すると比較しやすくなります。
PoC・プロトタイプ検証の進め方

画面の作り直しであっても、稼働後の手戻りを防ぐには、ワイヤーフレームやデザインカンプによる合意形成と、現場スタッフによる実機検証を経ることが望ましいとされています。検証を丁寧に行うほど、稼働後に大きな作り直しが発生するリスクを抑えられます。
ワイヤーフレーム・デザインカンプで方向性を合意します
デザイナーが現場業務の理解に基づいて画面構成を整理し、操作導線をワイヤーフレームやデザインカンプに落とし込みます。この段階で現場責任者と方向性をすり合わせておくと、実装後の大きな作り直しを避けやすくなります。
ワイヤーフレームの段階では、細かい配色よりも、情報の並び順と次に取るべき操作が明確かどうかを重点的に確認します。デザインの好みで議論が長引きやすい工程でもあるため、判断基準を「現場が迷わないか」に絞っておくと合意形成が進めやすくなります。
現場スタッフによるユーザビリティテストと実機検証を行います
実データに近い環境でプロトタイプを操作してもらい、机上の検討では見えない操作性や見やすさの課題を洗い出します。さらに、タブレット・スマートフォン・ハンディターミナルでの実機検証(UAT)を行い、実際の業務フローに沿ったテストシナリオでエラー時の画面表示まで確認すると、現場定着の精度が高まります。
検証には、経験の長いスタッフだけでなく、入社間もないスタッフにも参加してもらうことが望ましいとされています。慣れたスタッフには気にならない操作でも、初めて触れる人には迷いの原因になっていることがあり、両方の反応を確認することで、教育コストの見積もり精度も高まります。
WMSのリニューアル選定の失敗を避ける方法

よくある失敗は、見た目のデザイン性だけで比較し、教育コストや既存端末との互換性、稼働後の改修のしやすさを確認しないまま決めてしまうことです。導入目的と責任者を明確にし、現場、情報システム部門、教育担当者の視点を選定に反映することで、こうした失敗を避けやすくなります。
見た目のデザイン性だけで決めないようにします
デモ画面が洗練されていても、自社の業務フローに合わない導線であれば、現場は結局使いにくさを感じます。評価点を単純に合計するのではなく、必須要件を満たさない案は除外し、残った候補を教育コストと拡張性で比較します。
見た目の好みで社内の意見が割れた場合は、デザインの美しさではなく、実際の作業時間や入力ミスの発生率といった計測可能な指標に立ち返って議論すると、選定が個人の感覚で左右されにくくなります。
運用ルールと教育計画をセットで決めます
画面を刷新しただけでは、現場に浸透しません。誰がいつ新しい操作方法を教えるか、繁忙期を避けた展開スケジュールをどう組むか、稼働後の問い合わせ窓口を誰が担うかを、リニューアルの計画と同時に決めておく必要があります。
全拠点・全部署へ一度に展開するのではなく、まず一つの拠点や部署で試行し、教育にかかった時間や問い合わせ件数を記録してから展開範囲を広げる進め方もあります。小さく始めることで、想定外の課題を早い段階で見つけやすくなります。
WMSのリニューアル導入前に確認しておきたいポイント

候補を絞った後は、対象人数や画面デザインだけでなく、繁忙期の回避や既存端末との互換性まで含めて確認します。
小規模な現場でも選定の考え方は同じです
取扱量が少ない現場でも、教育の負担やブランドイメージの課題があれば選定の価値があります。標準的なパッケージUIで十分なのか、ローコードでの微調整が必要なのかを、必須要件から絞り込みます。
繁忙期を避けたスケジュール設計を確認します
リニューアルの実装・展開時期は、繁忙期と重ならないよう調整します。稼働直後は操作に慣れないスタッフが増えるため、余裕を持った移行期間と、旧画面へ一時的に戻せる体制を用意しておくと安心です。
繁忙期の直前に慌てて切り替えると、新しい画面に不慣れなスタッフが増えた状態で出荷量が最も多い時期を迎えることになります。閑散期に移行し、繁忙期までに現場が操作へ十分に慣れる期間を確保できるよう、逆算してスケジュールを組みます。
何を基準にベンダーを比較するか確認します
デザイン力の実績だけでなく、稼働後の改修対応スピード、ローコード機能の有無、既存データ移行の実績を基準に比較します。デモでは、自社の実際の業務シナリオを使って操作してもらうことが重要です。
同業種・同規模の導入実績があるかどうかも参考になりますが、公開事例の効果をそのまま自社に当てはめず、自社の作業量や人員構成に置き換えて効果を見積もる姿勢が欠かせません。
まとめ

WMSのリニューアルの選定では、操作性や教育コスト、ブランドイメージといった自社課題を特定し、パッケージ標準UI、フルスクラッチ、ローコード活用という3つのアプローチから方向性を選びます。そのうえで、操作性、教育コスト、費用と期間、拡張性、既存端末との互換性、ブランドへの寄与という評価軸で候補を比較することが重要です。
評価軸をそろえてから候補を絞り込みます
デモの印象だけで判断せず、同じ評価軸と業務シナリオを各案に当てはめることで、広告的な見せ方に左右されない選定ができます。ワイヤーフレームやプロトタイプ検証を経て、現場スタッフの反応を確認することも欠かせません。
最後は現場を巻き込んだPoCで検証します
資料上の比較だけで決めず、実際の現場スタッフに触ってもらうPoCを経て、教育負担や操作性を実測したうえで最終決定することが望まれます。繁忙期を避けたスケジュール設計、運用ルールと教育計画の整備まで含めて検討することで、リニューアル後の定着度も高まります。
パッケージ標準UIやローコードでは自社の特殊な業務フローを吸収しきれない場合、riplaはフルスクラッチ開発の立場から、要件整理や既存基幹システムとの連携を含めた構築を支援しています。
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・WMSのリニューアルの完全ガイド
株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
