奉行クラウド導入の選定ポイント/選び方/種類

奉行クラウドには、会計に特化した勘定奉行iクラウド、人事労務を担う給与奉行iクラウドや総務・人事奉行iクラウド、複数モジュールを横断でつなぐ経理DX Suite、中堅・成長企業向けの奉行V ERPクラウドまで、選べる選択肢が数多く用意されています。奉行11の保守終了が近いからといって手近なモジュールだけを移行すると、後から他モジュールとの連携が手薄になり、想定外の手作業が残ることも少なくありません。選定の出発点は、自社が今どのモジュールをどこまでクラウド化するのか、その優先順位と移行対象範囲を明確にすることです。

本記事では、奉行クラウド導入前に整理すべき自社課題、選べるモジュールの組み合わせ方、移行対象範囲とデータ互換性の評価軸、奉行11・奉行クラウド・奉行Smartマルチクラウドの選び分け、料金体系やセキュリティの比較軸、見積りから無料体験までの進め方を解説します。これから移行スケジュールを検討する担当者の方が、自社に必要なモジュールと確認事項を具体的に整理できる内容です。

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・奉行クラウド導入の完全ガイド

奉行クラウド導入前に整理すべき自社の課題

奉行クラウド導入前の課題を整理する担当者

最初に行うべきことは、製品資料を集めることではなく、保守期限までの残り期間と、対象とすべきモジュールの範囲を特定することです。会計だけで完結するのか、人事給与や販売・仕入在庫まで含めるのかによって、比較すべき評価軸も変わってきます。あわせて、現在オンプレミス版でどの部門がどの機能を使っているかを棚卸ししておくと、クラウド版で標準対応できる範囲と、個別に確認が必要な範囲を早い段階で切り分けやすくなります。

保守期限からの逆算で移行対象モジュールを確認します

オンプレミス型の奉行11は2025年2月末で販売が終了し、保守サポートも2027年4月末で終了する予定です。保守契約は年単位で途中解約しても返金がないため、契約更新のタイミングに合わせて移行するのか、期限直前まで待つのかで、社内の検討期間が大きく変わります。まずは自社が現在利用しているモジュールを棚卸しし、どこまでを同じタイミングでクラウド化するかを決めることが選定の前提になります。

部門をまたいだデータ連携の課題を洗い出します

会計、人事給与、販売・仕入在庫を別々のタイミングでクラウド化すると、その間はモジュール間の連携がAPI連携ではなくCSVによる手動連携に一時的に後退するケースがあります。現在、経理・人事・購買の各部門がどのようにデータをやり取りしているか、どの連携が途切れると業務が止まるかを事前に整理しておくと、移行順序を検討する際の判断材料になります。特に月次締めや年末調整など、複数部門が関わる定型業務がある場合は、その業務サイクルの前後で移行時期を設定できるかどうかも、選定段階で確認しておきたい論点です。

奉行クラウドで選べるモジュールの組み合わせ方

奉行クラウドのモジュール構成を検討する担当者

奉行クラウドは単一の製品ではなく、業務領域ごとのモジュールの集合体です。自社の規模と業務範囲に応じて、どのモジュールを組み合わせるか、どこまで連携させるかを選べる点が特徴です。

会計・人事給与・販売仕入在庫の基本モジュールを選びます

会計業務を担う勘定奉行iクラウド、給与計算や社会保険手続を担う給与奉行iクラウド、従業員情報を一元管理する総務・人事奉行iクラウド、販売管理と仕入・在庫管理を担う商蔵奉行iクラウド、固定資産を管理する固定資産奉行iクラウドなど、業務領域ごとにモジュールが分かれています。現在オンプレミス版でどの業務をカバーしているかを確認し、それに対応するクラウド版のモジュールを候補として洗い出すところから始めます。具体的な各モジュールの機能や料金の違いは、奉行クラウド導入のパッケージ・クラウド製品一覧で個別に整理していますので、比較の際の参考にしてください。

DX Suiteによる横断連携という選択肢もあります

複数モジュールを組み合わせて導入する場合、経理・販売管理・人事労務のデータをシームレスに連携させるDX Suiteという仕組みを利用できます。単体のモジュールを個別に導入するよりも、部門をまたいだ二重入力を減らせる可能性がありますが、連携できる項目や自動化の範囲はモジュールの組み合わせによって異なります。DX Suiteの利用を前提に選定する場合は、自社が導入予定のモジュール同士で標準連携がどこまで対応しているかをデモで確認することが重要です。

事業拡大時は奉行V ERPクラウドへの段階移行を選べます

中堅・成長企業やグループ企業、IFRS対応や海外子会社管理が必要な企業では、上位ブランドの奉行V ERPクラウドが選択肢になります。勘定奉行iクラウドなど中小企業向けのモジュールから始め、事業規模の拡大に応じて上位モデルへステップアップできる構成になっているため、現時点の規模だけでなく数年後の事業計画も踏まえてモジュールを選ぶと、後からの切り替えコストを抑えやすくなります。

移行対象範囲とデータ互換性の評価軸

奉行クラウドのデータ移行範囲を確認する担当者

奉行クラウドは、機能面だけでなくデータ互換性の面でも、オンプレミス版とは同じメーカーが手がける別製品と捉えるのが実務上は適切です。移行対象を決める前に、クラウド版の仕様上の制限を把握しておく必要があります。

複数会社管理・データ領域の制限を確認します

クラウド版では、1契約につき管理できるのは1社のみで、オンプレミス版のような複数会社管理はできません。データ領域も1つに限られ、会計年度ごとに領域を分けて保持する運用はできず、データサイズにも上限があります。グループ会社をまとめて1つの契約で管理してきた企業や、長期間分のデータを一括保持してきた企業は、この制限が自社の運用に収まるかどうかを最初に確認する必要があります。複数会社をまとめて管理していた企業がクラウド版へ移行する場合は、会社ごとに契約を分ける、または対象会社を絞って段階的に移行するといった運用の見直しが必要になる点も、選定段階で織り込んでおくと後の手戻りを防げます。

データコンバート事前確認ツールで移行可否を検証します

移行前には、「データコンバート事前確認ツール」を使って、既存データがクラウド版へ問題なく変換できるかを確認する工程が用意されています。OBCインストラクターによるデータコンバート代行サービスも用意されており、1領域あたり55,000円程度から利用できますが、商蔵奉行系のデータを扱う場合はコンバート前の事前指導を別途申し込む必要がある点に注意してください。この確認を評価軸に含めておくと、契約後に想定外のデータ移行トラブルが発生するリスクを抑えられます。

奉行11・奉行クラウド・奉行Smartマルチクラウドの選び分け

奉行クラウドと奉行Smartマルチクラウドを比較する担当者

クラウド化と一口に言っても、SaaS版の奉行クラウドと、顧客が選んだクラウドインフラ上で運用する奉行Smartマルチクラウドでは、性質が大きく異なります。既存のオンプレミス版である奉行11を維持し続けるという選択肢も含め、自社の要件に合う形態を選ぶ必要があります。

標準的な業務ならSaaS型の奉行クラウドが第一候補です

会計・人事給与・販売仕入在庫といった標準的な業務フローで運用しており、法改正への継続的な追随を重視するなら、OBCが一元管理するSaaS版の奉行クラウドが第一候補になります。サーバー調達やバージョンアップの負担がなくなる一方、独自の帳票フォーマットや特殊な承認フローをそのまま持ち込めるとは限らないため、自社の運用を標準機能に合わせられるかどうかを事前に確認します。

既存カスタマイズを維持したいなら奉行Smartマルチクラウドを検討します

自社構築した独自のカスタマイズシステムを奉行と同時に運用してきた企業では、Microsoft Azure、AWS、富士通FJcloud-Vなど、自社が選んだクラウドインフラ上で奉行システムと既存システムを同時に運用できる奉行Smartマルチクラウドが選択肢になります。オンプレミス相当の運用の自由度を保ちながらクラウド化できる一方、SaaS版に比べてサーバー運用の負担が完全にはなくならない点も踏まえて比較する必要があります。どちらを選ぶ場合も、既存のカスタマイズがどこまで維持できるか、維持できない部分をどう業務側で吸収するかを、契約前のデモや個別相談で具体的に確認しておくことが重要です。

料金体系・セキュリティ・API連携の比較軸

奉行クラウドの料金とセキュリティを比較検討する会議

モジュールの候補が絞れたら、料金体系、セキュリティ、外部システムとの連携という3つの軸で候補を比較します。同じ質問を各モジュールに当てはめて確認すると、印象ではなく条件で判断しやすくなります。

料金体系とTCOを確認します

クラウド版の料金は、モジュールごとにプラン構成が分かれており、初期費用と月額または年額の利用料で構成されるのが一般的です。オンプレミス版では年間保守費用がソフトウェア価格のおよそ15〜20%程度かかるとされていたのに対し、クラウド版はサーバー関連費用が不要になる分、コスト構造そのものが変わります。ただし、料金は利用人数や機能構成によって変動するため、公開情報の一部だけを見て安易に比較せず、必要な機能とライセンス数を提示したうえで見積りを取得することが重要です。

セキュリティと責任分界点を確認します

奉行クラウドはMicrosoft Azureを基盤とし、データは国内データセンターで3重化構成のもと管理されています。インフラ部分はOBCとAzure側が管理し、ID・パスワード管理やアクセス権限の設定は利用企業側が担うという責任共有モデルが採用されているため、導入後に自社側でどこまでの運用ルールを整備する必要があるかを事前に確認しておきます。

API連携の範囲を確認します

奉行クラウドはAPIを利用して外部システムから仕訳のもととなるデータを自動連携し、仕訳起票を自動化する仕組みを備えています。この接続はAzure API Managementを通じて実現されていますが、連携できる範囲や項目は接続したいシステムの仕様によって変わります。勤怠管理システムや自社の販売系システムとの連携を前提にする場合は、双方のAPI仕様を突き合わせたうえで、標準機能で対応できる範囲と個別開発が必要な範囲を切り分けておくことが重要です。

見積り・データコンバート確認・無料体験の進め方

奉行クラウドの見積りとPoCの進め方を確認する担当者

候補となるモジュール構成が固まったら、実際の見積りとデータ検証を通じて具体的な移行計画に落とし込みます。OBC公式の手順に沿って進めると、抜け漏れの少ない検討がしやすくなります。

OBC公式の5段階プロセスに沿って進めます

OBCが案内する移行の流れは、調査票への回答、環境チェック、社内での検討、見積り、クラウド移行の実施という5段階で構成されています。環境チェックの段階ではオンラインセミナーで講師の支援を受けられるほか、移行ガイドブックや電話サポートも提供されており、段階を追って進めれば、必要な確認項目を取りこぼしにくくなります。

30日間無料体験をPoCとして活用します

勘定奉行クラウド、給与奉行クラウド、商奉行クラウドなど主要モジュールでは、サンプルデータや専用ガイドブック付きの30日間無料体験が提供されています。契約前にこの体験を使い、自社が実際に使う画面遷移や入力項目を操作してみることで、資料だけでは分からない操作感や、想定していた業務フローとの差異を確認できます。複数モジュールの組み合わせを検討している場合は、まとめて申し込める窓口を利用すると比較がしやすくなります。

奉行クラウド導入前に確認しておきたいポイント

奉行クラウド導入前の質問を確認する担当者

モジュール選定を進める中では、規模や移行手順に関して判断に迷う場面が出てきます。ここでは、実務でよく論点になる確認事項を整理します。

小規模企業でも移行の価値はありますか

従業員数が少なくても、自社サーバーの保守や更新投資を継続する負担は変わりません。エントリー向けのプランも用意されているため、規模だけで判断せず、現在のサーバー運用にかかっている費用と、クラウド化によって不要になる作業を比較して検討することをおすすめします。特に情報システム専任の担当者がいない企業では、法改正対応やバージョンアップを自社で行う負担がなくなること自体が、規模の大小によらず大きな価値になる場合があります。

一部モジュールだけ先行移行してもよいですか

可能ですが、先行移行していないモジュールとの連携が一時的にCSVによる手動連携へ後退する場合があります。段階的に移行する場合は、どの期間、どの業務がどの連携方式になるのかを事前に整理し、関係部門へ周知しておくことが混乱を避けるうえで重要です。移行順序を決める際は、繁忙期の業務負荷が比較的軽いモジュールから着手し、運用が安定してから次のモジュールへ進めると、現場の混乱を抑えやすくなります。

外部コンサルは必ず必要ですか

必須ではありません。データコンバートだけであればOBCインストラクターによる代行サービスを利用でき、比較的低コストで完結します。一方、業務プロセスの見直しまで含めた本格的な移行を検討する場合は、コンサルティング会社への相談も選択肢になります。自社だけで完結できる範囲を先に見極めることが判断の起点になります。

まとめ

奉行クラウド導入の選定方針をまとめる担当者

奉行クラウド導入の選定では、保守期限からの逆算で移行対象モジュールを決め、会計・人事給与・販売仕入在庫の基本モジュールとDX Suiteによる横断連携、事業拡大時の奉行V ERPクラウドへの段階移行という組み合わせ方を整理することが出発点になります。そのうえで、データ互換性、料金体系、セキュリティ、API連携という評価軸で候補を比較し、無料体験を使った検証まで進めることが重要です。

課題整理から評価軸の比較へ進めます

保守期限と移行対象範囲を明確にしたうえで、データ互換性、料金、セキュリティ、API連携を同じ条件で比較すれば、モジュールごとの機能の多さに惑わされず、自社に必要な組み合わせを絞り込めます。

まずは保守期限とモジュール範囲の棚卸しから始めます

現在利用しているモジュールと保守期限を確認し、無料体験やOBC公式の相談窓口を通じて具体的な見積りへ進めてください。標準機能で対応できる範囲が大きい一方、独自の帳票フォーマットや基幹システムとの深い連携が必要な場合は、既製のクラウド製品だけでは吸収しきれないこともあります。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、奉行クラウド選定で明らかになった連携要件の整理や、標準機能では対応しきれない業務要件に合わせたシステム構築を支援しています。

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・奉行クラウド導入の完全ガイド

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

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