アプリケーションのモダナイゼーションの選定ポイント/選び方/種類

アプリケーションのモダナイゼーションの選び方は、リファクタリング型・リプラットフォーム型・リビルド型という3つのアプローチから、自社の技術的負債に合う方式を選ぶことが出発点です。闇雲に「最新技術への刷新」を掲げても、現行アーキテクチャの状態や事業上の優先度に合わなければ、投資に見合う効果は得られません。

本記事では、アプリケーションのモダナイゼーション選定前に整理すべき自社の課題、3つのアプローチの特徴、比較すべき評価軸、内製・外部ベンダー・ハイブリッドの選び分け、RFPとPoC・MVPの進め方、選定の失敗を避ける方法を解説します。これから刷新方針を検討する担当者の方が、比較の軸をそろえ、自社に合う方式まで具体的に絞り込める内容です。

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選定前に整理すべき自社の課題

アプリケーションのモダナイゼーション選定前の課題整理

刷新方式を選ぶ前に、まず現在のアプリケーションのどこに問題が生じているかを特定する必要があります。表示速度、UI/UXの古さ、保守コスト、スケーラビリティのどこに課題が集中しているかによって、適した手法は変わります。

表示速度とUI/UXの陳腐化を確認します

モノリシックな構成のまま機能を積み重ねてきたアプリケーションは、画面表示が遅くなったり、スマートフォンでのレイアウト崩れが起きたりしやすくなります。離脱率やアクセス解析上の直帰率が悪化している場合は、フロントエンド側の刷新を優先領域として検討します。反対に表示自体に大きな問題がなければ、裏側のアーキテクチャ課題を先に確認する方が合理的です。

表示速度の課題を数値で捉える際は、担当者の体感だけでなく、実際のページ読み込み完了までの時間や、主要な操作を行うまでのクリック数を記録しておくと、刷新後の改善幅を客観的に示せます。営業担当や顧客対応部門から「画面が重い」「入力項目が多い」といった声が継続的に上がっている場合も、UI/UXの陳腐化を裏付ける材料になります。

保守コストとスケーラビリティの限界を確認します

特定の機能を修正するたびに全体への影響確認が必要になる、アクセスが集中する機能だけを個別にスケールさせられないといった状態は、モノリスの構造的な限界を示しています。保守・運用費用が初期開発費の年間15〜20%程度を超えて増加し続けている場合や、担当できるエンジニアが限られている場合も、刷新を検討すべきサインです。

古いフレームワークやサポート期限が近づいている言語で書かれた部分が残っている場合は、対応できる人材の確保がますます難しくなります。退職や異動によって仕様を把握する担当者が減っていく前に、技術的負債の棚卸しと刷新の優先順位付けを進めておくことが、将来の保守リスクを抑えることにつながります。

モダナイゼーションの3つのアプローチ

3つのモダナイゼーションアプローチを比較する図

刷新の進め方は、大きくリファクタリング型、リプラットフォーム型、リビルド型の3つに分けられます。分類名にこだわるより、自社が抱える課題をどこまで解消したいかで選び分けます。

リファクタリング型:構造を保ちながらコードを整理します

既存のアーキテクチャや言語を大きく変えず、内部のコード構造だけを整理する方法です。比較的短期間・低コストで着手でき、表示速度の改善や保守性の向上など、限定的な効果を狙う場合に適しています。ただし、根本的な技術的負債が残るため、将来的により大きな刷新が必要になる可能性は残ります。

静的解析ツールやテストコードの整備をあわせて進めると、リファクタリングによる副作用を早期に検出しやすくなります。コード整理だけを目的化せず、どの画面や機能の保守性をどこまで改善するのかという目標値を事前に決めておくと、投資対効果を判断しやすくなります。

リプラットフォーム型:実行基盤を移行します

アプリケーションのロジックを大きく書き換えずに、コンテナ化やKubernetesへの移行など、実行基盤を刷新する方法です。対象を絞れば4〜10ヶ月程度で移行でき、環境差異による不具合の削減やデプロイの自動化を進めやすくなりますが、移行後の運用監視体制を新たに整える必要があります。

実行基盤を移すだけでもコンテナイメージの設計や既存の設定値の見直しが必要になり、想定より作業量が増えることがあります。開発環境と本番環境で設定値がずれていないかを移行前に洗い出しておくと、切り替え後の想定外の不具合を減らせます。

リビルド型:フロントエンドやアーキテクチャを作り直します

SPA化・レスポンシブ対応や、モノリスからマイクロサービスへの分割など、アーキテクチャそのものを作り直す方法です。効果は大きい一方、小〜中規模のフロントエンド刷新でも3〜6ヶ月、マイクロサービス化を伴う場合は8〜18ヶ月程度を見込む必要があり、投資規模と得られる効果を事前にすり合わせておくことが欠かせません。

リビルド型では、画面デザインの一貫性を保つためのルールをあわせて整理しておくと、複数の開発担当者が関わっても表示崩れやトーンのばらつきが起きにくくなります。作り直しの範囲が広いほど、途中で仕様を変更すると手戻りが大きくなるため、着手前に対象画面と優先順位を固めておくことが重要です。

比較すべき6つの評価軸

アプリケーションのモダナイゼーションの評価軸を検討する会議

アプローチの方向性が決まったら、技術的負債の深刻度、移行手法の適合性、コスト・TCO、体制・スキル、UX・パフォーマンス目標、ベンダーの実績という6つの軸で具体的な進め方を比較します。

技術的負債の深刻度と移行手法の適合性

現行アーキテクチャがどこまで限界に近いかによって、リファクタリングで十分か、リビルドが必要かが変わります。特定機能のみが課題であればその部分だけを切り出す段階的な移行が適し、全体的な老朽化が進んでいる場合はより広い範囲の刷新を検討します。

コスト・TCOと体制・スキルを確認します

初期の開発費用だけでなく、コンテナ基盤の運用監視やCI/CDの維持にかかる継続コストまで含めたTCOで比較します。マイクロサービス化やコンテナ化は、インフラ維持コストが刷新前の1.5〜2倍程度に増加するケースもあるため、自社でSREやインフラ運用を担える体制があるか、外部委託が必要かをあわせて検討します。

クラウドサービスの利用料は為替や料金改定の影響を受けやすく、契約時点の見積もりがそのまま数年間続くとは限りません。体制面では、既存のインフラ担当者がコンテナ運用のスキルをどこまで持っているかを棚卸しし、不足する部分は外部の運用支援やトレーニングをあわせて検討する必要があります。

UX・パフォーマンス目標とベンダーの実績

刷新後にどの程度の表示速度やコンバージョン率を目指すのか、数値目標を事前に設定しておくと、効果測定がしやすくなります。ベンダーに委託する場合は、類似規模のモダナイゼーション実績や、移行後の運用支援まで対応できるかを確認することが、選定の精度を高めます。目標値は担当者間の感覚合わせにとどめず、経営層への報告にも使える具体的な数値として共有しておくと、追加投資の判断材料になります。

内製・外部ベンダー・ハイブリッドの選び分け

内製と外部ベンダーとハイブリッドの体制を比較する担当者

刷新の実行体制は、自社エンジニアによる内製、外部ベンダーへの委託、両者を組み合わせたハイブリッドの3パターンに整理できます。

内製が向くケース

顧客体験の差別化が事業競争力に直結し、継続的に手を入れ続ける必要がある画面は、内製で開発ノウハウを社内に蓄積する価値があります。ただし、コンテナ運用やマイクロサービス設計など専門性の高い技術領域では、社内に十分なスキルを持つ人材がいるかを見極める必要があります。

内製にこだわりすぎると、採用や育成に時間がかかり、刷新の着手自体が遅れることもあります。まずは優先度の高い領域だけを内製で進め、専門性の高い基盤刷新は外部の知見を借りながら、徐々に社内へノウハウを移していく進め方も現実的な選択肢です。

外部ベンダー委託とハイブリッド構成

専門的な移行技術や、短期間での刷新が求められる場合は、外部ベンダーへの委託が現実的な選択肢になります。一方で、コア画面は自社の開発チームが担い、基盤刷新など専門性の高い部分だけを外部に委託するハイブリッド構成も広く採られています。どちらの体制でも、刷新後の保守を誰が担うのかを契約前に明確にしておくことが重要です。

RFPとPoC・MVPの進め方

アプリケーションのモダナイゼーションのRFPとPoCを検討する会議

方式と体制の方向性が固まったら、RFPで要件を明確にし、PoCやMVPで実際の効果を検証してから本格着手する流れが望まれます。

RFPには現状の課題と非機能要件を記載します

RFPには、対象となる画面や機能、現行の技術的負債、目指す表示速度やUX目標、想定利用者数、対応が必要なデバイスを記載します。非機能要件としては、可用性、セキュリティ、将来のスケーラビリティ、運用監視体制への要求水準を明記し、ベンダーからの提案を同じ条件で比較できるようにします。

各要件を「必須」「望ましい」「将来検討」の3段階に分けておくと、すべてを必須として候補を狭めすぎる事態を避けられます。ベンダーからの提案を受け取る際は、見積もりの前提となった規模や条件もあわせて確認し、後から比較しやすい形式で提出してもらうよう依頼しておくと、選定作業の手戻りを減らせます。

PoC・MVPで対象を絞って効果を検証します

いきなり全画面を刷新するのではなく、影響の大きい一部の機能や画面に絞ったPoC・MVPで効果を検証する進め方が有効です。ノーコード・ローコードを活用したプロトタイピングであれば、期間1〜3ヶ月、費用50万〜300万円程度で検証できることもあり、フル開発の見積もりに対して初期費用を50〜70%程度抑えられる場合があります。UI/UXの検証ではデザインツールでクリッカブルモックアップを作成し、実際の利用者にテストしてもらう工程を組み込むと、本開発前に致命的な操作性の問題を発見しやすくなります。

選定の失敗を避ける方法

アプリケーションのモダナイゼーション選定の失敗を避ける方法

よくある失敗は、対象範囲を広げすぎたビッグバン方式や、効果測定の指標を決めないまま刷新を進めてしまうことです。

ビッグバン方式による一斉刷新を避けます

すべての画面・機能を同時に刷新しようとすると、不具合が発生した際の影響範囲が広がり、切り戻しも難しくなります。既存機能を維持しながら一部だけを新しいアーキテクチャへ段階的に置き換えていく進め方のほうが、リスクを抑えながら効果を確認できます。

一部の利用者だけに新しい画面を段階的に公開し、問題がなければ対象を広げていく進め方を取り入れると、不具合の影響を限定しながら本番環境での挙動を確認できます。切り戻しの手順とタイミングをあらかじめ決めておくことも、ビッグバン方式を避けるうえで欠かせない準備です。

導入前後の指標を同じ条件で計測します

表示速度、離脱率、機能追加にかかる時間などを、刷新前の基準値として記録しておかないと、投資対効果を判断できません。他社の削減事例をそのまま自社に当てはめるのではなく、自社の指標で導入前後を比較することが、次の投資判断や追加展開の根拠になります。具体的な候補となる製品やサービスを確認したい場合は、アプリケーションのモダナイゼーションのパッケージ・クラウド製品一覧を参照すると、比較の視点をそろえやすくなります。

アプリケーションのモダナイゼーション導入前に確認しておきたいポイント

アプリケーションのモダナイゼーション導入前の確認ポイント

刷新方式を最終的に決める前には、規模の小さいアプリケーションでも検討価値があるか、フルスクラッチが必要かどうかなど、判断に迷いやすい点を整理しておきます。

小規模なアプリケーションでも部分刷新は有効です

全面的な作り直しでなくても、利用頻度の高い画面や離脱率の高い機能だけを対象にした部分的な刷新であれば、規模の小さいアプリケーションでも投資対効果を見込めることがあります。まずは影響の大きい範囲から着手し、効果を確認しながら対象を広げる方法が現実的です。担当者が一人しかいないような小規模な体制でも、対象範囲を絞り込めば、外部ベンダーへの部分的な委託と組み合わせて無理なく進められます。

フルスクラッチが必要かはUI/UXの独自性で判断します

標準的な画面構成で十分な部分は、パッケージやローコードの活用でも対応できますが、顧客体験の差別化が事業競争力に直結する画面は、フルスクラッチでUI/UXを作り込む価値があります。ローコードは規模拡大時のライセンス費用がスクラッチの費用を上回る場合があるため、将来の利用規模も踏まえて判断します。

運用体制が整うまでは移行範囲を絞ります

コンテナ運用やマイクロサービスの監視を担える人材が社内に少ない場合は、最初から広範囲を移行するのではなく、運用負荷の小さい範囲から着手し、体制を整えながら段階的に対象を広げることが望まれます。並行して、外部の運用支援サービスやトレーニングを活用し、社内担当者が自走できる範囲を計画的に広げていくと、将来の刷新範囲拡大にも備えやすくなります。

まとめ

アプリケーションのモダナイゼーションの選び方をまとめる担当者

アプリケーションのモダナイゼーションの選定では、表示速度やUI/UXの陳腐化、保守コスト、スケーラビリティといった自社課題を特定し、リファクタリング型、リプラットフォーム型、リビルド型から方向性を選びます。そのうえで、技術的負債の深刻度、移行手法の適合性、コスト・TCO、体制・スキル、UX・パフォーマンス目標、ベンダーの実績という評価軸で候補を比較し、PoC・MVPで実際の効果を検証することが重要です。

体制の選び分けが投資対効果を左右します

内製、外部ベンダー、ハイブリッドのどれを選ぶかは、機能数ではなく、自社が継続的に手を入れたい領域と、専門性の高い基盤刷新をどこで分けるかによって判断します。既製のパッケージやローコードでは複雑な基幹システム連携やUI/UXの独自要件に対応できない場合、無理に合わせると現場の作業が増える結果になります。

現状のアーキテクチャ診断から始めます

riplaはフルスクラッチ開発の立場から、刷新方式の選定前の課題整理、既存アプリケーションのアーキテクチャ診断、独自のUI/UXや基幹システム連携に合わせた個別開発まで支援しています。

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株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

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