学校向けシステムの開発を外注・委託したいと思っているものの、「どのように発注すればいいのか」「発注の手順がわからない」「失敗しないためにはどうすればよいか」と悩んでいる担当者の方は多いのではないでしょうか。特に公立学校の場合は入札・プロポーザルなどの公的調達手続きが必要なケースもあり、手続きの複雑さに戸惑う声をよく聞きます。また、私立学校でも「どこに相談すれば良いか」「どんな契約書を作ればよいか」などの疑問を抱える担当者が少なくありません。
この記事では、学校向けシステム開発の発注から契約・プロジェクト管理までの全プロセスを、公立・私立それぞれのケースに応じて詳しく解説します。発注の準備から選定・契約・開発中の管理・受け入れテストまで、実務担当者がつまずきやすいポイントを網羅します。
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発注前の準備と要件整理

システム開発を成功させるためには、発注前の準備が最も重要です。「何を作りたいか」を明確にしないまま発注してしまうと、開発途中で要件が膨らみ、費用超過・納期遅延・品質問題につながります。以下の準備を丁寧に行いましょう。
課題の洗い出しと優先順位付け
まず現在の業務における課題を洗い出し、「どの課題を解決することが最も優先度が高いか」を整理します。教員・事務職員・管理職など複数の職種に対してヒアリングを実施し、「現在最も時間がかかっている業務」「ミスや漏れが多い業務」「保護者や生徒からのクレームが多い業務」などを把握しましょう。課題の洗い出しが完了したら、各課題をシステムで解決できるものとそうでないものに分類し、投資対効果(ROI)の高い順に優先順位を付けます。例えば「成績処理に毎月40時間かかっている」「保護者からの欠席連絡の電話対応で1日3時間消費している」といった具体的な数値を把握することで、システム導入の効果測定も可能になります。
要件書・RFPの作成
課題整理の結果をもとに、RFP(提案依頼書)を作成します。RFPには以下の内容を盛り込みます。まず「背景と目的」として現状の課題とシステム導入で達成したい目標を記述します。次に「機能要件」として必要な機能の一覧(必須機能と希望機能を分けて記載)を列挙します。「非機能要件」として性能要件(同時接続ユーザー数・レスポンスタイム)・セキュリティ要件(認証方式・暗号化・ログ管理)・可用性要件(稼働率・障害復旧時間)・保守性要件などを明記します。「スケジュール要件」として開発期間の目安・本番稼働希望日・重要なマイルストーンを記載します。「予算の概算」「評価基準」「提案書の提出期限・提出先」なども必ず含めましょう。
調達・選定プロセス

調達・選定プロセスは、公立学校と私立学校では大きく異なります。それぞれのプロセスの特徴と注意点を理解しておくことが重要です。
公立学校の調達手続き
公立学校のシステム調達は、地方自治法・地方自治法施行令に基づく公的調達手続きに従う必要があります。一般的に、250万円以上の調達案件では一般競争入札またはプロポーザル方式が求められます。一般競争入札は価格を最優先に業者を選定する方式ですが、システム開発の場合は技術力・品質を重視すべきケースが多く、価格だけで判断することへの課題も指摘されています。そのため、近年は「総合評価落札方式」(価格点と技術評価点を組み合わせて落札者を選定)や「公募型プロポーザル方式」(技術提案と価格提案を組み合わせて選定)を採用する自治体・教育委員会が増えています。調達手続きの詳細は各自治体の財務規則・契約規則によって異なるため、担当部署(教育委員会・自治体の調達担当)に事前に確認することが重要です。
私立学校の調達プロセス
私立学校は公的調達手続きに縛られないため、比較的柔軟な調達が可能です。一般的には、複数社(3〜5社程度)に対してRFPを送付し、提案書・見積書を受け取り、プレゼンテーション・デモを実施したうえで選定するプロセスが一般的です。選定基準は事前に明確にしておくことが重要で、例えば「技術提案の質(30点)」「実績・体制(25点)」「価格(25点)」「サポート体制(20点)」のような評価シートを作成し、複数の評価者が採点するとより客観的な選定ができます。特定の業者との随意契約(入札なしでの直接発注)は可能ですが、価格の透明性・公平性の観点から、少なくとも複数社の見積もり比較は実施することをお勧めします。
契約締結とプロジェクト管理

発注先が決定したら、契約締結とプロジェクト管理の準備を進めます。この段階での丁寧な取り決めが、開発期間中のトラブルを防ぐ鍵となります。
契約書に盛り込むべき重要事項
システム開発の契約書には、以下の内容を必ず盛り込みましょう。「開発範囲の明確化」として、開発する機能の一覧・各機能の仕様を定義します。「納期・マイルストーン」として、各工程(要件定義完了・設計完了・開発完了・テスト完了・本番稼働)の期限を設定します。「費用・支払い条件」として、総費用・支払い時期・追加開発発生時の単価を明記します。「知的財産権」として、開発されたシステム・ソースコードの権利帰属(発注側か開発側か)を明確にします。「秘密保持」として個人情報を含む機密情報の取り扱い方法を規定します。「瑕疵担保責任」として、納品後の不具合対応の範囲・期間(一般的に6か月〜1年)を定めます。「損害賠償」として情報漏洩・システム障害時の責任範囲を定めることも重要です。
開発期間中のプロジェクト管理
開発期間中は、学校側の担当者も積極的にプロジェクトに関与することが重要です。週次または隔週の進捗会議を設定し、スケジュール遵守状況・課題・リスクを定期的に確認しましょう。学校側でもプロジェクトリーダーを指定し、開発会社の窓口として意思決定できる権限を持たせることが重要です。仕様変更が発生した場合は、「変更管理プロセス」に従って変更内容・影響(コスト・スケジュール)・承認者を記録します。口頭での変更合意は後々トラブルになるため、必ず書面(メールでも可)で残す習慣をつけましょう。テストフェーズでは、学校側の代表ユーザー(教員・事務職員)が実際に操作してユーザー受け入れテスト(UAT)を実施し、業務フローに沿った動作確認を行います。
検収・受け入れとリリース後の管理

システムの納品・検収は、プロジェクトの一つの節目であると同時に、後々の責任関係を明確にする重要な手続きです。検収前に確認すべきポイントと、リリース後の管理体制について解説します。
検収チェックリストの作成
システムの検収(納品物の確認・受け入れ)では、事前に「検収チェックリスト」を作成し、すべての要件が満たされているかを確認します。チェック項目としては、「必須機能の動作確認(RFPに記載された全機能)」「非機能要件の確認(パフォーマンステスト・セキュリティ診断結果)」「ドキュメントの納品(設計書・操作マニュアル・ソースコード)」「データ移行の確認(既存データが正しく移行されているか)」などが含まれます。不具合が残っている場合は、「重大度分類(Critical/Major/Minor)」と「対応期限」を開発会社と合意し、Critical・Majorの不具合が解決されるまで最終検収を保留することが重要です。
保守・サポート契約の締結
システムリリース後は、保守・サポート契約を締結して安定した運用を維持します。保守契約には「標準保守」と「拡張保守」の2種類があります。標準保守は既存機能のバグ修正・セキュリティパッチ適用・ヘルプデスク対応が含まれ、拡張保守は機能追加・カスタマイズ対応も含まれます。SLA(サービスレベル合意書)では、「問い合わせへの初回応答時間(例:業務時間内4時間以内)」「障害復旧目標時間(RTO:例:Critical障害は4時間以内、Major障害は翌営業日まで)」「システム稼働率(例:99.5%以上)」などを明確に定めます。また、担当者が退職した場合の引き継ぎ体制・後任の確認も重要です。開発会社が廃業・吸収合併された場合に備えて、ソースコードの預かり(エスクロー)サービスの活用も検討しましょう。
まとめ
学校向けシステムの発注を成功させるためのポイントをまとめます。発注前には現状の業務課題を丁寧に洗い出し、RFPを作成して複数社から提案・見積もりを取ることが重要です。公立学校では法令に基づく調達手続きを、私立学校では評価基準を明確にした選定プロセスを経て発注先を決定しましょう。契約書には開発範囲・納期・費用・知的財産権・秘密保持・瑕疵担保責任を明確に盛り込みます。開発中は進捗管理・変更管理を徹底し、検収では要件の充足を漏れなく確認してください。リリース後も保守・サポート契約でSLAを明確にし、安定した運用を維持することが大切です。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
