自治体向けシステム開発の発注方法【入札・随意契約・外注のポイント】

自治体向けシステム開発の発注は、民間企業のシステム調達と大きく異なります。地方自治法・地方財政法に基づく公共調達のルールに従い、透明性・公平性・競争原理を確保しながら発注先を選定する必要があります。入札・随意契約・共同調達といった調達方式の選択から、RFP(提案依頼書)の作成・評価基準の設定・契約手続きまで、適切に進めることが良いシステム導入の前提条件です。本記事では、自治体向けシステム開発の発注に必要な知識と実務ポイントを詳しく解説します。

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自治体向けシステム開発発注の基本的な流れ

自治体向けシステム開発発注の基本的な流れ

自治体のシステム調達は、予算確保から始まり、調達方式の選択・仕様書作成・公告・提案受付・審査・契約締結・開発・検収という一連のプロセスで進みます。各段階で法令に定められた手続きを適切に実施することが求められます。

予算確保・調達計画の策定

自治体のシステム開発は、まず予算確保から始まります。年度予算の枠内での調達が原則であるため、翌年度に予算計上する場合は前年度の秋〜冬(9〜12月頃)に予算要求を行います。予算規模の見積もりが不明な場合は、事前に複数のベンダーに対して情報提供依頼(RFI:Request for Information)を実施し、概算費用と技術的実現可能性を確認することが有効です。RFIの回答をもとに、現実的な予算規模を把握した上で予算要求します。予算確保後は、調達計画を策定します。調達計画には、調達方式の選択(一般競争入札・指名競争入札・プロポーザル・随意契約)、スケジュール(公告日・提案締切日・審査日・契約締結日・開発開始日・本番稼働日)、評価体制(審査委員の構成)を含めます。大規模なシステム調達の場合、調達計画書を議会に提出し、議決を得ることが必要なケースもあります。

RFP(提案依頼書)・仕様書の作成

RFP・仕様書は、調達の核となる重要な文書です。記載内容が不明確だと、各社の提案内容がバラバラになり比較が困難になるため、できる限り具体的に要件を記載することが重要です。RFPに記載すべき主な項目として、調達の背景・目的・期待効果、業務要件(業務の概要・業務フロー・対象業務の件数・利用者数)、機能要件(必要な機能の一覧・優先度)、非機能要件(性能・可用性・セキュリティ・拡張性・移行性)、既存システムとの連携要件、データ移行要件、運用・保守要件、納入物一覧、スケジュール、提案に求める事項(提案書の構成・説明会の有無)、選定基準・評価点の配分、契約条件(支払い条件・再委託の可否)が挙げられます。RFP作成に不慣れな場合は、他自治体の調達事例を参考にするか、ITコーディネーターや外部専門家の支援を活用することが有効です。

発注先の種類と選び方(入札・随意契約・共同調達)

自治体向けシステム発注先の種類と選び方

自治体のシステム調達には複数の調達方式があります。契約金額・業務の緊急性・専門性などに応じて適切な方式を選択することが重要です。

一般競争入札・総合評価落札方式

一般競争入札は、公告により広く参加者を募り、価格競争によって最低価格の業者と契約する方式です。透明性・公平性が高く、地方自治法上の原則的な調達方式とされています。ただし、純粋な価格競争では技術力・実績が十分でない業者が落札するリスクがあるため、システム開発調達では「総合評価落札方式」が多く採用されています。総合評価落札方式では、技術提案点(実績・体制・セキュリティ対応・保守計画など)と価格点を一定の比率(例:技術60点:価格40点)で評価し、総合スコアが高い業者と契約します。プロポーザル方式(技術力や提案内容を重視した選定方式)も、特に複雑な要件のシステム開発では有効です。プロポーザルでは、プレゼンテーションや対話形式での審査を取り入れることで、提案内容の理解度を高めた上で選定できます。

随意契約・指名競争入札の活用条件

随意契約は、競争手続きを経ずに特定の業者と直接契約する方式です。地方自治法施行令には随意契約が認められる条件が定められており、主に「契約金額が少額の場合」(都道府県・市区町村ごとに金額基準が異なる)、「特殊な技術・設備が必要で競争に適さない場合」、「緊急に契約が必要な場合」などが該当します。既存システムの保守・運用契約(現行ベンダーとの継続)も、互換性・継続性の観点から随意契約が認められるケースが多いです。ただし、随意契約は透明性が低くなりやすいため、複数社から見積もりを徴収する「見積合わせ」を実施して競争原理を確保することが望ましいです。指名競争入札は、あらかじめ選定した複数の業者(一般的に3〜10社程度)に参加資格を与えて競争させる方式で、一般競争入札より手続きが簡略化できる利点があります。

共同調達・広域連携の活用

共同調達は、近隣自治体・同規模の自治体が共同でシステムを調達・利用する方式です。1自治体あたりの負担を大幅に削減できるため、予算規模の小さい町・村にとって特に有効な手段です。都道府県が主導して管内の市区町村のシステムを共同調達・共同利用するモデルも増えています。また、デジタル庁・総務省が推進する自治体情報システムの標準化・共通化も、広義の共同調達と捉えることができます。標準準拠のクラウドサービスを複数自治体が共同で利用することで、スケールメリットによるコスト削減と品質向上が期待できます。共同調達を検討する際は、参加自治体間の意思決定プロセス・費用按分方式・責任分担の明確化が重要です。都道府県の担当部署や地域の自治体情報セキュリティ支援・評価機関(J-LIS等)に相談することで、近隣自治体との共同調達の可能性を探ることができます。

発注時の注意点(仕様書作成・評価基準)

自治体向けシステム発注時の注意点

発注時の失敗を防ぐために、仕様書の品質・評価基準の設計・契約条件の確認において以下の点に注意することが重要です。

仕様書の品質と要件の明確化

仕様書の品質が低いと、提案内容がバラバラになり公平な比較ができなくなるほか、契約後の追加要件・仕様変更による費用増が発生しやすくなります。仕様書作成の際に特に注意すべき点として、まず「業務フローの明確化」があります。現行の業務フローを図解した上で、新システムでの業務フロー(To-Be)も可能な範囲で示すことで、提案会社との認識合わせが容易になります。次に「非機能要件の具体化」として、「セキュリティに配慮すること」ではなく「LGWAN接続対応・ISO27001取得・年1回の脆弱性診断の実施」など、具体的な要件として記載します。「データ移行要件の詳細記載」として、移行対象データの種類・件数・旧システムのデータ形式を仕様書に含めることで、データ移行費用の見積もり精度が上がります。また、「検収基準の明確化」として、どのような条件を満たした場合に検収完了とするかを事前に定めることが、検収時のトラブル防止になります。

評価基準の設計と公正な審査体制

提案評価では、価格以外の技術的な要素を適切に評価できる審査体制と評価基準の設計が重要です。評価基準の主な項目として、「実績・信頼性」(類似業務システムの開発実績・公共案件の実績・企業財務状況)、「技術力」(提案システムのアーキテクチャ・セキュリティ設計・自治体標準化対応の方針)、「プロジェクト体制」(担当チームの経験・PMの資格・下請けへの依存度)、「保守・サポート体制」(法改正対応の実績・ヘルプデスク体制・SLAの内容)、「価格の妥当性」(見積もりの根拠・追加費用発生リスクへの対応方針)が挙げられます。審査委員会には、情報政策課・業務担当課の職員に加え、外部のIT専門家(ITコーディネーター等)を加えることで、技術的な評価精度を高めることができます。

発注を成功させるポイント

自治体向けシステム発注を成功させるポイント

発注プロセスを成功させるためには、技術的な要件の精緻化だけでなく、組織内の体制整備と開発会社との良好なコミュニケーションが欠かせません。

調達前の情報収集と早期相談の重要性

調達を成功させるための最重要ポイントは、「十分な準備期間の確保」です。公告から契約締結まで最低2〜3ヶ月を要するため、開発着手の半年以上前から準備を開始することが理想的です。準備段階では、RFI(情報提供依頼)を活用して複数ベンダーから技術情報・概算費用を収集し、市場の動向と適正コストを把握します。また、他自治体の調達事例を参照することも有効です。総務省・デジタル庁のウェブサイトや、自治体情報セキュリティ支援・評価機関(J-LIS)が提供する情報を活用して、標準的な調達プロセスと評価基準を把握しておくことをお勧めします。RFP策定や評価基準の設計に不慣れな場合は、ITコーディネーターや自治体向けシステム開発に実績のある会社に事前相談することで、調達の精度を高めることができます。

契約書・SLAの重要ポイント

契約締結時には、開発契約と保守契約の内容を詳細に確認することが重要です。開発契約では、納入物の一覧・検収基準・著作権・ソースコードの帰属・再委託の可否・損害賠償規定を明確にします。特に著作権については、開発したシステムのソースコードの著作権が自治体に帰属するか、または開発会社に留保されるかを事前に確認・交渉することが重要です。保守契約では、SLA(サービスレベル合意)として障害発生時の対応時間(例:重大障害は2時間以内に初動対応)・定期メンテナンスの頻度・法改正対応の対象範囲と費用負担を明確に定めます。また、保守期間(一般的に5〜10年)とその後の移行支援の義務化も盛り込むことで、いわゆるベンダーロックイン(特定ベンダーへの過度な依存)のリスクを軽減することができます。

まとめ

自治体向けシステム開発の発注は、地方自治法に基づく公共調達ルールのもとで透明性・公平性を確保しながら進める必要があります。一般競争入札・随意契約・共同調達のそれぞれの特性を理解し、調達するシステムの規模・要件に合わせた最適な方式を選択することが重要です。発注を成功させるポイントは、十分な準備期間の確保・高品質なRFP・仕様書の作成・技術評価を重視した評価基準の設計・明確な契約・SLAの締結です。発注プロセスで迷った際は、実績ある専門家や開発会社に早期に相談することで、調達の質を高めることができます。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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