ITシステム原因調査の導入/開発事例や活用/成功事例について

ITシステムで障害や不具合が起きたとき、もっとも担当者を悩ませるのが「何が原因だったのか」を突き止める原因調査です。サービスが止まっている最中に、ログをたどり、再現条件を探り、関係部署へ状況を報告し続けるプレッシャーは相当なもので、原因調査の巧拙が復旧時間そのものを左右します。だからこそ、同じような障害を抱えた企業が実際にどう原因を特定し、どんな体制や仕組みで再発を防いだのかという具体的な事例が、自社の運用改善のヒントになります。

本記事は、ITシステムの原因調査に関する導入事例・開発事例・活用事例・成功事例を、発注企業(情報システム部門)の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。夜間障害の火消しから立て直した事例、ひとり情シスが原因調査を外部委託して属人化を解消した事例、ダウンタイムの機会損失を定量化して投資を正当化した事例、再発防止の仕組みづくりまで、リサーチで得た費用相場・SLA実値・損失統計とあわせて具体的に解説します。なお、原因調査の全体像をまだ把握していない方は、まずITシステム原因調査の完全ガイドから読むことをおすすめします。

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夜間障害の原因調査を立て直した事例

夜間障害の原因調査を立て直したITシステム事例のイメージ

原因調査の事例でもっとも切実なのが、深夜や早朝にシステムが停止し、限られた人手で原因を突き止めなければならない夜間障害です。担当者が一人で対応する状況では、ログを追いながら経営層に報告し、復旧を試みる作業が同時並行で押し寄せ、冷静な切り分けが難しくなります。この火消しのプロセスをどう立て直すかが、原因調査の成否を分けます。

復旧目標を決めずに調査が長時間化していたBefore

立て直し前の典型的な状態は、復旧目標時間を決めずに、ひたすら根本原因を探し続けてしまう調査です。原因が分からないまま時間だけが過ぎ、サービス停止が長引くことで損失が膨らみます。総務省の2025年版資料では、金融・医療・EC系で5分以上の停止1回あたり平均1,200万円の機会損失が生じるとされ、Gartnerの2024年調査でもダウンタイムは1分あたり5,600米ドルの損失と試算されています。原因究明を優先するあまり復旧が後回しになると、この損失が膨らみ続けるのです。

この企業では、夜間に発生したデータベースの応答遅延に対し、担当者が根本原因の特定にこだわるあまり、サービスを縮退させて先に止血する判断が遅れていました。結果として、本来であれば数十分で暫定復旧できたはずの障害が、数時間にわたってサービス全体を巻き込む事態に発展していたのです。原因調査と復旧は別の作業であり、まず止血してから腰を据えて原因を追うという順序が確立されていませんでした。

初動の役割分担と暫定復旧でMTTRを短縮したAfter

立て直しでは、まず初動の役割を「指揮役」「調査役」「報告役」に分け、一人がすべてを抱えない体制を整えました。指揮役が復旧目標時間を宣言し、調査役がログから原因の当たりをつけ、報告役が経営層と業務部門への状況連絡を担います。この役割分担により、調査に没頭しながら報告に追われる、という負荷の分散ができました。官公庁の仕様例でも「1時間以内に内容と予想作業時間を報告」「原則4時間以内に完全復旧」といった時間軸が定められており、初報と復旧目標を分けて管理する考え方は実務でも一般的です。

さらに、原因が完全に判明する前でも、サーバーの再起動や縮退運転といった暫定復旧を先行させるルールを定めました。根本原因の特定は復旧後に落ち着いて行い、その間もサービスは動かし続けるという発想です。この立て直しによって、平均復旧時間(MTTR)が大幅に短縮され、夜間障害でも一定時間内に止血できる体制が定着しました。原因調査を「止めずに行う」設計が、損失を最小化する鍵になったのです。

ひとり情シスが原因調査を委託した事例

ひとり情シスが原因調査を委託したITシステム事例のイメージ

中小企業に多いのが、情報システム担当が一人しかいない「ひとり情シス」体制です。この体制では、原因調査のノウハウがその一人に集中し、担当者が不在のときに障害が起きると誰も原因を追えない、という属人化リスクが常に付きまといます。この属人化を、外部委託によってどう解消したかが、この事例の主題です。

監視と原因調査を月額で外部に委ねたコスト設計

この企業では、24時間365日の死活監視と一次的な原因調査を外部に委ねることで、担当者一人の負担を軽減しました。費用の目安として、運用・監視(死活・リソース監視)は月5万〜20万円、障害対応は営業時間内なら月3万〜8万円、24時間の緊急対応を含めると月10万〜20万円が相場です。スポットでの障害対応であれば1件3万〜10万円という料金体系もあり、自社の障害頻度に応じて固定費と変動費を組み合わせられます。

具体的なサービス例では、監視のみで1台あたり月5,000円、障害対応込みで1台あたり月10,000円、フルマネージドで1台あたり月20,000円といった段階的な料金設定があります。ひとり情シスにとって重要なのは、自社の規模で「どこまでを外部に任せ、どこから自社で見るか」を切り分けることです。原因調査という難度の高い作業を月額の範囲に組み込めれば、担当者が休んでいる間も調査の手が止まらない安心感が得られます。

調査手順の文書化で属人化を解消した効果

外部委託の副次的な効果として大きかったのが、原因調査の手順が文書化されたことです。委託先と作業範囲を取り決める過程で、どのログをどの順に確認するか、どの閾値を超えたらエスカレーションするかといった調査フローが言語化されました。これまで担当者の頭の中だけにあった暗黙知が、誰でも追える手順書として残ったのです。

その結果、担当者が異動・退職しても原因調査が回り続ける体制になりました。属人化の解消は、単に人手を増やすことではなく、調査の型を組織の資産として残すことだと、この事例は示しています。riplaはフルスクラッチ受託と国内運用保守の立場から、システムを作った後も継続して伴走し、こうした調査手順の標準化と文書化を一緒に進めることを重視しています。ひとり情シスの不安は、人を増やすより仕組みを残すことで構造的に解消できるのです。

機会損失の定量化で投資を正当化した事例

機会損失の定量化で原因調査投資を正当化したITシステム事例のイメージ

原因調査の体制強化に予算を取るには、経営層を説得する数字が要ります。障害が減って当たり前と思われがちな運用投資は、効果が見えにくく稟議が通りにくいものです。この壁を、ダウンタイムの機会損失を定量化することで突破した事例を見ていきます。

停止回数とMTTRから損失額を試算した稟議

この企業は、過去1年間の障害について「停止回数」「1回あたりの平均復旧時間(MTTR)」「停止1分あたりの損失額」を洗い出しました。Gartnerの試算であるダウンタイム1分あたり5,600米ドルを参考に、自社の売上規模に合わせて分あたりの損失を見積もり、年間で被っていた機会損失を金額化したのです。漠然と「障害が多い」と訴えるのではなく、年間でいくら失っているかを数字で示したことが、経営層の判断を動かしました。

試算では、原因調査の体制を強化してMTTRを短縮すれば、同じ停止回数でも損失が比例して減ることを示しました。たとえば平均復旧時間を半減できれば、年間損失も理論上は半分になります。この「調査の速さが損失額に直結する」というロジックが、監視ツールの導入や外部委託費という投資を正当化する根拠になりました。原因調査への投資は、コストではなく損失を防ぐ保険だと位置づけ直したのです。

運用コストの業界指標と照らして妥当性を示した事例

投資額の妥当性を補強するために、この企業は業界の運用コスト指標も参照しました。JUASの「IT運用コストメトリックス調査2020」では、運用役務コストの中央値が従業員1人あたり年9万円、サーバー1台あたり年140万円とされています。自社の運用投資がこの相場の範囲に収まっているかを示すことで、過大でも過少でもない適正な投資であると経営層に納得してもらえました。

機会損失という「失っている金額」と、業界相場という「適正な水準」の両方を示すことで、原因調査への投資は感覚論から脱却します。この事例が教えるのは、運用投資を通すには定量化が不可欠であり、損失統計と業界指標という二つの一次データを組み合わせることが説得力を生むということです。数字で語れる情シスは、原因調査の予算を毎年安定して確保できるようになります。

再発防止の仕組みづくりで定着した事例

再発防止の仕組みづくりで原因調査が定着したITシステム事例のイメージ

原因調査の真価は、目の前の障害を収束させることだけでなく、同じ障害を二度と起こさない再発防止にあります。原因を特定しても、それが記録に残らず対策に結びつかなければ、同じトラブルが繰り返されます。調査結果を仕組みとして定着させた事例から、再発防止の型を学びます。

障害報告書とポストモーテムを習慣化した事例

この企業では、一定規模以上の障害について、原因・経緯・影響・恒久対策をまとめた障害報告書を必ず作成するルールを定めました。さらに、関係者が集まって「なぜ防げなかったか」を個人の責任追及ではなく仕組みの問題として振り返るポストモーテム(事後検証)を習慣化しました。原因調査の結論を、責める材料ではなく改善の材料として扱う文化が、再発防止の土台になります。

障害報告書には、暫定対策と恒久対策を分けて記載し、恒久対策には期限と担当を必ず付けました。これにより、調査で判明した根本原因が「分かったまま放置される」事態を防ぎます。報告書が蓄積されると、過去の類似障害を検索して調査の初動を早める知識ベースにもなり、調査そのものが年々速くなっていきました。

調査結果を監視設定に反映して検知を早めた事例

もう一つの工夫が、原因調査で判明した予兆を監視に組み込むことです。ある障害の原因がメモリ枯渇だと分かれば、その手前の使用率に閾値アラートを設定し、次回は障害になる前に気づけるようにします。OSSのZabbixやクラウド型のDatadog、Mackerelといった監視ツールに、調査で得た知見をフィードバックすることで、監視が事後対応から予兆検知へと進化していきました。

この「調査結果を監視に還元する」ループが回り始めると、障害の総数そのものが減っていきます。原因調査は単発の火消しではなく、監視・報告・対策をつなぐ継続的な改善サイクルの中核なのだと、この事例は示しています。調査して終わりにせず、次の検知に活かす仕組みを持つ企業こそが、障害に強いシステム運用を実現しているのです。

中小企業がAIOpsで調査を省力化した事例

中小企業がAIOpsで原因調査を省力化したITシステム事例のイメージ

大企業向けと思われがちなAIOps(AIによるIT運用)を、中小企業が身の丈に合った形で取り入れ、原因調査を省力化した事例もあります。限られた人手で増え続けるアラートをさばききれなくなった企業が、調査の入口を自動化することで、担当者を本来の判断業務に集中させた取り組みです。スモールスタートの設計が、無理のない導入の鍵になりました。

アラートのノイズ削減から始めた部分導入

この企業がまず手を付けたのは、大量に上がるアラートのノイズ削減でした。重要度の低い通知に埋もれて本当に危険な兆候を見逃す状態を、AIによる相関分析で似たアラートを束ね、優先すべきものだけを浮かび上がらせることで改善したのです。全システムを一気に対象とせず、最も障害の多い領域から部分的に導入したことで、投資を抑えつつ効果を確かめられました。JUASの調査でもAI活用は約78パーセントが検討中・未検討とされ、この段階的な始め方は多くの中小企業の現実に即しています。

ノイズが減ったことで、担当者は「どのアラートを調べるべきか」の判断に費やしていた時間を削減できました。調査の入口でふるい分けが自動化されると、人は本当に難しい原因の特定に集中できます。レガシーな監視をいきなり捨てるのではなく、既存の仕組みに自動化を一枚重ねる発想が、無理のない省力化を実現しました。

ROIを示しながら適用範囲を広げた進め方

この事例で示唆に富むのは、部分導入で得た効果を数字で示し、次の適用範囲拡大の予算を獲得していった進め方です。ノイズ削減で削れた調査時間を人件費に換算し、投資対効果を経営層に提示することで、段階的に対象システムを広げる合意を取り付けました。最初から全社導入を狙わず、小さな成功でROIを証明してから広げる堅実さが、AIOps導入の失敗を避ける要点です。

中小企業にとって、AIOpsは「大企業の高価な仕組み」ではなく、最も困っている調査の一部を肩代わりさせる現実的な道具です。riplaはフルスクラッチ受託と国内運用保守の立場から、レガシーを維持しつつ効果の大きい領域に自動化を部分導入する、身の丈に合ったロードマップづくりを支援しています。事例が教えるのは、原因調査の省力化はスモールスタートとROIの可視化から始まるということです。

まとめ

ITシステム原因調査事例のまとめイメージ

ITシステムの原因調査事例を振り返ると、成功の鍵は「復旧と調査を分け、初動の役割分担で止血を優先する」「属人化を仕組みの文書化で解消する」「機会損失を定量化して投資を正当化する」「調査結果を監視と対策に還元する」という四点に集約されます。夜間障害はMTTR短縮で損失を抑え、ひとり情シスは外部委託と手順書化で安心を得て、損失額の定量化が予算を動かし、障害報告書とポストモーテムが再発を防ぎます。ダウンタイム1分あたり5,600米ドル、5分以上の停止で1回あたり平均1,200万円という統計が、調査の速さがそのまま損失額を左右することを物語っています。

事例を読むときに大切なのは、「どんなツールを入れたか」より「どう調査の型を組織に残したか」という視点です。自社の障害履歴を棚卸しし、まずは復旧目標時間の宣言と障害報告書の習慣化という、明日から始められる一歩を踏み出してください。riplaはフルスクラッチ受託と国内運用保守を組み合わせ、システムを作った後も継続して伴走し、原因調査の標準化と再発防止の仕組みづくりを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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