ICTシステムの必要機能や標準機能の一覧について

ICTシステムを導入・刷新するとき、最初に整理しておきたいのが「ICTシステムが提供する機能には、どんな種類があり、自社にどれが必要なのか」という機能の全体像です。ICT(情報通信技術)システムと一口に言っても、その実体はクラウド基盤が提供する自動スケーリングや高可用性、開発・運用を支えるCI/CDや監視、システム同士をつなぐAPI Gateway連携まで、技術機能の集合体です。これらを「あれば便利」と「ないと業務が回らない」に切り分けられないまま要件を決めると、過剰な機能で予算が膨らんだり、逆に肝心の機能が抜け落ちたりします。

本記事は、ICTシステムが備えるべき必要機能・標準機能を「機能特化」で体系的に解説する記事です。クラウド基盤が提供する可用性・スケーラビリティ機能、サーバーレスとコンテナの実行基盤機能、API連携・データ統合の機能、そしてCI/CD・監視・IaCといった運用自動化の機能まで、ICTシステムを構成する技術機能を役割ごとに整理します。ICTシステム全体の進め方や費用感をまだ把握していない方は、まずICTシステムの完全ガイドを読んでから本記事の機能解説に入ると、各機能が全体のどこに位置づくかが掴みやすくなります。

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可用性・スケーラビリティを支える基盤機能

ICTシステムの可用性・スケーラビリティを支える基盤機能のイメージ

ICTシステムの基盤機能でまず押さえたいのが、止まらない・落ちないを支える可用性とスケーラビリティの機能です。オンプレミスのサーバーでは、機材を増設しなければ処理能力を上げられず、1台壊れればサービスが止まりました。クラウド基盤が提供する自動スケーリングと高可用性の機能は、この制約を構造的に解消します。

負荷に応じてサーバーを増減する自動スケーリング機能

自動スケーリングは、アクセスや処理負荷の増減に合わせて、サーバーの台数や能力を自動的に調整する機能です。キャンペーンや月末処理でアクセスが集中する時間帯だけサーバーを増やし、落ち着いたら減らすことで、ピークに耐えつつ無駄なコストを払わない運用ができます。オンプレでピークに合わせてサーバーを常備していた時代と比べ、平常時のインフラ費を大きく抑えられるのがこの機能の価値です。

自動スケーリングを最大限に活かす構成が、サーバーレスです。AWS LambdaやAPI Gatewayを使った構成では、リクエストが来たときだけ実行され、来なければコストが発生しません。料金体系を見ても、API呼び出しはAWS・Azureで月100万回まで無料、GCPは月200万回まで無料で、超過分も100万回あたり0.2〜0.4ドルと小さく抑えられています(出典:ripla)。負荷の波が大きい業務システムほど、自動スケーリングとサーバーレスの組み合わせが機能面でもコスト面でも効いてきます。

マルチAZ構成による高可用性・冗長化機能

高可用性を支えるのが、マルチAZ(アベイラビリティゾーン)構成です。これは、地理的に離れた複数のデータセンターにシステムを分散配置し、片方に障害が起きてももう片方で稼働を継続する冗長化の機能です。中規模以上の業務システムでは、EC2やRDSを各2台用意し、WAFとロードバランサーを組み合わせた高可用性構成が標準的で、構築相場は50万〜60万円が目安になります(出典:ripla)。

高可用性の機能は、どこまで冗長化するかでコストが変わるため、業務の停止許容度に応じて設計します。基幹に近い止められないシステムなら、より拡張した高可用性構成(EFSやElastiCacheの活用)で70万円以上、エンタープライズの基幹なら250万〜3,000万円以上に達します(出典:ripla)。逆に、止まっても短時間なら許容できる社内ツールであれば、シングル構成(EC2 1台+RDS 1台+Route53)で20万〜30万円に抑えられます。可用性機能は「全部を最高水準にする」のではなく、システムの重要度で段階を分けるのが定石です。

サーバーレス・コンテナの実行基盤機能

ICTシステムのサーバーレス・コンテナ実行基盤機能のイメージ

ICTシステムを「どこで動かすか」を担うのが、実行基盤の機能です。代表的な選択肢が、サーバーレスとコンテナの二つで、それぞれ得意とする領域が異なります。この実行基盤の選択が、システムの拡張性・運用負荷・コストを大きく左右するため、機能特性を理解しておくことが重要です。

サーバーレス(FaaS)が提供する実行機能

サーバーレスは、処理(関数)が呼ばれたときだけ実行環境が立ち上がり、終わると消える実行機能です。サーバーの起動・パッチ適用・スケーリングをすべて事業者側が管理するため、開発者はビジネスロジックの実装に集中できます。コンピューティング料金は100万GB秒あたりAWS 16.7ドル、Azure 16ドル、GCP 2.5ドルと小さく、アクセスがない時間帯はコストがほぼ発生しません(出典:ripla)。イベント駆動の処理や、波の大きいAPIに最適な実行基盤です。

この機能の真価は、運用工数の削減にあります。サーバーの面倒を見る必要がないため、少人数のチームでも本番システムを運用でき、人件費の比重が高いICTシステム開発(費用の約80%が人件費)において、運用フェーズの人的負担を構造的に減らせます(出典:ripla)。ただし、常時高負荷のワークロードや長時間の連続処理には不向きで、そうした領域は次のコンテナや仮想サーバーが担います。

コンテナが提供する可搬性・実行機能

コンテナは、アプリケーションと必要な実行環境を1つのパッケージにまとめて動かす機能です。ECS FargateやKubernetesといった基盤を使えば、コンテナの起動・配置・スケーリングを管理できます。コンテナの最大の価値は「可搬性(ポータビリティ)」で、開発環境・検証環境・本番環境のどこでも同じように動き、さらにクラウド事業者をまたいでも動かせます。これが、特定クラウドへの依存(ベンダーロックイン)を避ける機能としても効いてきます。

常時稼働するコアシステムや、状態を保持し続ける処理には、サーバーレスよりコンテナや仮想サーバーが適しています。仮想サーバーの料金は、Linux 2コア・約8GBの従量課金でAWS t3.largeが月78.3ドル、Azure B2msが79.6ドル、GCP n1-standard-2が62.3ドル。3年契約に切り替えると、AWS 40.4ドル、Azure(ハイブリッド特典)29.9ドル、GCP 40ドルと大きく下がります(出典:ripla)。常時稼働が前提のコア部分はコンテナや仮想サーバーで割安に確保し、波の大きい部分はサーバーレスに載せる。この使い分けが、ICTシステムの実行基盤設計の要諦です。

コンテナのもう一つの価値が、開発から本番までの一貫性です。同じコンテナイメージを開発・検証・本番のどの環境でも動かせるため、「開発環境では動いたのに本番で動かない」という典型的なトラブルを防げます。さらに、コンテナはマルチクラウド構成の前提にもなります。特定クラウド独自のサービスに依存せず、コンテナで可搬性を保っておけば、将来的にクラウドを乗り換える際の障壁を下げられます。実行基盤の機能を選ぶときは、目先のコストだけでなく、こうした可搬性・移植性まで含めて評価することが、長期的な自由度を確保する鍵になります。

API連携・データ統合の機能

ICTシステムのAPI連携・データ統合機能のイメージ

ICTシステムの価値は、単体で完結する機能よりも、複数のシステムをつないで業務全体を自動化する連携機能で大きく高まります。API Gatewayによる外部連携、SaaS同士の統合、データの集約といった機能が、部門をまたいだ業務の流れを滑らかにします。ここがICTシステムの「情報通信」を実装する中核部分です。

API Gateway連携で外部システムをつなぐ機能

API Gatewayは、外部からのリクエストを受け付け、認証・流量制御・ルーティングを行ったうえで、裏側の処理へつなぐ窓口の機能です。これを使うと、社内システムと外部SaaS、あるいは取引先システムとの間で、安全にデータをやり取りできます。Lambda・API Gateway・DynamoDBを組み合わせたサーバーレスAPI構成なら、アクセスが少〜中程度のうちは月数百円〜、無料枠内も多いという低コストで連携基盤を構築できます(出典:ripla)。

API連携機能の効果は、人手による二重入力の撲滅に直結します。あるシステムで入力したデータが、APIを介して別のシステムへ自動的に流れれば、転記作業とそれに伴うミスがまるごと消えます。連携をケチって手作業に頼った結果、1日100件超のデータ手入力で現場が疲弊した失敗事例もあり(出典:ripla)、API連携は「あれば便利」ではなく投資効果の高い必須機能だと位置づけられます。

AI APIで認識・分析を取り込む機能

近年のICTシステムでは、画像認識や音声認識といったAI機能を、自前で開発せずAI APIとして取り込む構成が一般的になっています。クラウド各社が提供する画像認識APIは、AWSが月5,000枚まで無料・超過1,000枚あたり1.3ドル、Azureが月5,000件まで無料・超過1,000件あたり1ドル、GCPが月1,000ユニットまで無料・超過1,000ユニットあたり1.5ドルと、小規模なら無料枠で試せます(出典:ripla)。検品の自動化や帳票の読み取りといった機能を、低コストで素早く組み込めます。

AI APIを使う機能設計の利点は、モデルの学習・運用を事業者に任せられる点にあります。自社でAIを内製するには高度な人材と継続的な運用が必要ですが、APIとして利用すれば、自社固有の業務ロジックの部分だけを開発に集中できます。差別化に直結しない汎用的な認識・分析機能はAI APIに任せ、自社の競争力になる処理だけを作り込む。この割り切りが、ICTシステムの機能を効率的に拡張する鍵になります。

データ統合の機能も、ICTシステムの「情報通信」を支える重要な役割を担います。複数のシステムやSaaSに散らばったデータを一か所に集約し、横断的に分析・活用できる状態にする機能です。受注・在庫・顧客といった部門ごとのデータが分断されたままでは、全社的な意思決定に活かせません。API連携でデータを集約する基盤を整えれば、レポートやダッシュボードを通じて経営判断に必要な数字をリアルタイムに把握できます。連携・統合の機能は、単なる業務自動化にとどまらず、データを経営資源として使える状態にする土台になるのです。

CI/CD・監視・IaCの運用自動化機能

ICTシステムのCI/CD・監視・IaC運用自動化機能のイメージ

ICTシステムは作って終わりではなく、継続的に改善し、安定して動かし続ける運用機能が伴って初めて価値を発揮します。CI/CDによるリリースの自動化、監視による異常の早期検知、IaCによる環境構築の自動化は、運用フェーズの品質と効率を支える機能群です。これらが整っているかどうかで、リリース速度と障害対応の質が大きく変わります。

CI/CDとIaCでリリース・構築を自動化する機能

CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)は、コードの変更を自動でテストし、本番環境へ安全に反映する機能です。GitHub Actionsなどのパイプラインを組めば、人手のリリース作業に伴うミスを減らし、改善のサイクルを高速化できます。CI/CDやコード管理、セキュリティスキャンを含むDevOps系SaaSの利用料は、月数万円程度が目安です(出典:ripla)。リリース頻度の高いICTシステムほど、この自動化機能の投資対効果が大きくなります。

これと対になるのが、IaC(Infrastructure as Code)です。サーバーやネットワークの構成をコードで記述し、ボタン一つで同じ環境を再現できる機能で、環境構築のばらつきや手作業ミスを排除します。IaCがあれば、検証環境と本番環境を同一構成で用意でき、災害時の復旧も迅速になります。CI/CDとIaCはセットで導入することで、リリースから環境構築までの一連の運用を自動化でき、少人数でも品質を保ったまま運用を回せるようになります。

これらの運用自動化機能は、ICT開発の費用構造とも深く結びついています。開発費の約80%は人件費で、運用フェーズでも保守運用に年で開発費の10〜20%が継続的にかかります(出典:ripla)。CI/CD・IaC・監視といった自動化機能を整えれば、リリースや環境構築、障害検知に割いていた人手を減らせるため、この人件費を構造的に圧縮できます。運用機能は「導入コスト」ではなく「人件費の削減装置」として捉えると、投資判断がしやすくなります。

監視・アラートで障害を早期検知する機能

監視機能は、システムの稼働状況・性能・エラーをリアルタイムで把握し、異常があれば自動で通知する機能です。代表的な監視ツールDatadogは、ホストあたり月15〜23ドルで利用でき(出典:ripla)、サーバーの負荷、API応答時間、エラー率などを一元的に可視化します。監視があることで、ユーザーから問い合わせが来る前に異常を検知し、障害が大きくなる前に手を打てます。

監視機能を整えるうえで大切なのは、ただアラートを出すだけでなく、何を異常とみなすかの基準(しきい値)を業務に合わせて設計することです。基準が緩すぎれば障害を見逃し、厳しすぎればアラートが鳴りすぎて誰も見なくなります。さらに、これらの運用機能を機能一覧として網羅したうえで、自社にとっての必須・優先・将来追加を切り分けることが重要です。どの機能を要件として盛り込むかは、自社の業務フローや運用体制に照らして判断すべきで、機能の検討は要件定義のプロセスと一体で進めるのが実務的です。

認証・アクセス制御などのセキュリティ機能

運用機能と並んで欠かせないのが、システムを守るセキュリティ機能です。誰がどのデータにアクセスできるかを制御するアクセス管理、本人確認を強化する多要素認証、通信やデータを暗号化する機能、不正アクセスを遮断するWAF(Webアプリケーションファイアウォール)といった機能群が、ICTシステムの安全性を担保します。中規模の高可用性構成では、WAFを組み込んだ構築相場が50万〜60万円と、セキュリティ機能は構成コストの一部としても織り込まれます(出典:ripla)。

セキュリティ機能を考えるうえで前提になるのが、クラウドの責任共有モデルです。クラウド事業者が基盤の安全を守る一方、その上に載せるデータ・アプリケーション・アクセス権限の保護は利用者側の責任になります。つまり、認証・アクセス制御・暗号化といった機能は、自社・開発会社が要件として設計・実装すべき範囲です。近年は、すべてのアクセスを都度検証する「ゼロトラスト」の考え方を機能として組み込むケースも増えており、社内ネットワークだから安全という前提を置かない設計が標準になりつつあります。

まとめ

ICTシステムの機能のまとめイメージ

ICTシステムが提供する機能は、可用性・スケーラビリティを支える基盤機能、サーバーレスとコンテナの実行基盤機能、API連携・データ統合の機能、CI/CD・監視・IaCの運用自動化機能の4層で整理すると漏れがありません。自動スケーリングとマルチAZで止まらない基盤をつくり、波の大きい処理はサーバーレス・常時稼働はコンテナで使い分け、API GatewayやAI APIでシステムをつなぎ、CI/CD・監視・IaCで運用を自動化する。これらの機能を、シングル構成20万〜30万円から高可用性構成50万〜60万円といった相場感とともに、自社の重要度に応じて段階的に選ぶことが要点です。

機能は網羅して終わりではなく、自社の業務にとって「ないと回らない必須機能」と「あれば便利な機能」を切り分けることが、予算を守りつつ効果を出す鍵になります。この切り分けは機能一覧を眺めるだけでは決まらず、自社の業務フロー・運用体制・停止許容度に照らして見極める必要があります。riplaはフルスクラッチ受託とクラウド構築・運用の伴走の立場から、機能の網羅的な洗い出しと、必須・優先・将来追加の三段階での取捨選択を支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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