GCP導入・構築の必要機能や標準機能の一覧について

GCP(Google Cloud Platform)の導入・構築を検討するうえで、担当者が押さえておきたいのが「GCPは実際にどんな機能を提供し、自社のシステムにどの機能が必要なのか」という全体像です。GCPには数百を超えるサービスが用意されていますが、はじめての導入で重要なのは個々のサービス名を暗記することではなく、自動スケーリング・高可用性・サーバーレス・データ分析・CI/CD・監視・IaCといった「機能の役割」を理解し、自社の要件にどれを組み合わせるかを判断できるようになることです。

本記事は、GCP導入・構築で押さえるべき必要機能・標準機能を、発注企業の視点から整理する「機能特化」の解説です。トラフィックに応じて自動で増減する自動スケーリングと高可用性、サーバーが要らないサーバーレス実行環境、BigQueryに代表されるデータ分析基盤、Cloud Buildによる継続的インテグレーション、Cloud MonitoringとIAMによる監視・権限管理まで、それぞれが「どんな役割を担い、どんな課題を解くのか」を具体的に解説します。なお、GCP導入・構築の全体像をまだ把握していない方は、まずGCP導入・構築の完全ガイドから読むことをおすすめします。本記事はその完全ガイドの「機能編」として、各機能の中身を一段深く掘り下げます。

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・GCP導入・構築の完全ガイド

自動スケーリングと高可用性を支える機能

GCPの自動スケーリングと高可用性を支える機能のイメージ

GCPの基盤機能としてまず押さえたいのが、負荷に応じてリソースを自動で増減させる自動スケーリングと、障害が起きてもサービスを止めない高可用性です。オンプレミスではアクセスのピークに合わせて常に余裕を持った台数のサーバーを構えておく必要がありましたが、GCPでは需要に追従してリソースを自動で調整できます。この機能こそが、過剰投資を避けつつサービス品質を保つというクラウドの中核的な価値を生み出しています。

マネージドインスタンスグループによる自動スケーリング

GCPで仮想サーバー(Compute Engine)を使う場合、複数のインスタンスをまとめて管理するマネージドインスタンスグループという仕組みで自動スケーリングを実現します。CPU使用率やリクエスト数といった指標に基づき、負荷が上がればインスタンスを自動で追加し、負荷が下がれば自動で減らします。これにより、平常時は最小限の台数で運用しコストを抑えつつ、ピーク時には自動でスケールアウトしてサービスの応答速度を維持できます。スケーリングの条件はしきい値で柔軟に設計できるため、自社のトラフィック特性に合わせた調整が可能です。

このスケーリング機能は、ロードバランサと組み合わせることで真価を発揮します。複数のインスタンスに負荷を分散しながら、ヘルスチェックで異常なインスタンスを検知して自動的に切り離し、新しいインスタンスを立ち上げます。利用者から見れば、裏でインスタンスが入れ替わっていてもサービスは途切れません。要件定義の段階で「平常時とピーク時のアクセス差はどの程度か」「どのくらいの応答速度を保証したいか」を明確にしておくと、スケーリングの設計指針が定まり、過不足のない構成にできます。

リージョン・ゾーン分散による高可用性

高可用性を実現する機能の核は、GCPの物理的に分離されたデータセンター群、すなわちリージョンとゾーンへの分散配置です。複数のゾーンにインスタンスやデータを分散させておけば、一つのゾーンで障害が起きても、別のゾーンで処理を継続できます。重要なシステムでは、さらに複数リージョンにまたがる構成にして、リージョン全体の障害にも耐えられるように設計します。可用性をどこまで高めるかは、求めるサービスレベル(SLA)とコストのバランスで決まります。

高可用性は、サーバーだけでなくデータベースやストレージにも適用が必要です。GCPのマネージドデータベースは、自動でレプリケーション(複製)やフェイルオーバー(障害時の自動切り替え)を行う機能を備えており、自前で複雑な冗長構成を組まなくても、設定だけで高い可用性を確保できます。可用性の設計でよくある失敗は、Webサーバーだけ冗長化してデータベースが単一障害点になっているケースです。システム全体でどこが止まると業務が止まるのかを洗い出し、ボトルネックを残さない設計が、真の高可用性につながります。

サーバー管理を不要にするサーバーレス機能

GCPのサーバー管理を不要にするサーバーレス機能のイメージ

GCPの大きな特徴が、サーバーの管理そのものを不要にするサーバーレス機能の充実です。Cloud RunやCloud Functionsを使えば、開発者はインフラの構築や運用を意識せず、アプリケーションのコードだけに集中できます。サーバーのOSアップデートやスケーリングの設定、障害時の復旧といった運用作業をGCPが肩代わりするため、少人数のチームでも本格的なサービスを運用できるようになります。

Cloud Runとコンテナによる柔軟な実行環境

Cloud Runは、コンテナ化したアプリケーションをサーバーレスで動かせるGCPの代表的な機能です。コンテナという形式でアプリを包むため、開発環境と本番環境の差異が小さく、特定のクラウドに縛られにくいポータビリティを備えています。リクエストが来たときだけ起動し、処理後はゼロまでスケールダウンするため、アクセスのない時間帯のコストが発生しません。料金面でも、GCPのサーバーレスは100万GB秒のコンピューティングが2.5ドルと、AWSの16.7ドルやAzureの16ドルに比べて際立って安く、軽量処理を大量にこなす用途でコスト優位性が際立ちます。

Cloud Runの利点は、コンテナを使うことで「サーバーレスの手軽さ」と「環境の自由度」を両立できる点にあります。任意の言語やフレームワーク、ミドルウェアをコンテナに含められるため、サーバーレスの制約に縛られすぎずに、柔軟なアプリケーションを動かせます。一方で、より複雑なコンテナオーケストレーションが必要な場合は、Kubernetesベースのマネージドサービス(GKE)が選択肢になります。要件の複雑さに応じて、Cloud RunとGKEを使い分けるのが定石です。

Cloud Functionsによるイベント駆動の自動処理

Cloud Functionsは、特定のイベントをきっかけに小さな処理を自動実行するサーバーレス機能です。ファイルがストレージにアップロードされた、データベースにレコードが追加された、HTTPリクエストが来た、といったイベントに反応して、あらかじめ書いておいた処理が走ります。GCPのサーバーレスはAPI呼び出しで月200万回まで無料、超過分は100万回あたり0.4ドルという料金で、AWSやAzureより無料枠が広いのが特徴です。定型的な自動処理を小さく積み上げる用途で、コストを抑えながら業務を効率化できます。

この機能が活きるのは、システム間の連携や、人手で行っていた定型作業の自動化です。たとえば、外部サービスからの通知を受けて社内システムに反映する、アップロードされた画像を自動でリサイズする、定期的にデータを集計してレポートを生成する、といった処理を、サーバーを立てずに実装できます。一つひとつは小さな機能でも、組み合わせることで業務全体の自動化につながります。サーバーレス機能は、大きなシステムを一度に作るのではなく、必要な処理を部品のように積み上げていく現代的な開発スタイルを支えています。

データ分析とAIを担う標準機能

GCPのデータ分析とAIを担う標準機能のイメージ

GCPが他のクラウドと比べて特に強みを持つのが、データ分析と機械学習の機能群です。Googleが自社の大規模サービスで培った技術を基盤としており、大量データの高速処理やAIの活用に長けています。単なるサーバーの置き場としてだけでなく、データを価値に変える基盤としてGCPを選ぶ企業が増えているのは、この機能群の充実が理由です。

BigQueryによるサーバーレスなデータ分析

BigQueryは、サーバーを用意せずに大量データを高速に分析できるデータウェアハウス機能です。テラバイト級のデータに対しても、SQLでクエリを書くだけで数秒から数十秒で結果が返るのが特徴で、事前にサーバーのスペックを見積もって構築する手間がありません。データの保存量と、クエリで処理したデータ量に応じた従量課金のため、使った分だけ支払う合理的なコスト構造になっています。社内に散在するデータを集約し、必要なときに必要な分析を行う基盤として、多くの企業で活用されています。

BigQueryの機能を活かすうえで重要なのは、データをどう取り込み、どう整理するかの設計です。各システムからのデータ連携の仕組み、テーブルの設計、アクセス権限の管理を適切に行うことで、分析基盤としての価値が高まります。可視化ツールと組み合わせれば、経営ダッシュボードや業務レポートの自動化も実現できます。データ基盤は構築すること自体が目的ではなく、意思決定や業務改善に使われて初めて投資効果が出る、という視点で機能を設計することが大切です。

すぐ使えるAI API機能

GCPは、自前で機械学習モデルを構築しなくても、すぐに使えるAI APIを多数提供しています。画像認識、音声認識、自然言語処理、翻訳といった機能を、APIを呼ぶだけで利用できます。画像認識APIは月1,000ユニットまで無料、超過分は1,000ユニットあたり1.5ドルという料金で、まず無料枠で効果を確かめてから本格利用へ進められます。専門のデータサイエンティストがいなくても、AIの恩恵を業務に取り込める点が、これらの標準機能の大きな価値です。

AI APIは、定型業務の自動化と相性がよい機能です。書類の文字を読み取る、画像を分類する、問い合わせ文を解析するといった処理を、人手からAPIに置き換えることで、処理量が増えても人員を増やさずに対応できます。重要なのは、AIに何を任せ、何を人が判断するかという業務設計です。AIは万能ではなく、誤りも生じるため、結果を人がチェックする仕組みや、誤りが許容される範囲を見極めたうえで導入することが、効果と品質を両立させる鍵になります。

マネージドデータベースによる運用負荷の軽減

データを扱う基盤として欠かせないのが、Cloud SQLなどのマネージドデータベース機能です。データベースは、バックアップ、冗長化、パッチ適用、性能監視といった運用作業が多く、自前で管理すると専門知識と工数が必要になります。マネージドデータベースは、これらの運用作業をGCPが肩代わりするため、開発者はアプリケーションのロジックに集中できます。OSSベースのデータベース(4コア/16GB相当)を従量で使う場合、GCPは月526ドルと、AWSの654ドルやAzureの794ドルに比べて抑えやすい水準が示されています。

マネージドデータベースを使う際の設計ポイントは、性能要件とコストのバランスです。常時高い性能が必要な基幹データベースは確約利用割引付きの構成にし、変動の大きいワークロードは従量課金で柔軟に運用する、といった使い分けが有効です。また、自動バックアップの保持期間や、障害時のフェイルオーバー構成をどこまで作り込むかは、データの重要度に応じて決めます。データベースはシステムの中核であり、ここの可用性と性能の設計が、システム全体の信頼性を左右します。

CI/CDと監視・権限管理の機能

GCPのCI/CDと監視・権限管理の機能のイメージ

システムを安定して開発・運用するために欠かせないのが、CI/CD(継続的インテグレーション・継続的デリバリー)と、監視・権限管理の機能です。アプリケーションを作って終わりではなく、安全に変更を反映し続け、稼働状況を把握し、適切な人だけがアクセスできる状態を保つ。これらの機能が、システムを長期にわたって健全に運用するための土台になります。

Cloud BuildによるCI/CDの自動化

Cloud Buildは、ソースコードのビルド、テスト、デプロイを自動化するGCPのCI/CD機能です。開発者がコードを変更してリポジトリに反映すると、自動でテストが走り、問題がなければ本番環境へ反映される、という一連の流れを自動化できます。これにより、手作業のデプロイで起きがちなミスを減らし、変更を素早く安全にリリースできるようになります。DevOps系のサービスは月数万円程度から利用できますが、Cloud BuildはGCPに統合されているため、追加の連携設定を最小限に抑えられるのが利点です。

CI/CDの機能を導入する効果は、リリースの頻度と品質の両面に現れます。自動テストで品質を担保しながら、小さな変更を頻繁にリリースできるようになるため、不具合の早期発見や、市場の変化への素早い対応が可能になります。逆に、CI/CDがないと、リリースのたびに手作業の確認とデプロイが必要になり、頻度が落ち、ミスのリスクも高まります。継続的に改善し続けるシステムにとって、CI/CDは欠かせない基盤機能です。

Cloud MonitoringとIAMによる監視・権限管理

システムの稼働状況を把握する監視機能として、GCPにはCloud MonitoringやCloud Loggingが標準で備わっています。CPU使用率やメモリ、リクエスト数、エラー率といった指標を可視化し、異常があればアラートで通知します。問題が発生してから気づくのではなく、兆候を早期に捉えて対処することで、サービスの安定稼働を保てます。監視の設計では、どの指標を、どのしきい値で、誰に通知するかを定義することが重要で、これが手薄だと障害の検知が遅れます。

セキュリティの土台となるのが、IAM(Identity and Access Management)による権限管理機能です。誰が、どのリソースに、何をできるかを細かく制御し、必要最小限の権限だけを付与する「最小権限の原則」を実現します。クラウドのセキュリティ事故の多くは、過剰な権限設定や、使われていないアカウントの放置から起きます。IAMで権限を適切に設計・管理し、定期的に棚卸しすることが、クラウドを安全に運用する前提条件です。役割(ロール)を単位に権限をまとめ、個人ではなくグループや役割に紐づけて管理すると、人事異動や組織変更にも追従しやすくなります。監視と権限管理は地味ですが、システムの信頼性とセキュリティを支える不可欠な機能だと言えます。これらを構築の初期から設計に織り込んでおくことで、後から権限の整理に追われる事態を避けられます。

まとめ

GCP導入・構築の機能まとめイメージ

GCP導入・構築で押さえるべき必要機能・標準機能を整理すると、自動スケーリングと高可用性が過剰投資を避けつつサービス品質を保つ土台となり、Cloud RunやCloud Functionsのサーバーレス機能がサーバー管理を不要にしてコストと運用負荷を下げます。BigQueryとAI APIはデータ分析と業務自動化という付加価値を生み、Cloud BuildのCI/CD、Cloud Monitoringの監視、IAMの権限管理が、システムを長期に安定運用するための基盤を担います。それぞれの機能は単独ではなく、組み合わせることで効果を最大化します。

機能を選ぶときに大切なのは、サービス名から入るのではなく、自社の要件を起点に「どの課題を、どの機能で解くか」を考えることです。求める可用性、想定するトラフィック、扱うデータ量、運用体制に応じて、必要な機能を過不足なく組み合わせれば、無駄のない構成が描けます。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、要件に即した機能選定とGCP構築を一貫して支援します。各機能の使いどころを全体像とあわせて確認したい方は、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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