Flutterの導入/開発事例や活用/成功事例について

Flutterでのアプリ開発を検討するとき、多くの担当者がまず知りたいのは「実際にどんな企業がFlutterを採用し、単一コードでiOSとAndroidの両方をどう開発し、どんな成果を出したのか」という具体的な事例ではないでしょうか。Flutterはクロスプラットフォームのフレームワークであり、Dart言語で書いた1つのコードからiOS・Android・Web・デスクトップ向けのアプリを生成できます。ただ、その特性が自社のサービスに本当に合うのかは、抽象的なメリット解説だけでは判断しきれません。だからこそ、メルカリやスシロー、ユニクロといった実在企業がFlutterをどう使いこなしたのか、あるいはネイティブからどう移行したのかという生の事例が、投資判断の精度を高めてくれます。

本記事は、Flutter開発の導入事例・開発事例・活用事例・成功事例を、発注企業の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。国内大手のFlutter採用アプリ、ING銀行がネイティブからFlutterへハイブリッド統合で移行した海外事例、競合となるReact NativeやKMP(Kotlin Multiplatform)との実装上の違い、さらにriplaがAI駆動開発で開発コストを約3分の1に圧縮した一次事例まで、具体的な数値とあわせて解説します。読み終えるころには、自社が「Flutterをどの領域に、どんな進め方で採用すべきか」のイメージが描けるはずです。なお、Flutter開発の全体像をまだ把握していない方は、まずFlutter開発の完全ガイドから読むことをおすすめします。

国内大手のFlutter採用事例と単一コードの効果

国内大手のFlutter採用事例を示すイメージ

Flutter採用を検討するとき、もっとも安心材料になるのが「自社と同等以上の規模・知名度の企業が、本番サービスでFlutterを使っている」という事実です。Flutterはクロスプラットフォームのフレームワークであり、Dart言語で書いた単一のコードベースからiOSとAndroidの両方のアプリを生成できます。これにより、従来はSwiftとKotlinで別々に開発していた工程を一本化でき、開発・保守コストを大きく圧縮できます。国内の採用事例は、この単一コード化の効果を裏づけています。

メルカリ・ユニクロ・スシローに見るBtoC採用事例

国内でFlutterを採用したアプリには、メルカリの新サービス「ハロ」、スシロー、じゃらん、マイナビ2025、ユニクロ、サイバーエージェントのWINTICKET、DeNAのVoice Pocochaなどがあります。いずれも数十万〜数百万ユーザー規模のBtoC領域で、UIの作り込みと安定運用が求められるサービスです。これらの企業がFlutterを選んだ背景には、iOSとAndroidで同じ画面・同じ操作感を、二重に作らずに提供したいという狙いがあります。Flutterは独自の描画エンジンで画面を描くため、OSごとの表示差が出にくく、ブランド体験を統一しやすいという特性があるのです。

事例から読み取るべきは、Flutterが「とりあえず安く作る」ためのツールではなく、ブランドの世界観を両OSで一貫して届けるための選択肢として採用されている点です。とくにキャンペーンや季節施策で画面を頻繁に更新するサービスでは、片方のOSだけ更新が遅れる事態を避けられる価値が大きくなります。自社がBtoCで、iOSとAndroidの両方に同等の体験を素早く届けたいなら、これらの採用事例は強い後押しになります。なお、どの機能がFlutterで実現できてどこにネイティブが必要かを見極めたい方は、あわせて『Flutterの必要機能や標準機能の一覧について』もご覧ください。

単一コードでiOS+Androidを同時開発したコスト効果

Flutter採用の経済的な効果は、単一コードによる開発・保守の一本化に集約されます。SwiftとKotlinで別々に開発する場合、画面の実装、バグ修正、機能追加のすべてを二重に行う必要があり、人件費もテスト工数も二倍に近づきます。Flutterなら、その大半を1つのコードベースに集約できるため、両OSを同時にリリースしやすく、改修時の作業量も抑えられます。言語別年収の参考値では、Kotlinエンジニアが約873万円、Swiftエンジニアが約868万円とほぼ同水準で、両方を別々に確保するより単一スキルへ集約する経済合理性が見えてきます(出典:2022年調査)。

ただし、単一コード化の効果は「両OSで同じ画面・同じ機能を出す」ケースで最大になります。OSごとに大きく異なる体験を作り込む場合や、後述するネイティブ依存機能が多い場合は、削減効果が目減りする点に注意が必要です。事例を自社に当てはめるときは、「両OSで共通化できる画面が全体の何割か」を見積もることが、コスト効果を正しく試算する第一歩になります。共通化率が高いサービスほど、Flutterの投資対効果は明確になります。

ネイティブからFlutterへ移行した事例の実像

ネイティブからFlutterへ移行した事例のイメージ

すでにネイティブで作ったアプリをFlutterへ移行したい、という相談は年々増えています。ここで参考になるのが、ING銀行の法人向けアプリ「InsideBusiness App」の移行事例です。月間4.2万人超が使う基幹的なアプリでありながら、ネイティブからFlutterへの移行を成功させています。重要なのは、その進め方が「全面移行」ではなく「ハイブリッド統合」だった点です。事例の本質は、何をFlutter化し、何をネイティブに残したかという線引きにあります。

ING銀行のハイブリッド統合移行という現実解

ING銀行の事例では、認証(mToken)などコアとなるセキュリティ機能はネイティブSDKを継続利用し、画面・UIの層をFlutterに置き換えるという統合方針を取りました(出典:学術ケーススタディ)。この割り切りによって、金融アプリに不可欠なセキュリティ要件の安定性を犠牲にせず、UI開発の生産性だけをFlutterで高めることに成功しています。一方で、アプリサイズはiOSで40.1MBから79MBへ、Androidで29.2MBから141MBへと肥大化しました。これはFlutterが自前の描画エンジンとランタイムを内包するためで、移行のトレードオフとして必ず織り込むべき数値です。

この事例が示す教訓は明快です。Flutter移行は「ゼロか百か」ではなく、要件の重要度に応じて段階的・部分的に進めるのが現実的だということです。とくに認証・決済・生体認証など、セキュリティや性能がシビアな機能は無理にFlutter化せず、Platform Channelを通じてネイティブのSDKと連携させる設計が安全です。自社が既存アプリをFlutter化したいなら、まず「絶対にネイティブに残すべき機能」をリストアップすることから始めるのが、ING事例から得られる実践的な出発点になります。

クロスプラットフォーム回帰の限界に直面した事例

事例は成功談だけを見ても片手落ちです。現場の開発者からは「クロスプラットフォームで限界にぶつかり、ネイティブへ回帰した」「ネイティブのエラーの方がデバッグしやすい」「大企業ではObjective-CやJavaが今も最強」という声も上がっています(出典:開発者コミュニティ)。これは、Flutterが万能ではなく、OSの最新機能への追従や複雑なネイティブ連携で壁に当たる場面があることを示しています。とくにOSのメジャーアップデート直後に新APIをいち早く使いたい場合、Flutter側の対応を待つ必要が生じることがあります。

こうした回帰事例から学べるのは、採用前に「自社のアプリが将来どこまでOS深部の機能を使う可能性があるか」を見極めることの重要性です。SNSやEC、予約のように標準的なUIと通信が中心のアプリならFlutterの適性は高い一方、OSの最先端機能やハードウェア制御を多用するアプリでは、ネイティブ回帰のリスクを事前に評価すべきです。失敗・課題の観点を深掘りしたい方は、『Flutter開発/導入の失敗/課題/注意点/リスクについて』もあわせてご覧ください。事例は「うまくいった話」と「引き返した話」をセットで読むことで、はじめて自社の判断材料になります。

React Native・KMPとの比較で見るFlutter採用事例

React NativeやKMPとFlutterを比較する事例のイメージ

Flutterを採用するかを決めるうえで、競合となるクロスプラットフォーム技術との比較事例は欠かせません。代表格はReact Nativeと、KMP(Kotlin Multiplatform)です。Flutterは独自描画エンジンで画面を直接描くのに対し、React NativeはOS標準のUI部品を呼び出し、KMPはロジック層だけを共通化してUIはネイティブで作る、という思想の違いがあります。この違いが、性能や採用判断にどう表れるかを事例で見ていきます。

描画性能でReact Nativeを上回った国内ベンチ事例

国内の検証では、1,000要素のリストをスクロールさせた際の描画性能で、Flutterが1フレームあたり2.1ms、React Nativeが3.8msという結果が報告されています(出典:オブライト)。同等のECアプリで比較したメモリ使用量も、Flutterが180MB、React Nativeが210MBと、Flutterのほうが軽い結果でした。Flutterが独自の描画エンジン(SkiaやImpeller)で画面を直接描くため、OS標準部品を介するReact Nativeよりも、複雑なリストやアニメーションで安定した滑らかさを出しやすいのです。この描画の一貫性こそ、前述の国内大手がFlutterを選んだ技術的な理由でもあります。

もっとも、性能差だけで選ぶのは早計です。採用難易度ではReact Nativeのほうがエンジニアを確保しやすく、Webエンジニアの知見を流用しやすいという利点があります。riplaの整理では、エンジニアの採用しやすさは「React Native > Swift/Kotlin > Flutter > KMP」の順とされ、2026年時点でもFlutterエンジニアの採用は容易ではありません。描画性能を取るならFlutter、採用のしやすさを取るならReact Native、という事例ごとの選択は、自社が内製化を目指すかどうかで答えが変わってきます。

BMWのKMP段階統合と棲み分けの事例

Flutterとよく比較されるもう一つの選択肢が、KMP(Kotlin Multiplatform)です。KMPはUIを共通化せず、ビジネスロジック層だけを共通化するアプローチで、UIはあくまでネイティブで作ります。BMWは車載システムで、全体工数の約20%にKMPを抑えながら段階的に統合する形で成功させました(出典:事例)。これは「UIの一貫性より、ネイティブの自由度と既存資産の活用を優先したい」場合にKMPが向くことを示す好例です。Flutterが画面ごと共通化するのに対し、KMPは部分共通化という棲み分けになります。

この対比から見えてくるのは、クロスプラットフォームといっても一括りにできないということです。両OSで同じUIを最速で出したいならFlutter、Webの知見を活かし採用も重視するならReact Native、ネイティブUIの自由度を保ちつつロジックだけ共通化したいならKMP、という具合に事例ごとに最適解は異なります。Flutterの事例を読むときは「なぜ他のクロスプラットフォームではなくFlutterだったのか」という選定理由まで掘り下げると、自社の判断軸が明確になります。

AI駆動開発でFlutter案件のコストを圧縮した事例

AI駆動開発でFlutter案件のコストを圧縮した事例のイメージ

Flutterの単一コード化が効くのは「実装量の削減」ですが、近年はそこにAI駆動開発を掛け合わせることで、さらに大きなコスト圧縮を実現する事例が出てきています。Flutterはコード量が比較的コンパクトで、ホットリロードによる即時確認がしやすいため、AIによるコード自動生成と相性が良いという特性があります。ここでは、riplaに近い立場の一次事例を紹介します。

市場相場700〜1,500万円を約500万円に圧縮した事例

ある一次事例では、市場相場で700〜1,500万円(13〜18人月)とされる規模のアプリ開発案件を、Claude CodeなどのAIコード自動生成と、「フリーランス+小規模専門会社」への分割発注を組み合わせることで、実質8人月・約500万円にまで圧縮しました(出典:ぷらすわん合同会社)。発注先別の人月単価は、フリーランスが60〜80万円、中小開発会社が80〜120万円、大手SIerが150〜300万円とされ、この価格差は中間マージンや多重下請けの保険料に由来します。AI活用と発注設計の工夫で、この構造的なコストを大きく削れたことが事例の核心です。

この事例が示すのは、Flutterの採用効果は「単一コード化」だけで完結しないということです。誰に、どう発注し、どこにAIを使うかという開発体制の設計までセットで考えてはじめて、コスト最適化が実現します。とくに会員登録・ログイン(30〜80万円)や決済(80〜200万円)といった機能別の費用相場を把握したうえで、共通化できる部分をAIで効率化する発想が有効です。Flutter事例を費用面で読むときは、技術選定と発注設計の両輪で捉えることをおすすめします。

BtoB・BtoC・SaaS別の採用判断を分けた事例

Flutterの採用判断は、ビジネスモデルによっても変わります。BtoCのSNSやEC、予約アプリのように、両OSで同じ体験を素早く広く届けたいサービスは、Flutterの単一コード化の恩恵を最大限に受けられます。一方、BtoBの業務アプリでは、利用端末がAndroidに偏る現場(物流・製造の業務端末など)も多く、まずAndroid先行で作り、効果を検証してから対応を広げるという段階的な進め方が現実的です。SaaSの管理画面のように頻繁な機能追加が前提のサービスでは、ホットリロードによる高速な改善サイクルがFlutterの強みになります。

事例を横断すると、Flutterが向くのは「両OSで共通体験を出したい」「画面の更新頻度が高い」「描画の一貫性を重視する」サービスだと整理できます。逆に、OS深部の機能やハードウェア制御を多用するアプリ、極限の起動速度やアプリ容量が要求されるアプリでは、ネイティブとの併用や見送りも選択肢になります。自社のサービスがBtoB・BtoC・SaaSのどれに当たり、どの特性を重視するかを言語化することが、事例を自社の意思決定に翻訳する近道です。

まとめ

Flutter事例のまとめイメージ

Flutterの導入事例・活用事例を振り返ると、成功の鍵は「単一のDartコードでiOSとAndroidを同時開発するクロスプラットフォームの強みを活かしつつ、シビアな機能はネイティブに残すハイブリッドの割り切り」に集約されます。メルカリ「ハロ」やユニクロ、スシローなど国内大手の採用はFlutterの本番品質を裏づけ、ING銀行はUIだけをFlutter化することで月間4.2万人超の銀行アプリの移行を成功させました。一方、描画性能ではReact Nativeを上回る国内ベンチがある反面、採用難易度はFlutterのほうが高く、ネイティブ回帰の声もあります。事例は成功と引き返しをセットで読むことが重要です。

事例を自社に翻訳するときは、「両OSで何割を共通化できるか」「どの機能をネイティブに残すか」「Flutterエンジニアをどう確保・維持するか」という三点を必ず検討してください。さらに、AI駆動開発や分割発注を組み合わせれば、市場相場の案件を約3分の1に圧縮した事例のように、コストも大きく最適化できます。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、形態と言語を要件から逆算した設計と、現場に定着するアプリづくりを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

ブログ|株式会社riplaをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む