契約管理システムの開発外注は、適切な準備と手順を踏まなければ、「電子帳簿保存法の保存要件を満たさないシステムが納品された」「承認ワークフローが業務実態と合わなかった」「電子署名の法的有効性に問題があった」といった深刻なトラブルに陥るリスクがあります。契約管理システムは法的有効性に関わる機能を含み、電子署名法・e-文書法・電子帳簿保存法・インボイス制度への対応が必須となるため、発注側の事前準備と発注後のプロジェクト管理が成否を大きく左右します。
本記事では、契約管理システム開発の発注前の準備事項から、RFPの書き方・開発中の進捗管理・リリース後の定着支援まで、一連のプロセスを実務に即して解説します。初めて契約管理システムを外注する方にも、過去に苦労した経験がある方にも役立つ情報をまとめました。
本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。
▼全体ガイドの記事
・契約管理システム開発の完全ガイド
契約管理システム開発を外注する前に知っておくべきこと

契約管理システムの外注を成功させるためには、「発注する前に何をどこまで準備すべきか」を正確に理解することが最初のステップです。特に契約管理システムは法的要件への対応が不可欠であり、発注側が法務・業務・ITの各側面から準備を整えておくことが重要です。
外注で失敗する典型的なパターン
契約管理システムの外注でよく見られる失敗パターンを把握しておくことで、同じ轍を踏まずに済みます。最も多い失敗は「電子帳簿保存法の保存要件を要件定義に含めなかった」ケースです。電子取引で授受した契約書の電子保存が義務化されているにもかかわらず、法令要件をシステム要件に落とし込まずに開発を進めてしまい、リリース後に「保存要件を満たしていない」と判明するケースが発生しています。次に多いのが「承認ワークフローの例外処理を定義していなかった」問題です。現場で頻繁に発生するイレギュラーケース(緊急契約・代理承認・条件付き承認等)が設計に含まれておらず、リリース後に現場から大量の改修要求が発生します。また、「法務部門が要件定義に参加しないまま開発が進んだ」結果、電子署名の法的効力や契約書の原本性確保に問題のある設計になるケースも見られます。これらはいずれも、発注前の準備と体制設計によって防ぐことができます。
発注前に社内で整理すべき事項
発注前に社内で整理すべき事項として、①開発の目的・解決したい課題の明文化(「何のためにシステムを作るか」を経営層・法務・現場が合意できているか)、②管理対象の契約書の種別・件数・現在の保管方法の棚卸し(紙と電子の比率・保存場所・管理責任者の確認)、③法的要件の整理(電子帳簿保存法の保存要件・電子署名法への対応方針・インボイス制度対応要件)、④プロジェクトの推進体制(プロジェクトオーナー・プロジェクトマネージャー・法務担当キーパーソン・各部門のキーユーザーの選定)、⑤予算と期限の確認(上限予算・希望リリース時期)、⑥既存システムの棚卸し(ERP・CRM・SFA・稟議システム等の連携候補の確認)が挙げられます。特に③の法的要件の整理は、法務担当者が主導して行うことが重要です。
発注の準備から契約までの手順

発注の準備として最も重要なのが「業務フローの整理」「法的要件の明文化」「RFPの作成」です。この3つを丁寧に行うことで、開発会社から的確な提案と精度の高い見積もりを受けることができます。契約管理システムの場合、業務フロー整理と並行して「法務部門が求める法的要件の整理」を行うことが他の業務システム開発と異なる重要なポイントです。
契約業務フローの整理と可視化
契約業務フローの整理は、現在の契約管理業務がどのような手順で行われているかをフロー図として可視化する作業です。契約書の種別ごとに「起案→法務審査→稟議→相手先との交渉・修正→電子署名または記名押印→保管→更新・終了」という一連のプロセスを「誰が」「何を」「どのツール・帳票を使って」行っているかを明記します。特に承認ワークフローの分岐条件(契約金額・種別・相手先による承認ルートの違い)・例外処理(緊急対応・暫定合意・条件付き締結)・差し戻し・再申請フローを網羅的に整理することが重要です。また、現在の課題(期限管理の漏れ・承認の遅延・契約書の検索困難・版管理の混乱等)とその原因も同時に整理しておくことで、システムで解決すべき課題が明確になります。この業務フロー整理を通じて、「電子化できる部分と当面は紙での対応が必要な部分」の仕分けも行っておくことをおすすめします。
開発会社の選定と相見積もりの取り方
開発会社の選定は、RFPを3社以上に送付して相見積もりを取るアプローチが基本です。契約管理システムの場合、技術力だけでなく「電子署名法・電子帳簿保存法への対応知識」「承認ワークフロー系システムの開発実績」「法務部門とのコミュニケーション経験」を評価軸として加えることが重要です。提案書の評価では、電子帳簿保存法の保存要件をどのような方法で実装するか・電子署名サービスとの連携方式の妥当性・承認ワークフローの複雑な分岐への対応策が具体的に示されているかを重点的に確認してください。費用の比較では、法改正対応・データ移行・電子署名連携が見積もりに含まれているかを必ず確認します。これらが除外されている最安値の提案は、後から追加費用が発生する「落とし穴見積もり」である可能性があります。
契約形態(請負・準委任)の選び方
開発の契約形態は「請負契約」と「準委任契約」の2種類が主流です。請負契約は成果物(完成したシステム)の納品に対して報酬を支払う形態で、要件が固まっている場合に適しています。準委任契約は工数(時間・人月)に対して報酬を支払う形態で、要件が流動的な場合やアジャイル開発を採用する場合に適しています。契約管理システム開発では「要件定義・法的要件整理フェーズは準委任契約、設計・開発・テストフェーズは請負契約」というフェーズ別の契約分割も一般的です。法的要件の整理は開発着手前に完全に確定することが難しい場合もあるため、要件定義フェーズのみ準委任で進めて要件を固めてから本開発を請負で発注するアプローチは、要件の明確化とリスク管理の両面で有効です。
RFP(提案依頼書)の書き方と注意点

RFP(提案依頼書)は、開発会社に正確な提案と見積もりを求めるための重要なドキュメントです。契約管理システムのRFPには、一般的な業務システムのRFPに加えて法的要件に関する情報を具体的に記載することが重要です。
RFPに含めるべき主な項目
契約管理システムのRFPに含めるべき主な項目は以下の通りです。①プロジェクトの背景と目的(現状の課題と開発によって実現したいこと)。②管理対象の契約書情報(種別・年間件数・現在の保管方法・紙と電子の比率)。③主要機能の概要(ライフサイクル管理・承認ワークフロー・電子署名連携・全文検索・版管理・期限アラート・アクセス権限管理・外部システム連携等)。④法的要件(電子帳簿保存法への対応方針・電子署名の法的有効性確保の要件・インボイス制度対応の要否)。⑤クラウド型 vs オンプレミス型の方針・セキュリティ要件(情報セキュリティポリシーの概要)。⑥ユーザー数と対象部門・利用デバイス(PC/モバイル対応の要否)。⑦既存システムとの連携要件(連携先システム名・連携の概要)。⑧希望スケジュールと予算感。⑨提案に含めてほしい内容(法的要件への対応方針・電子署名サービスの選定提案・費用内訳・体制・実績)と提出期限。法的要件については「提案書の中で具体的な対応方針を明示してください」と明記することで、開発会社の専門性を確認できます。
RFP作成上の注意点
RFP作成上の注意点として、「解決したい課題と業務範囲は具体的に記載しつつ、実現手段(電子署名サービスの選定や技術アーキテクチャ等)はある程度開発会社に委ねる」バランスが重要です。特定の電子署名サービスや技術を指定しすぎると、開発会社の最適な提案を制限してしまう場合があります。一方、「電子帳簿保存法に準拠したシステムにすること」「電子署名の法的有効性を確保すること」といった要件は明確に記載することが必要です。また、「現状の承認フローをそのままシステム化してください」という指定は、既述の通り複雑なワークフローによるコスト増の原因になるため、「現状フローの整理・最適化も提案に含めてください」という記述を加えることをおすすめします。RFP作成自体に困難を感じる場合は、riplaのような上流工程から支援できる会社に相談することも有効な選択肢です。
開発中の進捗管理と品質確保

発注・契約が完了してプロジェクトがスタートした後も、発注側の関与は重要です。特に契約管理システムは法的有効性に関わる機能を含むため、開発の各マイルストーンで「法的要件への対応状況」を確認する体制を設けることが重要です。
プロジェクト管理体制の構築
プロジェクト管理体制として、発注側には「プロジェクトオーナー(経営層)」「プロジェクトマネージャー(IT部門または業務部門リーダー)」「法務キーパーソン(法的要件の判断・確認担当)」「各部門キーユーザー(現場担当者代表)」の体制を整えることをおすすめします。開発側との定例ミーティング(週次・隔週)を設定し、進捗報告・課題共有・意思決定を定期的に行う仕組みを作ります。特に「電子帳簿保存法の対応方針の確認」「電子署名サービスとの連携方式の承認」「承認ワークフローの分岐条件の最終確認」など、法的・業務的判断が必要なポイントでは法務担当者を必ず参加させることが重要です。また、仕様変更が発生した場合は変更管理プロセスを経ることで、法令対応の漏れや追加費用の発生を防ぐことができます。
テスト・品質管理のポイント
契約管理システムのテストは開発会社任せにせず、発注側も積極的に関与することが重要です。特に「ユーザー受け入れテスト(UAT)」は、実際の業務シナリオを使って法務・調達・営業担当者がシステムの動作を確認する工程で、発注側が主体的に実施すべきテストです。UATで確認すべき点として、①全ての契約種別・金額帯における承認ワークフローの正常動作(メインフロー・差し戻し・代理承認等)、②電子帳簿保存法の保存要件への準拠(タイムスタンプまたは電子署名の付与・検索機能の動作確認)、③電子署名の送信・受信フローの動作確認(取引先へのリンク送信・署名完了通知)、④期限アラートの通知タイミングと通知先の動作確認、⑤アクセス権限設定の動作確認(閲覧・編集・承認権限の部門別・役職別制御)、⑥全文検索の精度と速度の確認などが挙げられます。テスト前にシナリオ・チェックシートを法務担当者と共同で作成しておくことで、テストの品質が向上します。
リリース後の定着支援と運用体制

契約管理システムは「リリースがゴール」ではなく、「現場に根付いて日常的に活用されることがゴール」です。リリース後の定着支援と継続的な運用体制の構築が、長期的なシステム価値を決定します。
リリース後の定着支援施策
契約管理システムのリリース後定着支援として、まず社内への周知とトレーニングが重要です。法務・調達・営業・管理部門など利用部門ごとに操作マニュアルを整備し、役割に応じた操作手順(承認者向け・起案者向け・閲覧者向け等)を分かりやすく説明した資料を用意します。集合研修と個別フォローを組み合わせた操作トレーニングを実施し、特に電子署名の送受信フロー・承認ワークフローの操作・全文検索の活用方法については丁寧に説明することが定着の鍵です。取引先への電子署名依頼については、取引先向けの案内文・操作ガイドを準備して展開することで、スムーズな電子化移行を促進できます。リリース直後の1〜2ヶ月はヘルプデスクを設置して問い合わせに迅速に対応し、リリース後3ヶ月時点で利用状況をモニタリングして定着の課題を把握・対処することが重要です。
継続的な運用体制と法改正対応
契約管理システムの運用体制として、社内の管理者(システム管理者・法務担当者)が担うべき役割を明確にすることが重要です。ユーザーアカウントの管理(採用・退職時のアクセス権限の追加・削除)・承認ワークフローの設定変更(組織改編時の承認者変更)・契約書テンプレートの更新・期限アラート設定の見直しなど、日常的な管理業務を社内で担える体制を整えます。特に重要なのが「法改正対応体制」です。電子帳簿保存法・インボイス制度・個人情報保護法など、契約管理システムに影響する法改正は今後も継続的に発生することが見込まれます。法改正の情報収集を担当する法務担当者と、システム改修を担当する開発会社(またはIT部門)の連携体制を構築し、法改正発生時に迅速に対応できる仕組みを整えておくことが長期的な運用の安定につながります。riplaはリリース後の定着支援・改善サポート・法改正対応まで一気通貫で提供しています。
契約管理システム開発のご相談はriplaへ
契約管理システム開発の進め方・費用・発注方法についてお困りの際は、riplaにお気軽にご相談ください。コンサルティングから開発まで一気通貫でご支援します。
株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
