予実管理システムとは?|考え方/特徴/仕組み/目的を解説

予算は年度初めに部門ごとへ配分したものの、月次の実績が出るたびに計画とのずれの原因を特定するのに時間がかかり、経営会議向けの差異分析資料づくりが締め日直前の恒例行事になっている企業は少なくありません。共通費の配賦基準が部門によって解釈が異なっていたり、着地見込みの更新が現場任せで精度が安定しなかったりすると、資料の完成そのものが目的化しがちです。全部門・全勘定科目を対象に、予算編成から配賦、実績との差異分析、期中の見込み更新までを一つの流れで管理する仕組みが、予実管理システムです。

本記事では、予実管理システムの基本的な考え方と特徴、予算編成から見込み更新までの仕組み、主要機能、導入目的、経営管理システムや売上管理システムなど関連システムとの違いを順に解説します。予実管理システムという言葉を初めて聞いた担当者の方でも、自社の予算管理業務のどこに当てはめて考えればよいかを判断できるよう、実際の業務フローに沿って整理します。

本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。

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・予実管理システム開発の完全ガイド

予実管理システムとは何か?全体像と特徴

予実管理システムの全体像を確認する担当者

予実管理システムは、予算(Budget)と実績(Actual)の対比・分析を行う仕組みという意味で、業界内では単に「予実」と略して呼ばれることもあります。単に予算表と実績表を並べるだけではなく、部門別・勘定科目別に編成した予算を配賦し、実績データと突き合わせて差異の要因を追跡し、期中の見込みを更新し続ける点が特徴です。

管理対象は予算表そのものではなく編成から見込みまでの工程です

予実管理システムが扱うのは、確定した予算の金額だけではありません。部門ごとの積み上げ予算、本社費や共通費の配賦ロジック、実績データとの突合結果、差異の要因コメント、四半期・月次で更新するローリングフォーキャストまでが管理対象です。これらを勘定科目や部門にひも付けることで、「どの部門の、どの科目が、なぜ計画からずれているか」を関係者が同じ数値から確認できます。

たとえば、経理部門がExcelで予算を管理し、各事業部が独自のフォーマットで見込みを作成していると、集計のたびに数式の突き合わせや転記ミスの確認に時間がかかります。予実管理システムでは編成から差異分析までを一つのデータ基盤でつなぐため、集計作業そのものよりも、差異の要因を読み解く分析に時間を使えるようになります。

経営企画・事業部・経理をまたぐ共通ワークフローを提供します

予実管理には、経営企画、各事業部の予算責任者、経理部門など複数の関係者が関わります。予実管理システムは、それぞれの担当者に応じた入力・承認・差し戻しのワークフローを共通化し、事業部は自部門の予算入力状況を確認でき、経営企画は全社の進捗を横断的に把握でき、経理は実績データとの整合を確認できます。

ただし、システムを導入しただけで運用が自然にそろうわけではありません。「積み上げの予算をいつまでに事業部が入力するか」「共通費をどの基準で配賦するか」「見込みを誰がいつ更新するか」といった運用ルールを決め、それをワークフローに反映する必要があります。予実管理システムは正しい運用を支える基盤であり、社内の合意形成そのものの代わりにはなりません。

予実管理システムの仕組みと業務フロー

予算編成から見込み更新までの業務フロー

一般的な予実管理システムでは、予算編成、配賦、実績データの取込、差異分析、ローリングフォーキャストという順にデータを引き継ぎます。前工程で確定した数値を次工程がそのまま利用するため、同じ数値の転記や突き合わせの往復を減らせます。

積み上げとトップダウンで編成した予算を配賦します

最初に、各事業部が積み上げた予算と、経営層が示すトップダウンの目標値をすり合わせ、部門別・勘定科目別の予算を確定します。人件費や地代家賃、システム利用料などの共通費・本社費は、売上比や人員比といった基準で各部門へ配賦し、部門ごとの負担額を明確にします。

配賦基準は一度決めたら固定というわけではありません。組織改編や決算期の変更があると、部門階層や配賦基準そのものを見直す必要が生じます。予実管理システムで配賦ロジックを一元管理していれば、基準変更時の再計算や影響範囲の確認がしやすくなります。

実績データとの突合と差異分析をドリルダウンで進めます

会計システムや販売管理システムから実績データを取り込み、確定した予算と自動的に突き合わせます。全社の差異が見えたら、事業部別、勘定科目別、さらに取引単位までドリルダウンし、差異の要因が数量なのか単価なのか、一時的な支出なのかを特定します。

ここで重要なのは、実績データの連携が手作業の転記に依存していないかという点です。基幹システムとの連携が整っていないと、差異分析に着手する前に「実績データそのものが正しいか」の確認作業が発生し、分析にたどり着くまでの時間が長引きます。

月次・四半期のローリングフォーキャストで見込みを更新します

期中の実績を反映しながら、年度末の着地見込みを月次または四半期ごとに更新する運用をローリングフォーキャストと呼びます。予実管理システムでは、最新の実績と残り期間の前提を入力すると着地見込みが更新され、複数シナリオを比較できる場合もあります。

フォーキャストの更新頻度を四半期から月次、さらに週次へ短縮する企業も増えていますが、更新頻度を上げるほど入力ワークフローの負荷も増えます。自社の意思決定サイクルに対して、どこまでの頻度が本当に必要かを見極めることが大切です。

予実管理システムの主要機能

予実管理システムの主要機能を確認する画面

予実管理システムの機能は製品によって異なりますが、大きく分けると、予算編成・入力管理、配賦計算、実績連携・差異分析、ローリングフォーキャスト、レポーティングがあります。自社に必要な機能は、現在の予算管理業務でどこに手作業や属人化が残っているかから考えると整理しやすくなります。

予算編成・入力と配賦計算の機能を確認します

予算編成機能では、部門別・勘定科目別の入力フォーム、積み上げとトップダウンの数値をすり合わせる調整画面、承認ワークフローなどを備えます。配賦計算機能では、売上比・人員比・面積比といった複数の配賦基準を設定でき、基準変更時には影響を受ける部門の金額を自動的に再計算します。

権限管理も欠かせない機能です。部門の予算額や配賦基準は、閲覧できる範囲を役職や部門に応じて分ける必要があります。誰がいつ数値を変更したかの履歴を残せれば、予算編成後の修正や決裁の経緯を監査時にたどれます。

実績連携と差異分析・レポーティング機能を確認します

実績連携機能では、会計システムや販売管理システム、ERPなどとのAPIまたはCSV連携により、実績データを予算と同じ粒度で取り込みます。差異分析機能では、全社から部門・勘定科目、場合によっては取引単位までのドリルダウン表示や、差異要因を記録するコメント機能を備える製品もあります。

レポーティング機能では、経営会議向けのサマリー画面や、部門別の詳細レポートをボタン一つで出力できるかが実務上のポイントになります。BIツールへのデータ連携に対応する製品もありますが、連携できる項目や更新頻度は製品ごとに異なるため、自社が必要とする粒度まで確認することが大切です。

導入目的と期待できる効果

予実管理システム導入の目的を整理する会議

予実管理システムの導入目的は、集計作業の時短だけではありません。予算編成から差異分析までの数値の一貫性を保ち、経営層が早い段階で計画からのずれに気づき、対策を打てる状態を作ることにあります。

月次・四半期の締め作業とレポート作成の負荷を減らします

Excelや部門別のフォーマットに数値が分かれていると、経理・経営企画の担当者は、各部門から届く予算・実績データを毎月集計し、数式の誤りや転記ミスを確認する作業を繰り返します。予実管理システムで編成から差異分析までのデータがつながれば、集計そのものにかかる時間を減らし、差異の要因分析やレポート作成に充てる時間を確保しやすくなります。

ある企業の事例では、部門別の予算・実績突合にかかっていた作業を、予実管理システムの導入によって効率化したという報告もあります。ただし、これは特定企業の事例であり、同じ効果を保証するものではありません。自社では、月次締めにかかる日数や、資料作成にかかる工数を導入前後で計測する必要があります。

計画からのずれを早期に発見し経営判断に活かします

差異分析とローリングフォーキャストが定着すると、年度末になって初めて計画未達に気づくのではなく、期中の早い段階で兆候をつかみやすくなります。着地見込みが継続的に更新されていれば、追加施策の検討や予算の再配分といった経営判断を、余裕を持って行えます。

一方、見込みの精度は入力する現場の姿勢に左右されます。楽観的な見込みばかりが積み上がると、経営層の判断を誤らせるリスクがあります。見込みの前提条件を記録し、後から検証できるようにしておくことが、システムの効果を引き出すうえで重要です。

経営管理システムとの違い

経営管理システムと予実管理システムの違いを整理する担当者

予実管理システムは、経営管理システム(EPM/CPM)と混同されやすい領域です。両者は重なる部分もありますが、対象とする範囲と工程が異なります。既存の経営管理基盤をすべて置き換えるものと考えず、どこまでを予実管理システムが担い、どこから経営管理システムへつなぐかを整理することが重要です。

経営管理システムは連結決算・非財務KPIまで含む基盤です

経営管理システムは、連結決算、セグメント別の非財務KPI、グループ会社全体の経営指標までを扱う、経営の意思決定支援基盤全体(EPM/CPM)を指すことが一般的です。予実管理システムは、その中核機能の一つである予算管理ワークフロー、つまり予算編成から配賦、実績との差異分析、見込みの更新までに対象を絞ったサブシステムという位置づけです。

そのため、連結決算やグループ会社間の内部取引消去、非財務KPIのモニタリングまで必要な企業は、経営管理システム全体を検討範囲に含める必要があります。一方、単体の予算管理ワークフローの精度向上が優先課題であれば、予実管理システムに特化した製品から検討を始める方が、要件と製品機能が一致しやすくなります。具体的な選び方は、予実管理システムの選定ポイント・選び方・種類で解説しています。

予算管理機能が経営管理システムの一部として提供される場合もあります

実際の製品では、予実管理に特化したシステムもあれば、経営管理システムの一機能として予算管理ワークフローを提供する製品もあります。どちらの形態であっても、自社が必要とする範囲、すなわち単体の予算管理なのか、連結決算や非財務KPIまで含む全社的な経営管理なのかを明確にしてから製品を比較することが大切です。

売上管理システムなど他の業務システムとの違い

予実管理システムと他システムの違いを比較する担当者

予実管理システムは、売上管理システムや会計システムとも機能が重なる場合があります。ただし、それぞれの中心的な管理対象と工程は異なります。

売上管理システムは確定した実績データの記録・集計が中心です

売上管理システムは、確定した売上データの記録、集計、売上に限定した予実対比を扱う実務レイヤーのシステムです。一方、予実管理システムは、売上だけでなく人件費、外注費、経費、原価といった全勘定科目を対象に、予算そのものの編成から配賦、差異分析、見込みまでのワークフローを扱う点で、対象範囲と工程が異なります。

売上管理システムで記録した確定売上データを、予実管理システムへ実績値として連携する構成も一般的です。どちらか一方で全工程を無理に管理するより、確定データの正本を売上管理システムに、予算編成と全社の差異分析を予実管理システムに置くという役割分担が考えられます。

会計システムとは仕訳・決算と予算編成の役割が異なります

会計システムは、日々の取引の仕訳、債務、決算処理などを管理しますが、部門別の予算編成や配賦ロジック、見込み更新までは通常の中心領域ではありません。予実管理システムが会計システムから実績データを取り込み、予算との差異を分析する役割分担が一般的です。

会計システムの勘定科目体系と、予実管理システムの予算科目体系が食い違っていると、実績データを取り込むたびに科目のマッピング作業が発生します。導入前に両者の科目体系をそろえておくと、連携時の手戻りを防ぎやすくなります。

予実管理システム導入前に確認しておきたいポイント

予実管理システムに関する質問を確認する担当者

予実管理システムを導入するかどうかは、企業規模だけで決まるものではありません。既存の経営管理システムや会計システムとの役割分担、配賦基準の合意形成、現場の入力負荷まで含めて整理することで、導入後の二重管理や形骸化を防げます。

部門数が少なくても配賦が複雑なら導入効果が見込めます

部門数が少なくても、共通費の配賦基準が複雑だったり、事業部ごとに予算フォーマットが異なっていたりする場合は検討価値があります。一方、勘定科目や部門数が少なく、既存のExcel運用で無理なく差異分析ができているなら、業務を複雑にしてまで導入する必要はありません。

会計システム・ERPとの役割分担を決めます

予実管理システムを導入しても、会計システムやERPが不要になるわけではありません。実績データの正本は会計システムに置き、予算編成と差異分析を予実管理システムが担うという役割分担が一般的です。どちらのシステムでどのデータを正本にするかを事前に決めておくことが重要です。

予算編成サイクルに間に合う導入スケジュールを組みます

予実管理システムは、次期の予算編成が始まる時期までに本番稼働していないと、実務での活用が翌年度へ丸ごと先送りになりかねません。要件定義から本番移行までの期間を、自社の決算期・予算編成スケジュールから逆算して確保することが、他の業務システム以上に重要になります。

まとめ

予実管理システムの要点をまとめる担当者

予実管理システムは、全部門・全勘定科目を対象に、予算編成から配賦、実績との差異分析、ローリングフォーキャストまでを一つの流れで管理する仕組みです。経営管理システムが連結決算や非財務KPIまで含む全社的な意思決定基盤であるのに対し、予実管理システムはその中核機能である予算管理ワークフローに対象を絞っている点が異なります。

予実管理システムは配賦と差異分析の合意形成を支える基盤です

配賦基準や見込みの更新頻度は、システムが自動的に決めてくれるものではありません。共通費をどの基準で配賦するか、見込みをいつ誰が更新するかといった社内ルールを先に決め、それを予実管理システムのワークフローへ反映することが重要です。

現状の予算編成フローを可視化することから始めます

まずは、現在どこで数値の突き合わせに時間がかかり、誰にどの確認工数が集中しているかを整理してください。配賦ロジックの精緻化、差異分析のスピードアップ、ローリングフォーキャストの高度化など、優先する目的が明確になれば、自社に必要な機能と導入範囲を具体化できます。既製SaaSで標準化する方法に加え、独自の配賦ロジックや基幹システムとのリアルタイム連携が必要な場合は、個別開発やハイブリッド構成も選択肢になります。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、既製品では吸収しきれない配賦ロジックの整理や、既存の会計・基幹システムとの連携を含む構築を支援しています。

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・予実管理システム開発の完全ガイド

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

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