電子契約システム開発/導入のメリット/デメリット/効果と判断基準について

電子契約システムの導入を検討するとき、メリットばかりが語られがちですが、実際には相手方の同意が必要だったり、電子化できない契約があったりと、デメリットや制約も存在します。さらに、クラウド型かオンプレミス型か、立会人型か当事者型か、固定費の高いプランか従量課金のプランか、パッケージかフルスクラッチか、といった選択肢ごとに判断基準が分かれ、自社にとって何が最適かは一概に言えません。メリットとデメリットを正しく天秤にかけ、判断の軸を持つことが、後悔しない導入につながります。

本記事は、電子契約システム導入のメリット・デメリットと判断基準を整理する「判断特化」の解説です。コスト削減や効率化というメリットの実像、相手方同意や電子化不可契約というデメリットの実態、クラウドとオンプレ・立会人型と当事者型・固定費と従量課金の損益分岐点・パッケージとフルスクラッチという四つの判断軸を、一次データとあわせて具体的に解説します。電子契約システム全体の仕組みや費用相場をまだ把握していない方は、まず電子契約システムの完全ガイドから読むことをおすすめします。読み終えるころには、自社にとっての最適な選択肢が見えてくるはずです。

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電子契約導入のメリットの実像

電子契約導入のメリットの実像のイメージ

電子契約のメリットは「ペーパーレスで便利」という漠然としたものではなく、コスト削減・スピード向上・ガバナンス強化という形で定量化できます。導入率が78.3%(2025年調査)まで高まっているのは、これらのメリットが多くの企業で実感されているからです。判断基準を持つには、まずメリットの中身を数字で押さえることが出発点になります。

コスト削減と業務効率化という定量メリット

もっとも分かりやすいメリットがコスト削減です。月20件の電子化で年間約96万円(印紙税48万円・郵送資材費12万円が0円、事務人件費48万円が12万円へ)削減できる試算があり、高額契約では印紙税が1件あたり1〜6万円、建設工事の高額契約では3万円が不要になります。費用削減で重視される項目を尋ねた調査でも、印紙税の不要化が30.6%でトップに挙がり、コスト削減が導入の主要動機であることが分かります。

効率化のメリットも見逃せません。遠隔申請で1件5分以上短縮し年150万円分の人件費を削減した自治体団体の事例、会計連携で申請処理を約4割削減した団体の事例など、業務時間の削減効果が一次データで示されています。郵送のために契約締結に数日かかっていたものが、オンラインで即日締結できるようになるスピード向上も、ビジネス機会の損失を防ぎます。これらのメリットは、自社の契約件数に当てはめれば具体的な金額・時間として算出でき、稟議の根拠になります。

ガバナンス強化とコンプライアンス対応のメリット

金額に表れにくいものの重要なのが、ガバナンス強化のメリットです。電子契約では、タイムスタンプによって契約締結日が客観的に記録され、契約日のバックデートや改ざんが困難になります。承認ワークフローと連動させれば、社内承認が完了するまで相手方へ送信できないようにでき、未承認契約の誤送信を構造的に防げます。承認証跡が自動で残るため、内部統制や監査対応も容易になります。

また、契約をシステム上で一元管理することで、契約の所在不明や更新期限の見逃しを防げます。紙運用では契約書がキャビネットに散在し、必要なときに見つからない、更新期限を逃して不利な条件で自動更新される、といったリスクがありました。電子契約は検索機能と更新アラートでこれらを防ぎます。コスト削減という目に見えるメリットだけでなく、こうしたガバナンスとリスク管理のメリットを含めて評価することが、経営層を説得する材料になります。

メリットを自社の件数で定量化する判断

メリットを判断材料として使うには、一般論の数字をそのまま信じるのではなく、自社の契約件数に当てはめて定量化することが欠かせません。月20件で年96万円、月100件で月12.5万円という試算は、あくまで前提条件に基づくモデルケースです。自社の月間契約件数、契約金額の階級(印紙税額に直結)、現在の郵送費・印刷費・事務工数を当てはめて初めて、自社にとっての実際の削減額が見えてきます。

定量化のポイントは、削減できる費用を「印紙税」「郵送・印刷費」「事務人件費」の三つに分けて積み上げることです。とくに高額契約が多い企業は印紙税の削減が大きく、契約件数が多い企業は事務工数の削減が効きます。自社の契約構成によって、どのメリットが最大化されるかは異なります。メリットを判断するときは、漠然とした「効率化」ではなく、自社の数字で算出した具体的な金額を根拠にすることが、説得力のある投資判断につながります。

見落とせないデメリットと制約

見落とせないデメリットと制約のイメージ

メリットだけを見て導入すると、現場で想定外の壁にぶつかります。電子契約には、相手方の同意が必要であること、法律上電子化できない契約が存在すること、従量課金がかさむことといったデメリットがあります。これらを事前に理解し、対策を講じておくことが、導入後の後悔を防ぎます。

相手方の同意と電子化できない契約という制約

最大のデメリットが、相手方の同意が必要なことです。電子契約は、契約相手も電子で締結することに同意して初めて成立します。相手方が電子契約に不慣れだったり、社内ルールで紙の契約しか認めていなかったりすると、自社だけが電子化したくても紙運用を続けざるを得ません。とくに取引先が多数で、それぞれの理解度がまちまちな企業では、全契約の電子化には時間がかかります。

もう一つの制約が、法律上電子化できない契約の存在です。定期借地契約や任意後見契約など、書面の作成が法律で義務づけられている一部の契約は、電子契約に置き換えられません。これらの契約が業務の中心を占める企業では、電子契約のメリットを十分に享受できない場合があります。多くの記事はこれらの制約を「相手に丁寧に説明する」という解決策で済ませがちですが、判断の段階では「自社の契約のうち何割が電子化可能か」を事前に見積もることが、現実的なROIを把握する鍵になります。

従量課金と社内定着の負担というデメリット

コスト面のデメリットが、送信料の従量課金です。送信1件あたり50〜300円(平均で税込110〜220円程度)の送信料がかかるため、契約件数が多い企業では、想定以上にトータルコストが膨らむことがあります。月5件・50件・200件で比較すると、クラウドサインは12,100/22,000/55,000円と件数に比例して増えます。導入前に想定件数を見積もらないと、運用開始後に「思ったより高い」というギャップが生じます。

運用面のデメリットとしては、社内定着の負担があります。導入後に約8割が課題を感じており(ContractS 2023年10月)、その内訳には「情報を一元管理できない(39.5%)」「システム間で業務が分断され非効率(38%)」「導入前の紙データが未処理(33.6%)」が並びます。システムを入れただけでは現場に使われず、形骸化するリスクがあるのです。権限設定・承認ルート再設計・社内マニュアル整備といった地道な定着活動が必要であり、これを負担と見るか投資と見るかが、導入判断の分かれ目になります。

デメリットは対策可能か不可避かで切り分ける

デメリットを評価するうえで重要なのは、それが「対策によって軽減できるもの」か「構造的に避けられないもの」かを切り分けることです。相手方の同意は、立会人型を選んで相手の負担を減らし、丁寧に説明することで多くの場合に解決できます。従量課金は、件数を見積もって固定費型を選べばコントロールできます。社内定着の負担も、スモールスタートと運用ルール整備で乗り越えられます。これらは対策可能なデメリットです。

一方、法律上電子化できない契約の存在は、対策では避けられない構造的な制約です。定期借地契約や任意後見契約が業務の中心を占める企業では、電子契約のメリットが限定的になります。判断にあたっては、対策可能なデメリットは「導入の障害」ではなく「準備すべき項目」と捉え、構造的に避けられない制約だけを「電子化率の上限」として現実的に見積もることが大切です。この切り分けができれば、デメリットを過大評価して導入を見送る、という機会損失を防げます。

クラウドかオンプレ・署名方式の判断基準

クラウドかオンプレ・署名方式の判断基準のイメージ

メリットとデメリットを踏まえたうえで、具体的な選択肢の判断軸を持つことが重要です。電子契約には、クラウド型かオンプレミス型か、立会人型か当事者型か、という基本的な分かれ道があります。それぞれに向き不向きがあり、自社の規模・セキュリティ要件・契約の証拠力に応じて選ぶ必要があります。

クラウド型とオンプレミス型の判断基準

クラウド型は、初期費用が0円のものが多く、すぐに使い始められ、保守・運用をベンダーに任せられるのが利点です。中小企業を中心に主流の選択肢であり、月額数千〜2万円程度から導入できます。一方、自社のセキュリティポリシーで外部クラウドへのデータ保管が制限されている場合や、独自の業務要件が強い場合は、オンプレミス型や連携カスタマイズを伴う構築が選択肢になります。ただし、その場合は初期費用が数十万〜数百万円に上ることもあります。

判断基準は、自社のセキュリティ要件と業務要件の強さです。一般的な契約をスピーディに電子化したいなら、クラウド型が費用面でも導入スピード面でも有利です。逆に、機密性の高い契約を扱い、自社固有の業務フローを厳密に再現したい場合は、カスタマイズ性の高い構築を検討します。多くの企業はまずクラウド型でスモールスタートし、要件が複雑化した段階でカスタマイズや連携を加える、という段階的なアプローチが現実的です。

立会人型と当事者型の使い分けの判断基準

署名方式の判断軸は、証拠力と相手方の負担のバランスです。立会人型(事業者署名型)は、相手方がメール認証だけで署名でき、特別な準備が不要なため導入のハードルが低く、市場でも主流です。レビューシェアでもクラウドサイン66%など立会人型を基本とするサービスが広く使われています。一般的な取引契約は、この立会人型で十分なケースが多いと言えます。

一方、当事者型は本人性の証明がより強固で、高い証拠力が求められる契約に向きますが、相手方にも電子証明書の発行費(1万円前後)が必要になります。判断基準は「その契約に求められる証拠力の高さ」と「相手方に証明書発行の負担を求められるか」です。多くの企業は、一般取引は立会人型、特に重要な契約は当事者型、という使い分けを採ります。すべてを当事者型にすると相手方の負担が大きく、電子化が進まないため、契約類型ごとに方式を切り替えられる製品を選ぶのが賢明です。

補助金活用の可否も判断材料に加える

導入の是非を判断するうえで、IT導入補助金などの活用可否も重要な材料になります。電子契約システムはIT導入補助金の対象になることが多く、インボイス枠やセキュリティ対策推進枠を使えば、導入費用の一部に補助が受けられます。補助金を使えるかどうかで初年度の実質負担が変わるため、判断の前に補助対象や補助率を確認しておくと、投資判断の精度が上がります。

判断材料として補助金を組み込むときは、申請スケジュールと導入計画の整合も見ておくべきです。補助金は申請時期が決まっており、審査に時間がかかる場合もあります。電子契約への関心は高く、ITトレンドの資料請求数は前年同期比236%増という調査もあるため、申請が集中する時期は余裕を持った準備が必要です。補助金を使えるなら実質負担が下がり、デメリットである導入コストを軽減できます。費用面のメリット・デメリットを天秤にかけるとき、補助金の活用可否を判断材料に加えることが、賢明な意思決定につながります。

料金プランとパッケージ・フルスクラッチの判断

料金プランとパッケージ・フルスクラッチの判断のイメージ

判断軸の中でも、費用に直結するのが料金プランの選び方と、パッケージかフルスクラッチかという開発方式の選択です。これらは、契約件数と業務要件の複雑さによって損益分岐点が変わるため、自社の数字で計算することが欠かせません。

固定費型と従量課金型の損益分岐点

料金プランは大きく、固定費が高めで送信が無料のタイプと、固定費が低めで送信ごとに課金されるタイプに分かれます。どちらが得かは契約件数で決まります。件数別の実質コストを見ると、送信・保管が無料のマネーフォワードクラウド契約は一律約7,128円/月で件数に左右されません。一方、クラウドサイン(基本11,000円+送信220円)は月5件で12,100円、月200件で55,000円と件数に比例して増えます。

つまり、契約件数が多い企業ほど、固定費が高くても送信無料のプランが有利になり、件数が少ない企業は固定費の低い従量型が向きます。判断のためには、「月◯件を超えたら固定費型が得になる」という損益分岐点を、自社の想定件数で計算することが重要です。多くの記事は「自社に合うプランを」で終わりますが、実際には件数を当てはめた具体的な分岐点計算をしなければ、最適なプランは選べません。導入前に必ず、複数プランのトータルコストを件数別に試算してください。

パッケージとフルスクラッチの判断基準

もう一つの判断軸が、既製のパッケージ(SaaS)を使うか、自社専用にフルスクラッチで開発するかです。多くの企業にとっては、標準的な電子契約SaaSで要件を満たせるため、パッケージが第一候補になります。導入が早く、保守をベンダーに任せられ、費用も抑えられるからです。一般的な契約フローであれば、無理に独自開発する必要はありません。

一方、契約・文書・稟議・帳票を貫く独自の業務フローを持ち、既存の基幹システムと密に連携させたい場合や、SaaSでは再現できない複雑な承認ルートや権限体系が必要な場合は、フルスクラッチや大幅なカスタマイズが選択肢になります。判断基準は「自社の業務要件が標準SaaSでどこまで満たせるか」です。riplaはフルスクラッチ受託と業務伴走の立場から、まずパッケージで満たせる範囲を見極め、本当に独自開発が必要な領域だけをスクラッチで作る、という現実的な切り分けを支援します。パッケージとスクラッチは二者択一ではなく、組み合わせて最適化するものだと捉えるのが賢明です。

市場シェアと相手方の利用状況も判断材料にする

製品を選ぶ判断軸として、市場シェアと相手方の利用状況も見逃せません。電子契約は相手方の同意が前提のため、取引先が既に使っているサービスや、広く普及しているサービスを選ぶと、相手方が操作に慣れていて同意を得やすくなります。レビューシェアを見ると、クラウドサインが66%(1,065件)、電子印鑑GMOサインが10%(165件)、SMBCクラウドサインが6%(97件)と、特定のサービスに利用が集中しています(全1,624件中)。

シェアが高いサービスは、相手方が受け取った経験を持つ可能性が高く、電子化の同意を得やすいという利点があります。ただし、シェアだけで選ぶのではなく、自社の契約フローとの適合や費用構造とあわせて総合的に判断すべきです。判断基準として「自社にとっての使いやすさ」と「相手方にとっての受け取りやすさ」の両面を考慮することが、電子化率を高め、メリットを最大化する鍵になります。市場での普及状況は、相手方の同意というデメリットを和らげる、隠れた判断材料だと言えます。

まとめ

電子契約システムのメリデメまとめイメージ

電子契約システムのメリットとデメリットを整理すると、コスト削減(月20件で年96万円・印紙税ゼロ化)・効率化(申請4割減)・ガバナンス強化という明確なメリットがある一方、相手方の同意が必要・電子化できない契約がある・従量課金がかさむ・社内定着に手間がかかるというデメリットも無視できません。そのうえで、クラウドかオンプレか、立会人型か当事者型か、固定費型か従量型か、パッケージかフルスクラッチか、という四つの判断軸を、自社の契約件数・証拠力要件・業務の複雑さに照らして選ぶことが、後悔しない導入の鍵になります。

判断するときに大切なのは、メリットの数字を自社の件数に当てはめ、デメリットの制約が自社の契約のどこに効くかを見極めることです。とくに料金プランは件数による損益分岐点を計算し、開発方式は標準SaaSで満たせる範囲を見極めたうえで選ぶべきです。riplaはフルスクラッチ受託と業務伴走の立場から、メリットとデメリットを自社の実情に即して評価し、最適な選択肢を見極める判断を支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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