電子契約システムの必要機能や標準機能の一覧について

電子契約システムを選ぶとき、製品ごとに機能の名前や分類がバラバラで、「結局どんな機能が必要で、どれが標準で備わっているのか」が分かりにくいと感じる担当者は多いはずです。電子契約は単に「ネット上で印鑑を押すツール」ではなく、署名方式・タイムスタンプ・送信・保管・検索・権限管理・連携といった複数の機能群が組み合わさって、初めて法的にも業務的にも使えるものになります。必要機能を正しく理解しないまま導入すると、肝心の機能がオプションで追加費用がかかったり、自社の契約フローに合わなかったりします。

本記事は、電子契約システムの必要機能・標準機能を一覧で整理する「機能特化」の解説です。立会人型と当事者型という署名方式の違い、タイムスタンプと長期保存、送信・保管・全文検索、承認ワークフローと権限制御、AI-OCR・AIレビューといった付加機能まで、それぞれが何のための機能で、標準かオプションかという費用構造まで含めて解説します。電子契約システム全体の仕組みや費用相場をまだ把握していない方は、まず電子契約システムの完全ガイドから読むことをおすすめします。読み終えるころには、自社が「どの機能を必須とし、どこまでをオプションで割り切るか」を判断できるようになります。

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署名方式とタイムスタンプの中核機能

署名方式とタイムスタンプの中核機能のイメージ

電子契約システムのもっとも中核となる機能が、電子署名とタイムスタンプです。これらは契約書に法的な証拠力を持たせるための仕組みであり、ここを理解せずに製品を選ぶと、後から「自社が求める証拠力に足りなかった」という事態になりかねません。署名方式は大きく立会人型と当事者型に分かれ、それぞれ証拠力と相手方の負担が異なります。

立会人型と当事者型の署名機能の違い

立会人型(事業者署名型)は、電子契約サービスの事業者が、契約当事者の指示に基づいて署名を行う方式です。利用者はメール認証などで本人確認を行うだけでよく、相手方も特別な準備が不要なため、導入のハードルが低いのが特徴です。市場でもこの方式が主流で、レビューシェアではクラウドサインが66%、電子印鑑GMOサインが10%、SMBCクラウドサインが6%(全1,624件中)を占めており、立会人型を基本とするサービスが広く使われていることが分かります。

一方、当事者型は、契約当事者自身が電子証明書を用いて署名する方式です。本人性の証明がより強固で、高い証拠力が求められる契約に向いていますが、相手方にも電子証明書の発行が必要になり、1万円前後の費用がかかります。多くのシステムは両方式に対応し、契約の重要度に応じて使い分けられるようになっています。電子署名法第3条が定める要件を満たすかどうかは方式と運用に依存するため、自社が扱う契約の証拠力レベルを整理したうえで、必要な署名機能を備えた製品を選ぶことが重要です。

タイムスタンプと長期保存の機能

署名と並んで必須なのが、タイムスタンプ機能です。タイムスタンプは「その時刻にその文書が存在し、以降改ざんされていないこと」を証明する仕組みで、契約締結日の客観性を担保します。これにより、契約日をさかのぼって設定するバックデートを防ぎ、後からの改ざんを検知できます。電子帳簿保存法の要件にも関わるため、電子契約システムの標準機能としてほぼ必須と考えてよい要素です。

あわせて確認したいのが、長期保存への対応です。契約書は法定保存期間が長く、企業によっては10年以上の保存が必要になります。タイムスタンプには有効期限があるため、期限が切れる前に再付与する長期署名(長期保存形式)に対応しているかが、長期の証拠力維持を左右します。署名・タイムスタンプ・長期保存という三点セットは、電子契約の証拠力を支える土台であり、製品比較の際は名称だけでなく「どの方式・形式に対応しているか」まで踏み込んで確認すべき中核機能です。

標準機能とオプション機能の見分け方

署名・タイムスタンプという中核機能を理解したら、次に押さえたいのが「どこまでが標準機能で、どこからが追加オプションか」という線引きです。同じ機能名でも、製品によって標準で含まれる場合と、上位プランやオプションでしか使えない場合があります。基本料金だけを見て契約すると、必要な機能が実はオプションで、後から費用が積み上がる、という事態になりかねません。

見分け方のコツは、自社が必須とする機能をリスト化し、各製品でそれが標準かオプションかを一覧で突き合わせることです。電子契約の費用は初期費用・月額基本料・送信料・オプションの四つで構成されるため、オプション機能が月額をどれだけ押し上げるかを試算しておくと、トータルコストを正確に把握できます。機能の名称だけで「対応している」と判断せず、提供形態と費用まで含めて確認することが、想定外のコスト増を防ぐ機能選定の基本姿勢です。

送信・保管・全文検索の管理機能

送信・保管・全文検索の管理機能のイメージ

署名機能が「締結のため」の機能だとすれば、送信・保管・検索は「契約を運用するため」の機能です。電子契約は締結して終わりではなく、締結後に正しく保管し、必要なときにすぐ取り出せることが、業務上の価値を決めます。導入後の課題で「情報を一元管理できない」が39.5%(ContractS 2023年10月)と高いのは、この管理機能の設計が甘いまま導入した結果とも言えます。

送信と従量課金にかかわる送信料の機能

送信機能は、契約書を相手方に送って署名を依頼する、電子契約の基本動作です。ここで注意すべきは、多くのサービスが送信1件ごとに送信料を課金する従量制を採っている点です。送信料は1件あたり50〜300円(平均で税込110〜220円程度)が相場で、契約件数が多い企業ほどこの従量課金がトータルコストに大きく影響します。送信料は機能というより費用構造ですが、機能選定の段階で必ず把握しておくべき要素です。

件数別の実質コストを見ると、その差は明確です。月5件・50件・200件で比較すると、GMOサインは10,230/15,180/31,680円、クラウドサイン(基本11,000円+送信220円)は12,100/22,000/55,000円、送信・保管が無料のマネーフォワードクラウド契約は一律約7,128円となります。送信が無料か従量かは、件数が増えるほど効いてきます。送信機能を評価するときは、単に「送れるか」ではなく「送信料の体系がどうなっているか」までを機能要件として見るべきです。

保管・全文検索とメタデータ管理の機能

締結した契約書は、システム上に安全に保管され、必要なときに検索で呼び出せる必要があります。保管機能で重要なのは、単にPDFを保存するだけでなく、契約日・当事者名・契約金額・契約類型・更新期限といったメタデータを付けて管理できることです。メタデータがあれば、条件を組み合わせた絞り込みや、契約書本文の全文検索で、目的の契約を瞬時に見つけられます。

とくに実務で価値が高いのが、更新期限のアラート機能です。自動更新の契約や、更新交渉が必要な契約の期限を見逃すと、不利な条件で自動更新されたり、失効してしまったりするリスクがあります。期限が近づくと担当者へ通知する機能は、契約管理の抜け漏れを防ぐ重要な役割を果たします。送信・保管・全文検索・更新アラートという管理機能群は、契約を「締結する」だけでなく「ライフサイクル全体で管理する」ために不可欠であり、ここを軽視すると一元管理できないという典型的な課題に陥ります。

更新期限アラートと契約ライフサイクル管理の機能

保管・検索と並んで実務価値が高いのが、契約のライフサイクル全体を管理する機能です。契約は締結して終わりではなく、更新・再交渉・解約という節目があります。更新期限アラートは、自動更新の契約や更新交渉が必要な契約の期限が近づくと担当者へ通知し、期限の見逃しによる不利な自動更新や失効を防ぎます。紙運用では見落としがちだった更新管理を、システムが自動で支援してくれます。

この機能を使いこなすには、保管時に更新期限をメタデータとして正しく登録しておくことが前提になります。アラートの通知先や通知タイミングを契約類型ごとに設定できる製品なら、重要契約は早めに、定型契約は直前に、といった運用の作り分けも可能です。契約ライフサイクルを通じた管理機能は、電子契約を「締結のツール」から「契約資産を守る基盤」へと引き上げる、見落とせない要素です。製品比較では、締結機能だけでなく、こうした締結後の管理機能の充実度まで確認すべきです。

承認ワークフローと権限制御の機能

承認ワークフローと権限制御の機能のイメージ

電子契約システムを単なる署名ツールから、業務基盤へと格上げするのが、承認ワークフローと権限制御の機能です。契約締結の前段には必ず社内の稟議・承認があり、ここを電子化して署名と連動させることで、契約成立までの一連の流れが統制された形で回り始めます。「システム間で業務が分割され非効率」という課題が38%(ContractS 2023年10月)で挙がるのは、署名とワークフローが分断されているケースが多いためです。

条件分岐する承認ルートの設計機能

企業の承認ルートは一様ではありません。契約金額が一定額を超えたら役員承認を加える、特定の契約類型では法務のレビューを必須にする、といった条件分岐が現実の業務には存在します。承認ワークフロー機能では、こうした金額や契約種別に応じてルートを自動で切り替える条件分岐に対応しているかが、自社の業務を再現できるかどうかの分かれ目になります。単純な直列承認しかできないシステムでは、複雑な決裁規程を持つ企業の運用に合いません。

あわせて、スマートフォンからの承認、差し戻し、承認証跡の記録といった機能も重要です。承認者が外出先からでも承認でき、誰がいつ承認したかが自動で記録されれば、リードタイムの短縮とガバナンスの強化を同時に実現できます。社内承認が完了するまで相手方への送信ボタンを押せないようにする制御は、未承認契約の誤送信を防ぎます。承認ルートの設計自由度は、電子契約を業務基盤として使いこなせるかを左右する、見落とせない機能です。

権限制御と外部システム連携の機能

権限制御は、契約という機密情報を扱ううえで欠かせない機能です。部署や役職に応じて、閲覧できる契約、編集できる契約、送信できる契約を細かく制御できれば、情報漏えいや権限の濫用を防げます。電子契約には取引先の機密情報や金額が含まれるため、誰がどの契約にアクセスできるかを管理できる権限機能は、セキュリティとコンプライアンスの観点で必須と言えます。

もう一つの重要機能が、CRM・SFA・会計・経費精算といった外部システムとのAPI連携です。契約情報を後続の業務システムへ自動で連携できれば、二重入力をなくし、業務の分断を防げます。実際、会計連携によって申請処理を約4割削減した団体の事例もあります。電子契約を単体で使うのではなく、業務システム群の一部として連携させる設計こそが、効果を最大化します。連携の可否と対応範囲は、機能要件として優先度を高く設定すべきポイントです。

AI-OCR・AIレビューの付加機能とコスト

AI-OCR・AIレビューの付加機能とコストのイメージ

近年の電子契約システムは、AIを活用した付加機能を備える製品が増えています。AI-OCRによる紙契約の自動データ化、AIによる契約書レビューなどがその代表です。ただし、これらは便利な反面、標準機能なのか月額数万円の追加オプションなのか、そして誤認識のリスクをどう扱うか、という点を見極めないと、期待した効果が得られないまま費用だけがかさみます。

AI-OCRによる紙契約のデータ化機能

AI-OCRは、スキャンした紙契約から契約日・当事者・金額といった項目を自動で読み取り、メタデータとして登録する機能です。膨大な過去の紙契約を一元管理へ移行する際、手作業の入力を大幅に減らせるため、移行の負担を軽くします。導入時の課題で「導入前の紙データが未処理」が33.6%(ContractS 2023年10月)と高いことを踏まえると、この機能は移行を進める後押しになります。

ただし、AI-OCRには誤認識のリスクが伴います。金額の桁や当事者名を読み間違えれば、検索や管理に支障が出ます。実務では、AI-OCRで一次的に項目を抽出したうえで、金額や当事者など重要項目は人の目で検証する運用が現実的です。また、AI-OCRが標準機能か追加オプションかは製品によって異なるため、移行ボリュームと照らして費用対効果を見極める必要があります。便利さだけで判断せず、検証の手間とコストまで含めて要否を決めることが大切です。

AI契約レビュー機能の効果と追加コスト

AI契約レビューは、契約書のリスク条項や抜け漏れをAIが指摘する機能です。法務担当者のレビュー工数を減らし、契約審査のスピードと品質を底上げする可能性があります。一方で、最終的な法的判断は人が行う必要があり、AIの指摘を鵜呑みにすると見落としを招きかねません。AIレビューは「法務の代替」ではなく「法務の補助」として位置づけるのが適切です。

費用面では、AIレビューは標準機能ではなく月額数万円の追加オプションとして提供されることが多く、ここがトータルコストを押し上げる要因になります。電子契約システムの月額基本料は中小企業で数千〜2万円、高額プランで3万円程度が相場ですが、AI機能を加えるとさらに費用が上乗せされます。AI機能を要件に含めるなら、「標準か追加オプションか」「法務工数を何時間削減できるか」を定量的に試算し、費用対効果が見合うかを確認すべきです。多くの企業にとっては、まず署名・送信・保管・ワークフローの基本機能を固め、AI機能は効果を見極めながら段階的に追加するのが堅実な進め方です。

セキュリティとコンプライアンス対応の機能

AI機能のような付加価値機能を検討する前に、土台として確認すべきがセキュリティとコンプライアンスの機能です。電子契約には取引先の機密情報や金額が含まれるため、通信の暗号化、二要素認証、アクセスログの記録、IPアドレス制限といったセキュリティ機能が備わっているかは、製品選定の最低条件になります。これらは華やかさはありませんが、契約という機密データを扱う以上、欠かせない機能群です。

コンプライアンス面では、電子帳簿保存法の保存要件を満たす検索機能や訂正・削除の履歴管理、電子署名法に対応した署名・タイムスタンプの機能が、法令遵守の観点で必須です。これらの機能が標準で備わっているか、それとも上位プランやオプションで提供されるかは製品によって異なります。AI機能の魅力に目を奪われる前に、自社が遵守すべき法令とセキュリティ基準を満たす機能が標準で揃っているかを確認することが、機能選定の出発点になります。基本機能の充足を確かめてから、付加機能の要否を判断するのが正しい順序です。

まとめ

電子契約システムの機能まとめイメージ

電子契約システムの機能を整理すると、署名方式とタイムスタンプという証拠力の中核、送信・保管・全文検索という運用の管理機能、承認ワークフローと権限制御という業務統制の機能、そしてAI-OCR・AIレビューという付加機能、という四つの層に分けて理解できます。署名は立会人型と当事者型で証拠力と相手方負担が異なり、送信は従量課金の有無がトータルコストを左右し、ワークフローは条件分岐の再現性が自社業務との適合を決め、AI機能は標準かオプションかで費用対効果が変わります。それぞれの機能が「何のためにあるのか」を理解することが、必要機能と割り切れる機能を見分ける第一歩です。

機能一覧を眺めるときに大切なのは、製品の機能数の多さではなく、自社の契約フローに本当に必要な機能を見極めることです。署名・送信・保管・ワークフローという基本機能を固めたうえで、AI機能や高度な連携は効果を見ながら段階的に加えるのが、費用を抑えつつ成果を出す進め方です。riplaはフルスクラッチ受託と業務伴走の立場から、自社の契約・稟議・文書のフローに合った機能要件の整理と、現場で使われる仕組みづくりを支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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