開発内製化の導入/開発事例や活用/成功事例について

開発の内製化を検討するとき、多くの担当者がまず知りたいのは「自社と似た規模・業種の企業が、実際にどうやって外注依存から脱却し、どんな成果を出したのか」という具体的な事例ではないでしょうか。内製化は、エンジニアの採用・育成、開発文化の醸成、ベンダーからのノウハウ移譲など、一朝一夕には進まない取り組みです。だからこそ、机上の理論よりも、実在企業がどんな段階を踏んでどれだけのコスト削減やスピード改善を実現したのか、という定量的な事例こそが、自社の投資判断の精度を高めてくれます。

本記事は、開発内製化の導入事例・開発事例・活用事例・成功事例を、推進する企業の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。星野リゾートのAWS内製化によるコスト29%削減、カインズの脆弱性診断内製によるリードタイム短縮、インフィックの自社プロダクト内製化、キリンホールディングスの生成AI活用といった成功事例から、NHKと日本IBMの約89.5億円プロジェクト頓挫という巨額の失敗まで、一次データとあわせて具体的に解説します。読み終えるころには、自社が「どこから着手し、どんな効果を狙うべきか」のイメージが描けるはずです。なお、開発内製化の全体像をまだ把握していない方は、まず開発内製化の完全ガイドから読むことをおすすめします。

外注依存から内製化でV字回復した成功事例

外注依存から内製化でV字回復した成功事例のイメージ

開発内製化の成功事例でもっとも分かりやすいのが、外注依存によるコスト高とスピードの遅さを、内製化によって構造的に解消したケースです。請負契約では平均して30%以上が中間マージンとして外部に流出するとされ、外注に依存した開発はプロセス効率(PE)が数パーセントという低い水準にとどまることも珍しくありません。内製化は、この構造そのものにメスを入れる打ち手です。

星野リゾート|AWS内製化でコスト29%削減

もっとも象徴的な成功事例が、星野リゾートのクラウド内製化です。同社はAWSの活用を内製で進めることで、コストを29%削減しました。さらに注目すべきは、施設の混雑状況を可視化する仕組みを、わずか1〜3か月という短期間で内製で開発した点です。外注に出していれば要件定義・見積り・契約・開発という工程に数か月から半年を要したであろう機能を、自社の内製チームが現場のニーズに即して素早く形にしたのです。

この事例が示すのは、内製化のメリットがコスト削減だけにとどまらないという事実です。現場の課題を自分たちで素早くシステムに落とし込める「スピード」と「柔軟性」こそ、内製化の真価です。外注では、仕様変更のたびに追加見積りと交渉が発生し、現場のスピード感が削がれます。内製チームなら、思いついた改善をその日のうちに試せます。星野リゾートの混雑可視化のように、現場密着の小さな機能を高速で回せることが、結果的に顧客体験や業務効率の継続的な向上につながるのです。

カインズ|脆弱性診断内製でリードタイム4週短縮

もう一つの代表的な成功事例が、ホームセンター大手カインズの内製化です。同社はセキュリティの脆弱性診断を内製化することで、診断のリードタイムを最大4週間短縮し、外部委託していた数千万円のコストを削減しました。脆弱性診断は、これまで外部のセキュリティ専門会社に依頼するのが一般的でしたが、リリースのたびに外部に依頼していてはスピードが出ません。内製化によって、開発サイクルに診断を組み込めるようになったのです。

カインズはコンテンツ管理にmicroCMSを導入し、Webサイトのアクセスを30%増加させる成果も上げています。これらの事例に共通するのは、「すべてを一度に内製化しようとせず、診断やCMSといった効果の見えやすい領域から着手し、そこで得たノウハウと成功体験を次の領域へ広げている」という段階主義です。内製化は全か無かの選択ではなく、領域ごとに優先順位を付けて内製の輪を広げていく取り組みだと、カインズの事例は教えてくれます。なお、こうした成功の裏返しである典型的な失敗については、詳しくは『開発内製化の失敗・課題・注意点・リスクについて』もあわせてご覧ください。

自社プロダクト・新規事業を内製化した事例

自社プロダクト・新規事業を内製化した事例のイメージ

内製化は、既存業務の効率化だけでなく、自社プロダクトや新規事業の創出にも大きな力を発揮します。プロダクトの根幹を外注に委ねると、改善のたびに外部とのやり取りが発生し、競争力の源泉が自社に蓄積されません。コア領域を内製化することで、ノウハウが社内に貯まり、事業そのものの強さにつながっていきます。

インフィック|介護IoT「LASHIC」を内製で展開

介護事業を手がけるインフィックは、見守りIoTサービス「LASHIC」を内製で展開し、自社のサービス競争力に直結させた事例です。同サービスは月額980円/台という低価格を実現し、AI-OCRの活用では99.995%という極めて高い精度を達成、月8,400時間もの業務時間を削減しています。介護という現場ニーズの深い領域では、外注では拾いきれない細かな要望が次々に出てきます。それを内製チームが素早く反映できることが、サービスの磨き込みにつながりました。

この事例の本質は、「現場の課題を一番よく知る当事者が、自らシステムを作り込める」点にあります。介護現場の負担を月8,400時間も削減できたのは、現場のリアルな運用を理解した内製チームだからこそ実現できた数字です。外注で同じ精度のサービスを作るには、膨大な要件定義と何度もの仕様調整が必要になります。コア事業を内製化することは、単なるコスト削減ではなく、事業の競争優位そのものを社内に取り込む戦略なのです。

キリンHD・さくらインターネットの内製活用

大企業による内製活用の事例も増えています。キリンホールディングスは、生成AIを社内で活用する仕組みを内製で整え、年間39,000時間もの業務時間を創出したとされています。生成AIのような新しい技術は、外部に丸ごと委託するより、自社の業務に密着させながら内製で試行錯誤するほうが、自社固有の使いどころを見つけやすくなります。年39,000時間という規模は、内製による継続的な改善の積み重ねが生んだ成果です。

さくらインターネットは、マーケティングオートメーション(MA)の内製活用により、年間210万円のコスト削減を実現しています。これらの事例が示すのは、内製化が一部の先進的なIT企業だけのものではなく、大企業から中堅企業まで、幅広い業種で現実的な成果を生んでいるという事実です。生成AI、MA、IoTといった領域は、内製で素早く回すことで投資対効果が大きく出やすい分野だと言えます。自社の業務のどこに、内製で回せば効果の大きい領域があるかを見極めることが、事例から学ぶ第一歩です。

巨額外部委託の頓挫が示す内製化の必要性

巨額外部委託の頓挫が示す内製化の必要性のイメージ

成功事例の価値は、その裏返しにある失敗事例を見ると一層はっきりします。外部への巨額委託がいかに大きなリスクを抱えるかを知ることは、なぜ内製化が必要なのかを理解する近道です。ここでは、外注依存の構造的な危うさを示す事例を取り上げます。

NHK×日本IBM|約89.5億円委託の頓挫

外部委託の巨大リスクを象徴するのが、NHKと日本IBMの事例です。約89.5億円で委託されたシステム開発プロジェクトは、16か月の納期延伸が通達された末に頓挫し、最終的にNHK側が約55億円の返還を求めて提訴する事態に発展しました。これは内製化の失敗ではなく、外部委託に大きく依存した開発が抱える構造的なリスクを示す事例です。巨額を投じても、自社にコントロール権限とノウハウがなければ、プロジェクトの行方を握れないのです。

この事例が内製化の文脈で重要なのは、「すべてを外部に委ねる開発は、規模が大きくなるほどコントロールが効かなくなる」という教訓だからです。仕様や進捗を外部任せにすると、問題の発覚が遅れ、軌道修正が難しくなります。内製のチームや、自社に寄り添う伴走型パートナーが間に入れば、進捗とリスクを自分たちの目で確認でき、早期に手を打てます。巨額委託の頓挫は、内製化が「コスト削減」だけでなく「リスクの内製化(自社で握る)」でもあることを教えています。

内製化でも起きるブラックボックス化の失敗

一方で、内製化さえすれば安泰というわけではありません。内製化には固有の失敗もあります。たとえば、ある製造業N社では、特定の担当者が一人でGAS(Google Apps Script)による業務自動化を組み上げた結果、その人しか中身を理解できないブラックボックスと化し、退職とともに保守が立ち行かなくなりました。内製化の最大の落とし穴である「属人化」を象徴する事例です。

また、飲食業のS社では、本来Zapierのような既製ツールを使えば3日で実現できたはずの仕組みを、内製にこだわるあまりゼロから作り込み、「車輪の再発明」に陥ったケースもあります。内製化の成功事例から学ぶと同時に、こうした失敗事例も知っておくことが大切です。成功事例の共通点が「段階的・仕組み化・適材適所」であるのと裏腹に、失敗事例の共通点は「属人化・自前主義の行きすぎ」です。事例は光の面だけでなく影の面まで読み解くことで、自社の進め方への教訓になります。

まとめ

開発内製化事例のまとめイメージ

開発内製化の事例を振り返ると、成功は「効果の見えやすい領域から段階的に始め、コアとノンコアを切り分けながら、ROIを定量的に示している」という一点に集約されます。星野リゾートのコスト29%削減と混雑可視化の1〜3か月内製、カインズの脆弱性診断リードタイム4週短縮と数千万円削減、インフィックのLASHICによる月8,400時間削減、キリンHDの年39,000時間創出、さくらインターネットの年210万円削減は、いずれも内製化の現実的な効果を物語っています。一方、NHKと日本IBMの約89.5億円委託の頓挫は、外部依存のリスクと内製化の必要性を裏側から示しています。

事例を読むときに大切なのは、「どれだけ大きく始めたか」ではなく「どの領域から、どう内製の輪を広げたか」という視点です。同時に、製造業N社のブラックボックス化や飲食S社の車輪の再発明のように、属人化と自前主義の行きすぎという失敗も忘れてはいけません。riplaはフルスクラッチ受託と伴走型パートナーを組み合わせ、開発を担いながらノウハウ移譲を進める形で、現実的な内製化を支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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