開発チームの導入/開発事例や活用/成功事例について

システム開発の成否を最終的に左右するのは、ツールや言語の選定ではなく「どんな開発チームを、どう組み、どう動かすか」という体制づくりです。新規事業のために社内でゼロから開発チームを立ち上げたい経営者の方、外部の開発チームを活用して内製を補強したい情報システム部門の方、あるいは混乱期で停滞したチームを立て直したいマネージャーの方まで、多くの担当者がまず知りたいのは「同じ立場の企業が、実際にどうやって開発チームを組成し、どんな成果を出したのか」という具体的な事例ではないでしょうか。

本記事は、開発チームの導入事例・組成事例・活用事例・成功事例を、発注側・組成側の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。非IT企業がゼロから内製チームを立ち上げた等身大の事例、外部開発チームを内製とハイブリッドで活用した事例、ペアプログラミングやモブプログラミングで生産性とベロシティを改善した定量事例、そして経営層をROIで説得して稟議を通した事例まで、ソニー・NEC・住友電工などの一次データとあわせて具体的に解説します。読み終えるころには、自社が「どんなチームを、どこから組み始めるべきか」のイメージが描けるはずです。なお、開発チーム・開発体制の全体像をまだ把握していない方は、まず開発チームの完全ガイドから読むことをおすすめします。

非IT企業がゼロから内製開発チームを立ち上げた事例

非IT企業がゼロから内製開発チームを立ち上げた事例のイメージ

開発チームの事例というと大手IT企業の華やかな話に目が行きがちですが、発注側がもっとも学べるのは、ITを本業としない中小・非IT企業が、ゼロから内製開発チームを立ち上げた等身大の事例です。社内にエンジニアが一人もいない状態から、どうやって最初の一歩を踏み出し、経営層の理解を得て、機能するチームへと育てたのか。ここには、規模を問わず再現できる原則が詰まっています。

経営層をROIで説得して稟議を通した事例

非IT企業でゼロから開発チームを立ち上げる際、最初にして最大の壁になるのが経営層の説得です。「なぜ高い人件費を払ってエンジニアを社内に抱えるのか、外注で十分ではないか」という問いに、感覚論ではなく数字で答えられた企業が、稟議を突破しています。成功事例では、投資判断の指標としてIRR(内部収益率)を用い、立ち上げにかかる人件費・採用コストと、内製化によって削減できる外注費や得られるスピードアップの効果を、複数年のキャッシュフローで提示しています。

さらに、立ち上げ後の効果を測るKPIとしてROI(投資収益率)やCAC(顧客獲得コスト)を設定し、開発チームが事業の数字にどう貢献するかを可視化した点も共通しています。たとえば「内製チームによってリリース頻度が上がり、機能改善のサイクルが短縮された結果、解約率が下がりLTVが改善した」といった形で、技術投資をビジネス成果に結びつけて説明しています。経営層は技術の良し悪しではなく、投資回収の論理で判断します。事例から学べるのは、開発チームの立ち上げは「採用や技術の問題」である以前に「ROIを語れるかどうかの問題」だという原則です。

コアは内製・PdMは社内に置いて立ち上げた事例

ゼロから立ち上げに成功した企業に共通するのが、「コアは内製、手足は外注」という原則を守っている点です。事業の根幹に関わる設計判断や、製品の方向性を決めるプロダクトマネージャー(PdM)の役割は社内に置き、実装の一部や定型的な開発は外部開発チームに委ねる。この切り分けによって、少人数でも事業の主導権を手放さずにチームを立ち上げられます。社内にエンジニアが一人もいない段階では、まずPdMやテックリードに相当する一人を採用または育成し、その人を軸に外部リソースを組み込むのが現実的です。

立ち上げ初期の3〜5人規模のチームは、一人が複数の役割を兼務するため、属人化のリスクを常に抱えます。これを防ぐために成功事例では、後述するペアプログラミングやモブプログラミングを早い段階から取り入れ、知識を一人に閉じ込めない工夫をしています。あるインターン中心のチームでも、ペアプロを徹底したことでベロシティが向上した事例があり、少人数・経験不足という不利な条件でも、チームの組み方次第で成果は出せることが示されています。ゼロからの立ち上げで重要なのは、人数の多さではなく、役割の置き方と属人化を防ぐ仕組みなのです。なお、内製チームを段階的に育てる過程で生じやすい失敗やリスクについては、関連記事『開発チーム開発/導入の失敗/課題/注意点/リスクについて』もあわせてご覧ください。

外部開発チームを内製と組み合わせて活用した事例

外部開発チームを内製と組み合わせて活用した事例のイメージ

内製チームだけですべてを賄える企業は多くありません。採用が追いつかない、特定技術の知見が社内にない、繁忙期だけ開発力を増強したい、といった場面で活躍するのが外部開発チームの活用です。事例を見ると、成功している企業は外部開発チームを「単なる人手の補充」ではなく「自社の体制に組み込む一つのチーム」として扱い、内製チームとの境界を丁寧に設計しています。

内製×外部のハイブリッド体制で開発力を補強した事例

ハイブリッド体制で成果を出した事例に共通するのは、「どこまでを社内が担い、どこからを外部開発チームに委ねるか」という責任の線引きを、プロジェクトの初期に明確にしている点です。製品の意思決定とアーキテクチャの根幹は社内のPdMとテックリードが握り、機能単位の実装やテスト自動化の整備を外部チームに任せる、といった分担です。この線引きが曖昧なまま外部チームを増やすと、誰がどの判断に責任を持つのかが分からなくなり、かえって混乱を招きます。

外部開発チームを活用する際は、業務委託契約の形態が準委任か請負かによって、責任の所在やコスト負担が変わる点にも注意が必要です。成功事例では、契約形態と役割分担を契約書とRACIマトリクスの両方に落とし込み、「設計のAccountable(最終責任)は社内、実装のResponsible(実行責任)は外部チーム」といった形で、後の認識ずれを防いでいます。riplaも外部開発チーム/専属チームとして参画する際は、この責任分解を最初に握ることを重視しています。外部活用を成功させる鍵は、人を増やすことではなく、責任の地図を最初に描くことです。

専属開発チームで知識の蓄積を実現した事例

外部活用の中でも、案件ごとにメンバーが入れ替わる従来型の請負と一線を画すのが、固定メンバーで継続的に伴走する「専属開発チーム」の事例です。専属チームのメリットは、自社の事業ドメインや過去の経緯を理解したメンバーが継続して関わるため、毎回ゼロから説明し直す必要がなく、知識がチーム内に蓄積されていく点にあります。事例では、半年から1年かけて専属チームが自社の業務を深く理解した結果、内製チームに近い当事者意識でプロダクトに向き合えるようになったケースが報告されています。

専属開発チームを機能させるには、外部チームでありながら内製チームと同じ振り返りの場(KPTなど)やコミュニケーションのリズムを共有することが重要です。成功事例では、外部の専属チームも社内のスプリントレビューやデイリーの場に参加し、一体のチームとして運営しています。これにより、外部・内製という壁を越えて知識が流通し、チーム全体のベロシティが安定して向上していきます。専属開発チームは、外注の柔軟さと内製の継続性を兼ね備えた選択肢として、特に中長期のプロダクト開発で有効な体制だと言えます。

ペアプロ・品質メトリクスで定量改善した事例

ペアプロ・品質メトリクスで開発チームを定量改善した事例のイメージ

開発チームの良し悪しは、感覚ではなく数字で語れます。チームの取り組みを定量的に改善した事例は、自社のチームを評価し、投資対効果を経営に説明するうえで何よりの参考になります。ここでは、品質とベロシティを数字で改善した代表的な一次データを紹介します。これらは抽象論ではなく、具体的な打ち手と結果がセットになっている点に価値があります。

ソニー・NEC・住友電工の品質定量改善事例

チームの取り組みで品質を大きく改善した代表例が、ソニーの事例です。設計内での検証を徹底することで品質が60%向上し、ピアレビューでの不具合検出は1時間あたり1.92件と、一般的な水準とされる0.29件/時を大きく上回りました。これは、レビューという「チームで品質を作り込む活動」を仕組みとして回せば、属人的な能力に頼らずに品質を底上げできることを示しています。日立ハイテクのF2Tにおける事例でも、設計段階で漏れていた不具合が11件からゼロ件へと削減されたと報告されています。

規模の大きな組織でも、チーム運営の標準化は数字となって表れます。NECシステムテクノロジーは、品質管理の取り組み(QMTX)によって年間バグを約40%削減し、納期遅れを約30%、生産性を約20%改善したとされます。住友電工の組立型開発では、開発コストを30%削減し、COBOL比で約3倍の生産性、欠陥を半減させた事例も報告されています。これらに共通するのは、個人の頑張りではなく「チームと開発プロセスの設計」によって品質とコストを同時に改善している点です。事例を自社に活かすには、まず自社の品質をバグ摘出率(件/KL や 件/H)などの品質会計の指標で測り、改善の前後を数字で追える状態にすることが出発点になります。

ペアプロでベロシティが117%に伸びた事例

属人化を防ぎながら生産性を上げる打ち手として、事例で繰り返し効果が確認されているのがペアプログラミングです。ある事例では、ペアプロの導入によってチームのベロシティが18.8から22.0へ、約117%に向上しました。二人で一つの実装に取り組むため一見すると非効率に見えますが、レビューが同時に進み、手戻りやバグが減ることで、結果としてチーム全体のアウトプットが増えたのです。注目すべきは、この事例ではメンバーの半数がインターンであっても、ペアプロによってベロシティが向上した点です。

さらに進んだ取り組みとして、職種を横断したモブプログラミングで「仕様書レス設計」を実現した一次情報もあります。企画・設計・開発のメンバーが同じ画面を囲んでその場で意思決定することで、詳細な仕様書を介さずに認識を合わせ、設計漏れを防ぐという手法です。これらの事例が示すのは、ペアプロやモブプロは単なる流行のプラクティスではなく、「知識を一人に閉じ込めず、チームで品質を作り込む」ための具体的な装置だということです。少人数チームほど属人化のリスクが高いため、こうした手法の費用対効果は大きくなります。ベロシティ117%という数字は、チームの組み方ひとつで生産性が二桁パーセント変わることの証拠です。

まとめ

開発チーム事例のまとめイメージ

開発チームの導入事例・組成事例・成功事例を振り返ると、成功も立ち上げも、結局は「役割をRACIで明確にし、タックマンモデルの混乱期を前提に振り返りでチームを育て、コアは内製・手足は外部開発チームで補うハイブリッド体制を、ROIで経営を説得しながら段階的に広げる」という一点に集約されます。チームの質はソニーの品質60%向上やペアプロのベロシティ117%といった形で定量化でき、ペアプロ・モブプロ・品質メトリクスという具体的な打ち手で再現できます。非IT企業のゼロからの立ち上げ事例は、人数の多さではなく役割の置き方と属人化を防ぐ仕組みが成否を分けることを教えています。

事例を読むときに大切なのは、「どれだけ優秀な人を集めたか」ではなく「どう機能するチームに育てたか」という視点です。自社の規模と事業フェーズに照らし、まずは役割の明確化とチームの定量化という、再現性の高い一歩から始めてください。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、外部開発チーム/専属チームとして内製を補強し、責任分解とROIの可視化を前提にしたチームづくりを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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