追加開発の必要機能や標準機能の一覧について

既存システムへの追加開発を成功させたいと考えるとき、多くの担当者が見落としがちなのが「新しい機能そのもの」よりも「その機能を安全に足すための仕組み」です。稼働中のシステムに手を入れる追加開発では、いかに既存の処理を壊さずに新機能を追加できるかが成否を分けます。そのためには、影響範囲を調べる仕組み、既存機能が壊れていないかを確認する仕組み、段階的にリリースする仕組みといった、追加開発を支える機能・役割を理解しておく必要があります。

本記事は、追加開発が提供する機能・役割、すなわち既存システムへの機能追加・改修・スコープ拡張を安全に進めるための仕組みを、発注企業の視点から掘り下げる「機能特化」の解説です。影響範囲調査、回帰テストの自動化、CI/CDによる継続的なリリース、段階リリースの基盤、そして既存システムと新機能をつなぐ連携の仕組みまで、追加開発を支える機能を一次データとあわせて具体的に解説します。読み終えるころには、自社の追加開発でどんな仕組みに投資すべきかが見えてくるはずです。なお、追加開発の全体像をまだ把握していない方は、まず追加開発の完全ガイドから読むことをおすすめします。

影響範囲を見える化する調査・分析の機能

既存システムへの影響範囲を見える化する調査・分析機能のイメージ

追加開発を支える機能の中で、もっとも基礎となるのが影響範囲を見える化する調査・分析の仕組みです。既存システムは、画面・処理・データベースが複雑に絡み合っており、一見無関係に見える箇所に手を入れると、思わぬ場所で不具合が起きます。この連鎖的な影響を、開発前にできる限り把握することが、安全な追加開発の出発点になります。

ソースコード解析と依存関係の可視化機能

影響範囲調査の中心となるのが、既存システムのソースコードを読み解き、機能同士の依存関係を可視化する作業です。ある処理を修正したとき、その処理を呼び出している他の機能はどれか、共通して使われているデータ項目はどこに影響するかを、コードをたどって洗い出します。最近では、依存関係を図として表示するツールや、変更箇所から影響先を自動でたどる仕組みもあり、こうした機能を活用すると調査の精度とスピードが上がります。

影響範囲調査の重要性は、追加開発のコスト構造からも説明できます。追加開発の費用は約8割が人件費であり、上級SEの人月単価は100〜160万円とされています。影響範囲を見誤って手戻りが発生すると、この高い人件費が無駄に膨らみます。逆に、調査の段階で影響先を正確に押さえておけば、無駄な修正や後戻りを防ぎ、結果として費用を抑えられます。影響範囲の可視化機能への投資は、一見地味ですが、追加開発全体の採算を左右する重要な土台なのです。

既存仕様の文書化と属人化解消の機能

影響範囲調査をスムーズに進めるには、既存システムの仕様が文書化されていることが前提になります。ところが現実には、仕様書が古いまま更新されていなかったり、そもそも文書が存在せず、特定の担当者の頭の中にしか仕様がない、いわゆる属人化した状態の既存システムが少なくありません。属人化したシステムへの追加開発は、手探りで進めることになり、リスクが跳ね上がります。

そこで重要になるのが、追加開発の過程で既存仕様を改めて文書化し、属人化を解消していく機能・役割です。影響範囲を調査しながら、現状の仕様を図やドキュメントとして整理し直すことで、今回の追加開発だけでなく、次回以降の機能追加もスムーズになります。この文書化は、要件定義の質にも直結します。既存仕様が見える化されていれば、追加する機能の要件を正確に定義でき、認識のずれによる手戻りを防げます。追加開発の要件をどう整理するかについては『追加開発のRFP・要件定義書・提案依頼書について』もあわせてご覧ください。

既存機能を守る回帰テスト・品質保証の機能

既存機能を守る回帰テスト・品質保証機能のイメージ

追加開発で新機能を足すたびに付きまとうのが、「既存の機能が壊れていないか」という不安です。この不安を解消するのが、回帰テスト(リグレッションテスト)と品質保証の機能です。回帰テストとは、変更を加えた後に、既存機能がこれまで通り正しく動くかを確認するテストのことで、追加開発の安全性を支える要となります。

回帰テスト自動化の採算ラインと判断基準

回帰テストは手作業でも実施できますが、追加開発を繰り返すシステムでは自動化が有効です。自動化には初期の作り込み費用がかかるため、どこまで自動化するかの判断が重要になります。一般的な目安として、同一のテストを3〜5回繰り返すなら自動化が採算に合うとされています。年に何度も機能追加を行うシステムでは、回帰テストを自動化しておけば、追加のたびに既存機能を一括で確認でき、人手による確認の漏れも防げます。

自動化の判断は、機能の重要度でも変わります。売上に直結する決済処理や、止まると業務全体が滞る基幹処理は、優先的に自動テストを整備すべきです。一方で、めったに使われず変更も少ない機能まで自動化すると、かえって採算が合いません。回帰テストの機能は「すべてを自動化する」のではなく、「変更頻度が高く、壊れると影響が大きい箇所から優先的に自動化する」という戦略的な投資判断が求められます。この判断ができるパートナーかどうかは、追加開発の委託先を選ぶ重要な観点になります。

デグレードを防ぐテスト設計の機能

追加開発で最も避けたいのが、デグレード(回帰不具合)です。これは、新機能を足したことで、これまで正常に動いていた既存機能が動かなくなる現象を指します。小さな修正でも連鎖的に影響が及ぶため、デグレードは追加開発に常につきまといます。これを防ぐには、変更箇所だけでなく、影響範囲調査で洗い出した影響先も含めてテストする、という設計が欠かせません。

デグレードを防ぐテスト設計では、影響範囲調査と回帰テストが連動していることが重要です。どこに影響が及ぶかを把握していなければ、何をテストすべきかも決まりません。影響範囲の可視化機能で洗い出した範囲を、回帰テストの対象として確実にカバーする。この連携があって初めて、追加開発の品質が担保されます。テストの機能は単独で存在するのではなく、影響範囲調査と組み合わせて初めて効果を発揮する、という点を理解しておくことが大切です。品質保証の仕組みに投資することは、リリース後のトラブル対応コストを大きく減らす、堅実な選択だと言えます。

安全に足し続けるCI/CD・段階リリースの基盤

CI/CD・段階リリースの基盤のイメージ

影響範囲調査と回帰テストが整ったら、それらを継続的に回すための基盤として、CI/CDと段階リリースの仕組みが活きてきます。これらは、新機能を「小さく・頻繁に・安全に」リリースし続けるための土台であり、追加開発を繰り返すシステムほど効果が大きくなります。一度に大きく変更するのではなく、小刻みに変更を積み重ねる進め方を支える機能です。

CI/CDで変更を自動検証・自動反映する機能

CI/CDとは、ソースコードを変更するたびに、自動でテストを実行し(継続的インテグレーション)、問題がなければ自動で本番環境に反映する(継続的デリバリー)仕組みのことです。追加開発でこの基盤を整えると、機能を足すたびに回帰テストが自動で走り、既存機能が壊れていないかを即座に確認できます。人手でテストとリリースを行う場合に比べ、確認漏れや作業ミスが大幅に減り、リリースのスピードも上がります。

CI/CDの基盤は、前述の回帰テスト自動化と一体で考えると効果が最大化されます。自動化されたテストをCI/CDのパイプラインに組み込むことで、開発者が変更をコミットするたびに、既存機能への影響が自動でチェックされます。これにより、デグレードを早い段階で発見でき、本番で問題が起きるのを未然に防げます。追加開発を頻繁に行うシステムでは、このCI/CDへの初期投資が、長期的に見て手作業のコストとトラブル対応コストを大きく上回る効果を生みます。

段階リリースとロールバックで手戻りを防ぐ機能

段階リリースとは、新機能を一度に全ユーザーへ公開するのではなく、一部のユーザーや一部の機能から段階的に公開していく仕組みです。短いスプリント(開発期間の単位)ごとに小さくリリースすることで、問題が起きても影響を最小限に抑えられ、手戻りを防げます。アジャイル開発で短いスプリントを回すと手戻りを防ぎやすいとされており、段階リリースの基盤はこの進め方を技術的に支えます。

段階リリースとセットで重要なのが、ロールバック(切り戻し)の機能です。新機能をリリースした後に問題が発覚したとき、ボタン一つで以前の状態に戻せる仕組みがあれば、トラブルの被害を最小限に抑えられます。既存システムが安定稼働している追加開発では、「新機能で問題が起きても、すぐに元に戻せる」という安心感が、攻めの機能追加を可能にします。段階リリースとロールバックの基盤は、追加開発を「怖いもの」から「安全に試せるもの」へと変える、重要な機能・役割を担っているのです。

既存システムと新機能をつなぐ連携の仕組み

既存システムと新機能をつなぐ連携の仕組みのイメージ

追加開発では、新しく足す機能を、既存システムや外部サービスとどうつなぐかが重要な論点になります。既存の処理やデータを活かしながら新機能を追加するには、両者を安全に結ぶ連携の仕組みが欠かせません。ここでは、追加開発を支える連携機能と、その設計のポイントを見ていきます。

API連携で既存資産を活かす機能

既存システムに新機能を足すとき、既存の処理を直接書き換えるのではなく、APIという接続口を介してつなぐ方法が安全です。APIを使えば、既存システムの中身に手を入れずに、新機能から既存のデータや処理を呼び出せます。ANAが既存システムをAPIゲートウェイ化し、約5か月で外部から呼び出しやすい形に整えた事例も、この発想に基づいています。既存資産を壊さずに活かす連携機能は、追加開発のリスクを下げる有効な手段です。

API連携の機能を整えておくと、今回の追加開発だけでなく、将来の機能追加もしやすくなります。一度APIという窓口を作っておけば、次に新しいサービスや外部システムとつなぐときも、その窓口を再利用できます。これは、追加開発を「その場限りの継ぎ足し」から「拡張しやすい土台づくり」へと引き上げる効果があります。既存システムを土台として残しつつ、その上にAPIや新機能層を足していくという発想は、追加開発の理想形のひとつです。

パッケージ・OSS活用でコストを抑える機能

追加する機能をすべてゼロから作る必要はありません。既存のパッケージソフトやOSS(オープンソースソフトウェア)を活用すれば、開発費用を大きく圧縮できます。一次データでは、パッケージやOSSを活用することで費用を40〜60%圧縮できる場合があるとされています。たとえば認証機能や帳票出力機能など、汎用的な機能は既存の部品を組み込み、自社固有の業務ロジックだけを作り込む、という設計が賢い選択です。

ただし、パッケージやOSSの活用には、既存システムとの相性を見極める判断が必要です。導入する部品が既存の仕組みと合わなければ、かえって連携の手間が増え、コスト圧縮の効果が薄れます。どの機能を既存部品で賄い、どの機能を自前で作るかの切り分けは、影響範囲調査で得た既存システムの理解があってこそ、正しく判断できます。連携の仕組みは、コストと品質の両面で追加開発を支える、重要な機能・役割を担っているのです。

まとめ

追加開発の機能のまとめイメージ

追加開発を支える機能・役割を振り返ると、その中核は「既存システムへの影響範囲を見える化し、既存を壊さずに新機能を安全に足し続けられる仕組み」にあります。影響範囲調査と既存仕様の文書化を土台に、回帰テストの自動化(同一テスト3〜5回が採算ラインの目安)、CI/CDによる自動検証、段階リリースとロールバック、API連携やパッケージ・OSS活用といった機能が、追加開発の品質と費用を左右します。これらは目立たない裏方の機能ですが、追加開発の成否を決める本質です。

追加開発の機能を考えるときに大切なのは、「派手な新画面」ではなく「安全に足し続ける土台」に目を向けることです。影響範囲調査から優先的に投資し、回帰テストやCI/CDで品質を担保すれば、攻めの機能追加も怖くありません。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、これらの土台となる機能の整備から、現場に定着する安全な追加開発までを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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