生成AIシステム開発の必要機能や標準機能の一覧について

生成AIシステム開発を進めるうえで、「どのような機能や技術要素を組み込めば、業務で使えるレベルの精度を出せるのか」という疑問は、多くの担当者が直面する重要なテーマです。とりわけ社内データを活用するRAG(検索拡張生成)型のシステムでは、データの取り込みから回答生成までの一連のパイプラインに、検索精度を左右する数多くの機能要素が含まれます。これらを正しく理解しないまま開発を進めると、デモは動くのに本番で使えないシステムが出来上がってしまいます。

本記事では、生成AIシステム開発に必要な機能・標準機能の一覧を、RAGパイプラインの構成要素に沿って体系的に解説します。文書の取り込み・分割、検索アルゴリズム、リランキング、回答生成、ワークフロー制御といった各機能の役割と、精度を最大化するための選定指針を具体的な実証データとともに整理しました。生成AIシステム開発の費用相場や進め方を含めた全体像を把握したい方は、あわせて生成AIシステム開発の完全ガイドもご覧ください。それでは各機能を詳しく見ていきましょう。

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生成AIシステムを支えるRAGパイプラインの全体機能

生成AIシステムを支えるRAGパイプラインの全体機能

生成AIシステム、とりわけ社内データを活用するRAG型システムの機能は、大きく「データを取り込んで検索可能な状態にする機能(インデックス化)」と「ユーザーの質問に対して関連情報を探し回答を生成する機能(検索・生成)」の2つに分かれます。これらが一連のパイプラインとして連動することで、社内文書に基づいた正確な回答が実現します。それぞれの構成要素を理解することが、必要機能を過不足なく見極める出発点となります。

インデックス化(データ取り込み・ベクトル化)機能

インデックス化は、社内に散在する文書を生成AIが検索できる形に変換する機能群です。具体的には、PDFやWord、Excelといった多様なファイルからテキストを抽出し、後述するチャンキングで適切な単位に分割したうえで、各テキストの意味を数値の並び(ベクトル)に変換します。この変換された情報を保存するのがベクトルデータベースであり、Pinecone、pgvector、Weaviateといった製品が広く使われています。検索の品質はこのインデックス化の丁寧さに大きく左右されるため、生成AIシステムの土台となる重要機能です。

ベクトルデータベースの選定では、扱うデータ量、検索速度、既存システムとの親和性が判断軸となります。たとえばPostgreSQLを既に運用している組織であれば、その拡張機能であるpgvectorを使うことで運用負荷を抑えられます。一方、大規模なデータと高速検索を求める場合は、専用設計のPineconeやWeaviateが適しています。データの増加に伴うスケーリング費用も考慮し、初期段階から将来の規模を見据えて選ぶことが重要です。

検索・回答生成機能

検索・回答生成は、ユーザーの質問を受け取り、インデックス化された情報の中から関連性の高い箇所を探し出し、それを根拠として大規模言語モデルが回答を作成する機能です。ここで重要なのは、関連情報の検索精度が回答品質を直接決定するという点です。検索で誤った文書を拾えば、いかに高性能なモデルでも誤った回答を生成してしまいます。そのため、後述する検索アルゴリズムやリランキングといった精度向上機能が不可欠となります。

回答生成の基盤となるモデルには、Azure OpenAI ServiceやAWS Bedrockといったクラウドサービス経由で利用できる大規模言語モデルが一般的に用いられます。これらはセキュリティやデータの取り扱いに関する企業向けの要件を満たしやすく、自社の機密情報を扱う生成AIシステムの基盤として採用されるケースが増えています。回答の正確さ(忠実性)を担保するため、参照した文書の出典を回答に明示する機能を組み込むことも、業務利用では標準的な要件となります。

精度を最大化するチャンキングと検索アルゴリズム

生成AIシステムの精度を決定づける最重要機能が、文書をどの単位で分割するかを決めるチャンキングと、関連情報をどう探すかを決める検索アルゴリズムです。この2つの設計次第で、同じデータと同じモデルを使っても回答精度は大きく変わります。実証データを交えて、それぞれの選定指針を解説します。

チャンキング(文書分割)の最適化機能

チャンキングとは、長い文書を検索しやすい適切なサイズの塊(チャンク)に分割する処理です。チャンクが大きすぎると無関係な情報まで含まれて回答にノイズが混ざり、小さすぎると文脈が断片化して意味が失われます。たとえば規程文書であれば条文単位、マニュアルであれば手順のまとまり単位など、文書の構造に合わせて分割の境界を設計することが精度向上の鍵となります。前述の東京ガスの事例でも、精度改善の主要な施策としてこのチャンキングの見直しが行われました。

チャンキングの最適化機能では、固定の文字数で機械的に区切る方式だけでなく、見出しや段落といった文書の意味的な区切りを尊重して分割する方式や、隣接するチャンク同士を一部重複させて文脈の連続性を保つ方式などを、データの性質に応じて選択します。この分割設計は地味でありながら回答精度を大きく左右するため、生成AIシステム開発において最も工数を投じるべき機能領域の一つです。

検索アルゴリズムには、単語の一致を見るキーワード検索と、意味の近さを見るベクトル検索があり、これらを組み合わせたものがハイブリッド検索です。ある実証データでは、ベクトル検索のみではF1スコア(検索の正確さを示す指標)が56%にとどまったのに対し、ハイブリッド検索に後述のリランキングを加えると85%まで向上し、52%もの改善が確認されました。キーワード検索が固有名詞や型番の完全一致に強く、ベクトル検索が言い換えや概念的な近さに強いため、両者を併用することで互いの弱点を補えるのです。

業務システムでは、製品名や社内用語、略語といった固有表現を正確に検索する必要があるため、ベクトル検索だけでは取りこぼしが発生しがちです。ハイブリッド検索を標準機能として組み込むことで、こうした取りこぼしを防ぎ、実用に耐える検索精度を確保できます。前述の東京ガスの事例でも、ハイブリッド検索の導入が実用化への決定打となりました。生成AIシステム開発において、ハイブリッド検索はもはや必須機能と位置づけるべき要素です。

回答品質を高めるリランキングと評価機能

回答品質を高めるリランキングと評価機能

検索で関連情報を集めた後、その中からさらに最適なものを選び抜くリランキング機能と、システムの精度を定量的に測る評価機能は、生成AIシステムを実用レベルに引き上げるために欠かせません。これらは導入直後よりも、運用しながら精度を改善していく段階で真価を発揮します。

リランカー(再評価)機能の役割

リランキングとは、検索で取得した複数の候補を、質問との関連性が高い順に並べ替える機能です。検索精度を上げようと取得件数(Top-K)を増やすと、関連性の低い情報まで混ざってノイズが増えるというジレンマが生じます。このノイズを取り除くため、Cohere RerankやCross-Encoderといった再評価の仕組みを使い、本当に関連性の高い情報だけを大規模言語モデルに渡すのがリランカーの役割です。前述のハイブリッド検索が85%という高精度を実現できたのも、このリランキングを組み合わせたからにほかなりません。

リランカーを組み込むことで、検索段階では幅広く候補を集め、最終的にモデルへ渡す段階で精度を絞り込むという二段構えの検索が可能になります。これにより、関連情報の取りこぼしを防ぎつつ、ノイズによる回答品質の低下も抑えられます。回答の正確さを業務水準まで高めるうえで、リランキングは標準機能として組み込むことが推奨されます。

評価フレームワークによる精度の可視化機能

生成AIシステムの精度を継続的に高めるには、回答品質を主観ではなく数値で測る評価機能が不可欠です。RagasやDeepEvalといった評価フレームワークを用いると、検索で適切な情報を取得できているかを示すContext Precision(検索精度)や、回答が参照文書に忠実かを示すFaithfulness(忠実性)といった指標を定量的に算出できます。これにより、精度が出ない原因が検索側にあるのか、生成側にあるのかを切り分けられるようになります。

評価機能を組み込まずに精度改善を進めると、大規模言語モデルを高性能なものに替えれば良いという誤った判断に陥りがちです。しかし実際には、検索精度の低さが原因であるケースが多く、モデル変更では解決しません。評価フレームワークで原因を定量的に特定することで、チャンキングの見直しやハイブリッド検索の導入といった、本当に効果のある改善に工数を集中できます。継続的な精度改善を支える土台として、評価機能は生成AIシステムの標準機能に含めるべきです。

ワークフロー制御とAIエージェント機能

ワークフロー制御とAIエージェント機能

近年の生成AIシステムは、単発の質問応答にとどまらず、複数の処理を順序立てて実行するワークフロー制御や、自律的にタスクを進めるAIエージェントの機能を備えるようになっています。これらは複雑な業務を自動化するうえで重要な機能群であり、ローコードツールの普及によって実装のハードルも下がっています。

ローコードによるワークフロー設計機能

ワークフロー制御とは、ユーザーの入力に応じて処理の流れを分岐させたり、複数の処理を連結させたりする機能です。ローコード開発プラットフォームのDifyでは、開始ノード、LLMノード、IF/ELSEノード、コードノード、終了ノードという5つの主要なノードを組み合わせることで、複雑な処理フローを視覚的に設計できます。たとえば、質問の種類を判定して回答方法を切り替えたり、外部システムからデータを取得して回答に反映させたりといった処理を、プログラミングの専門知識が浅くても構築できます。

こうしたローコードツールの活用により、生成AIシステムの開発期間を短縮し、現場の要望に応じた柔軟なカスタマイズを実現しやすくなります。ただし、視覚的に組めるとはいえ、検索精度の設計やデータ整備といった本質的な作業は依然として重要であり、ツールが万能なわけではありません。ワークフロー設計機能は、あくまで設計した処理を効率良く実装するための手段と位置づけることが大切です。

AIエージェントによる自律タスク実行機能

AIエージェントは、与えられた目標に対して、自ら必要な手順を判断し、外部システムと連携しながら一連のタスクを完了させる機能です。たとえば、社内システムのAPIと連携して情報を取得し、その内容をもとに判断を行い、次の処理へ進むといった自律的な動作が可能になります。前述の札幌市の旅費事務AIエージェントは、規程を参照しながら確認作業を自律的に進めることで処理時間を27.2%短縮した実例です。

AIエージェント機能を組み込む際は、どこまでをAIに任せ、どこから人間が判断するかという権限設計が重要になります。自律性を高めるほど効率は上がりますが、誤った判断のリスクも増えるため、重要な処理には人間の確認を挟む仕組みを設けるのが一般的です。生成AIシステムにエージェント機能を組み込むことで、単なる質問応答を超えた業務の自動化が実現しますが、その効果と安全性のバランスを設計することが成功の条件となります。

まとめ

生成AIシステム開発機能のまとめ

本記事では、生成AIシステム開発に必要な機能・標準機能を、RAGパイプラインの構成要素に沿って解説しました。土台となるインデックス化と検索・回答生成の機能に始まり、精度を左右するチャンキングとハイブリッド検索、回答品質を高めるリランキングと評価フレームワーク、そして業務自動化を担うワークフロー制御とAIエージェント機能まで、それぞれの役割と選定指針を整理しました。とりわけハイブリッド検索とリランキングの組み合わせがF1スコアを56%から85%へと52%改善した実証データは、これらが必須機能であることを明確に示しています。

生成AIシステムの機能を選定する際に最も重要なのは、流行のモデルを採用することではなく、社内データの性質に合わせてチャンキングと検索を丁寧に設計し、評価機能で精度を可視化しながら改善できる構成を整えることです。必要な機能を過不足なく組み込み、運用しながら育てていく前提でシステムを設計することが、業務で使える生成AIシステムへの近道となります。自社に最適な機能構成をご検討の際は、データの特性と業務要件を踏まえた設計から、信頼できる開発パートナーへの相談をお勧めします。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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