官公庁のシステムの必要機能や標準機能の一覧について

官公庁のシステムを検討する担当者が要件をまとめる前段でつまずきやすいのが、「行政のシステムには、そもそもどんな機能が標準で備わっていて、どこまでをシステムに任せられるのか」という機能の全体像です。住民記録や税、福祉といった基幹業務から、RPAによる自動化、AIチャットボットによる問い合わせ対応、権限管理や監査ログといった行政特有の統制機能まで、官公庁のシステムが提供する機能は多層的で、整理しないまま要件定義に入ると過不足が生じます。

本記事は、官公庁のシステムが提供する必要機能・標準機能を、行政の発注側が把握しておくべき視点で体系的に整理する「機能特化」の解説です。定型業務を自動化するRPA・AI-OCR、住民との接点を担うオンライン申請・チャットボット、基幹業務を支える台帳管理・連携機能、そして行政に不可欠な権限管理・監査ログ・セキュリティ機能まで、一次データとあわせて具体的に解説します。読み終えるころには、自組織の要件として「どの機能が必須で、どの機能が任意か」を切り分ける基準が持てるはずです。なお、官公庁システムの全体像をまだ把握していない方は、まず官公庁のシステムの完全ガイドから読むことをおすすめします。

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定型業務を自動化する機能(RPA・AI-OCR)

定型業務を自動化する官公庁システムの機能イメージ

官公庁のシステムが提供する機能の中で、業務負担軽減にもっとも直結するのが自動化機能です。申請書の文字を読み取るAI-OCR、複数システムへの入力を代行するRPA、これらを組み合わせることで、職員が手作業で行っていた転記や台帳更新を機械に置き換えられます。行政の内部事務は定型処理の比率が高いため、この機能群の効果が出やすいのが特徴です。

RPAによる業務代行機能と適用範囲

RPAは、人がパソコン上で行う操作をソフトウェアのロボットが再現する機能です。たとえば、申請データを基幹システムに登録する、複数の画面をまたいで情報を照合する、定型の帳票を出力するといった定型操作を、決められた手順どおりに自動実行します。官公庁では、児童手当や税務など、月末や年度替わりに大量処理が集中する業務でとくに効果が高く、長岡市では74業務をRPA化して年18,603時間を削減した実績があります。

RPA機能を要件に組み込む際に重要なのは、適用範囲の見極めです。判断を伴わない定型業務には強い一方、例外処理が多い業務や、ルールが頻繁に変わる業務には向きません。総務省の2023年調査では導入自治体の78.3%が効果を実感し平均削減率は32.7%でしたが、初年度は計画の65%にとどまる傾向があります。機能の特性を理解したうえで、対象業務を選別することが、RPAを活かす前提になります。

AI-OCRによる紙書類のデータ化機能

AI-OCRは、紙の申請書や手書き帳票をスキャンし、文字を認識してデータ化する機能です。行政には依然として紙ベースの申請が多く残るため、入口でデータ化できれば、その後の処理をRPAにつなげて一気通貫で自動化できます。恵庭市では税務16業務でAI-OCRを併用し、年1,100時間を削減、1件あたりの処理を約30秒にまで短縮しました。

AI-OCRの機能を評価するときは、認識精度と確認フローの設計が重要です。手書き文字の認識には限界があるため、認識結果を人が目視で確認・補正する工程をどう組み込むかで、実務での使い勝手が変わります。RPAとAI-OCRはセットで導入することで効果が最大化されるため、要件定義の段階で「紙の入口からデータ処理の出口まで」を一連の流れとして設計する視点が欠かせません。

住民接点を担う機能(申請・チャットボット)

住民接点を担う官公庁システムの機能イメージ

官公庁のシステムには、内部効率化だけでなく、住民との接点を担う機能群があります。オンライン申請、AIチャットボット、各種予約システムといった機能は、住民が窓口に来なくても手続きを完結できる環境をつくり、行政サービスの利便性を底上げします。これらは住民満足度に直結するため、近年とくに重視される機能領域です。

オンライン申請・電子申請の機能

オンライン申請機能は、住民がスマートフォンやパソコンから24時間手続きを行える仕組みです。申請フォームの入力支援、本人確認、申請状況の照会、職員側の受付・審査といった一連の機能で構成されます。重要なのは、申請されたデータがそのまま職員側のシステムにデータとして流れる設計です。これにより、受付後の転記作業がなくなり、住民の利便性と内部効率化が同時に実現します。

申請機能を要件化する際は、対象とする手続きの選定が肝になります。すべての手続きを一度にオンライン化するのではなく、申請件数が多く定型性の高い手続きから順に対応することで、投資効果を早期に可視化できます。窓口の待ち時間30%短縮やオンライン申請比率の目標値といった定量KPIを設定し、機能の効果を測定可能にしておくことが、住民接点機能を活かす条件です。

AIチャットボットによる問い合わせ対応機能

AIチャットボット機能は、住民からのよくある問い合わせに自動で一次回答する仕組みです。北九州市の観光案内チャットボットのように、定型的な質問を24時間機械が受け付けることで、職員は複雑な相談や個別判断が必要なケースに人手を集中できます。ごみの出し方、各種手続きの方法、施設の開館時間といった頻出の質問に即時回答できるのが強みです。

チャットボット機能で見落とされがちなのが、導入後の改善機能です。住民がどんな質問を入力し、どこで回答に行き詰まったかを記録する利用ログ分析の機能があってはじめて、回答精度を継続的に高められます。回答が的外れなまま放置されると、結局は電話に戻ってしまうため、チャットボットは「回答する機能」だけでなく「学習・改善を支える機能」までをセットで備えているかどうかが、実務での価値を左右します。

自動化と申請をつなぐ連携機能

自動化機能の効果を最大化するのが、AI-OCRとRPAを組み合わせた一連の連携です。紙の申請書をAI-OCRでデータ化し、そのデータをRPAが基幹システムに自動登録する——この入口から出口までを切れ目なくつなぐことで、人手を介さない処理が実現します。個々の機能が優れていても、それらが連携していなければ、途中で手作業が挟まり効果が半減します。機能を選ぶときは、単体の性能だけでなく、他機能との連携のしやすさも重要な視点です。

同様に、オンライン申請で受け付けたデータが、そのまま基幹業務システムに流れる連携も重要です。申請データが自動で受付・審査の業務システムに渡れば、職員の転記作業がなくなり、住民の利便性と内部効率化が同時に実現します。逆に、申請は受け付けても後続処理が手作業なら、効果は限定的です。機能は単独で評価するのではなく、業務の流れ全体の中でどうつながるかという連携の観点で要件化することが、投資効果を高める鍵になります。

基幹業務を支える台帳管理・連携機能

基幹業務を支える官公庁システムの台帳管理・連携機能イメージ

官公庁のシステムの土台を成すのが、住民記録・税・福祉といった基幹業務の台帳管理機能と、それらをつなぐ連携機能です。標準化・ガバメントクラウド移行が進む中、これらの機能は国の標準仕様に沿って統一されつつあり、業務間・システム間のデータ連携が一段と重要になっています。

標準仕様に沿った台帳管理機能

台帳管理機能は、住民の各種情報を正確に記録・更新・照会する基幹機能です。標準化により、国が定めた標準仕様書に沿って機能が統一される方向にありますが、標準仕様書の要件数は平均1.2倍、一部の業務では3倍以上に膨らんでおり、機能の網羅性が求められています。台帳管理機能を評価する際は、検索・更新・履歴管理といった基本機能に加え、標準仕様への準拠度を確認することが重要です。

台帳管理で見落とせないのが、過渡期のデータ移行に関わる機能です。旧システムから新システムへ台帳を移す際、データのクレンジング(不整合の修正)が不十分だと、未納データの誤表示といったトラブルが発生します。新旧が混在する移行期間に正しくデータを扱える機能を備えているかどうかが、移行の安全性を左右します。台帳管理は「平常時の機能」だけでなく「移行時の機能」まで含めて要件化する必要があります。

マルチベンダー環境でのシステム連携機能

行政システムは、業務ごとに異なるベンダーの製品が動くマルチベンダー環境が一般的です。住民記録、税、福祉といったシステムを相互に連携させる機能が、業務全体を滑らかに回す前提になります。ガバメントクラウド上での連携では、接続エラーが起きた際に市側が原因の切り分けを強いられる実態があり、連携機能の安定性と、障害時の切り分けを支える機能が重要です。

連携機能を要件化する際は、データ連携の方式、連携のタイミング、エラー時のログ出力といった点を明確にしておく必要があります。どのシステムが、どのデータを、いつ、どの形式で受け渡すのかが曖昧なまま開発に進むと、後の連携トラブルに直結します。複数ベンダーをまたぐ連携では、各ベンダーの責任範囲を機能仕様の段階で切り分けておくことが、安定運用の土台になります。

施設予約・各種予約を担う機能

住民接点機能の一つに、公共施設や窓口相談の予約機能があります。体育館や会議室といった公共施設の空き状況を住民が確認し、オンラインで予約できる仕組みは、電話や窓口での予約受付に追われていた職員の負担を軽減します。あわせて、窓口相談の事前予約機能があれば、来庁が特定の時間帯に集中するのを防ぎ、待ち時間の平準化にもつながります。

予約機能を評価するときは、住民の使いやすさと職員の管理しやすさの両面を見る必要があります。住民側はスマートフォンから直感的に予約でき、職員側は予約状況を一覧で把握し、変更やキャンセルに対応できることが望まれます。予約データが他のシステムと連携できれば、施設利用の統計分析にも活用でき、住民ニーズに応じた施設運営の判断材料にもなります。予約機能は地味ですが、住民の日常的な利便性を支える実用的な機能です。

行政に不可欠な権限管理・監査ログ機能

行政に不可欠な権限管理・監査ログ機能のイメージ

官公庁のシステムが民間のシステムと大きく異なるのが、行政特有の統制機能の重みです。住民の個人情報を大量に扱う行政では、誰がどの情報にアクセスできるかを制御する権限管理と、いつ誰が何をしたかを記録する監査ログが、システムの信頼性を支える生命線になります。これらは「あれば便利」ではなく「なければ運用できない」必須機能です。

役割に応じた権限管理機能

権限管理機能は、職員の役割や所属に応じて、閲覧・編集・削除といった操作を細かく制御する仕組みです。たとえば、税務担当者は税情報にアクセスできるが福祉情報にはアクセスできない、管理職は承認操作ができるが一般職員はできない、といった制御を行います。個人情報保護の観点から、必要最小限の権限だけを付与する設計が原則です。

権限管理で過去に重大な事故が起きた例として、設定をベンダー任せにした結果、患者の個人情報が外部から閲覧可能な状態になっていた医療分野の事例があります。行政でも同様に、権限の初期設定や運用ルールが曖昧だと、情報漏えいのリスクが一気に高まります。権限管理機能は、機能として備わっているだけでなく、設定内容を発注側が理解し、定期的に見直せる運用体制とセットで考える必要があります。

監査ログ・操作証跡の記録機能

監査ログ機能は、システム上で行われた操作を「いつ・誰が・どの情報に・何をしたか」という形で記録する機能です。住民からの開示請求や、内部での不正アクセスの調査、情報漏えい発生時の原因究明など、行政の説明責任を果たすうえで欠かせません。ログを取得するだけでなく、改ざんを防ぎ、必要なときに迅速に検索・抽出できる機能が求められます。

監査ログは、平常時には目立たない機能ですが、有事の際にその価値が問われます。万一システム障害やサイバー攻撃が発生したとき、ログが正しく残っていれば被害範囲の特定と復旧判断が迅速に行えます。逆にログが不十分だと、何が起きたのかすら分からず、住民への説明も復旧もままなりません。権限管理・監査ログ・セキュリティ機能は、住民の信頼を守る最後の砦として、要件定義で妥協してはいけない領域だと言えます。

移行・運用・BCPを支える機能

移行・運用・BCPを支える官公庁システムの機能イメージ

官公庁のシステム機能を語るとき、日常業務の機能だけでなく、移行・運用・非常時を支える機能まで含めて考えることが重要です。これらは平常時には目立ちませんが、システムのライフサイクル全体を通じて行政サービスの継続を支える、縁の下の機能群です。

データ移行と利用ログ分析を支える機能

システム刷新では、旧システムから新システムへデータを移す移行機能が不可欠です。移行対象データの抽出、形式変換、移行後の件数照合や内容検証といった機能が、移行の安全性を支えます。クレンジング(データの不整合修正)を支援する機能があれば、未納データの誤表示といったトラブルを防ぎやすくなります。移行機能は一度きりの利用に見えますが、リハーサルを含めると複数回稼働するため、確実性が求められます。

導入後の運用を支えるのが、利用ログ分析の機能です。どの機能が、どれだけ、誰に使われているかを可視化できれば、定着状況を客観的に把握できます。利用率が低い機能を特定し、現場ヒアリングと組み合わせてUIや操作手順を改善する——この継続的なオンボーディングを支えるのが利用ログ分析機能です。納品で関係が終わるのではなく、ログを起点に改善を回せる機能を備えているかが、システムを「使われる状態」に保つ条件になります。

障害・復旧を支えるバックアップとBCP機能

行政システムは住民の生活基盤を支えるため、障害やサイバー攻撃で停止したときの備えとなる機能が欠かせません。定期的なバックアップ機能、障害発生時に迅速に復旧するための仕組み、そして被害範囲を特定するためのログ機能が、業務継続の土台になります。これらは「起きないこと」を前提にせず、「いつか起きること」を前提に設計する必要があります。

あわせて、システム停止時に紙(アナログ)で業務を回す運用も想定しておく必要があります。これはシステムの機能というより運用設計の領域ですが、システムが復旧したときに紙で処理した内容を遡って登録する機能があると、復旧後の業務がスムーズになります。日常の効率化機能だけでなく、こうした非常時を支える機能まで視野に入れることで、住民サービスを止めない強いシステムになります。機能要件を組み立てる際は、平常時・移行時・非常時という三つの局面を漏れなくカバーする視点が大切です。

まとめ

官公庁システムの機能のまとめイメージ

官公庁のシステムが提供する機能を整理すると、大きく四つの層に分かれます。RPA・AI-OCRによる定型業務の自動化機能、オンライン申請・チャットボットといった住民接点の機能、台帳管理・連携といった基幹業務を支える機能、そして権限管理・監査ログ・セキュリティといった行政に不可欠な統制機能です。長岡市の年18,603時間削減や恵庭市の年1,100時間削減といった一次データは、機能を適切に選び活かせば、業務負担の軽減が定量的に実現することを示しています。

機能を要件化するときに大切なのは、「すべての機能を盛り込む」ことではなく、「自組織の業務に必須の機能と任意の機能を切り分ける」ことです。標準仕様への準拠、移行時のデータ取り扱い、マルチベンダー連携、そして統制機能の確かさを軸に、過不足のない機能要件を組み立ててください。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、行政の業務に即した機能の取捨選択と、定着まで見据えたシステムづくりを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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