商品情報管理システム(PIM)の導入/開発事例や活用/成功事例について

商品情報管理システム(PIM)の導入を検討するとき、多くの担当者がまず知りたいのは「同じように大量のSKUを抱え、ECや卸、実店舗の複数チャネルに商品情報を配信している企業が、実際にどうやって商品データを一元化し、どんな成果を出したのか」という具体的な事例ではないでしょうか。PIMは、商品名・型番・スペック・画像・価格・在庫といった商品にまつわる情報を一カ所で管理し、ECサイトやモール、紙カタログ、店舗システムへ正確に配信するための仕組みです。Excelとメールで商品マスタを回している現場が多く、抽象的な機能説明だけでは投資判断が進みにくいのが実情です。

本記事は、商品情報管理システム(PIM)の導入事例・開発事例・活用事例・成功事例を、発注企業の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。Excel運用からの脱却で商品登録工数を削減した事例、OMOで実店舗とECの在庫・商品情報を一元化して売り越しを解消した事例、卸の取引先別価格・リベートをマスタに組み込んだ事例、そして基幹システム(ERP)とマスタを統合して受発注から請求まで自動化した事例まで、一次データとあわせて具体的に解説します。なお、PIM導入の全体像をまだ把握していない方は、まず商品情報管理システム(PIM)の完全ガイドから読むことをおすすめします。

▼全体ガイドの記事
・商品情報管理システム(PIM)の完全ガイド

Excel運用脱却で商品登録工数を削減した事例

Excel運用脱却で商品登録工数を削減したPIM事例のイメージ

PIM導入でもっとも分かりやすい成果が出るのが、Excelとメールによる商品マスタ管理からの脱却です。多くの企業では、商品情報がExcelファイルや各担当者のローカル環境に散在し、ECチームと卸チーム、店舗チームがそれぞれ別の商品データを持っている状態が常態化しています。この分散こそが、二重入力とデータ不整合、そして商品登録の遅延を生む根本原因になっています。

商品登録の二重入力をなくし工数を半減した事例

分散したExcel運用をPIMに集約すると、もっとも直接的に効くのが商品登録工数の削減です。従来は新商品が出るたびに、EC用の商品データ、モール用のデータ、卸の商品台帳、店舗POS用のマスタを、それぞれの担当者が別々に手入力していました。PIMで商品情報を一元管理し、各チャネルへ自動配信する仕組みにすれば、入力は一度で済み、二重入力そのものが消えます。これにより、商品登録に関わる工数を半減させた事例が報告されています。

重要なのは、この削減効果を漠然とした効率化ではなく、自社の数字に当てはめて定量化することです。月に登録する新商品数、1商品あたりの登録時間、それを掛けるチャネル数を掛け合わせれば、削減できる工数が概算できます。たとえば月100商品を4チャネルに登録し、1商品あたり15分かかっていた場合、二重入力の解消だけで月75時間分の作業が圧縮されます。事例を読むときは、こうした自社の取引量への置き換えを必ず行ってください。

データクレンジングと商品コード統一で精度を上げた事例

Excel脱却の効果は、工数削減だけではありません。PIM導入の過程で必ず行うデータクレンジングそのものが、商品情報の精度を一段引き上げます。長年Excelで運用してきた商品マスタには、同じ商品が異なる型番で重複登録されていたり、スペックの記載が担当者ごとにばらついていたり、廃番商品が削除されずに残っていたりと、さまざまな乱れが蓄積しています。PIM移行は、この乱れを棚卸しして整える絶好の機会になります。

成功事例では、データ移行の前に商品コードの付与ルールを統一し、SKU基準でJANコードやインストアコードを規則的に再設計しています。商品コード設計に規則性があると、後の在庫連携やEC配信、基幹システムとの突合がすべてスムーズになります。逆に、乱れたままのデータをそのままPIMに流し込むと、せっかくの一元管理が「ゴミの一元管理」になってしまいます。事例から学べるのは、PIM導入の成否はシステムの機能以前に、移行前のデータクレンジングと商品コード設計にかかっているという原則です。

OMOで実店舗とECの商品情報を一元化した事例

OMOで実店舗とECの商品情報を一元化したPIM事例のイメージ

PIMの真価がもっとも発揮されるのが、OMO(オンラインとオフラインの融合)における商品情報・在庫の一元化です。実店舗とEC、モールを横断して商品を売る企業にとって、チャネルごとに商品情報や在庫がずれていることは致命的なリスクになります。PIMで商品情報を一元化し、在庫連携の仕組みと組み合わせることで、このチャネル間のずれを構造的に解消した事例が増えています。

POS-EC同期で売り越し(欠品)を解消した事例

OMOでもっとも頭を悩ませるのが、POSとECの在庫同期タイムラグによる売り越し、つまり欠品です。実店舗で売れた在庫がECに反映される前に、ECで同じ商品が注文されてしまうと、「在庫ありと表示されていたのに実際は欠品」というトラブルが起きます。これは顧客の信頼を直接損なう問題です。成功事例では、PIMを中核に置き、POSとECの在庫情報をAPI連携でリアルタイムに同期するアーキテクチャを構築して、この売り越しを解消しています。

ここで重要なのは、商品情報そのものの一元化と、在庫数のリアルタイム同期を切り分けて設計することです。商品名や画像、スペックといった「変わりにくい情報」はPIMが正本(マスタ)を持ち、在庫数のような「秒単位で変わる情報」は在庫管理システムやPOSと密に連携させる。この役割分担を明確にした事例ほど、安定した同期を実現しています。同期タイムラグをどこまで許容し、どこからリアルタイム連携が必要かを要件定義で詰めることが、売り越し防止の鍵になります。

マルチチャネル配信で商品情報の鮮度を保った事例

PIMのもう一つの活用事例が、複数チャネルへの商品情報配信の自動化です。自社ECだけでなく、楽天市場やAmazonといったモール、卸向けのBtoBサイト、紙カタログ、店舗のデジタルサイネージまで、商品情報を配信する先は年々増えています。これらに手作業で同じ情報を入力していると、どこかのチャネルだけ価格やスペックが古いまま放置される、という事故が起きます。

成功事例では、PIMを商品情報の正本とし、そこから各チャネルへ最新情報を自動配信する仕組みを整えています。モールごとに項目名やフォーマットが異なる問題も、PIM側でチャネル別の出力テンプレートを持つことで吸収しています。これにより、商品情報の修正がPIM上で一度行えば全チャネルに反映され、情報の鮮度と整合性が保たれます。チャネルが増えるほどPIMの投資対効果は高まる、というのが活用事例から得られる示唆です。

卸の取引先別価格・リベートをマスタ化した事例

卸の取引先別価格・リベートをマスタ化したPIM事例のイメージ

BtoB卸の業態では、PIMが扱う商品情報に「取引先別の価格体系」という複雑な要素が加わります。同じ商品でも取引先のランクや契約条件によって掛率が異なり、さらに一定の取引量に応じてリベート(割戻金)が発生する、という商慣行を商品情報・価格マスタにどう落とし込むかが、卸のPIM活用の肝になります。事例を見ると、成功している卸企業は、この複雑な価格ロジックのマスタ設計に丁寧に向き合っています。

取引先別価格・掛率を商品マスタに組み込んだ事例

卸の商品情報管理では、商品マスタと取引先マスタ、価格マスタを連携させ、取引先ごとに正しい価格を出し分ける必要があります。A社には定価の8掛け、B社には7掛け、長年の大口取引先には個別の特別価格、といった複雑な体系を、PIMと連動する受発注システム上で正確に表示する。成功事例では、取引先がログインすると専用の価格表が自動表示される仕組みを実装し、誰が見ても同じ価格というBtoC的な運用から脱却しています。

この出し分けを実現するには、商品コード(SKU)体系を取引先システムとも整合させる名寄せが欠かせません。リサーチでは、この取引先・商品コードの名寄せこそ基幹連携の最大の関門であり、連携要件の整理だけで数週間を要するケースがあると指摘されています。事例から学べるのは、価格をどう管理し、どう取引先ごとに出し分けるかを要件定義の段階で徹底的に詰めることが、後の手戻りを防ぐ鍵だという点です。

リベート計算を自動化して経理工数を削減した事例

卸の商慣行で特に手作業が残りやすいのが、リベート(割戻金)の計算です。取引先ごとに「年間取引額が一定を超えたら数パーセントを還元する」といった条件が設定されており、これを手作業のExcelで集計している企業は少なくありません。月末や期末に大量の取引データを突合してリベートを計算する作業は、経理部門の大きな負担になっています。

成功事例では、商品マスタ・価格マスタとリベート条件を連携させ、取引データから自動的に割戻金を計算する仕組みを構築しています。これにより、従来は数日かかっていた期末のリベート計算が自動化され、経理工数が大幅に削減されました。リベートのロジックは取引先ごとに細かく異なるため、要件定義で条件を漏れなく洗い出すことが前提になりますが、一度仕組み化できれば毎期の計算が安定します。卸のPIM活用は、商品情報の一元化だけでなく、こうした複雑な価格・割戻ロジックの仕組み化までを射程に入れると効果が最大化されます。

ERPとマスタ統合し受発注から請求まで自動化した事例

ERPとマスタ統合し受発注から請求まで自動化したPIM事例のイメージ

PIMの投資効果を最大化するのが、基幹システム(ERP)とのマスタ統合です。PIMが商品情報の正本を持ち、その情報がERPの在庫管理・受注管理・販売管理・請求といった基幹業務へ正確に流れれば、受発注から請求までの一連の流れが自動化され、二重入力やデータ不整合がなくなります。これこそが、企業がPIMを含む大規模なシステム投資に踏み切る最大の理由です。

商品マスタ統合のBefore/Afterを定量化した事例

大量SKUを扱う中〜大規模の企業では、PIMの商品マスタとERPの在庫・受注情報がリアルタイムに整合していることが極めて重要です。マスタが統合されていないと、ECでは「在庫あり」と表示されているのに基幹側では欠品している、という不整合が起き、得意先の信頼を損ないます。逆に商品マスタを統合できれば、受注確定から在庫引き当て、出荷指示、請求までを一気通貫で自動処理できます。リサーチでは、グローバルのERP市場は2030年までに約1,250億ドル規模に達する見込み(Grand View Research)とされ、その中核にあるのが商品・取引先マスタの統合です。

成功事例では、PIMを単なる商品情報の置き場ではなく、基幹システムの商品マスタの源泉として位置づけています。商品が登録されると、その情報がERPへ流れ、在庫が引き当てられ、出荷指示が出て、最終的に請求まで処理される。この全体最適に到達すると、商品登録から受注処理までの人手はほぼゼロに近づきます。Before/Afterを定量化した事例では、商品情報に起因する受発注ミスや問い合わせが大幅に減り、間接部門の負荷が構造的に圧縮されたと報告されています。

スモールスタートから段階的に統合した事例

すべての企業が、最初から数千万円規模のERPマスタ統合に踏み切れるわけではありません。事例の中には、まずクラウド型のPIMやセミオーダーのシステムでスモールスタートし、効果を検証してから本格的な統合に進んだケースもあります。リサーチによれば、クラウド型は初期0〜10万円・月額3,000〜70,000円程度から始められ、商品情報の一元化という基本的な価値を、最小限の投資で得られます。一方、複雑な業務に適合させるセミオーダーは100万円以上、フルスクラッチは500万〜数千万円が目安です。

このスモールスタート型の事例から学べるのは、いきなり全社最適のフルスクラッチを目指すより、まず一部のチャネルや商品カテゴリでPIMを試し、現場が本当に使うかを検証するという段階主義の有効性です。クラウドで運用ノウハウと現場の納得感を蓄積し、取引量が増えて標準機能では要件を満たせなくなった段階で、基幹マスタ統合を含むフルスクラッチへ移行する。リサーチでも、ERP導入の75%が進行中に何らかの失敗を経験する(ガートナー)一方、コンサル活用時は85%が成功するとされており、段階的かつ専門家を交えた進め方が成否を分けます。自社の規模と取引量に応じて、最適な入り口を選ぶことが大切です。

費用相場とROI回収を試算した事例

費用相場とROI回収を試算したPIM事例のイメージ

事例を投資判断に活かすには、費用相場とROI(投資回収)の試算をセットで読むことが欠かせません。同じPIM導入でも、選んだ形態や規模によって費用は大きく変わり、回収のスピードも異なります。成功事例の多くは、導入前に「いくらかけて、いくら回収できるか」を試算し、その見立てどおりに効果を出しています。費用とリターンを数字で押さえることが、稟議を通し、導入後の評価を可能にします。

導入形態別の費用相場を踏まえた事例

費用相場を踏まえた事例から学べるのは、規模に応じた現実的な投資額の感覚です。リサーチによれば、クラウド型は初期0〜10万円・月3,000〜70,000円、パッケージ型は初期20〜50万円程度、複雑な業務に適合させるセミオーダーは100万円以上、フルスクラッチは500万〜数千万円が目安です。既存システムとの連動開発は数十万〜100万円、期間1〜3ヶ月が一つの相場とされています。事例では、自社の業務の複雑さと予算に照らして、この相場帯から無理のない選択をしています。

重要なのは、初期費用だけでなく運用費用まで含めた総額で投資を捉えることです。クラウド型は初期が安くても従量課金で月額が膨らむ場合があり、5年程度のTCO(総保有コスト)で比較すると、必ずしも最安とは限りません。成功事例では、こうした長期コストを見込んだうえで形態を選び、想定外の出費を避けています。費用相場を単なる金額の目安としてではなく、自社のTCOを試算する出発点として読むことが、事例活用のコツです。

約3年以内の回収を実現した事例と補助金活用

ROI回収の事例では、削減できた工数とミス対応コストを金額換算し、投資回収の年数を明確にしています。リサーチでは、業務システムの投資回収は多くのケースで約3年以内に達するとされています。商品登録の二重入力解消による工数削減、情報精度向上による問い合わせ・返品の減少を年間で積み上げ、導入・運用費用と比較することで、回収の見通しが立ちます。成功事例は、この試算を導入前に行い、回収の合理性を確認したうえで投資に踏み切っています。

回収を早めた事例に共通するもう一つの工夫が、補助金の活用です。リサーチでは、デジタル化やAI導入の補助金(旧IT導入補助金)が活用できる可能性が挙げられていますが、交付決定前の契約は対象外になるといった注意点があり、スケジュールへの織り込みが必要です。補助金で初期投資を抑えられれば、回収期間がさらに短縮されます。事例を読むときは、こうした費用・回収・補助金の三点を自社の数字に置き換え、投資の合理性を具体的に検証してください。数字に裏付けられた判断こそが、導入後の後悔を防ぎます。

まとめ

商品情報管理システムPIM事例のまとめイメージ

商品情報管理システム(PIM)の事例を振り返ると、成功は一様に「商品情報を一元化し、データクレンジングと商品コード設計で土台を整え、チャネルや業態に応じてマスタ統合を段階的に広げる」という流れに集約されます。Excel運用脱却は二重入力の解消で商品登録工数を半減させ、OMOの在庫一元化はPOS-EC同期による売り越しを防ぎ、卸では取引先別価格やリベート計算の自動化が効き、ERPとのマスタ統合が受発注から請求までの全体最適を実現します。リサーチが示すERP市場約1,250億ドルへの拡大も、その中核に商品マスタ統合があることを物語っています。

事例を読むときに大切なのは、システムの機能の華やかさではなく、移行前のデータ整備と現場の業務にどれだけ寄り添ったかという視点です。自社のチャネル構成と商慣行に照らし、まずは効果の大きい商品情報の一元化から、現場が使える一歩を踏み出してください。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、商品コード設計とマスタ統合から逆算した要件整理と、現場に定着するシステムづくりを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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