勤怠管理システムの導入を検討するとき、多くの担当者がまず知りたいのは「自社と同じように紙のタイムカードやExcelで打刻を集計してきた企業が、実際にどうやってデジタル化し、どんな成果を出したのか」という具体的な事例ではないでしょうか。勤怠管理は、毎日の打刻と月末の集計、残業時間の管理、有給休暇の付与といった地味で間違いの許されない業務の積み重ねです。一般的な紹介記事を読んでも、自社の就業規則や雇用形態に当てはめられる導入イメージはなかなか湧きません。だからこそ、自社の業態に近い導入事例・活用事例こそが、投資判断の精度を高めてくれます。
本記事は、勤怠管理システムの導入事例・開発事例・活用事例・成功事例を、発注企業の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。紙タイムカード・Excel集計からの脱却によるBefore/After、クラウドSaaSから自社開発(ノーコード受託・フルスクラッチ)へ乗り換えてTCO(総保有コスト)を圧縮した事例、複数法人や派遣業の勤怠を一元化した事例、そして現場に定着するまでの並行運用の進め方まで、一次データとあわせて具体的に解説します。読み終えるころには、自社が「どこから着手し、どんな効果を狙うべきか」のイメージが描けるはずです。なお、勤怠管理システム導入の全体像をまだ把握していない方は、まず勤怠管理システムの完全ガイドから読むことをおすすめします。
▼全体ガイドの記事
・勤怠管理システムの完全ガイド
紙タイムカード・Excel脱却で集計を効率化した事例

勤怠管理システムの導入で、もっとも分かりやすい成果が出るのが「紙のタイムカードやExcelによる手集計からの脱却」です。多くの企業では、従業員が押したタイムカードや申告したExcelの勤務表を、総務・人事の担当者が月末にまとめて電卓やマクロで集計し、残業時間を計算して給与計算に渡す、という一連の手作業で運用しています。この手作業こそが、人的コストとヒューマンエラーの温床になっています。
1人月30分の集計工数を自動化したBefore/After
紙・Excel脱却の効果をもっとも具体的に示すのが、集計工数の削減です。一次データの試算では、紙の勤務表を担当者が手入力して集計する作業は、1人あたり月約30分かかります。これを時給3,000円換算で見ると、1人あたり月1,500円のコストです。従業員100名の企業なら、それだけで月15万円相当の集計工数が発生している計算になります。勤怠管理システムを導入して打刻データが自動集計されれば、この工数の大半が消えます。
重要なのは、この削減効果を「漠然とした業務効率化」ではなく、自社の従業員数と人件費単価に当てはめて定量化することです。導入後に残る作業を管理代として見積もっても、100名規模なら月5万円(担当者1人分の一部)程度で運用できる、という試算が成り立ちます。Before(紙集計で月15万円相当)からAfter(自動集計で月5万円相当)へ、という形で投資回収のロジックを描けば、稟議でも説明しやすくなります。事例を読むときは、こうした自社の数字への置き換えを必ず行ってください。
打刻漏れ・集計ミスを構造的に減らした活用事例
紙・Excel脱却の効果は、工数削減だけではありません。手集計には、転記ミス、計算ミス、打刻漏れの見落としといったエラーが付きまといます。とくに残業時間や深夜・休日割増の計算は複雑で、Excelのマクロが古いまま放置されて誤った割増率で計算されていた、という事例も珍しくありません。勤怠管理システムでは、打刻データから就業ルールに沿って自動で労働時間を計算するため、こうした計算ミスが構造的に減ります。
さらに、打刻漏れや申請漏れをその日のうちに本人や上長へアラート通知できるようにすると、月末になって「打刻が抜けている」と慌てて確認する手間がなくなります。リアルタイムで勤怠状況が見えることで、管理職が部下の残業時間を月の途中で把握し、長時間労働を未然に防げるようになった、という活用事例もあります。これは単なる省力化にとどまらず、後述する36協定や働き方改革関連法への対応という、コンプライアンス上の効果にも直結します。勤怠管理のデジタル化の第一歩は、この「集計の自動化とミスの構造的削減」だと言えます。
SaaSから自社開発へ乗り換えTCOを圧縮した事例

勤怠管理システムの事例で、近年とくに増えているのが「クラウドSaaSから自社開発へ乗り換えた」というパターンです。SaaSは1ユーザー月額300〜500円がボリュームゾーンで、小規模なら手軽に始められます。しかし従業員が50名、100名と増えると、ユーザー数に比例して月額が膨らみ、5年単位で見ると無視できない金額になります。この「SaaSを卒業するタイミング」を数字で捉えた事例は、規模拡大に直面する企業にとって示唆に富みます。
5年TCOの損益分岐点を試算した乗り換え事例
企業規模別の月額を一次データで見ると、5〜49名で月1,450〜14,210円、50〜99名で月14,500〜28,710円、100〜199名で月29,000〜57,710円という試算があります。100名規模で月5万円前後を払い続けると、5年で約300万円になります。一方、ノーコード受託(Bubble等)で自社専用の勤怠管理を構築すると、初期100万〜300万円、月額(サーバー費)1万〜3万円程度で、ユーザー数に関係なく固定費で運用できます。
この固定費型の自社開発は、50名以上の規模になるとSaaSの従量課金より5年TCOで有利になり始めます。実際の試算では、ノーコード受託の5年総額は約160万〜500万円に収まるケースが多く、SaaSをそのまま使い続けるより総額を圧縮できる事例があります。乗り換えを決めた企業は、月額の安さだけでなく「ユーザーが増えても費用が増えない」という構造的な安心感を評価しています。事例から学べるのは、SaaSか自社開発かは好みではなく、自社の従業員数と成長見込みに応じて5年TCOで判断すべきだという点です。
退職者データの法定保存を低コストで実現した事例
SaaSから自社開発へ乗り換える動機として、見落とされがちなのが「退職者データの法定保存と課金のジレンマ」です。労働基準法では、勤怠に関する記録を一定期間(賃金台帳などは原則として数年)保存する義務があります。ところがSaaSの多くは、退職した従業員のアカウントを残すと課金が続く料金体系になっており、保存義務を守ろうとすると、退職者の分まで月額を払い続けることになります。
無料系のサービスはこの問題がより深刻で、データの保存期間が数か月〜1年と短く、法定保存期間を満たせないことがあります。自社開発に乗り換えた企業は、退職者データを自社のデータベースに保存し、ライセンス課金とは切り離して法定期間保存できる仕組みを実装しています。これにより「コンプライアンスのために不要な課金を払い続ける」という構造から抜け出せます。離職率が高い業種や、従業員の入れ替わりが激しい企業ほど、この退職者データの保存コストは効いてきます。SaaSの月額だけを見て安いと判断せず、退職者を含めた長期のデータ保存まで含めて事例を読むことが大切です。
複数法人・派遣業の勤怠を一元化した事例

一般的なパッケージSaaSでは対応しきれず、自社開発の真価が発揮されるのが「複雑な雇用要件」を抱えた企業の事例です。複数の法人をグループで運営している企業や、人材派遣業のように就業先ごとに勤怠ルールが異なる企業では、標準的な勤怠管理システムが「要確認」で済ませてしまう要件が数多く発生します。こうした企業が、複数法人・派遣の勤怠を一元化した事例は、ニッチだからこそ参考になります。
複数法人をまたいだ勤怠を一画面で管理した事例
複数の法人をグループで運営する企業では、法人ごとに別々の勤怠システムを使っていると、グループ全体の労働時間や人件費が見えづらくなります。さらに、複数法人を兼務する従業員がいる場合、それぞれの法人での労働時間を合算して管理しないと、法定労働時間や36協定の上限を正しく判定できません。一元化した事例では、法人ごとに就業ルールを切り替えつつ、グループ全体を一つの管理画面で横断的に見られる仕組みを実装しています。
このような複数法人の一元管理は、市販のSaaSでは「複数法人対応は要確認」とされることが多く、対応していても追加費用が高額になりがちです。自社開発であれば、グループの組織構造に合わせて、法人・部門・兼務の関係を最初から設計できます。事例から学べるのは、複数法人や兼務といった要件は後付けが難しいため、要件定義の段階で組織構造を正確に洗い出しておくことが、一元化の成否を分けるという点です。
派遣・日雇いの特殊勤怠を効率化した事例
人材派遣業では、就業先ごとに始業・終業時刻や休憩ルールが異なり、単発・日雇い派遣のように1日単位で就業先が変わるケースもあります。こうした特殊な勤怠は、一般的な勤怠管理システムでは扱いきれません。派遣会社向けに特化したサービス(jobsなど、初期0円・月3.3万円でID無制限の定額型)を採用した事例もあれば、自社の派遣形態に合わせて勤怠と請求を連動させる仕組みを開発した事例もあります。
派遣業の勤怠で重要なのは、勤怠データがそのまま派遣先への請求と派遣スタッフへの給与計算の両方の根拠になる点です。就業先ごとの単価や時間単位の請求を勤怠と連動させられれば、請求業務と給与計算を同時に効率化できます。一元化に成功した派遣会社は、スタッフ数が増えてもID課金で費用が膨らまない定額型を選び、勤怠・請求・給与の三つを一つの流れにまとめています。外国人スタッフが多い現場では多言語対応の打刻も論点になり、市販SaaSではKING OF TIMEのように多言語対応をうたうものもあります。自社の雇用形態の複雑さに応じて、専用サービスと自社開発のどちらが適するかを事例で見極めてください。
現場定着までの並行運用を成功させた事例

勤怠管理システムの事例で見落とされがちなのが、「導入後に現場へ定着するまで」のプロセスです。どれだけ優れたシステムでも、現場の従業員が新しい打刻方法に慣れず、旧来のやり方に戻ってしまえば投資は無駄になります。失敗統計でも、データ移行・初期設定の難航で「安定稼働まで2か月」かかったという声があり、移行期間の運用設計が成否を左右します。並行運用を丁寧に進めた事例は、定着のリアルを教えてくれます。
旧システムと1か月並行運用して移行した事例
勤怠データは給与計算に直結するため、移行に失敗すると給与の遅延や金額の誤りという深刻な事故につながります。失敗統計では、連携不具合で「給与支給が3日遅れた」「残業代の差異が月10万円発生した」という回答もあります。これを避けるため、成功事例では新システムと旧システムを1か月程度並行で動かし、両者の集計結果を突き合わせて、計算が一致することを確認してから本番に切り替えています。
並行運用には現場と管理部門の二重入力の負担が伴いますが、この一手間が「いきなり切り替えて給与が狂う」という最悪の事態を防ぎます。事例では、まず一部の部署で試験運用し、就業ルールの再現性を確認してから全社展開する、という段階的な進め方も多く見られます。スケジュールには余裕を持たせ、失敗統計が示す「初期設定で1か月遅延」を前提に計画することが、現実的な移行の鍵です。
無料トライアルで現場の打刻を検証した事例
定着に成功した企業に共通するのは、本格導入の前に無料トライアルやスモールスタートで現場の使い勝手を検証していることです。打刻方法がPCなのか、スマホのGPS打刻なのか、ICカードや生体認証なのかによって、現場の従業員の受け入れやすさは大きく変わります。実際に現場で数週間使ってもらい、「これなら毎日押せる」という納得感を得てから全社展開した事例は、定着率が高い傾向にあります。
トライアルでは、機能の豊富さよりも「現場が迷わず打刻できるか」を重視します。直行直帰の多い営業職にはスマホ打刻、工場や店舗にはICカード打刻、というように雇用形態や働き方に合わせた打刻方法を選べることが、定着の決め手になります。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、現場の働き方を起点に打刻方法と運用フローを設計し、並行運用で定着を見届ける進め方を重視しています。事例は華やかな導入効果だけでなく、「なぜ現場が毎日使い続けられたのか」という視点で読むことが、定着失敗を避ける最大の近道です。
補助金活用とROIで投資を正当化した事例

勤怠管理システムの導入は、経営層への説明と予算確保が壁になることが少なくありません。ここを乗り越えた事例に共通するのが、補助金・助成金の活用と、ROI(投資対効果)を数字で示す稟議の作り方です。効果を感覚ではなく金額で語り、公的支援で初期負担を下げた企業は、社内の合意形成をスムーズに進めています。
IT導入補助金で初期負担を半減した事例
初期費用がネックになっていた企業の事例では、IT導入補助金を活用して投資のハードルを下げています。IT導入補助金は通常枠で対象経費の1/2(最大150万円未満)が補助され、令和6年10月〜令和7年9月の期間には、最低賃金未満の従業員が30%以上いる場合に補助率が2/3へ上がる仕組みもありました。これを使えば、データ移行費や初期設定代行費を含む初期投資の実質負担を、大きく圧縮できます。
補助金を活用した事例から学べるのは、申請のスケジュールを導入計画に最初から織り込んでおくことの大切さです。補助金には申請期間や交付決定後に契約するといった要件があり、これを知らずに先に契約してしまうと対象外になることがあります。働き方改革推進支援助成金も、勤務間インターバル制度の導入や賃金の引き上げと組み合わせて活用でき、勤怠管理システムの導入を後押しします。公的支援を前提に投資計画を組むことで、現場の効率化と財務の負担軽減を両立できます。
工数削減額を稟議の数字に変えた事例
稟議を通した企業の事例では、効果を具体的な金額に翻訳しています。紙の集計作業は1人あたり月約30分、時給3,000円換算で月1,500円。これを従業員数で掛け合わせ、100名規模なら月15万円相当の工数が発生していると示します。導入後に残る管理工数を月5万円程度と見積もれば、月10万円・年120万円の削減効果が説明できます。
この削減額に、ミスによる給与訂正の手戻りや、36協定違反による法的リスクの低減を加えれば、ROIはさらに厚くなります。事例が示すのは、勤怠管理システムの投資判断は「便利だから」ではなく、自社の従業員数と人件費単価に基づく年間削減額と、補助金適用後の実質負担額を並べて、回収期間を明示することで通る、という実務の知恵です。数字で語れる投資は、経営層にも現場にも納得感を与えます。riplaはフルスクラッチ・ノーコード受託と国内開発の立場から、このROI試算と補助金を踏まえた投資計画づくりも支援しています。
まとめ

勤怠管理システムの事例を振り返ると、成功は「集計工数というわかりやすいROIを起点に、自社の規模と雇用形態に合った仕組みを選び、並行運用で現場に定着させる」という一点に集約されます。紙・Excel脱却は1人月30分の集計工数を自動化し、SaaSから自社開発への乗り換えは50名以上で5年TCOを有利にし、退職者データの法定保存という課金ジレンマも解消します。複数法人・派遣の一元化はニッチな雇用要件を抱える企業ほど効果が大きく、現場定着は1か月の並行運用と無料トライアルでの検証が鍵を握ります。
事例を読むときに大切なのは、「どのサービスが人気か」ではなく「なぜ自社の現場に定着したか」という視点です。自社の従業員数、就業規則の複雑さ、5年TCOに照らし、まずは効果の大きい集計の自動化から、現場が使える一歩を踏み出してください。riplaはフルスクラッチ・ノーコード受託と国内開発を組み合わせ、就業ルールから逆算した要件整理と、現場に定着する勤怠管理システムづくりを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。
株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
