労務管理システムの導入/開発事例や活用/成功事例について

労務管理システムの導入を検討するとき、多くの人事・労務担当者がまず知りたいのは「同じように入社手続きや社会保険、年末調整、雇用契約をExcelと紙で回してきた企業が、実際にどうやってシステム化し、どんな成果を出したのか」という具体的な事例ではないでしょうか。労務管理は、勤怠や給与計算と違って数値で効果が見えにくく、なんとなく今のやり方で回ってしまうため、導入の決め手を欠きやすい領域です。だからこそ、自社の規模や雇用形態に近い導入事例・活用事例こそが、投資判断の精度を高めてくれます。

本記事は、労務管理システムの導入事例・開発事例・活用事例・成功事例を、発注企業の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。紙とExcelからの脱却で入社手続きや年末調整の工数を削減した事例、給与計算・会計ソフトとの連携で二重入力をなくした事例、複数法人や外国人雇用といった複雑な要件に対応した事例、さらにSaaSの従量課金が規模拡大で膨らみ自社開発へ乗り換えた事例まで、一次データとあわせて具体的に解説します。読み終えるころには、自社が「どこから着手し、どんな効果を狙うべきか」のイメージが描けるはずです。なお、労務管理システム導入の全体像をまだ把握していない方は、まず労務管理システムの完全ガイドから読むことをおすすめします。

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紙・Excel脱却で労務工数を削減した事例

紙・Excel脱却で労務工数を削減した労務管理システム事例のイメージ

労務管理システム導入で、もっとも分かりやすい成果が出るのが「紙とExcelによる手作業からの脱却」です。労務の現場は、入社者から紙やメールで集めた個人情報を担当者が手入力し、社会保険の資格取得届を作成し、年末調整では従業員に紙の申告書を配って回収・転記する、という一連の手作業で成り立っているケースが少なくありません。この手作業こそが、労務担当者の繁忙期残業とヒューマンエラーの温床になっています。

入社手続きのペーパーレス化で工数を削減した事例

紙・Excel脱却の効果をもっとも具体的に示すのが、入社手続きのペーパーレス化です。従来は入社者ごとに紙の書類一式を渡し、記入してもらい、回収して内容をチェックし、各システムへ手入力する、という流れに数時間を要していました。労務管理システムを使えば、入社者がスマートフォンやPCから自分で個人情報・口座・扶養家族を入力し、そのデータがそのまま従業員マスタになります。担当者が紙を転記する工程が丸ごと消えるのです。

一次データでは、紙の入力作業を時給3,000円換算・1人あたり月約30分(約1,500円相当)とする試算があります。入社が集中する4月や中途採用が多い企業では、この入力工数が積み上がり、繁忙期の残業を生んでいます。事例を読むときは、こうした自社の数字への置き換えを必ず行ってください。月の入社・異動件数、1件あたりの処理時間、人件費単価を掛け合わせれば、年間で削減できる工数とコストが概算でき、稟議の説得材料になります。

年末調整の電子化で繁忙期残業を解消した事例

労務の年間最大の山場が年末調整です。紙運用では、申告書を全従業員に配布し、記入漏れや添付書類の不足を一人ずつ確認し、内容を給与システムへ転記する作業に膨大な時間がかかります。電子化した事例では、従業員が画面の案内に沿って入力すると、システムが必要箇所を自動チェックし、保険料控除や扶養の計算まで補助します。担当者は不備のあるものだけを差し戻せばよく、全件を目視で確認する負担が大きく減ります。

この電子化の効果は、単なる工数削減にとどまりません。記入ミスや計算ミスが構造的に減ることで、後から税額を訂正する手戻りがなくなり、従業員からの問い合わせも減少します。導入後の作業管理代として、100名規模で月5万円(1人分の人件費相当)を費用対効果の基準に置く考え方もあります。年末調整という季節業務を平準化できれば、労務担当者を採用や制度設計といった本来注力すべき業務に振り向けられるようになります。これが紙・Excel脱却の本質的な価値です。

雇用契約の電子締結でリモート採用に対応した事例

紙脱却のもう一つの事例が、雇用契約書や労働条件通知書の電子締結です。従来は紙の契約書を印刷し、郵送して署名・捺印してもらい、返送を待って保管する、という物理的なやりとりが必要でした。電子締結に切り替えた事例では、入社者にオンラインで契約書を提示し、本人が内容を確認して電子的に同意することで、この一連の手間が消えています。リモート勤務や遠隔地採用が増えるなかで、書類を物理的にやりとりしなくて済むことは大きな利点です。

電子締結の事例で評価されているのが、締結後の管理のしやすさです。契約書がシステム上に保存され、誰がどの書類に同意済みかを一覧で把握できるため、紙のファイルを探し回る必要がなくなります。誓約書や個人情報の取扱同意書なども同じ仕組みで電子化でき、入社手続き全体のペーパーレス化が進みます。入社手続き・年末調整・雇用契約という労務の主要な紙業務を電子化することで、繁忙期の負担が平準化され、担当者がより付加価値の高い業務に集中できるようになった、というのが紙・Excel脱却事例の到達点です。

給与・会計連携で二重入力をなくした事例

給与・会計連携で二重入力をなくした労務管理システム事例のイメージ

労務管理システムの投資効果を大きく左右するのが、給与計算システムや会計ソフトとのデータ連携です。労務で管理する従業員情報や扶養、保険料は、そのまま給与計算の入力データになります。連携がないと、労務システムに入れた情報を給与システムに再入力する二重管理が発生し、転記ミスや計算ミスの原因になります。成功事例は例外なく、この連携をどう設計するかに丁寧に向き合っています。

労務と給与計算をシリーズ連携でつないだ事例

もっとも多い成功パターンが、同じシリーズの労務システムと給与計算システムをAPIで連携させた事例です。たとえばfreee人事労務のように、勤怠・労務・給与計算が一体になっている製品を使えば、入社時に登録した情報がそのまま給与計算に流れ、社会保険料の控除や住民税の徴収まで自動で反映されます。料金例では、勤怠300円〜・人事労務2,000円〜(最小5名)といった水準が示されており、オールインワン型は連携の手間を最小化できる点が評価されています。

一方で、既存の給与ソフトをそのまま使いたい企業では、CSVやAPIで労務システムとつなぐ「連携型」を選ぶ事例も多くあります。重要なのは、連携の方式(リアルタイムのAPIか、定期的なCSVエクスポートか)と、どの項目を連携対象にするかを導入前に明確にすることです。事例から学べるのは、連携の設計を曖昧にしたまま導入すると、結局どこかで手作業の転記が残り、二重入力がゼロにならないという点です。給与計算連携の追加費用は10万〜50万円が一つの相場とされ、ここを織り込んだうえで投資判断する必要があります。

社会保険の電子申請で行政手続きを効率化した事例

労務管理システムのもう一つの活用事例が、社会保険・雇用保険の電子申請(e-Gov連携)です。従来は資格取得届や算定基礎届を紙で作成し、年金事務所やハローワークに持参・郵送していました。電子申請に対応した事例では、システム上で従業員情報から申請書類を自動生成し、そのまま電子送信できるため、書類作成と窓口対応の時間が大きく減ります。入退社が多い企業ほど、この効果は大きくなります。

電子申請の事例で見落とされがちなのが、申請の進捗管理です。複数の手続きが同時に走る労務では、どの申請が完了し、どれが行政側で処理中かを一覧で把握できることが、抜け漏れ防止につながります。成功している企業は、システム上で申請ステータスを管理し、提出期限のアラートを設定することで、手続きの遅延や未提出を構造的に防いでいます。給与・会計連携と電子申請を組み合わせることで、労務の「入力」と「行政手続き」の両面を効率化できるのです。

複数法人・外国人雇用に対応した事例

複数法人・外国人雇用に対応した労務管理システム事例のイメージ

労務管理システムの事例で、市販SaaSが苦手としがちなのが「複数法人の一元管理」や「外国人雇用の多言語対応」といったニッチで複雑な要件です。グループ会社が複数あり、それぞれで雇用契約や就業規則が異なる企業や、技能実習生・特定技能の外国人を多数雇用する企業では、標準的なクラウドサービスでは「要確認」で済まされ、現場の運用に合わないことがあります。こうした要件を満たした事例こそ、自社が複雑な雇用構造を持つ場合の参考になります。

複数法人を一元管理して労務を標準化した事例

グループ経営の企業では、法人ごとに労務担当が分かれ、入社手続きや保険手続きのやり方がバラバラになりがちです。複数法人を一元管理した事例では、1つのシステム上で法人ごとに権限とデータを分けつつ、共通のフローで労務を運用できるようにしています。これにより、グループ全体の従業員データを横断的に把握でき、人事異動や出向の手続きもスムーズになります。本社が各法人の労務状況をモニタリングできる点も、内部統制上の利点です。

ただし、複数法人対応は市販SaaSでは追加ライセンスや上位プランが必要になることが多く、規模が大きくなるほど従量課金が膨らみます。事例の中には、法人数と従業員数が一定規模を超えた段階で、ユーザー数に依存しないノーコード受託やフルスクラッチへ切り替え、固定費でグループ全体をカバーしたケースもあります。複数法人という要件は、後述するSaaS卒業の損益分岐点とも深く関わるため、自社の将来の組織構成を見据えて選ぶことが大切です。

外国人雇用の多言語・在留管理に対応した事例

外国人雇用を多く抱える企業では、入社手続きの案内が日本語だけだと記入ミスや手続き遅延が頻発します。多言語対応した事例では、入社者向けの入力画面を複数言語で表示し、本人が母国語で正確に情報を入力できるようにしています。これにより、労務担当者が一人ひとり通訳的に対応していた手間が減り、書類の不備も大きく減少します。打刻機能で20種類の打刻・多言語に対応する製品があるように、労務でも多言語化のニーズは確実に存在します。

外国人雇用特有の論点が、在留資格・在留期限の管理です。在留期限を過ぎての就労は重大なコンプライアンス違反になるため、システムで在留期限を管理し、更新時期が近づくとアラートを出す仕組みが求められます。標準のクラウドサービスでカバーしきれない場合、この在留管理だけを追加開発したり、要件に特化したシステムを構築したりする事例があります。複雑な雇用要件は、市販品の機能一覧だけで判断せず、自社の運用に本当に合うかを事例ベースで確認することが重要です。

こうした複雑要件に対応した事例から学べるのは、要件の特殊性が高いほど、汎用SaaSの標準機能では限界が早く訪れるという点です。多言語対応や在留管理、複数法人の一元管理といった要件を、無理にカスタマイズで積み増すと費用がかさみ、それでも完全には合わないことがあります。最初から自社の雇用構造を前提に設計できるノーコード受託やフルスクラッチであれば、これらの要件を素直に作り込め、運用も現場の実態にぴったり合います。複雑な雇用要件を抱える企業ほど、事例を通じて「どの調達方式なら要件を満たせたか」を見極めることが、投資の成否を分けます。

SaaSから自社開発へ乗り換えたTCO事例

SaaSから自社開発へ乗り換えた労務管理システムのTCO事例のイメージ

多くの記事が語らない事例が、「クラウドSaaSを卒業して自社開発へ乗り換えた」ケースです。労務管理SaaSは1ユーザー月額300〜500円がボリュームゾーンで、小規模なら格安で始められます。しかし従業員数が増えると、この従量課金が想像以上に膨らみます。規模拡大に伴うコストの転換点を、一次データの試算で具体的に見ていきましょう。

従量課金の膨張でTCOが逆転した事例

企業規模別の月額試算では、5〜49名で月1,450〜14,210円、50〜99名で14,500〜28,710円、100〜199名で29,000〜57,710円と、人数に比例してコストが増えていきます。これに対し、ノーコード受託(Bubble等)は初期100万〜300万円、月額のサーバー費用1万〜3万円で、ユーザー数に関係なく固定費で運用できます。一次データの試算では、50名以上の規模になると、5年TCO(約160万〜500万円)でノーコード受託がSaaS従量課金より有利になるとされています。

乗り換えた事例の共通点は、単に安くするためではなく「自社固有の労務フローを作り込みたい」「複数法人や特殊な雇用形態に標準SaaSが追いつかなくなった」という機能面の限界も同時に抱えていたことです。固定費化でコストが読めるようになり、かつ自社の運用にぴったり合うシステムを持てる。この二つの利点が、SaaS卒業の意思決定を後押しします。自社の従業員数が50名を超え、SaaSの月額が膨らみ始めたら、一度5年TCOで比較してみる価値があります。

並行運用で現場定着まで乗り切った事例

乗り換えやリプレースの事例で成否を分けるのが、移行期の進め方です。失敗統計(735人調査)では、データ移行・初期設定の難航で「スケジュール遅延1か月」「安定稼働まで2か月」という声が多く挙がっています。成功した企業は、旧システムと新システムをしばらく並行運用し、給与計算結果が一致するかを検証してから完全移行しています。いきなり切り替えて差異が出ると、給与支給に直結する重大事故になりかねないからです。

並行運用には、二重に運用する一時的なコストがかかりますが、これは安定稼働を買うための保険と考えるべきです。データ移行費は5万〜30万円が相場とされ、並行運用期間の工数も見込んでおく必要があります。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、こうした移行の泥臭い工程に伴走し、データ移行の検証と並行運用設計を含めて段階的に定着させる進め方を重視しています。事例は華やかな成果ではなく、「なぜ移行を乗り切れたのか」という視点で読むことが、失敗を避ける近道です。

補助金を活用して初期投資を抑えた事例

自社開発やリプレースには相応の初期投資がかかりますが、補助金・助成金を活用して負担を抑えた事例も見逃せません。IT導入補助金は通常枠で補助率1/2(最大150万円未満)が基本で、令和6年10月〜令和7年9月の期間に最低賃金未満の従業員が30%以上いる場合は補助率2/3に引き上げられます。この補助金を使い、初期費用やカスタマイズ費の一部をまかなって導入のハードルを下げた事例があります。

労働環境の改善を伴う場合は、働き方改革推進支援助成金も選択肢になります。勤務間インターバル(9〜11時間未満/11時間以上)の導入や、賃金3%以上の引上げといった取り組みが対象です。補助金を活用した事例の共通点は、申請要件とスケジュールを導入計画と並行して早めに確認していたことです。補助金には締切と要件があるため、システム選定と同時に申請準備を進めることが、初期投資を実質的に圧縮する鍵になります。事例から学べるのは、補助金は導入の後押しになるが、計画的に動かなければ機会を逃すという点です。

まとめ

労務管理システム事例のまとめイメージ

労務管理システムの導入事例・活用事例を振り返ると、成果は「紙・Excelの手作業からの脱却で工数を削減し、給与・会計連携で二重入力をなくし、複雑な雇用要件に合わせて作り込み、規模に応じて最適な調達方式を選ぶ」という流れに集約されます。入社手続きや年末調整の電子化は時給3,000円換算の入力工数を直接削減し、給与計算連携(追加費用10万〜50万円が相場)が二重管理を解消します。複数法人・外国人雇用といった複雑要件は市販SaaSの機能一覧だけでは判断できず、50名を超える規模では5年TCOでノーコード受託がSaaS従量課金を逆転する試算もあります。

事例を読むときに大切なのは、「どの製品を入れたか」ではなく「自社の雇用構造と規模に合っていたか」という視点です。まずは効果の大きい入社手続きや年末調整の電子化から着手し、現場が楽になる実感を積み重ねてから、連携や乗り換えといった大きな投資に進んでください。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、SaaSの損益分岐点の見極めから、複雑な雇用要件への作り込み、データ移行と現場定着までを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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