ワークフローシステム開発/導入の失敗/課題/注意点/リスクについて

ワークフローシステムの導入を検討するとき、成功事例以上に学ぶ価値があるのが「なぜ失敗したのか」という生々しい教訓です。承認業務の電子化は効果が大きい一方で、現場で使われず形骸化したり、取引先の同意が得られず契約が電子化できなかったり、想定外の従量課金でコストが膨らんだりと、つまずきどころが少なくありません。導入後の課題を尋ねた調査では約8割の企業が何らかの課題を感じており、失敗のパターンを先回りして知っておくことが、自社のプロジェクトを守る最良の保険になります。

本記事は、ワークフローシステム導入の失敗・課題・注意点・リスクを、形骸化のリスク/取引先・契約の壁/コストと連携の落とし穴/ガバナンス・運用のリスクという4つの軸で体系的に解説する「失敗・リスク特化」の記事です。現場で使われず放置される形骸化、取引先の同意が得られない壁、想定外の従量課金と業務分断、権限放置やシャドーITといったガバナンスリスクまで、一次データとともに具体的に整理します。なお、ワークフローシステム導入の全体像をまだ把握していない方は、まずワークフローシステムの完全ガイドから読むことをおすすめします。

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現場で使われず形骸化するリスク

現場で使われず形骸化するリスクのイメージ

ワークフロー導入で最も多く、かつ最も痛いのが「導入したのに現場で使われず形骸化する」失敗です。せっかく費用をかけてシステムを入れても、現場が従来の紙やメール、口頭での承認に戻ってしまえば、投資はほぼ無駄になります。形骸化は技術的な不具合ではなく、設計や進め方に根本原因があるため、事前に正しく対策すれば防げる失敗です。

承認ルールを再現できず紙に戻った失敗

形骸化の典型が、自社の承認ルールをシステムで再現できず、現場が紙に戻ってしまうケースです。稟議や申請のルールは、ベテラン担当者の頭の中や暗黙の慣行として存在することが多く、これを可視化しないままシステムを導入すると、「いつものパターンが通せない」「例外処理ができない」という不満が噴出します。結果として、現場は「システムより紙の方が早い」と判断し、せっかくのシステムが棚上げになります。承認ルートの条件分岐や例外処理を要件定義で徹底的に洗い出さなかったことが、この失敗の根本原因です。

もう一つの形骸化要因が、操作の複雑さと運用ルールの不在です。フォームが使いにくく、申請に手間がかかると、現場は面倒がってシステムを避けます。また、社内マニュアルが整備されず、権限や承認ルートの設定が曖昧なまま稼働すると、誰も正しい使い方が分からず放置されます。これを防ぐには、現場が使いやすいフォーム設計、適切な権限・承認ルートの設定、そして「最初は経費精算だけ」といったスモールスタートで現場に成功体験を積ませる段階導入が有効です。形骸化は、導入後の定着支援(チェンジマネジメント)を軽視した企業ほど陥りやすい落とし穴です。

定着を阻む「丸投げ」と回避策

形骸化を招くもう一つのパターンが、ベンダーへの「丸投げ」です。現場の業務ヒアリングやあるべき業務の姿(ToBe)の設計を十分に行わないまま開発を任せると、完成したシステムが現場の実際のフローと噛み合わず、誰も使わないまま放置されます。これは業種を問わず繰り返されてきた失敗で、投資額の大きさは成功を保証しません。「いくら投資したか」ではなく「現場の業務にどれだけ寄り添ったか」が成否を決めるのです。

回避策は、開発の前に現場ヒアリングを徹底し、現状(AsIs)の業務フローを可視化したうえで、あるべき姿(ToBe)を描くことです。承認者、申請者、経理といった関係者に「実際にどう申請を処理しているか」「どこに無駄や手戻りがあるか」を細かく聞き、その実態からシステムを設計します。そして、最も効果の大きい業務から段階的に電子化し、現場が「これは楽になる」と実感できる小さな成功を積み重ねる。riplaはフルスクラッチ受託と業務伴走の立場から、この「現場の業務から逆算してToBeを描き、段階的に定着させる」進め方を一貫して重視しています。

全業務を一斉導入して混乱した失敗

形骸化と並んで多いのが、最初から全業務を一斉に電子化しようとして混乱する失敗です。稟議も経費精算も購買申請も契約締結も、すべてを同時にシステムへ載せ替えようとすると、現場が新しいやり方を一度に覚えきれず、問い合わせやトラブルが集中します。情報システム部門やプロジェクト担当も対応に追われ、結果として「準備不足のまま見切り発車した」という印象だけが現場に残り、システムへの不信感を生みます。これが、初期の定着を大きく阻害します。

回避策は、スモールスタートで段階的に範囲を広げることです。まず件数が多く効果の出やすい経費精算や購買申請からシステムに載せ、運用が安定して現場が使い方に慣れたら、次に稟議、さらに契約締結へと広げていきます。最初の業務で「これは楽になる」という成功体験を現場に積ませることが、後続の業務をスムーズに展開する土台になります。一斉導入は一見すると効率的に思えますが、現場の習熟ペースを無視すると、かえって全体の定着を遅らせます。導入計画は、現場が無理なく追従できる順序と速度で設計することが鉄則です。

取引先・契約の電子化が進まないリスク

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契約締結までワークフローを広げる場合に立ちはだかるのが、取引先と契約種別の壁です。自社だけで完結する稟議や経費申請と違い、契約の電子化は相手があって初めて成立します。この外部要因を見落とすと、システムを入れたのに肝心の契約が電子化できない、という事態に陥ります。

取引先の同意が得られず電子化が頓挫した失敗

よくある失敗が、取引先の同意を得られず、電子契約が思うように進まないケースです。電子契約は相手方が応じてくれなければ成立せず、とくに当事者型の署名では相手方にも電子証明書の発行費(1万円前後)が発生するため、難色を示される場合があります。導入率は78.3%(2025年調査)まで高まっているとはいえ、すべての取引先が対応済みとは限らず、「自社は電子化したのに、相手が紙を求めるので結局は紙のまま」という板挟みが起こります。

回避策は、相手方の負担が軽い立会人型(事業者署名型)を選び、メール認証だけで締結できるようにすることと、取引先へ丁寧に説明し理解を得ることです。ただし、この説明は「丁寧にお願いする」止まりになりがちで、決め手に欠けるのが実情です。だからこそ、導入前に自社の取引先構成を棚卸しし、電子化に応じてくれそうな相手の割合を現実的に見積もっておくことが重要です。最初から全取引先の電子化を狙わず、応じてくれる相手から段階的に広げる方が、頓挫を避けられます。

電子化できない契約を見落とすリスク

取引先の同意とは別に、そもそも法律上電子化できない契約が存在する点も見落とせません。定期借地契約や任意後見契約など、書面での締結が義務づけられた契約は電子に置き換えられません。これらが自社の契約の一定割合を占めるのに、「すべて電子化できる」と想定して導入を進めると、計画が崩れます。電子化できる契約とできない契約を事前に切り分けず、効果を過大に見積もったことが失敗の原因になります。

回避策は、導入前に自社の契約種別を棚卸しし、電子化可能なものと書面義務のあるものを分類することです。そのうえで、紙と電子のハイブリッド運用を前提に設計すれば、「電子化できない契約があるから失敗」ではなく「電子化できるものから着実に効果を出す」という現実的な計画に落とせます。電子契約の効果を見積もる際は、自社の全契約のうち電子化可能な割合を冷静に算定し、その範囲でのROIを示すことが、過大な期待による失敗を防ぎます。

コストと連携の落とし穴

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費用と連携にも、見落とすと後悔する落とし穴があります。月額料金の安さだけで選んだ結果、想定外のコストが膨らんだり、システム間で業務が分断されて非効率になったりする失敗です。導入後の課題調査でも「システム間で業務が分割され非効率」が38%を占め、連携設計の甘さが多くの企業を悩ませていることが分かります。

想定外の従量課金でコストが膨らんだ失敗

費用面の代表的な失敗が、想定外の従量課金です。電子契約の送信料は1件50〜300円(平均税込110〜220円)が相場で、件数が少ないうちは気になりませんが、利用が社内に広がると送信料が積み上がり、月額固定料を大きく上回ることがあります。月の件数を見積もらずに送信課金型のプランを選ぶと、利用が増えたときにコストが跳ね上がる、という落とし穴にはまります。「月額料金が安い」だけで選んだ結果が、かえって高くつくのです。

回避策は、自社の月間件数を現実的に見積もり、固定費型と従量型のトータルコストを件数で試算しておくことです。送信・保管が無料のプラン(一律約7,128円/月のマネーフォワードクラウド契約など)は、件数が増えるほど割安になります。立ち上げ期は従量型で始め、件数が増えた段階で固定費型に乗り換える、という段階的な判断も有効です。コストは「月額の安さ」ではなく「自社の件数での実質負担」で比べることが、想定外の出費を防ぎます。

あわせて、料金以外の隠れたコストにも注意が要ります。ユーザー数が増えるとライセンス料が膨らむ課金体系や、上位プランでしか使えない機能、サポートやデータ保管の追加料金など、契約後に判明する費用は少なくありません。導入を急ぐと、こうした条件を見落として「思ったより高くついた」となりがちです。契約前に、想定する利用規模での総額と、機能・サポートの範囲を細かく確認し、複数プラン・複数社を同じ条件で比較しておくことが、費用面の失敗を避ける確実な方法です。

システム間で業務が分断される失敗

連携を軽視した結果、システム間で業務が分断される失敗も頻発します。ワークフローと会計、経費精算、CRMがつながっていないと、承認されたデータを担当者が別システムへ手入力し続けることになり、せっかく申請を電子化しても後工程で人手の転記が残ります。導入後の課題で「業務が分割され非効率」が38%、「情報を一元管理できない」が39.5%を占めたのは、まさにこの分断が原因です。電子化したのに、つなぎ目の手作業が増えて、かえって非効率になるのです。

回避策は、要件定義の段階で「どのシステムと、何のデータを、どう連携するか」を具体的に定義し、連携を含めた全体最適で設計することです。連携の追加開発を「高いから後回し」にすると、運用現場が手入力で疲弊し、結局はコスト以上の損失を生みます。承認・契約・申請のデータが一つの基盤に集約され、会計や経費精算へシームレスに流れる状態を目指すことが、分断による非効率を防ぐ唯一の道です。連携は初期費用だけでなく、毎月の運用工数まで含めて費用対効果を判断すべき領域です。

AI機能に過度に期待して費用倒れになる失敗

近年増えているのが、AI機能に過度な期待をかけて費用倒れになる失敗です。AI-OCRによる領収書読み取りやAI契約レビューは魅力的に見えますが、標準機能ではなく月額数万円規模の追加オプションであることが多く、コスト構造を理解せずに契約すると費用がかさみます。さらに、AIには誤認識のリスクがあり、結局は人が最終確認する必要があるため、「全自動で楽になる」という期待は裏切られがちです。AIを入れること自体が目的化すると、コストばかりかかって法務・経理の工数削減という本来の効果が出ません。

回避策は、AIで自動化したい業務を具体的に絞り、その追加コストに見合うだけの工数削減が定量的に見込めるかを冷静に検証することです。「AI-OCRで月◯件の領収書入力をなくし、経理◯時間を削減できる」といった試算ができて初めて、投資の妥当性が判断できます。AIは万能ではなく、誤認識を前提に人の確認工程を残す設計が必要です。流行に乗ってAI機能を盛り込むのではなく、自社の業務でどこまで効果が出るかを地に足をつけて見極めることが、費用倒れを防ぐ唯一の方法です。

ガバナンス・運用に潜むリスク

ガバナンス・運用に潜むリスクのイメージ

最後に、見落とされがちなのがガバナンスと運用に潜むリスクです。効率化を急ぐあまり統制をおろそかにすると、権限の放置や、現場が勝手に別ツールを使う「シャドーIT」といった問題が、時間の経過とともに表面化します。導入直後は問題なくても、運用が長期化するほどリスクが顕在化します。

権限放置・退職者アカウントのリスク

運用が長期化すると起こりがちなのが、権限設定の放置です。組織変更や人事異動のたびに承認ルートや権限を更新しないと、本来は承認権限を持たない人が決裁できる状態が放置されたり、退職者のアカウントが有効なまま残ったりします。これは内部統制上の重大な穴であり、不正な決裁や情報漏えいの温床になります。導入時はきれいに設計しても、運用フェーズで権限の棚卸しを怠ると、知らぬ間にガバナンスが崩れていくのです。

回避策は、組織変更時に承認ルートと権限を更新する運用フローをあらかじめ定め、定期的に権限とアカウントを棚卸しする仕組みを設けることです。承認者を個人名ではなく「申請者の上長」といった役割で指定できる設計にしておけば、人事マスタの更新だけでルートが追従し、放置のリスクを下げられます。権限管理は導入時の設計だけでなく、運用ルールとして継続的に回す前提で設計することが、長期的なガバナンスを守る鍵です。

シャドーITと紙データ未処理のリスク

形骸化と表裏一体のリスクが、シャドーIT、つまり現場が会社の公式システムを使わず、勝手に別のツールや個人のメール・チャットで承認を回してしまう問題です。公式システムが使いにくいと、現場は手軽な手段に流れ、結果として承認の証跡が会社の管理外に散らばります。これはガバナンスの崩壊そのものであり、監査で「この決裁の記録がない」という事態を招きます。シャドーITは、形骸化を放置した先に必ず現れる症状です。

もう一つ、運用で尾を引くのが紙データの未処理です。導入後の課題で「導入前の紙データが未処理」が33.6%を占めたとおり、過去の紙契約や申請履歴を移行しきれず、新システムと紙が併存したまま放置されるケースが多くあります。これでは「過去の決裁が追えない」状態が続き、一元管理のメリットが得られません。回避策は、移行対象を参照頻度や法定保存期間で優先順位付けし、メタデータを保持したまま計画的に取り込むことです。シャドーITも紙データ未処理も、現場が公式システムを「使いたくなる」状態を作り、移行を最後までやり切ることでしか解決できません。riplaはフルスクラッチ受託と業務伴走の立場から、形骸化を防ぐ定着支援と、移行のやり切りまで一貫して支援しています。

まとめ

ワークフローシステム失敗のまとめイメージ

ワークフローシステム導入の失敗は、現場で使われず形骸化するリスク、取引先の同意が得られず契約の電子化が頓挫するリスク、想定外の従量課金や業務分断というコスト・連携の落とし穴、そして権限放置やシャドーIT・紙データ未処理といったガバナンス・運用のリスクに大別されます。導入後の課題調査で約8割が課題を感じ、「一元管理できない」39.5%、「業務が分断」38%、「紙データ未処理」33.6%が上位を占めた事実は、これらの失敗が決して例外ではないことを示しています。いずれも、事前の設計と進め方で先回りして防げる失敗です。

失敗を避ける最大の近道は、ベンダーに丸投げせず、現場の業務から逆算してあるべき姿を描き、効果の大きい業務からスモールスタートで段階的に定着させることです。取引先や契約種別を棚卸しし、損益分岐点で費用を試算し、連携と権限を全体最適で設計し、紙データの移行までやり切る。これらを一つずつ潰せば、形骸化も想定外コストもガバナンス崩壊も避けられます。riplaはフルスクラッチ受託と業務伴走を組み合わせ、要件整理から現場定着・移行のやり切りまでを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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