「サーバーサイドに強い開発会社に依頼したい」と考えたとき、もっとも知りたいのは、抽象的な技術自慢ではなく「実際にどんな企業が、どんな課題を、どの言語・どんなアーキテクチャで解決し、何が改善したのか」という具体的な事例ではないでしょうか。サーバーサイドはユーザーの目に直接触れない領域だからこそ、外からは強さが見えにくく、発注の良し悪しが数年後の保守コストや拡張性となって跳ね返ってきます。だからこそ、実名と数値を伴うリアルな技術移行・採用事例こそが、自社の発注判断にもっとも役立ちます。
本記事は、サーバーサイドに強い開発体制が国内事業会社でどう成果を生んだかを、発注企業の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。100万行超のRailsをマイクロサービス化したクックパッド、4年がかりでマイクロサービス化を進めたメルカリWeb、RailsからGoへ移行したBaseconnect(Musubu)、RailsとSpringを併用するSTORES、GraphQLを本番運用するenechainなど、実名で語られる事例を一次情報とともに整理します。読み終えるころには、サーバーサイドに強い会社を見抜き、自社のフェーズに合った技術と進め方を選ぶ判断軸が描けるはずです。まずサーバーサイド開発の全体像を把握したい方は、サーバーサイド開発の完全ガイドからお読みください。
モノリスからマイクロサービスへの移行事例

サーバーサイドに強い開発事例としてもっとも参照されるのが、肥大化したモノリス(一枚岩のアプリケーション)をマイクロサービスへ分割する取り組みです。サービスが成長すると一つの巨大なコードベースが改修のボトルネックになり、デプロイのたびに全体が止まるリスクが高まります。ここでは国内事業会社の実名事例から、何が成功要因だったのかを具体的に見ていきます。
クックパッドの100万行Rails分割に学ぶ進め方
もっとも示唆に富む事例の一つが、レシピサービスを運営するクックパッドの、100万行を超えるモノリシックなRailsアプリケーションをマイクロサービス化した取り組みです(媒体:AMBI)。これだけの規模になると、一つの修正が予期せぬ箇所に波及し、新機能の追加速度が目に見えて落ちていきます。同社の事例は、巨大なサーバーサイド資産をどう解きほぐすかという点で非常に参考になります。
発注企業にとっての教訓は、「一気にすべてを作り変えない」という原則です。100万行を一度に新言語へ書き換えれば、移行が完了するまで新機能を止めることになりかねません。サービス単位、機能単位で切り出し、独立してデプロイできる形に段階的に分割していくことで、事業を止めずに改善を進められます。サーバーサイドに強い会社かどうかは、こうした「止めずに変える」設計を描けるかで見極められます。
もう一つの要点は、分割の境界線を技術都合ではなく事業ドメインで引くことです。どこからどこまでを一つのサービスとするかは、組織やビジネスの単位に沿わせるほど運用が安定します。発注時には「なぜそこで分けるのか」を事業の言葉で説明できるベンダーを選ぶことが、後の保守性を大きく左右します。
メルカリWebの4年がかり移行と二重運用の現実
メルカリWebのマイクロサービス化は、移行の「期間」と「隠れコスト」を直視させてくれる貴重な事例です(媒体:Mercari Engineering)。同社のWeb領域の刷新は4年がかりで進められ、その過程では新旧のシステムを数年にわたり並行して稼働させました。この事実は、発注企業がもっとも見落としがちな「二重運用コスト」の存在を生々しく示しています。
新システムへ完全に切り替わるまでの間、旧システムも動かし続ける必要があるため、サーバー費用や運用工数は一時的に倍近くまで膨らみます。さらに、両方を矛盾なく動かすためのつなぎ込みにも追加の開発が要ります。「移行すれば安くなる」という期待だけで予算を組むと、この並行稼働期間で計画が破綻します。サーバーサイドに強い会社は、こうした移行期の総コストを最初から見積もりに織り込みます。
発注企業がこの事例から学ぶべきは、移行プロジェクトを「数か月で終わる単発作業」ではなく「数年単位の事業投資」として捉える姿勢です。提案を受ける際は、移行完了までのロードマップと、その間の並行稼働コストをどう抑えるかまで説明できるかを確認すると、実力のあるパートナーを選びやすくなります。
言語の使い分け事例(Rails→Go・Spring併用)

サーバーサイドに強い体制の本質は、単一言語の優劣ではなく「事業フェーズに応じて言語を使い分けられる」点にあります。初速が要る立ち上げ期と、性能や並行処理が要る成長期では、最適な技術が変わります。ここでは、言語を意図的に切り替え・併用した実名事例から、発注判断のヒントを整理します。
Baseconnect(Musubu)のRails→Go移行事例
企業情報データベース「Musubu」を運営するBaseconnectは、RailsからGoへサーバーサイドを移行した事例として注目されます(媒体:Baseconnect Tech blog)。Railsで素早く立ち上げたサービスが成長し、性能や並行処理、型による堅牢性が求められる段階になったタイミングで、BFF(バックエンド・フォー・フロントエンド)層をGoで構築しました。これは「初速のRails、成長期のGo」という王道の使い分けを地で行く事例です。
同社が示したのは、移行を成功させる体制づくりの工夫です。GoのBFFではDIコンテナ「dicon」を独自開発し、依存関係を整理して保守性を高めました。さらにテスト用のモックを自動生成する仕組み(impast/mocker)を内製し、テスト効率を引き上げています。Response Layerでは、APIレスポンスのHashをプレーンなクラスへマッピングし、データの受け渡しを型で守る設計を採りました。
発注企業がこの事例から学ぶべきは、言語の移行は「書き換え」だけでは終わらないという点です。テストやDIといった開発を支える土台ごと整えてはじめて、移行後の保守性が担保されます。サーバーサイドに強い会社を選ぶ際は、言語の知識だけでなく、こうした基盤づくりの引き出しを持っているかを確認することが大切です。
STORES・リクルートに見るRailsとSpring併用
STORESは、Ruby on RailsとSpring(Java)の双方を実務で扱い、その特性を比較した知見を公開しています(媒体:STORES Product Blog)。Railsは規約に沿えば素早く作れる一方、Spring/Javaは型安全とエンタープライズ向けの堅牢さに優れます。両方を使い分ける体制は、サービスの性質に応じて最適なサーバーサイドを当てられる強さを意味します。
リクルートも、SpringとRailsでサービスを分割しつつ、Go言語の本格導入を進めた事例を「Go言語を使って1年」という形で振り返っています(媒体:リクルート テックブログ)。大規模組織では、すべてを一つの言語に統一するのではなく、サービスの要件に合わせて複数言語を共存させる方が現実的です。これは、サーバーサイドに強い大手の標準的な戦略と言えます。
発注企業への示唆は、「うちはRails専門です」「Javaしかやりません」と単一言語だけを推す会社が、必ずしも自社に最適とは限らないということです。複数言語の長所短所を理解し、自社の事業フェーズに合わせて中立的に提案できる体制こそ、長期的に頼れるパートナーになります。言語別の使い分けの詳細は、この後の早見でも触れます。
API設計・GraphQL運用の実践事例

サーバーサイドの強さは、API設計の巧拙にも色濃く表れます。REST・GraphQL・gRPCはそれぞれ得意分野が異なり、どれを選ぶかで開発効率も性能も変わります。ここでは、API設計を要件で使い分けた事例と、GraphQLを本番運用する企業の知見から、発注判断に効くポイントを整理します。
用途で使い分けるAPIプロトコル選定の事例
マネーフォワードの事例は、API設計を要件で使い分ける好例です(媒体:Findy Engineer Lab)。同社は帳票APIにはgRPC、マスタAPIにはRESTというように、内部通信の効率が要る部分とキャッシュ重視の部分でプロトコルを分けています。実際、APIプロトコルのレイテンシはREST 50〜200ms、GraphQL 50〜300ms、gRPC 10〜50msと差があり、内部通信に速度を求める箇所ではgRPCが効きます。
一方で、キャッシュ可能性を最重視してあえてRESTを選ぶ判断もあります。あるサービスでは150以上のエンドポイントでRESTを採用し、CDNキャッシュを効かせることで20ms未満の応答を実現した事例も報告されています(媒体:Botoi)。外部公開やキャッシュ重視ならREST、内部の高速通信ならgRPC、複雑なデータ取得を一度で済ませたいならGraphQLという判断軸が、事例から浮かび上がります。
発注企業がここから学ぶべきは、「最新だからGraphQL」「速いからgRPC」と一律に決めない姿勢です。サーバーサイドに強い会社は、自社サービスのアクセス特性に合わせてプロトコルを選び分けます。提案を受ける際は、「なぜこのAPI方式なのか」を用途とレイテンシの観点で説明できるかを確認するとよいでしょう。
enechainのGraphQL本番運用に学ぶ設計規律
エネルギー取引プラットフォームのenechainは、GraphQLを本番運用する中で得た実践知を公開しています(媒体:enechain Tech Blog)。GraphQLは便利な反面、設計を放置すると保守不能になりやすい技術です。同社の事例で印象的なのは、運用を支えるための「規律」を仕組みで担保している点です。
具体的には、エラー応答の設計を整理し、4XX系のクライアントエラーは専用スキーマで型補完を効かせ、5XX系のサーバーエラーは仕様どおりに扱うという方針を徹底しました。さらに、各Resolver(データ取得処理)に説明文(description)の記述を義務づけ、それをESLintプラグインで機械的に強制しています。属人的な「気をつける」ではなく、仕組みで品質を守る発想です。
発注企業がこの事例から学ぶべきは、サーバーサイドに強い会社は「動くものを作る」だけでなく「壊れにくく、引き継ぎやすい仕組み」まで整えるということです。ドキュメントやエラー設計、静的チェックの自動化は、納品後の保守性を直接左右します。こうした規律を当たり前に実践しているかどうかが、強い会社とそうでない会社を分ける見極めポイントになります。サーバーサイド開発で生じやすい失敗・課題・リスクの詳細は、後述の関連記事もあわせてご覧ください。
まとめ

サーバーサイドに強い開発事例を振り返ると、成功も移行も、結局は「事業フェーズから技術を選び、小さく切り出してから段階的に広げる」という一点に集約されます。クックパッドの100万行Rails分割やメルカリの4年がかりの移行は、止めずに変える設計と、移行期の二重運用コストを織り込む現実主義の理想形です。Baseconnectのテスト基盤づくりやenechainのエラー設計・ドキュメント強制は、納品後の保守性を仕組みで守る重要性を教えてくれます。
マネーフォワードやSTORESの事例は、単一言語に固執せず要件でREST・GraphQL・gRPCや言語を使い分ける中立的な姿勢の強さを示します。自社が「新規でモダンに作れる立場」か「既存を活かして段階的に改善する立場」かを見極め、まずは一部から検証する一歩を踏み出してください。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、事業から逆算したサーバーサイド設計と体制づくりを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。
株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
