クラウド開発/構築の導入/開発事例や活用/成功事例について

クラウド開発・構築を検討するとき、多くの担当者がまず知りたいのは「自社と似た規模・業態の企業が、実際にどうやってオンプレミスからクラウドへ移行し、どれだけコストを削減し、どんな運用体制を築いたのか」という具体的な事例ではないでしょうか。クラウドは「とりあえずAWSを使えば安くなる」というほど単純ではなく、構成設計や移行手順、社内の運用文化まで含めて設計しないと、かえって費用が膨らんだり現場が使いこなせなかったりします。だからこそ、自社に近い導入事例・活用事例こそが、投資判断の精度を高めてくれます。

本記事は、クラウド開発・構築の導入事例・開発事例・活用事例・成功事例を、発注企業の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。オンプレミスからクラウドへ移行してインフラ費用を約3分の1に削減した事例、サーバーレス化でアイドルコストをゼロに近づけた事例、API連携で業務を自動化した事例、そして社内にクラウド人材を育てCCoE(Cloud Center of Excellence)を立ち上げて内製化を進めた事例まで、一次データの費用相場とあわせて具体的に解説します。読み終えるころには、自社が「どこから着手し、どんな効果を狙うべきか」のイメージが描けるはずです。なお、クラウド開発・構築の全体像をまだ把握していない方は、まずクラウド開発/構築の完全ガイドから読むことをおすすめします。

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オンプレからクラウド移行でコスト削減した事例

オンプレからクラウド移行でコスト削減したクラウド開発事例のイメージ

クラウド開発・構築の事例でもっとも分かりやすい成果が出るのが、オンプレミスサーバーからクラウドへの移行によるコスト削減です。自社でサーバーを保有・運用していると、ハードウェアの調達費、データセンターの場所代、保守要員の人件費、数年ごとの機器更改(リプレース)費用といった固定費が重くのしかかります。クラウドに移行すると、これらを使った分だけ支払う変動費へ転換でき、ピークに合わせた過剰なスペックを抱え込む必要がなくなります。

マネージドサービス活用でインフラ費を3分の1に削減した事例

クラウド移行の効果をもっとも具体的に示すのが、マネージドサービスの活用によるインフラ費の圧縮です。自前で構築・運用していたデータベースやロードバランサーを、AWSのRDSやELBといったマネージドサービスに置き換えると、サーバーのパッチ当てや冗長化の作り込み、監視の構築といった運用工数が大幅に減ります。一次データの整理では、こうしたマネージドサービスへの置き換えによって、インフラにかかる総コストを従来の約3分の1まで削減できた事例があります。

重要なのは、この削減効果を「漠然とした効率化」ではなく、自社の現状コストに当てはめて定量化することです。従業員50〜100名規模のオンプレミスからクラウドへの移行は、設計・構築で100万〜400万円、データ移行で20万〜80万円、トータルで150万〜500万円前後が一つの目安です。この初期投資に対し、機器更改費の消滅や運用要員の負荷軽減を年単位で積み上げれば、投資回収のロジックを稟議で説明しやすくなります。事例を読むときは、自社の固定費がどれだけ変動費に置き換わるかを必ず試算してください。

リザーブドインスタンスと3年契約で月額を最適化した事例

移行後の運用フェーズでコストを継続的に下げた事例として代表的なのが、リザーブドインスタンスや長期契約の活用です。常時稼働させる本番サーバーを従量課金のままにせず、1年や3年の長期利用を前提に予約すると、単価が大きく下がります。一次データの料金比較では、Linux仮想サーバー(2コア・約8GB)の月額は従量課金でAWS t3.largeが$78.3ですが、3年契約にすると$40.4まで下がります。Azureはハイブリッド特典を使うと$29.9、GCPは$40と、契約形態の選び方だけで月額が半分前後に変わります。

この事例から学べるのは、クラウドは「立てて終わり」ではなく、稼働状況を見ながら契約形態を最適化し続ける運用が前提だという点です。常時稼働するベースの部分はリザーブドで固定費化し、増減の激しい部分は従量課金やオートスケールで吸収する、というハイブリッドな設計が、コストとパフォーマンスのバランスを取る王道になります。移行直後に従量課金のまま放置すると、想定よりはるかに高い請求が来る、という落とし穴があるため、運用設計まで含めて事例を読むことが大切です。

サーバーレス化でアイドルコストをゼロにした事例

サーバーレス化でアイドルコストをゼロにしたクラウド開発事例のイメージ

クラウドならではのコスト構造を活かした事例として注目されるのが、サーバーレスアーキテクチャの採用です。常時起動するサーバーを持たず、リクエストが来たときだけ処理が動くLambdaやAPI Gatewayといったサービスを組み合わせると、誰もアクセスしていない待機時間(アイドル時間)の課金が発生しません。アクセスに波がある業務システムや、夜間・休日に動かないバックオフィス系のシステムで、特に大きな効果が出ます。

無料枠内で月数百円に収まったサーバーレス構成の事例

サーバーレスのコストメリットを具体的な数字で示すと、その効果がよく分かります。一次データによれば、API呼び出しはAWS・Azureともに月100万回まで無料で、超過分は100万回あたり$0.2程度、GCPは月200万回まで無料です。コンピューティングの100万GB秒あたりの料金はAWS $16.7、Azure $16、GCP $2.5と、桁が小さい単位で課金されます。この結果、Lambda・API Gateway・DynamoDBを組み合わせたサーバーレスAPIは、アクセスが少〜中規模であれば月数百円、ときには無料枠内に収まる事例も珍しくありません。

常時起動の仮想サーバーを1台立てるだけでも月数千円〜1万円はかかることを考えると、利用頻度の低い社内ツールやAPIをサーバーレスで作る効果は絶大です。社内の申請フォームや、特定の時間帯だけ動くバッチ処理など、「常時動いている必要がない処理」をサーバーレスに切り出すことで、インフラ費を劇的に圧縮できます。この事例が示すのは、システム全体を一律のサーバー構成で組むのではなく、処理の特性に応じて適材適所でアーキテクチャを選ぶことの重要性です。

アクセス急増にも自動スケールで耐えた事例

サーバーレスのもう一つの価値は、コスト削減だけでなく、アクセス急増への自動対応です。キャンペーンや季節要因で一時的にアクセスが跳ね上がるサービスでは、オンプレミスだとピークに合わせてサーバーを増設しておく必要があり、平常時は無駄なリソースを抱えることになります。サーバーレスやマネージドのオートスケールを使った事例では、リクエスト量に応じて自動的に処理能力が拡張され、急増時にもダウンせず、平常時は最小限のコストに戻る、という理想的な振る舞いを実現しています。

この弾力性(エラスティシティ)こそ、クラウドがオンプレミスに対して持つ最大の強みの一つです。事例を読むときは、自社のアクセスにどの程度の波があるか、ピークと平常時の差がどれくらいかを把握しておくと、サーバーレスや自動スケールが向いているかどうかを判断できます。ただし、サーバーレスは常時高負荷がかかり続けるシステムや、長時間の重い処理には不向きな面もあるため、何でもサーバーレスにすればよいわけではない点には注意が必要です。

API連携で業務を自動化した事例

API連携で業務を自動化したクラウド開発事例のイメージ

クラウド開発の投資効果を最大化するのが、複数のクラウドサービスやSaaSをAPIで連携させ、業務全体を自動化する取り組みです。受注、在庫、会計、顧客管理といった個別のシステムを、APIを通じてデータが自動で流れるようにつなぐと、手作業でのデータ転記や二重入力がなくなり、間接部門の工数が構造的に減ります。クラウドは標準でAPIを備えたサービスが多く、こうした連携を実現しやすい環境だと言えます。

AI画像認識APIを安価に組み込んで省力化した事例

API連携の事例として近年増えているのが、クラウド各社が提供するAIサービスを組み込んだ省力化です。たとえば画像認識APIを使えば、自前でAIモデルを開発しなくても、伝票や帳票の読み取り、商品画像の自動分類といった処理を実装できます。一次データの料金では、画像認識APIはAWSが月5,000枚まで無料で超過1,000枚あたり$1.3、Azureは月5,000件無料で超過1,000件$1、GCPは月1,000ユニット無料で超過1,000ユニット$1.5と、少量から低コストで試せます。

この事例の本質は、「AIを内製で一から作る」のではなく「クラウドのAPIを組み合わせて素早く業務に組み込む」という発想です。検証段階では無料枠で試し、効果が確認できたら本格運用に進む、という段階的な進め方ができるのもクラウドAPIの利点です。自社でデータサイエンティストを抱えていなくても、APIを呼び出すだけで高度な機能を業務に取り込める時代になったことを、これらの事例は示しています。

CI/CD自動化で開発スピードを上げた事例

業務の自動化は、開発・運用そのものにも及びます。GitHub ActionsなどのCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)を整備した事例では、コードをリポジトリにプッシュすると自動でテストが走り、問題がなければ本番環境へ自動デプロイされる仕組みを構築しています。これにより、リリース作業の手作業による事故が減り、小さな改修を高頻度で安全にリリースできるようになります。CI/CDやセキュリティスキャンを含むDevOps系SaaSの費用は、月数万円程度から導入できます。

こうした自動化は、目に見えるコスト削減だけでなく、開発スピードと品質の両立という形で効いてきます。手動デプロイにかかっていた時間と緊張感から解放され、開発チームが本来の機能開発に集中できるようになるのです。クラウドは、こうしたDevOpsの実践を前提としたツール群がそろっており、業務システムの開発・運用全体を継続的に改善する文化を根づかせやすい環境だと言えます。事例を読むときは、運用の自動化まで含めて投資対効果を評価することをおすすめします。

CCoE立ち上げで内製化を進めた事例

CCoE立ち上げで内製化を進めたクラウド開発事例のイメージ

競合の解説記事の多くは「どのクラウドを・いくらで・どんな構成で」というWhatに集中しますが、実際の成功事例で差がつくのは「自社でどう推進し、組織をクラウドに適応させるか」というHowです。その象徴が、CCoE(Cloud Center of Excellence)の立ち上げと内製化の取り組みです。外部委託だけに頼ると、ノウハウが社内に蓄積されず、追加の改修やトラブル対応のたびにベンダーへの依存とコストが続いてしまいます。

外部委託からスキルトランスファーでCCoEを立ち上げた事例

内製化に成功した事例に共通するのは、最初から内製を目指すのではなく、外部パートナーとの協働を通じてスキルを社内へ移転(スキルトランスファー)した点です。初期はクラウドに精通したパートナーと一緒に構築を進め、その過程で設計思想や運用ノウハウを社内エンジニアが吸収します。やがて、クラウド活用の標準やガバナンスを横断的に担う専門チーム、すなわちCCoEを立ち上げ、各部門のクラウド利用を支援・統制する体制へ発展させていきます。

クラウド人材のコストを押さえておくと、内製化の投資判断がしやすくなります。一次データでは、クラウド開発の費用の約80%は人件費で、人月単価は初級が月25万〜50万円、ミドルが月50万〜80万円、シニアやアーキテクトは月65万〜120万円以上、AWS認定保有で設計経験が豊富な人材は月100万円を超えることもあります。これらの相場を踏まえ、どの役割を内製し、どこを外部に任せるかを設計することが、CCoE立ち上げの実務的な出発点になります。

SRE型の運用文化へ移行した事例

内製化が進んだ事例の到達点として注目されるのが、運用文化そのものの変革です。従来の「絶対に止めない」ことを至上命題とするITIL型の運用から、SRE(Site Reliability Engineering)型の運用へ移行する企業が出てきています。SREでは、許容できる稼働率の目標(SLO)を定め、その範囲内で計画的に変更を加え、繰り返しの手作業(トイル)を自動化で撲滅し、障害対応も自動化していきます。クラウドのマネージドサービスやIaC(Infrastructure as Code)は、この運用文化を支える土台になります。

この事例が教えるのは、クラウド移行のゴールは「サーバーを移すこと」ではなく、「組織の運用文化を継続的改善型へ変えること」だという点です。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、クラウド構築の技術支援にとどまらず、現場の業務から逆算した要件整理と、社内に定着する運用体制づくりまで伴走することを重視しています。事例を読むときは、技術的な構成だけでなく、「どんな組織・運用に変わったか」という視点でも読むと、自社の進め方が見えてきます。

まとめ

クラウド開発事例のまとめイメージ

クラウド開発・構築の事例を振り返ると、成功の鍵は「マネージドサービスとサーバーレスで固定費を変動費に転換し、API連携で業務を自動化しつつ、最終的には社内に運用ノウハウを定着させる」という流れに集約されます。マネージドサービスの活用でインフラ費を約3分の1に削減し、サーバーレスでアイドルコストをほぼゼロにし、3年契約やリザーブドで月額を半分前後に最適化し、AI画像認識APIやCI/CDで業務と開発を自動化する。そしてCCoEの立ち上げとSRE型運用への移行で、ベンダー依存から脱却していく。これが事例から見えてくる王道の道筋です。

事例を読むときに大切なのは、「どのクラウドが安いか」という単発の比較ではなく、「自社の業務と組織にどう根づかせるか」という視点です。自社のシステムのアクセス特性や運用体制に照らし、まずは効果の大きい部分からクラウド化の一歩を踏み出してください。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、費用相場の試算から構成設計、社内定着までを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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