アプリ更改で見直すべき機能・対象範囲の一覧について

アプリ更改に踏み切ろうとしたとき、多くの担当者がまず悩むのが「どこからどこまでを見直せばよいのか」という対象範囲の問題です。OSのサポート終了に追われて目の前の不具合だけを直すと、翌年も同じ作業を繰り返すことになり、逆に「この機会に全部作り直そう」と意気込むと、費用も期間も膨らみ稼働中アプリのリスクが跳ね上がります。アプリ更改を成功させる第一歩は、更改で見直すべき機能と対象範囲を体系的に棚卸しし、どこを作り替え、どこを残すかを明確にすることにあります。

本記事では、アプリ更改で見直すべき機能・対象範囲の一覧について、画面・基盤・連携・運用といった領域ごとに整理し、それぞれをどの更改手法(7R)で扱うべきかまで踏み込んで解説します。OS・SDKサポート終了や端末更新、ストア要件変更を契機に「何を見直すべきか」を一覧化したい方に向けた実務的な内容です。あわせて、更改の進め方や費用感を体系的にまとめたアプリ更改の完全ガイドもご覧いただくと、本記事の対象範囲の話を全体像の中で位置づけやすくなります。本記事では、その完全ガイドでは概要にとどめた「対象範囲の切り分け方」を、具体的な観点とともに掘り下げます。

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・アプリ更改の完全ガイド

アプリ更改で見直すべき対象範囲の全体像

アプリ更改で見直すべき対象範囲の全体像

アプリ更改の対象範囲は、ひとくくりに「アプリ」と捉えると見落としが生じます。実際には、利用者が触れる画面層、その下で動くアプリ基盤・SDK層、サーバーや外部サービスとつながる連携層、そして配信・監視を担う運用層という、複数の領域が重なって一つのアプリを構成しています。更改で何を見直すかは、この領域ごとに切り分けて考えると整理しやすくなります。

重要なのは、すべての領域を同じ深さで作り替える必要はないという点です。OSサポート終了の影響を強く受けるのは基盤・SDK層であり、ストア要件変更が直撃するのは権限まわりや配信設定です。一方で、利用者に好評な画面や安定して動いている連携部分は、無理に作り替えないほうが安全な場合もあります。領域ごとに「見直す必要があるか」「どの手法で扱うか」を判断することが、過不足のない更改につながります。

画面・基盤・連携・運用の4領域で切り分ける

第一の領域は、利用者が直接操作する「画面・UI層」です。ボタンや入力フォーム、ナビゲーションといった要素がここに含まれます。OSのデザインガイドラインの変更や、新しい画面サイズ・ノッチ・折りたたみ端末への対応はこの領域の課題です。第二の領域は、アプリの土台となる「基盤・SDK層」で、開発言語のバージョンや利用しているライブラリ・SDK、OSが提供するAPIの呼び出し部分が該当します。OS・SDKサポート終了の影響を最も強く受けるのがこの層です。

第三の領域は、サーバーAPIや決済・地図・プッシュ通知といった外部サービスとつながる「連携層」です。連携先の仕様変更や認証方式の更新、通信のセキュリティ要件への対応がここに含まれます。第四の領域は、ビルド・配信・クラッシュ監視・アップデート配布を担う「運用層」です。ストアへの申請設定や、不具合を検知する仕組み、利用状況を把握する計測の見直しがこの層の対象になります。

この4領域に分けて現状を一覧化すると、「今回の更改で本当に手を入れるべき範囲」が浮き彫りになります。たとえばOSサポート終了が契機なら基盤・SDK層が中心になり、ストア要件変更が契機なら運用層と連携層が主役になります。漠然と「アプリを更改する」と考えるのではなく、領域ごとに対象範囲を切り分けることが、見積もりの精度とリスク管理の両面で効いてきます。

契機ごとに優先して見直す範囲が変わる

更改の契機が何かによって、優先して見直すべき領域は変わります。OS・SDKのサポート終了が契機であれば、まず基盤・SDK層の依存ライブラリと非推奨APIの洗い出しが最優先です。古いライブラリに依存した画面が新OSで崩れている場合は、画面層の一部も連動して見直す必要が出てきます。端末更新が契機であれば、新端末の画面サイズや入力方式に合わせた画面層と、端末固有機能を呼び出す連携層が中心になります。

ストア要件変更が契機の場合は、運用層と連携層の見直しが先に立ちます。プライバシー表示の義務化やターゲットAPIレベルの引き上げ、権限取得方法の変更などは、配信設定とOS APIの呼び出し部分に直結するためです。このように契機から逆算して優先領域を定めると、限られた予算と期間を無駄なく配分できます。

一方で、契機に直接関係しない領域も「ついでに点検する」価値はあります。せっかくアプリに手を入れるなら、長年放置されていた使いにくい画面や、計測できていなかった利用状況の可視化を同時に整えることで、更改全体の費用対効果が高まります。契機を起点にしつつ、隣接する領域まで視野を広げるのが、賢い対象範囲の決め方です。

領域別に見直すべき機能の一覧

領域別に見直すべき機能の一覧

ここからは、4つの領域それぞれについて、アプリ更改で具体的に見直すべき機能を一覧として掘り下げます。自社のアプリと照らし合わせ、どの機能が更改の対象になりそうかをチェックしながら読み進めてください。すべてを一度に作り替える必要はなく、契機と優先度に応じて取捨選択することが前提です。

画面・UI層で見直す機能

画面・UI層で見直すべき機能は多岐にわたります。代表的なものを挙げると、次のとおりです。

・新しい画面サイズ・ノッチ・折りたたみ端末へのレイアウト対応
・OSの最新デザインガイドラインに沿ったUI部品の置き換え
・ダークモードや大きな文字サイズなどアクセシビリティ対応
・古いライブラリに依存して新OSで崩れている画面の再構築
・利用率の低い画面や使われていない導線の整理・統廃合

この層では、技術的な追従だけでなく「使い勝手の見直し」を同時に行えるのが大きな価値です。長年の追加開発で操作手順が煩雑になっているアプリは少なくありません。更改のタイミングで本当に必要な操作だけを残す形に再設計すると、利用者の満足度と更改後の保守性の両方が高まります。ただし、利用者に定着している画面を大きく変えると混乱を招くため、変更の範囲は慎重に見極める必要があります。

基盤・SDK層で見直す機能

基盤・SDK層は、OS・SDKサポート終了を契機とするアプリ更改の主戦場です。見直すべき機能には次のようなものがあります。

・サポート終了を迎えた開発言語・フレームワークのバージョンアップ
・非推奨(deprecated)となったOS APIの呼び出しの置き換え
・更新が止まった外部ライブラリ・SDKの最新版または代替への移行
・64ビット対応など端末・OSが必須とする実行要件への適合
・依存関係が複雑に絡み合った箇所の整理とアーキテクチャの見直し

この層の見直しでは、現行システムの依存関係を可視化することが出発点になります。アプリケーション資産の複雑度や依存関係を可視化する取り組みは、システムモダナイゼーションの分野でも重視されており、富士通が提供する「ソフトウェア地図」のように資産を地図化して整理する手法が知られています。アプリ更改でも、どのライブラリがどの機能に紐づくかを地図のように整理してから着手すると、影響範囲の見落としを防げます。

基盤・SDK層をどこまで作り替えるかは、後述する7Rの手法選定とも直結します。古い基盤の上に新しいライブラリだけ載せ替えるのか、土台ごと作り直すのかで、必要な工数と将来の保守性が大きく変わるためです。

連携層・運用層で見直す機能

連携層では、外部サービスやサーバーとのつながりを見直します。具体的には次のような機能が対象です。

・サーバーAPIの認証方式・通信プロトコルのセキュリティ要件への対応
・決済・地図・SNS連携など外部SDKの仕様変更への追従
・プッシュ通知の権限取得方法や配信基盤の更新
・端末固有機能(カメラ・位置情報・生体認証など)の権限まわりの見直し

運用層では、配信と監視の仕組みを点検します。ストアへの申請に必要なプライバシー表示やターゲットAPIレベルの設定、クラッシュを検知する監視の仕組み、利用状況を把握する計測の整備などが該当します。更改後に「どこで不具合が起きているか」「どの機能が使われているか」を把握できる状態を作っておくと、次の更改サイクルの判断材料になります。

連携層と運用層は、ストア要件変更を契機とする更改で特に重要になります。プラットフォーマーの要件は今後も増え続けるため、ここを場当たり的に対応すると毎回の改修負担が膨らみます。共通化できる部分を一本化し、要件変更に追従しやすい構成へ整えることが、長期的な保守コストの抑制につながります。

見直し範囲を7Rの手法に対応づける

見直し範囲を7Rの手法に対応づける

見直すべき機能を一覧化したら、次はそれぞれを「どの手法で扱うか」に対応づけます。システムモダナイゼーションの分野で広く使われるAWSの「7R」というフレームワークは、アプリ更改の対象範囲の扱い方を考えるうえでも有用です。すべてを同じ手法で扱うのではなく、機能ごとに適した手法を割り当てる「ポートフォリオアプローチ」が、過不足のない更改の鍵になります。

7R(リホスト・リプラットフォーム他)とは

7Rとは、既存システムをどのように移行・刷新するかを7つの選択肢で整理したフレームワークです。具体的には、Rehost(そのまま載せ替え)、Relocate(環境間の移設)、Replatform(一部を最適化して載せ替え)、Repurchase(既製品への置き換え)、Refactor(内部構造の作り替え)、Retire(廃止)、Retain(現状維持)の7つを指します。

アプリ更改の文脈に置き換えると、Replatformは古いSDKを最新のものに差し替えて土台を整えるイメージ、Refactorは複雑化した内部構造を作り直してアーキテクチャを刷新するイメージにあたります。Repurchaseは独自開発していた機能を成熟した外部SDKや既製サービスに置き換えること、Retireは使われなくなった機能の廃止、Retainは安定して動いている部分をあえて触らない判断に対応します。

重要なのは、これらの手法に優劣があるわけではないという点です。費用や期間の目安として、最小限の載せ替えに近いクラウド移行型は数百万〜1,000万円台で3〜6ヶ月、内部構造を作り直す再構築型は2,000万円以上で12〜18ヶ月以上と幅があります。アプリ全体に単一の手法を適用するのではなく、機能ごとに適した手法を選ぶことで、コストとリスクのバランスを最適化できます。

機能ごとに手法を割り当てるポートフォリオの考え方

4領域で洗い出した機能一覧に、7Rのどれを適用するかを書き込んでいくと、更改計画の骨格が見えてきます。たとえばサポート終了を迎えた開発言語のバージョンアップはReplatform、複雑に絡み合った基盤部分はRefactor、独自実装していた決済処理は成熟した外部SDKへのRepurchase、使われていない画面はRetire、利用者に定着し安定動作している画面はRetain、といった具合に対応づけます。

このポートフォリオアプローチの利点は、「全面作り直し」と「最小改修」の二択に陥らずに済むことです。本当に作り替えが必要な箇所にはRefactorで投資し、触る必要のない箇所はRetainで残すことで、限られた予算を重要な領域に集中できます。すべてをRefactorで作り直すと費用も期間も膨らみ、すべてをRehost相当の最小改修で済ませると将来の更改負担が残ります。両極端を避けるのがポートフォリオの本質です。

手法を割り当てる際は、目先の契機だけでなく次の更改サイクルまで見据えることが大切です。今回はReplatformで最小限に留めるとしても、複雑化した基盤を放置すれば次回はさらに大きなRefactorが必要になります。どこに今投資し、どこを次回に回すかという中長期の判断を、機能一覧と7Rの対応表の上で行うことで、場当たり的でない更改計画を組み立てられます。

まとめ

アプリ更改で見直すべき機能のまとめ

本記事では、アプリ更改で見直すべき機能・対象範囲の一覧について解説してきました。アプリは画面・UI層、基盤・SDK層、連携層、運用層という4つの領域が重なって構成されており、更改の契機がOSサポート終了か、端末更新か、ストア要件変更かによって優先して見直す領域が変わります。各領域で見直すべき機能を一覧化したうえで、それぞれをReplatform・Refactor・Repurchase・Retire・Retainといった7Rの手法に対応づけることで、過不足のない更改計画が組み立てられます。

対象範囲を決めるうえで最も避けたいのは、「目の前の不具合だけ直す最小改修」と「この機会に全部作り直す全面刷新」という両極端です。前者は翌年も同じ作業を繰り返すことになり、後者は費用と稼働中アプリのリスクを膨らませます。機能ごとに適した手法を割り当てるポートフォリオアプローチと、依存関係を可視化してから着手する姿勢が、この両極端を避ける鍵になります。

自社のアプリ更改を検討する際は、まず4領域に沿って現状の機能を棚卸しし、どこを作り替え、どこを残すかを一覧にすることから始めてみてください。そのうえで、更改の進め方や費用感、手法選定の詳細を体系的に押さえたい場合は、完全ガイドもあわせて活用すると、対象範囲の判断を全体像の中で確かめられます。見直すべき範囲を正しく切り分けることが、アプリ更改を成功へ導く出発点になります。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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