アプリケーションのモダナイゼーションの事例/成功事例について

長年使い続けてきた基幹システムや業務アプリケーションが老朽化し、「保守できる技術者がいなくなってきた」「クラウド時代のスピードに追いつけない」といった課題に直面する企業が急増しています。経済産業省のDXレポートでは、こうしたレガシーシステムを放置した場合、2025年以降に年間最大12兆円もの経済損失が生じる「2025年の崖」が警告されており、アプリケーションのモダナイゼーション(既存システムの刷新・近代化)は、いまや多くの企業にとって避けて通れない経営課題となっています。

本記事では、アプリケーションのモダナイゼーションを実際に進めた企業の成功事例・失敗事例を、定量的な効果データとともに具体的に解説します。COBOL基幹系の刷新でサーバー保守費を65%削減した製造業の事例から、移行計画の不備で出荷停止に至った失敗例まで、現場で何が起きたのかを掘り下げます。手法選定や進め方の全体像を体系的に把握したい方は、あわせてアプリケーションのモダナイゼーションの完全ガイドもご覧ください。自社の刷新プロジェクトを成功に導くための実践的なヒントを、ぜひ最後までお役立てください。

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・アプリケーションのモダナイゼーションの完全ガイド

事例から学ぶ前に:なぜ今モダナイゼーションが必要なのか

なぜ今アプリケーションのモダナイゼーションが必要なのか

個別の事例を見る前に、まずアプリケーションのモダナイゼーションがなぜこれほど注目されているのか、その背景を整理しておきましょう。多くの成功事例・失敗事例に共通する出発点は、老朽化・属人化・ブラックボックス化という3つの構造的な課題です。これらが放置された結果として何が起きるのかを理解しておくことで、後述する事例の意味がより明確になります。

2025年の崖とレガシー放置のリスク

経済産業省が公表したDXレポートでは、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、2025年以降に最大で年間12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性が指摘されています(出典:経済産業省)。これがいわゆる「2025年の崖」です。レガシーシステムの問題は、単に動作が遅い・古いというだけではありません。長年の改修で内部構造が複雑化し、仕様を把握する担当者が退職・高齢化することで、誰も全体像を理解できない状態に陥ります。

業界団体であるJUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の調査でも、約7割の企業が何らかのレガシー化の課題を抱えていることが報告されています。こうした状態を放置すると、市場変化への迅速な対応ができないだけでなく、保守費の高騰やセキュリティリスクの増大、災害時の事業継続性の低下といった経営リスクが顕在化します。アプリケーションのモダナイゼーションは、こうした崖から企業を救い出すための取り組みなのです。

成功事例を評価する3つの軸

モダナイゼーションの事例を読み解く際は、3つの軸で効果を評価すると本質が見えてきます。第1に「コスト削減効果」です。サーバーやライセンスの保守費、運用人件費がどれだけ削減されたかという定量指標で、投資回収の根拠になります。第2に「業務スピードの改善」です。夜間バッチの処理時間短縮や、新機能リリースまでのリードタイム短縮など、ビジネスの俊敏性に直結する効果です。

第3に「事業継続性とリスク低減」です。属人化の解消や、災害時の復旧性向上、セキュリティ強化など、目に見えにくいものの経営上極めて重要な効果です。以降の事例では、これら3つの軸を意識しながら、どの手法を選び、どのような成果を得たのかを具体的に見ていきます。単なるシステムの入れ替えではなく、アプリケーション層をクラウドネイティブに作り変えることで、こうした多面的な効果が生まれている点に注目してください。

アプリケーションのモダナイゼーション成功事例

アプリケーションのモダナイゼーション成功事例

ここからは、実際にモダナイゼーションを成功させた企業の事例を、定量的な効果データとともに紹介します。いずれの事例も、現状課題に対して適切な手法(リビルド、リファクタリング、自動化基盤の導入など)を選定し、明確な数値目標を達成している点が共通しています。自社の状況に近い事例を探しながら読み進めてください。

製造業:COBOL基幹系刷新で保守費65%削減

従業員約1,200名のある製造業では、数十年にわたり稼働してきたCOBOLベースの基幹システムが大きな課題となっていました。COBOL技術者の高齢化により保守体制が逼迫し、夜間バッチ処理が8時間に達するなど、業務の足かせになっていたのです。この企業は、メインフレーム上のレガシー資産を最新のオープン環境へ作り変える「リビルド型」のモダナイゼーションを選択し、約16ヶ月のプロジェクトで刷新を完遂しました。

成果は劇的でした。まず、夜間バッチ処理が8時間から90分へと約80%短縮され、日次の締め作業や在庫更新が大幅に早まりました。さらに、メインフレームの維持に年間2,400万円かかっていたサーバー保守費が、刷新後は年間850万円へと約65%削減されています。COBOLという特定言語に依存していた属人的な保守体制も解消され、一般的なエンジニアが保守できる構造へと作り変えられました。このように、リビルドはコスト・スピード・属人化解消という3つの効果を同時に実現できる強力な手法です。

イオングループ:業務プロセス分析で月700時間削減

大手流通のイオングループでは、システムそのものの刷新と並行して、その前提となる業務プロセスの近代化に取り組みました。注目すべきは、RPA(業務自動化ツール)を導入する前に、業務プロセスの分析を徹底して行った点です。多くの企業がツール導入を急ぐあまり、非効率な業務をそのまま自動化してしまうのに対し、イオングループは「自動化すべき業務」と「そもそも廃止すべき業務」を切り分けてから着手しました。

その結果、月間で約700時間もの業務削減を実現しています。この事例が示す重要な教訓は、アプリケーションのモダナイゼーションは技術の置き換えだけで完結するものではない、ということです。現行業務の棚卸しと標準化を先に行うことで、刷新後のシステムが本来発揮すべき効果を最大化できます。クラウドネイティブな業務基盤を構築する際にも、まず業務を可視化し、ムダを削ぎ落とすこのアプローチは普遍的に有効です。

大規模ログ解析:可視化で数億円のコスト効果

ユニリタが支援したある大規模インフラの事例では、200種・30,000台に及ぶネットワーク機器と、10,000台のサーバーから、1日あたり10億件もの通信ログを集計・解析する仕組みを構築しました。膨大なログをモダンなデータ基盤上で集計・可視化することで、保守費が高くつく機器や、稼働率の低い機器を特定できるようになったのです。

この可視化によって、運用担当者の作業負担は従来の5分の1にまで軽減され、最終的に数億円規模の投資対効果を生み出しています。この事例のポイントは、アプリケーションのモダナイゼーションがインフラ運用そのものを「データドリブン」に変革した点にあります。レガシーな手作業のログ確認をやめ、クラウド上の解析基盤に置き換えることで、人手では到底不可能だった規模の最適化が実現しました。アプリケーション層のクラウドネイティブ化が、運用コストの構造そのものを変えた好例といえます。

失敗事例から学ぶ:江崎グリコの出荷停止トラブル

アプリケーションのモダナイゼーション失敗事例

成功事例だけでなく、失敗事例からも多くの教訓を得られます。アプリケーションのモダナイゼーションは大規模かつ複雑なプロジェクトであるため、計画の不備が深刻な業務停止を招くこともあります。ここでは、広く報じられた江崎グリコの事例を取り上げ、何がボトルネックになったのか、そして同じ失敗を避けるには何が必要なのかを掘り下げます。

移行計画の不備が招いた全品出荷停止

江崎グリコでは、基幹システムの切り替えに伴って深刻なシステム障害が発生し、チルド商品の全品出荷が長期間にわたり停止する事態に至りました。新システムへの移行直後に想定外のトラブルが連鎖し、受注から出荷までの業務が回らなくなったのです。原因の核心は、移行計画そのものの不備にあったとされています。

具体的には、新システムへ一度に切り替える「ビッグバン型」の移行を選択したことで、問題発生時に旧システムへ戻す退避策が機能しにくい状況に陥った点が指摘されています。また、本番稼働前のテストやデータ移行の検証が、実際の業務量・データ量を十分に再現できていなかった可能性も考えられます。この事例は、モダナイゼーションにおいて「動くものを作る」こと以上に、「安全に切り替える」計画が重要であることを痛烈に示しています。

失敗から導く成功の条件

この失敗事例から導かれる成功の条件は明確です。第1に、全社一括のビッグバン移行を避け、機能単位で新旧を並行稼働させながら少しずつ移行する「ストラングラーパターン(段階的置き換え)」を採用することです。一部の機能から切り替え、問題がなければ次へ進むこの方式なら、トラブルが起きても影響範囲を限定でき、切り戻しも容易になります。

第2に、本番に近いデータ量・業務量でのリハーサル(移行リハーサル)を繰り返し実施することです。第3に、万一の障害に備えた切り戻し手順を事前に整備し、それが本当に機能するかをテストしておくことです。成功事例で紹介した製造業が16ヶ月という十分な期間をかけて慎重に進めたのに対し、失敗事例では切り替えそのものに無理があった点が対照的です。アプリケーションのモダナイゼーションは、技術選定と同じくらい移行設計が成否を分けるのです。

事例を自社に活かすための実践ステップ

事例を自社に活かすための実践ステップ

これまで紹介した成功・失敗事例を、自社のモダナイゼーションプロジェクトに活かすにはどうすればよいでしょうか。事例は参考になりますが、そのまま真似ても成果は出ません。自社の現状を正しく診断し、適切な手法と進め方を選ぶことが不可欠です。ここでは、事例から得た学びを実践に移すための具体的なステップを示します。

現状資産の棚卸しと効果目標の設定

最初に行うべきは、現行アプリケーション資産の棚卸しです。どのシステムが、どの業務を支え、どれだけの保守費がかかっているのかを可視化します。成功事例の製造業が「夜間バッチ8時間」「保守費年2,400万円」という現状値を明確にしていたからこそ、刷新後の効果を80%短縮・65%削減という形で示せたのです。改善のゴールを数値で定義するには、まず現状を数値で把握する必要があります。

あわせて、達成したい効果目標を3つの軸(コスト削減・業務スピード・事業継続性)で設定します。「保守費を3年で半減する」「リリースリードタイムを2週間から3日に短縮する」といった具体的な目標は、後の手法選定や投資判断の基準になります。目標が曖昧なまま着手すると、何をもって成功とするかが定まらず、プロジェクトが迷走する原因になります。

手法選定と段階的移行の設計

現状把握ができたら、どの手法で刷新するかを選びます。短期間でクラウドへ移したいなら、構成をほぼ変えずに移すリホスト型(数百万〜1,000万円台・3〜6ヶ月が目安)が、抜本的に作り変えたいならリビルド型(2,000万円以上・12〜18ヶ月以上が目安)が候補になります。費用相場としては、単一業務システムの刷新で3,000万〜1.5億円、基幹+複数周辺システムを含む大規模刷新で1.5億〜5億円程度が一般的な目安です。

そして、江崎グリコの失敗を教訓に、必ず段階的移行を前提に計画を立てます。一度に全てを切り替えるのではなく、影響の小さい機能から順に新システムへ移し、各段階でリハーサルと検証を重ねます。自社にモダナイゼーションの経験者が少ない場合は、現状分析から手法選定、移行設計までを一気通貫で支援できるパートナーに相談することで、事例で見たような失敗を回避しやすくなります。事例の表面的な成果だけでなく、その裏にある慎重な進め方こそが、自社で再現すべき本質なのです。

まとめ

アプリケーションのモダナイゼーション事例のまとめ

本記事では、アプリケーションのモダナイゼーションの成功事例と失敗事例を、定量的な効果データとともに解説しました。成功事例では、COBOL基幹系をリビルドして夜間バッチを8時間から90分へ短縮し保守費を65%削減した製造業、業務分析を徹底して月700時間を削減したイオングループ、大規模ログの可視化で数億円のコスト効果を生んだインフラ運用の事例を紹介しました。一方、失敗事例として、ビッグバン移行と移行計画の不備により全品出荷停止に至った江崎グリコの事例から、段階的移行と移行リハーサルの重要性を学びました。

これらの事例に共通するのは、適切な手法選定と慎重な移行設計が成否を分けるという点です。自社で成果を再現するには、まず現行資産を棚卸しして効果目標を数値で定め、リホストやリビルドといった手法を状況に応じて選び、段階的移行を前提に計画することが重要です。アプリケーションのモダナイゼーションは、単なるシステムの入れ替えではなく、アプリケーション層をクラウドネイティブに作り変えて経営の俊敏性を取り戻す投資です。自社の刷新を検討される際は、現状分析から移行までを一貫して支援できる専門パートナーへの相談から始めてみてください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、弊社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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