「スクラム開発を外注したいが、いくらかかるのか見当がつかない」「ベンダーから見積もりをもらったが、適正価格なのかどうか判断できない」——スクラム開発の導入を検討している企業の担当者から、こうした声をよく耳にします。スクラム開発はウォーターフォール型開発と異なり、スプリントを繰り返しながら段階的にシステムを構築していく手法のため、プロジェクト開始時点での全体費用が見えにくいという特性があります。この「費用の不透明さ」が、スクラム開発への発注をためらわせる最大の障壁となっています。
本記事では、スクラム開発の費用相場をチーム構成別・開発規模別に詳しく解説します。費用を構成する各要素の内訳から、見積書の読み方と比較のポイント、ランニングコストの実態、さらにケース別の費用シミュレーションまで、発注者として知っておくべき情報を網羅的にお伝えします。この記事を読み終えることで、スクラム開発の費用について自信を持って判断できるようになるはずです。
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スクラム開発の費用相場とコスト構造

スクラム開発の費用を正確に把握するためには、まずスクラム特有のコスト算出方法を理解することが重要です。ウォーターフォール型開発では「機能一覧×工数×単価」という形で一括見積もりが行われますが、スクラム開発では「チーム単価×スプリント数」という計算式が基本となります。スプリントとは、1〜4週間を1サイクルとする反復開発の単位で、スクラム開発ではこのスプリントを繰り返しながら段階的にプロダクトを完成させていきます。チームに必要なメンバーの月額単価を合算し、スプリントの実施回数を掛け合わせることで開発費用の目安を算出します。
開発規模別の費用目安
スクラム開発の費用は、開発するシステムの規模と複雑性によって大きく異なります。小規模なWebアプリケーションや社内ツールの場合、スプリント期間を2週間とし、プロダクトオーナー・スクラムマスター・エンジニア2〜3名の最小構成でチームを組むと、1スプリントあたりのチーム単価は200万〜350万円程度となります。初回リリースまでに6〜8スプリントを想定すると、開発費用の総額は1,200万〜2,800万円が目安です。中規模システム(ECサイト・業務管理システムなど)では、エンジニアを5〜7名に増員したチーム構成で、1スプリントあたりのチーム単価は500万〜800万円程度となります。リリースまでに10〜16スプリントを費やすことが多く、総開発費用は5,000万〜1.2億円程度が相場です。大規模システム(金融・物流・製造業の基幹システムなど)では、複数のスクラムチームを並列で走らせる「スケールドアジャイル」体制が必要になり、月あたりのチーム費用だけで2,000万〜5,000万円以上になるケースも少なくありません。プロジェクト全体の費用は数億〜十数億円規模に達することがあります。なお、これらはあくまで目安であり、実際の費用はプロジェクトの要件・チームのスキルレベル・発注先の規模によって大きく変動します。
コストを構成する主な要素
スクラム開発のコストは、大きく「チームメンバーの人件費」「スクラムイベントにかかる工数」「ツール・インフラ費用」の3つに分類されます。まず人件費については、スクラムチームを構成する各ロールの月単価が費用の大半を占めます。プロダクトオーナー(PO)は100万〜200万円/月、スクラムマスター(SM)は100万〜150万円/月、フロントエンドエンジニアは70万〜120万円/月、バックエンドエンジニアは80万〜130万円/月、インフラエンジニアは90万〜140万円/月がそれぞれの相場です。シニアクラスやアーキテクト役割を担う場合は150万〜250万円/月に達することもあります。次にスクラムイベントにかかる工数について、見落とされがちなポイントがあります。スクラムでは「スプリントプランニング」「デイリースクラム」「スプリントレビュー」「スプリントレトロスペクティブ」の4つのイベントが毎スプリント実施されます。1スプリント(2週間)あたりのイベント合計時間はおおよそ10〜16時間にのぼり、これはエンジニアの稼働時間の10〜15%程度を占めます。見積もり時にこのイベント工数が考慮されていない場合、実際の開発進捗が計画より遅れる原因となるため注意が必要です。ツール・インフラ費用としては、Jira・Confluenceなどのプロジェクト管理ツール(月額2万〜10万円程度)、GitHub・GitLabなどのソースコード管理ツール(月額1万〜5万円程度)、AWSやGCPなどのクラウドインフラ費用(システム規模に応じて月額5万〜100万円以上)が別途発生します。
スクラム開発の見積もり比較のポイント

スクラム開発の見積もりは、ウォーターフォール型開発の見積もりとは根本的に性質が異なります。ウォーターフォール型では「要件定義→設計→実装→テスト」という固定されたプロセスを前提に、全工程の費用を一括で算出します。一方スクラム開発では、スプリントを重ねることで要件が変化・精緻化されていくため、プロジェクト開始時点での全体見積もりは本質的に「仮の計画」です。この特性を理解したうえで見積もりを評価することが、発注者にとって極めて重要です。
見積書の読み方と比較の基準
スクラム開発の見積書を正しく読み解くためには、いくつかの確認ポイントがあります。まず「スプリントあたりのチーム単価」が明示されているかを確認します。単価が明示されていない見積書は、後になって追加費用が発生するリスクが高く注意が必要です。次に「各メンバーの役割と稼働率」が記載されているかを確認します。スプリント単価の根拠となるメンバー構成と、それぞれの稼働率(フルタイムか、パートタイムか)が明示されている見積もりは透明性が高いといえます。また、「スクラムイベントの工数が含まれているか」という点は特に重要です。プランニング・デイリースクラム・レビュー・レトロスペクティブのイベント時間が開発工数から差し引かれているかどうかによって、実際の開発キャパシティが大きく変わります。さらに「MVPとフルスコープの費用分岐」が示されているかどうかも確認します。優れた見積もりは、最低限必要な機能(MVP)でのリリースに必要なスプリント数と、最終的なフルスコープでの総スプリント数を分けて提示します。この分岐があることで、予算に応じたスコープ調整が可能になります。複数社から見積もりを取得した場合、単純な総額での比較ではなく「1スプリントあたりの費用対効果」「チームのスキルセット」「過去のスクラム実績」を軸に比較することが適正評価につながります。
複数社から見積もりを取る方法
スクラム開発の見積もりを複数社から取得する際は、「RFP(提案依頼書)」の作成が効果的です。RFPには、開発するプロダクトの概要・目的・想定ユーザー数、優先的に実装したい機能のリスト(プロダクトバックログのドラフト)、希望するMVPリリース時期、予算の上限(もしくは概算)、チームに求めるスキルセット、コミュニケーション方法(オンサイト/フルリモート/ハイブリッド)を記載します。特にスクラム開発の場合、RFPに「スプリント期間の希望(1週間/2週間)」「スクラムイベントの進行言語(日本語/英語)」「プロダクトオーナーの役割を発注側で担うか受注側に委任するか」を明記することで、より正確な見積もりが得られます。一般的に、スクラム開発の見積もりを取得する際は3〜5社程度に依頼し、最低でも2社の見積もりを比較することが推奨されます。見積もり金額だけでなく、見積もり提案の質(スプリント計画の詳細度、リスク項目の有無、過去事例の有無)も重要な評価基準です。なお、スクラム開発に不慣れなベンダーの場合、スクラムという名称を使いながら実態はウォーターフォール的な進め方をしているケースがあります。過去のスクラム実績とその成果物(バーンダウンチャート、スプリントレビュー資料など)の提示を求めることで、ベンダーのスクラム実装力を確認することができます。
スクラム開発のランニングコストと隠れた費用

スクラム開発では、初期の開発費用以外にも継続的に発生するコストが存在します。ITシステムへの投資全体を見ると、新規システム導入費用と既存システムの運用・保守費用の比率は「2:8」といわれており、長期的なランニングコストが総コストの大半を占めることになります。スクラム開発でリリースされたシステムも例外ではなく、リリース後の保守・改善・運用費用を事前に見込んでおくことが、予算計画の精度を高めるうえで重要です。
初期費用以外に発生するコスト
スクラム開発が完了した後に発生する主なコストとして、システム保守・運用費用、継続的な機能改善費用、インフラ・ツール費用の3つが挙げられます。システム保守・運用費用は、サーバーの監視・障害対応・セキュリティパッチ適用などの保守業務に対する費用です。一般的に年間保守費用は開発費用の15〜20%程度が相場とされており、開発費用が3,000万円のシステムであれば年間450万〜600万円程度の保守費用が発生します。スクラム開発の場合、リリース後も継続的な機能改善(エンハンスメント)のためにスクラムチームを維持するケースも多く、開発フェーズよりも小さなチーム規模で月次スプリントを継続するパターンが一般的です。この「ポストリリーススクラム」の費用は月100万〜300万円程度が目安です。継続的な機能改善費用については、スクラム開発では「リリース=完成」ではなく「リリース=最初のマイルストーン」という考え方が基本です。ユーザーフィードバックに基づいた機能改善・新機能追加のスプリントが継続的に実施されるため、予算計画には開発費用の30〜50%程度を年間の機能改善費用として見込んでおくことが現実的です。インフラ・ツール費用としては、クラウドサービス(AWS/GCP/Azure)のサーバー費用、CI/CDパイプラインの実行費用、モニタリングツール、ログ管理ツールなどが毎月発生します。ユーザー数やトラフィックが増加するにつれてインフラ費用も増加するため、スケーリングを考慮した費用見積もりが必要です。
コストを抑えるための実践的アプローチ
スクラム開発の費用を適切にコントロールするための実践的なアプローチは複数あります。まず最も効果的な方法が「MVPファーストの戦略」です。最小限の機能でリリースを行い、ユーザーの反応を見てから次のスプリント計画を立てることで、不要な機能開発への無駄な投資を防ぐことができます。ウォーターフォール開発では「作り切ってからリリース」が基本ですが、スクラム開発では「使える最小限でリリースし、反応を見て拡張」というアプローチが費用対効果を大きく高めます。次に「チームの継続性確保」も重要です。スクラム開発では、チームがスプリントを重ねるほどベロシティ(1スプリントで完了できる作業量)が向上します。チームメンバーの入れ替わりが頻繁に発生するとベロシティが低下し、結果的に費用が増加します。長期契約を前提にしたチーム体制の安定化が、コスト最適化に直結します。また「プロダクトオーナーの内製化」も費用削減に有効です。プロダクトオーナーを外注先に委任すると、その分の人件費が追加で発生します。自社にプロダクトオーナーの役割を担える人材を育成・任命することで、コストを抑えながらプロダクトへの当事者意識も高められます。さらに「オープンソースの積極活用」も重要なコスト削減手段です。既存のオープンソースライブラリやフレームワークを最大限活用することで、ゼロから実装する工数を削減できます。また、APIが公開されているサービス(認証・決済・メール配信など)を外部サービスとして利用することで、開発範囲を絞り込みコストを抑えることが可能です。
スクラム開発の見積もり事例と費用シミュレーション

スクラム開発の費用感をより具体的に理解するために、実際のプロジェクト規模に即したケース別の費用シミュレーションと、見積もり依頼時の注意点を解説します。金額はあくまで目安ですが、発注前の予算計画や社内での費用感の共有に活用していただけます。
ケース別の費用シミュレーション
【ケース①:スタートアップ向けMVP開発(BtoCウェブサービス)】チーム構成は、プロダクトオーナー(発注者が兼任)、スクラムマスター兼フロントエンドエンジニア100万円/月、バックエンドエンジニア2名合計200万円/月、デザイナー70万円/月の計370万円/月です。スプリント期間を2週間とし、MVPリリースまでに8スプリント(4ヶ月)を想定すると、開発費用の合計は370万円×4ヶ月=1,480万円となります。これにインフラ費用(月5万円×4ヶ月)とツール費用(月3万円×4ヶ月)の32万円を加え、総額1,512万円が目安です。MVPリリース後の機能改善フェーズでは、チームを縮小(スクラムマスター兼エンジニア1名・バックエンドエンジニア1名)して月次スプリントを継続するケースが多く、月130万〜200万円程度の維持費用となります。【ケース②:中規模業務システム(社内向け営業支援SFA)】チーム構成は、プロダクトオーナー150万円/月(外注)、スクラムマスター120万円/月、フロントエンドエンジニア2名200万円/月、バックエンドエンジニア3名330万円/月、QAエンジニア90万円/月の合計890万円/月です。初回リリースまでに12スプリント(6ヶ月)を費やすと、開発費用の合計は890万円×6ヶ月=5,340万円となります。クラウドインフラ費用(月20万円×6ヶ月)の120万円と合わせ、総額5,460万円が目安です。リリース後の保守・運用費用として年間800万〜1,000万円程度を見込む必要があります。【ケース③:大規模ECプラットフォーム再構築】複数スクラムチームが並走するスケールドアジャイル体制で、月あたりの総チーム費用は2,000万〜3,500万円程度となります。初回リリースまでに24スプリント(12ヶ月)を要する場合、開発費用総額は2.4億〜4.2億円規模になります。こうした大規模プロジェクトでは、リリース計画を段階的に設定(第1フェーズ・第2フェーズなど)し、フェーズごとに予算承認を得る「段階的発注」が費用リスクを分散させる有効な手段です。
見積もり依頼時の注意点とリスク回避
スクラム開発の見積もり依頼時には、いくつかの重要な注意点があります。第一に「固定価格契約への注意」です。スクラム開発では要件が変化することが前提であるため、最初に全体費用を固定する「一括請負契約」はスクラムの性質と相性が悪く、結果として品質低下や追加費用争いのリスクを高めます。スクラム開発では「準委任契約(タイムアンドマテリアル型)」を基本とし、スプリントごとに成果物と費用を確認しながら進める契約形態が適切です。第二に「スコープクリープへの対策」です。スクラム開発では柔軟に仕様変更ができる反面、追加要望が次々と発生して開発範囲が際限なく拡大する「スコープクリープ」が費用超過の主因となります。バックログの優先度管理を徹底し、追加要望は必ずプロダクトバックログに追加して優先順位を付けたうえで、既存のスコープとのトレードオフを確認するプロセスを設けることが重要です。第三に「ベロシティの過大見積もりへの注意」です。見積もり段階でのベロシティ(1スプリントあたりの開発量)は、チームが実際に稼働してみなければ正確な値はわかりません。ベンダーが提示するスプリント数やリリース時期が楽観的すぎる場合、後になって期間・費用ともに大幅に増加するリスクがあります。最初の2〜3スプリントで実際のベロシティを計測したうえでロードマップを更新するプロセスを、契約段階で明記しておくことが費用リスクを最小化するうえで有効です。第四に「プロダクトオーナー不在のリスク」です。プロダクトオーナーが開発側に丸投げされると、要件の意思決定が遅れてスプリントの生産性が低下します。発注者側に週3〜5時間程度の時間を割けるプロダクトオーナー担当者を必ず設置することが、コスト超過防止の観点からも重要です。
まとめ

本記事では、スクラム開発の費用相場とコスト構造について、規模別の費用目安から見積もり比較のポイント、ランニングコストの実態、ケース別のシミュレーションまで詳しく解説しました。スクラム開発の費用は「チームメンバーの月額単価×スプリント数」が基本の計算式であり、小規模MVP開発では1,200万〜2,800万円、中規模業務システムでは5,000万〜1.2億円、大規模基幹システムでは数億〜十数億円が目安となります。見積もりを評価する際は、スプリントあたりのチーム単価の透明性、スクラムイベント工数の考慮有無、MVPとフルスコープの費用分岐の有無を確認することが重要です。また、リリース後のランニングコスト(保守費用・機能改善費用・インフラ費用)が初期開発費用を上回るケースも多いため、中長期的な総費用での予算計画が欠かせません。スクラム開発特有のリスク(スコープクリープ・ベロシティの過大見積もり・プロダクトオーナー不在)を事前に把握し、準委任契約によるスプリント単位の費用管理体制を構築することが、費用超過を防ぐ最善策です。スクラム開発の費用に関するご相談や具体的な見積もりのご依頼は、ぜひお気軽にご連絡ください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
