SaaSアプリの開発を検討する際、最も気になるのが「費用はどのくらいかかるのか」という点ではないでしょうか。SaaSアプリの開発費用は、アプリの機能・規模・技術要件によって大きく異なり、シンプルなMVPであれば500万円〜1,500万円程度、中規模のSaaSアプリでは2,000万円〜5,000万円程度、大規模で複雑な機能を持つSaaSプラットフォームでは5,000万円〜1億円以上が一般的な相場です。しかし、見積もりの内訳を理解せずに金額だけで開発会社を比較すると、後から追加費用が発生したり、品質が期待を下回ったりするリスクがあります。
本記事では、SaaSアプリ開発の費用相場を規模別・工程別・機能別に詳しく解説し、見積もりを依頼する際の注意点やコストを最適化するための具体的な方法もご紹介します。初めてSaaSアプリの開発を検討されている企業担当者の方にとって、予算策定と開発会社選定の判断材料となる内容をお届けします。
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SaaSアプリ開発費用の全体像と相場感

SaaSアプリの開発費用は、アプリケーションの規模と機能の複雑さによって大きく変動します。ここでは、規模別の費用相場と、費用を構成する主な要素について解説します。
規模別の費用相場
SaaSアプリの開発費用は、規模に応じて3つのレンジに分類できます。小規模なMVP(最小限の機能で構成されたプロダクト)の場合、開発費用は500万円〜1,500万円が相場です。ユーザー認証、基本的なCRUD機能、シンプルなダッシュボード、Stripe連携によるサブスクリプション課金など、最低限のSaaS機能を実装する範囲です。開発期間は2〜4ヶ月程度で、エンジニア2〜3名、デザイナー1名程度のチーム構成が一般的です。中規模のSaaSアプリの場合、開発費用は2,000万円〜5,000万円が相場です。マルチテナント対応、権限管理(ロールベースアクセスコントロール)、外部サービス連携(API連携)、高度な検索・フィルター機能、レポート・分析機能、通知機能(メール・プッシュ・Slack連携)など、本格的なSaaS機能を実装する範囲です。開発期間は4〜8ヶ月程度で、エンジニア4〜6名、デザイナー1〜2名、PM1名のチーム構成が目安です。大規模なSaaSプラットフォームの場合、開発費用は5,000万円〜1億円以上が相場です。AI/機械学習機能の組み込み、リアルタイムコラボレーション、モバイルアプリ対応(iOS/Android)、大規模データ処理基盤、多言語対応、高度なセキュリティ対策(SOC 2準拠等)など、エンタープライズ向けの機能を網羅するケースです。開発期間は8ヶ月〜1年以上で、10名以上の開発チームが必要になります。
費用を構成する主な要素
SaaSアプリの開発費用は、大きく「人件費(工数)」「インフラコスト」「外部サービス利用料」「その他経費」の4つの要素で構成されます。費用の大部分(80〜90%)を占めるのが人件費であり、エンジニア、デザイナー、PMの人月単価と投入工数によって決まります。国内の開発会社における人月単価の相場は、フロントエンドエンジニアが80万円〜120万円、バックエンドエンジニアが80万円〜130万円、インフラエンジニアが90万円〜140万円、UI/UXデザイナーが70万円〜110万円、プロジェクトマネージャーが100万円〜150万円程度です。フリーランスエンジニアに直接発注する場合は、これより20〜30%程度安くなるケースもありますが、プロジェクトマネジメントや品質管理の負荷が発注者側にかかることを考慮する必要があります。インフラコストは、AWS/GCP/Azureなどのクラウドサービスの月額利用料で、開発・ステージング環境で月額3万円〜10万円程度、本番環境で月額5万円〜50万円程度が初期の目安です。ユーザー数やデータ量の増加に伴い、インフラコストは段階的に増加します。外部サービス利用料として、Stripe(決済手数料3.6%)、Auth0/Firebase Authentication(認証)、SendGrid(メール配信)、Twilio(SMS通知)などの月額費用も見積もりに含めておくべきです。
工程別の費用内訳と比率

SaaSアプリ開発の費用を工程別に分解すると、各フェーズがプロジェクト全体のコストに占める比率が見えてきます。ここでは、各工程の費用相場と、工数を左右するポイントを解説します。
上流工程(企画・要件定義・設計)の費用
上流工程(企画・要件定義・UI/UXデザイン・システム設計)は、プロジェクト全体の費用の20〜30%を占めます。具体的には、要件定義に100万円〜300万円、UI/UXデザイン(ワイヤーフレーム・モックアップ・プロトタイプ作成)に150万円〜400万円、システム設計(アーキテクチャ設計・データベース設計・API設計)に100万円〜300万円程度が相場です。上流工程のコストを削減するために要件定義やデザインを省略するのは、結果として開発フェーズでの手戻りや仕様変更を招き、トータルコストが増大する最も典型的な失敗パターンです。逆に、上流工程に十分な時間と予算を投資することで、開発フェーズでのスムーズな進行と品質の向上につながり、トータルコストの最適化が期待できます。特にSaaSアプリでは、マルチテナントのデータモデル設計、サブスクリプション課金のプラン体系設計、権限管理の設計など、SaaS特有の要件を上流工程で漏れなく定義しておくことが、後工程での大幅なコスト増加を防ぐ鍵となります。
開発・テスト・リリースの費用
開発・テスト・リリースの各工程は、プロジェクト全体の費用の60〜70%を占めます。フロントエンド開発の費用は、画面数と機能の複雑さに比例し、10〜20画面規模のSaaSアプリで300万円〜800万円程度です。バックエンドAPI開発の費用は、APIエンドポイント数とビジネスロジックの複雑さに依存し、30〜50エンドポイント規模で400万円〜1,000万円程度です。インフラ構築(AWS/GCPの環境構築、CI/CDパイプライン、モニタリング設定)は100万円〜300万円程度です。テスト工程は、開発費用の15〜25%程度が目安であり、ユニットテスト、インテグレーションテスト、E2Eテスト、セキュリティテスト、負荷テストを含みます。SaaSアプリでは特にマルチテナント環境でのデータ分離テストやサブスクリプション課金のテスト(プラン変更・解約・日割り計算等)に工数がかかるため、テスト工程の費用を甘く見積もると品質リスクにつながります。リリース作業(ドメイン設定、SSL証明書設定、本番環境デプロイ、動作確認)は30万円〜100万円程度です。
費用を左右する主な要因

SaaSアプリの開発費用は、さまざまな要因によって大きく変動します。見積もりを依頼する前に、以下の費用変動要因を理解しておくことで、より正確な予算策定が可能になります。
機能の複雑さと外部連携
SaaSアプリの費用に最も大きな影響を与えるのが、実装する機能の複雑さです。基本的なCRUD(登録・参照・更新・削除)機能は比較的低コストで実装できますが、リアルタイムコラボレーション(Google Docsのような同時編集)、AI/機械学習機能(レコメンデーション、自然言語処理、画像認識)、複雑なワークフロー自動化、高度なレポート・分析機能などは開発工数が大幅に増加します。リアルタイムコラボレーション機能の実装には、WebSocket通信、CRDT(Conflict-free Replicated Data Types)やOT(Operational Transformation)といった高度なアルゴリズムの実装が必要で、それだけで500万円〜1,500万円程度の追加費用が見込まれます。外部サービスとのAPI連携も費用を押し上げる要因です。Salesforce、HubSpot、Slack、Google Workspace、Microsoft 365などの外部サービスとの連携は、APIの仕様理解、認証フローの実装、データマッピング、エラーハンドリング、レート制限への対応など、1連携あたり100万円〜300万円程度の工数がかかります。連携先が5つ以上ある場合は、外部連携だけで1,000万円以上の費用になることも珍しくありません。
開発体制と発注先の選択
開発体制と発注先の選択によっても、費用は大きく変わります。国内の開発会社に発注する場合の人月単価は80万円〜150万円が相場ですが、オフショア開発(ベトナム、フィリピンなど)を活用する場合は40万円〜70万円程度に抑えられるケースがあります。ただし、オフショア開発では、言語・文化の違いによるコミュニケーションコスト、時差によるレスポンス遅延、品質管理の難しさといったリスクがあるため、SaaS特有の複雑な要件を正確に伝えるためのブリッジSE(日本語とベトナム語の両方を話せるエンジニア)の配置が必要です。結果として、単純な人月単価の差ほどにはコスト削減につながらないケースもあります。ラボ型開発(準委任契約で専属チームを確保する契約形態)は、月額300万円〜800万円程度の固定費で3〜5名の専属チームを確保できるため、継続的な開発が前提のSaaSアプリにはコストパフォーマンスが高い選択肢です。フリーランスエンジニアへの直接発注は、人月単価を20〜30%程度削減できるメリットがある一方、チームマネジメントや品質管理の負荷が発注者側にかかるため、プロジェクト管理の経験がある企業に適しています。
費用を最適化するための具体的な方法

SaaSアプリの開発費用を適切にコントロールしながら、プロダクトの品質を維持するための具体的な最適化手法をご紹介します。
MVPファーストで段階的に投資する
SaaSアプリの費用最適化において最も効果的なのが、MVPファーストのアプローチです。最初から全機能を盛り込んだ完璧なプロダクトを目指すのではなく、ターゲットユーザーの最も重要な課題を解決する最小限の機能セットでリリースし、ユーザーのフィードバックに基づいて機能を段階的に追加していく方法です。MVPの開発費用を500万円〜1,500万円に抑え、リリース後にサブスクリプション収益で得たキャッシュフローを次の開発投資に回すことで、外部資金調達への依存を減らしながらプロダクトを成長させることができます。また、既存のSaaSツールやサービスを活用してコア以外の機能を代替するのも有効です。たとえば、認証にはAuth0やFirebase Authentication、決済にはStripe、メール配信にはSendGrid、カスタマーサポートにはIntercom/Zendeskを活用することで、これらの機能を自前で実装するコスト(それぞれ100万円〜300万円程度)を大幅に削減できます。
見積もり精度を高めるポイント
見積もりの精度を高めるためには、開発会社に依頼する前にRFP(提案依頼書)を作成し、要件を可能な限り具体的に記載することが重要です。RFPには、SaaSアプリのコンセプト、ターゲットユーザー、主要機能一覧、非機能要件(パフォーマンス、セキュリティ、可用性)、想定ユーザー数、外部サービス連携先、デザインの方向性、希望スケジュール、予算の上限を明記します。同じRFPを3〜5社の開発会社に送付し、各社の見積もり金額、提案内容、チーム構成、スケジュールを比較検討することで、相場観を把握しやすくなります。見積もり比較の際には、見積もりに含まれる範囲(スコープ)が各社で一致しているかを必ず確認してください。A社は要件定義を含んだ見積もりで2,000万円、B社は要件定義を含まない見積もりで1,500万円という場合、単純な金額比較は意味がありません。また、見積もりに「バッファ(予備費)」が含まれているか、仕様変更が発生した場合の追加費用の計算方法(変更管理プロセス)がどうなっているかも事前に確認しておくと、プロジェクト途中での予算超過リスクを軽減できます。
リリース後のランニングコストと運用費用

SaaSアプリは、リリース後も継続的に費用が発生するプロダクトです。初期開発費用だけでなく、リリース後のランニングコストも含めた中長期的な予算計画を策定することが重要です。
インフラ・外部サービスの月額費用
SaaSアプリのリリース後に発生するインフラ費用は、ユーザー数とデータ量に応じて段階的に増加します。初期段階(ユーザー数100〜1,000人)では月額5万円〜15万円程度ですが、成長段階(ユーザー数1,000〜10,000人)では月額15万円〜50万円程度、スケール段階(ユーザー数10,000人以上)では月額50万円〜200万円以上になるケースもあります。AWSを利用する場合、主なコスト項目として、EC2/ECS/Fargate(コンピューティング)が月額3万円〜30万円、RDS/Aurora(データベース)が月額2万円〜20万円、S3(ストレージ)が月額数千円〜5万円、CloudFront(CDN)が月額数千円〜5万円、ALB(ロードバランサー)が月額2万円〜5万円程度です。外部サービスの月額費用として、Stripe(決済手数料3.6%)、Auth0(月額2,000円〜10万円程度)、SendGrid(月額無料〜5万円程度)、Datadog(月額2万円〜20万円程度)、Sentry(月額無料〜5万円程度)なども加わります。
保守・運用・機能追加の費用
SaaSアプリの保守・運用費用は、初期開発費用の15〜25%/年が目安です。たとえば、初期開発費用が3,000万円のSaaSアプリの場合、年間の保守・運用費用は450万円〜750万円(月額37.5万円〜62.5万円)が相場となります。保守・運用に含まれる作業内容は、バグ修正、セキュリティパッチの適用、ライブラリ・フレームワークのバージョンアップ対応、インフラの監視・障害対応、バックアップの管理・復旧テストなどです。これに加えて、SaaSアプリではリリース後も継続的な機能追加・改善が不可欠であるため、開発チーム(2〜3名程度)を月額200万円〜400万円で維持し、月1〜2回のリリースサイクルで新機能を追加していくのが一般的です。3年間のトータルコスト(初期開発+運用+機能追加)を見据えた予算計画を策定することで、資金ショートのリスクを回避し、SaaSアプリを着実に成長させていくことが可能です。
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株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
