「BtoB向けの通販サイトやECサイトを構築したいが、どこに発注すればよいのか分からない」「外注の進め方や費用感がまったく見えない」――こうした課題を抱える企業は少なくありません。経済産業省が公表した「電子商取引に関する市場調査」によると、2024年のBtoB-EC市場規模は約465兆円に達し、EC化率も年々上昇を続けています。製造業や卸売業を中心に、従来のFAXや電話による受発注をオンラインに移行する動きは加速しており、BtoB通販サイトの開発需要はここ数年で急増しました。しかし、BtoBのEC開発はBtoCとは異なる業務要件が多く、社内だけで対応するにはハードルが高いのが実情です。
BtoB通販サイトやECサイトの開発を外部に委託する場合、単にシステムを作ってもらうだけではなく、業務フローの設計、既存基幹システムとの連携、取引先ごとの価格設定やロット管理、与信管理など、BtoB特有の複雑な要件を的確に伝える必要があります。発注先の選定を誤れば、数百万円から数千万円規模の投資が無駄になるリスクも存在します。本記事では、BtoB通販・ECサイト開発を外注・委託する際の全体像から、発注手順、費用相場、見積もり取得のポイントまでを体系的に解説します。初めて外注を検討する方から、過去に外注で苦い経験をされた方まで、実務に直結する情報を網羅していますので、ぜひ最後までお読みください。
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・BtoB通販/ECサイト開発の完全ガイド
BtoB通販/ECサイト開発における外注の全体像

BtoB通販やECサイトの開発を外注する際には、まず外注という選択肢そのものの特性を理解しておくことが重要です。外注にはコスト削減や専門性の活用といった明確なメリットがある一方、コミュニケーションコストの発生やノウハウの社内蓄積が難しいといったデメリットも存在します。また、すべてを外注するのではなく、内製と外注を組み合わせるハイブリッド型のアプローチも広まっています。ここでは、外注のメリット・デメリットの両面と、内製と外注の使い分けについて詳しく見ていきます。
外注のメリットとデメリット
BtoB通販・ECサイト開発を外注する最大のメリットは、専門的な知見とリソースを即座に活用できる点にあります。BtoB向けのECサイトは、BtoCと比較して技術的な複雑性が格段に高くなります。取引先ごとに異なる掛け率や価格テーブルの管理、ロット単位での発注処理、与信枠の設定、請求書払いへの対応、基幹システム(ERP・販売管理システム)とのデータ連携など、業務要件は多岐にわたります。こうした要件を適切に設計・実装するには、BtoB-EC開発の実績を持つエンジニアチームが不可欠です。自社でゼロからチームを組成する場合、BtoB-EC経験のあるバックエンドエンジニアの採用には3か月以上かかるのが一般的であり、年収相場も600万〜1,000万円と高額です。外注であれば、こうした人材確保の時間とコストを大幅に圧縮できます。
開発スピードの面でも外注は有利です。EC構築に実績のある開発会社は、過去のプロジェクトで培ったテンプレートやコンポーネントライブラリ、ベストプラクティスを保有しています。たとえば、商品マスタ管理、カート機能、受注管理、在庫連携といった共通モジュールをベースに開発を進めることで、フルスクラッチに比べて開発期間を30〜40%短縮できるケースが多く見られます。さらに、EC構築プラットフォーム(EC-CUBE、Shopify Plus、ecbeingなど)を活用した開発ノウハウを持つ会社であれば、プラットフォーム固有の設定やカスタマイズも効率的に進められます。
一方で、外注にはデメリットも存在します。まず、コミュニケーションコストの問題です。社内チームであれば口頭で即座にすり合わせができる仕様の確認も、外注先とのやり取りではドキュメントベースでの共有が必要となり、認識の齟齬が生じやすくなります。特にBtoB-ECでは業界固有の商慣行(月末締め翌月末払い、掛け率の季節変動、特定取引先向けの特別価格など)が多く、これらを正確に伝えるには相当な労力が必要です。また、開発が完了した後のノウハウが社内に残りにくいという課題もあります。ソースコードの著作権が外注先に帰属する契約になっている場合、将来的にベンダーを変更する際に大きな障壁となります。外注先への依存度が高まると、保守費用の交渉力が低下し、ランニングコストが年々増加するケースも珍しくありません。
内製と外注の使い分け
BtoB通販・ECサイト開発において、内製と外注のどちらを選ぶかは、プロジェクトの性質と自社の体制に大きく依存します。内製が適しているのは、ECサイトが自社の事業戦略の中核を担うケースです。たとえば、メーカーが販売代理店向けに直接受発注できるプラットフォームを自社の競争優位として位置づけている場合、顧客フィードバックを即座に反映し、週次・月次で機能改善を繰り返す必要があるため、社内にエンジニアチームを持つ方が中長期的にはコスト効率が高くなります。また、取り扱う商材が特殊で業界知識が不可欠な場合(化学品の安全データシートの管理、医療機器の薬事対応など)も、業務知識とIT知識を兼ね備えた社内チームが主導する方が品質面で優位に立てます。
外注が適しているのは、社内にEC開発の経験者がいない場合、あるいは開発のスピードが最優先される場合です。取引先から「半年以内にオンライン発注の仕組みを整えてほしい」と要望を受けた場合、チームの立ち上げから始めていては間に合いません。また、EC構築の初期開発は外注し、リリース後の運用改善フェーズから内製に切り替えるというハイブリッド型も有効です。このアプローチでは、外注先から技術移管(ドキュメント整備、コードレビューへの同席、運用マニュアルの作成)を計画的に受けることで、段階的に自社チームの能力を高められます。実際に、EC構築の初期開発を外注しつつ、リリース後6か月以内に社内チームへの完全移管を達成した企業の事例では、外注費用約1,500万円に加えて移管コスト約300万円で、長期的な内製体制を実現しています。
発注・外注の進め方

BtoB通販・ECサイト開発の外注を成功させるには、発注の各ステップを丁寧に進めることが欠かせません。大きく分けると「要件定義・RFP作成」「見積取得・ベンダー選定」「契約・プロジェクト管理」の3つの段階があります。ここでは、各段階での具体的な進め方と、実務で押さえるべきポイントを解説します。
要件定義・RFP作成
外注の第一歩は、自社がECサイトに求める要件を明文化することです。BtoB-ECの要件定義では、BtoCにはない固有の業務要件を漏れなく洗い出すことが特に重要になります。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査によると、システム開発プロジェクトの失敗原因の約40%が要件定義の不備に起因しているとされており、この段階に十分な時間を投資することがプロジェクト成功の鍵を握ります。
BtoB通販サイトの要件定義で特に整理すべき項目は多岐にわたります。まず、取引先ごとの価格体系です。BtoBでは取引先ランクや取引量に応じて掛け率が異なるケースが一般的であり、A社は定価の70%、B社は65%、C社は60%というように個社別の価格テーブルを管理する必要があります。次に、発注単位とロット管理です。最低発注数量の設定、ケース単位・パレット単位での発注制限、入り数の管理などを明確にしておかなければ、実運用でトラブルが発生します。さらに、決済・請求方法も重要な要件です。BtoBでは即時決済ではなく、月末締め翌月末払いなどの掛け売りが主流であり、与信枠の管理や請求書の自動発行、入金消込の仕組みが必要になります。
これらの要件を整理したら、RFP(提案依頼書)として文書化します。RFPに含めるべき項目としては、プロジェクトの背景と目的、現行の業務フロー(受発注・在庫管理・請求処理の流れ)、対象ユーザー(取引先の業種・規模・ITリテラシーのレベル)、機能要件(必須機能と将来的に追加したい機能を分けて記載)、非機能要件(同時アクセス数、レスポンスタイム、稼働率、セキュリティ基準)、既存システムとの連携要件(ERP、WMS、会計ソフトとのデータ連携方式)、希望スケジュールと予算の目安があります。RFPの作成には通常3〜6週間を見込んでおくべきですが、この投資が後工程での手戻りを大幅に減らすことになります。
見積取得・ベンダー選定
RFPが完成したら、複数の開発会社に送付して提案と見積もりを依頼します。BtoB-ECサイトの開発を依頼できる外注先は、大きく4つのタイプに分かれます。1つ目は、EC構築に特化した受託開発会社です。ecbeingやEC-CUBEなどのプラットフォームを活用したBtoB向けEC構築の実績が豊富で、費用は500万〜3,000万円程度が相場です。2つ目は、総合的なシステムインテグレーター(SIer)で、基幹システムとの大規模連携を伴うプロジェクトに強みを持ちますが、費用は1,000万円以上になることが一般的です。3つ目は、SaaS型のEC構築サービス(Shopify Plus、楽楽B2Bなど)の導入・カスタマイズを行うパートナー企業で、初期費用を100万〜500万円程度に抑えられる反面、カスタマイズの自由度には制約があります。4つ目は、フリーランスや少人数のチームで、月額50万〜120万円程度の費用感でスモールスタートできますが、大規模開発には不向きです。
見積もりを取得する際は、3〜5社に声をかけるのが適切です。2社では比較材料が不足し、6社以上では評価の工数が膨大になります。候補企業の探し方としては、業界団体やIT関連の展示会での情報収集、開発会社マッチングサービス(発注ナビ、リカイゼン、比較ビズなど)の活用、同業他社からの紹介が効果的です。見積もりが揃ったら、単純な金額の比較だけでなく、内訳の詳細を精査します。極端に安い見積もりは、テスト工数やドキュメント作成が省かれている可能性があり、品質リスクを内包しています。逆に高額な見積もりには、不要なバッファや自社では不要な機能が含まれていることもあるため、1行1行の工数根拠を確認することが重要です。
ベンダー選定の評価基準として最も重視すべきは、BtoB-EC領域での開発実績です。BtoCのECサイト構築経験は豊富でも、BtoB固有の要件(取引先別価格管理、掛け売り、与信管理、基幹システム連携など)への対応経験がなければ、開発中に想定外の工数増加が発生するリスクが高まります。次に、提案内容の具体性を見ます。一般的な説明に終始する提案よりも、自社の業務課題に対して具体的なソリューションを提示してくる会社の方が、プロジェクト遂行能力が高いと判断できます。さらに、開発後の保守運用体制、プロジェクトマネージャーの経験年数と担当予定人数、使用予定の技術スタックが自社の既存システムと親和性があるかどうかも確認します。
契約・プロジェクト管理
発注先が決定したら、契約締結に進みます。BtoB-ECサイト開発の契約形態には「請負契約」と「準委任契約」の2種類があります。請負契約は、あらかじめ定めた成果物(ECサイト一式)の完成・納品を約束する形態で、要件が明確に固まっている場合に適しています。予算の上限が明確になるメリットがある一方、途中での仕様変更に追加費用が発生しやすいデメリットがあります。準委任契約は、エンジニアの稼働時間に対して報酬を支払う形態で、アジャイル開発のように要件を柔軟に変更しながら進めるプロジェクトに向いています。近年では、要件定義フェーズを準委任契約、実装フェーズを請負契約とする二段階契約を採用する企業が増えています。
契約書で特に注意すべき条項としては、知的財産権の帰属が筆頭に挙がります。開発されたソースコード、設計書、データベース設計の著作権が発注者・受注者のどちらに帰属するかを明確にしておかなければ、将来的にベンダー変更や機能追加の際に大きな障壁となります。BtoB-ECサイトの場合、取引先データや受発注履歴など機密性の高い情報を扱うため、秘密保持条項の範囲と罰則規定も厳格に定めておく必要があります。加えて、瑕疵担保(契約不適合責任)の期間と範囲、中途解約の条件、損害賠償の上限額、検収基準と検収期間も必ず盛り込みます。
契約締結後のプロジェクト管理では、キックオフミーティングの実施が出発点となります。キックオフでは、全体スケジュールとマイルストーン(要件定義完了、基本設計完了、詳細設計完了、開発完了、テスト完了、リリース)の設定、コミュニケーションルール(週次定例ミーティングの曜日と時間、日常的なやり取りに使うツール、緊急時のエスカレーションフロー)を合意します。BtoB-ECサイト開発では、業務側の担当者(営業部門、物流部門、経理部門など)の巻き込みも重要です。業務要件の確認やテスト段階でのフィードバックに、これらの部門の協力が不可欠となるため、キックオフの段階で各部門の窓口担当者を決めておくことを推奨します。開発中は、2週間から4週間ごとのスプリントレビューで成果物を確認し、早期に軌道修正を行える体制を整えることが、納期遅延や品質問題を防ぐ最も有効な手段です。
費用相場とコストの内訳

BtoB通販・ECサイト開発の費用は、開発手法や規模によって大きく異なります。予算計画を立てる際には、初期開発費用だけでなく、リリース後のランニングコストも含めたトータルコストで判断することが重要です。ここでは、開発費用の目安とランニングコストの内訳について詳しく解説します。
開発費用の目安
BtoB-ECサイトの開発費用は、構築手法によって3つの価格帯に大別されます。最もコストを抑えられるのが、SaaS型プラットフォームの活用です。Shopify PlusやBカート、楽楽B2Bなどのクラウドサービスをベースに、自社の業務に合わせたカスタマイズを行うパターンで、初期費用は100万〜500万円程度です。テンプレートが充実しているため、開発期間も1〜3か月と短く、スモールスタートに適しています。ただし、取引先別価格管理や基幹システム連携などのカスタマイズが増えると、費用は300万〜800万円程度まで膨らむことがあります。
中間の価格帯に位置するのが、パッケージ型プラットフォームを活用した開発です。EC-CUBEやecbeingなどのBtoB対応パッケージをベースに、自社要件に合わせてカスタマイズを行います。費用は500万〜3,000万円が相場で、開発期間は3〜8か月程度です。パッケージが持つ標準機能(商品管理、受注管理、顧客管理など)をベースにできるため、フルスクラッチに比べて開発効率が高く、BtoB固有の要件にもある程度対応できる柔軟性があります。ecbeingの場合、BtoB向けの機能(取引先別価格設定、承認ワークフロー、請求書発行など)が標準で搭載されているため、カスタマイズ範囲を最小限に抑えられる利点があります。
最も費用がかかるのが、フルスクラッチ開発です。既存のプラットフォームに依存せず、すべてをゼロから構築するため、自社の業務フローに完全に合致したシステムを実現できます。費用は2,000万〜1億円以上、開発期間は6か月〜1年半が一般的です。基幹システムとの高度な連携、独自の価格計算ロジック、複雑な承認フロー、大量の取引先データを処理する高い拡張性が求められるケースで選択されます。大手製造業や大規模卸売業が全社的な受発注システムとして構築する場合に多く、費用の内訳は要件定義・設計が全体の20〜30%、実装が40〜50%、テスト・品質保証が15〜20%、プロジェクト管理が5〜10%程度の配分になります。
ランニングコストと保守費用
BtoB-ECサイトは、リリースして終わりではなく、継続的な運用・保守が不可欠です。ランニングコストの内訳は大きく分けて、インフラ費用、保守・運用費用、ライセンス費用の3つに分類されます。インフラ費用は、クラウドサーバー(AWS、Azure、GCPなど)の利用料が中心で、月額5万〜30万円程度が一般的です。取引先数や商品数、トラフィック量によって大きく変動し、繁忙期(月末や決算期)にはアクセスが集中するため、オートスケーリングの仕組みを導入しておくと安心です。
保守・運用費用は、システムの安定稼働を維持するための費用で、月額10万〜50万円が相場です。具体的には、セキュリティパッチの適用、サーバー監視、障害対応、軽微な機能改善、問い合わせ対応などが含まれます。一般的に、保守費用は初期開発費用の15〜20%を年間費用として見込むのが業界の目安となっています。たとえば、初期開発に1,500万円を投じた場合、年間の保守費用は225万〜300万円(月額約19万〜25万円)が適正な水準です。SaaS型プラットフォームを利用している場合は、プラットフォーム自体の月額利用料(Shopify Plusで月額約2,000ドル、Bカートで月額約10万〜30万円など)が別途発生しますが、サーバー管理やセキュリティ対策がプラットフォーム側で行われるため、保守の手間は大幅に軽減されます。
見落としがちなのが、法改正やセキュリティ要件の変更への対応費用です。電子帳簿保存法の改正やインボイス制度への対応、個人情報保護法の改正など、BtoB取引に関連する法規制は頻繁に更新されます。こうした法改正対応には、その都度50万〜200万円程度の改修費用が発生することがあるため、年間予算の中に予備費として100万〜300万円程度を確保しておくことを推奨します。また、取引先の増加に伴うシステム拡張や新機能の追加開発費用も、年間200万〜500万円程度を見込んでおくと、急な要望にも柔軟に対応できます。
見積もりを取る際のポイント

見積もりの精度は、発注者側の準備の質によって大きく左右されます。ここでは、見積もり前の要件明確化の方法、複数社比較の具体的な手法、そして見積もり段階で見逃しやすいリスクとその対策について解説します。
要件明確化と仕様書の準備
見積もりの精度を高める最も効果的な方法は、発注者自身が要件を可能な限り具体化しておくことです。「BtoB向けのECサイトを作りたい」という抽象的な依頼と、「取引先200社に対して約5,000SKUの商品を販売する受発注サイトを構築したい。取引先ランク別に3段階の価格テーブルを設定し、既存のSAP ERPとAPIで在庫・受注データをリアルタイム連携する」という具体的な依頼では、見積もりの精度がまったく異なります。前者の場合、開発会社は不確実性を考慮して大きなバッファを積むため、見積もりが実際の必要額の1.5〜2倍に膨らむことも珍しくありません。
仕様書を準備する際は、機能一覧表の作成が有効です。ECサイトに必要な機能を網羅的にリストアップし、それぞれに「必須」「あると望ましい」「将来対応」の3段階で優先度を付けます。BtoB-ECサイトで必要になる機能の具体例としては、会員登録・取引先認証機能、取引先別カタログ表示、取引先別価格・掛け率管理、カート・発注機能(ロット管理含む)、承認ワークフロー(発注承認、上長承認など)、受注管理・出荷管理、在庫連携、請求書発行・掛け売り管理、入金消込、マイページ(発注履歴・再発注)、通知機能(メール・Slack連携)などが挙がります。これらの機能ごとに具体的な仕様を記述しておくことで、開発会社は正確な工数見積もりが可能になります。
また、非機能要件の明示も見積もりの精度向上に直結します。同時アクセス数の想定(通常時50ユーザー、繁忙期200ユーザーなど)、レスポンスタイムの基準(ページ表示3秒以内など)、稼働率の目標(99.9%など)、バックアップの方針(日次バックアップ、3世代保持など)、セキュリティ要件(SSL/TLS対応、WAF導入、脆弱性診断の実施頻度など)を明記しておくことで、インフラ設計やテスト工数の見積もりが正確になり、後から「追加費用が必要」と言われるリスクを大幅に減らせます。
複数社比較と発注先の選び方
複数社から見積もりを取得したら、比較評価のフレームワークを用いて体系的に評価することが重要です。評価項目としては、費用(初期費用とランニングコストのトータル)、技術力(BtoB-EC開発の実績件数、類似案件の経験)、提案力(自社課題への理解度、具体的なソリューション提案の有無)、開発体制(PMの経験年数、チーム構成、開発手法)、保守運用体制(対応時間帯、障害時の対応SLA)、コミュニケーション品質(ヒアリングの丁寧さ、レスポンスの速さ、ドキュメントの質)の6つを設定し、各項目を5段階で採点した上で、自社が重視する項目に重み付けを行って総合評価します。
費用面の比較では、見積書の工数内訳を横並びで確認することが不可欠です。たとえば、A社が要件定義に40人日、B社が20人日を計上している場合、B社は要件定義の工数を過小に見積もっている可能性があり、後から追加費用が発生するリスクがあります。逆に、テスト工程の工数が極端に少ない会社は、品質に問題が出る恐れがあります。見積もりの総額だけでなく、各工程の工数配分が妥当かどうかを検証することが、後のトラブル防止につながります。
発注先を最終決定する際は、見積もり評価に加えて、実際のプロジェクトを担当するチームとの面談を実施することを強く推奨します。営業担当者のプレゼンテーションだけでなく、プロジェクトマネージャーやリードエンジニアと直接話すことで、チームの技術力やコミュニケーション能力を肌感覚で確認できます。また、過去の開発実績について、クライアント企業名を伏せた形でもよいので、プロジェクトの概要、課題、解決策、成果を具体的に聞くことで、その会社の実力を推し量ることができます。可能であれば、その会社が過去に構築したBtoB-ECサイトのデモ画面を見せてもらうことも有効な判断材料となります。
注意すべきリスクと対策
BtoB通販・ECサイト開発の外注には、いくつかの典型的なリスクが存在します。最も発生頻度が高いのが、仕様の認識齟齬による手戻りです。BtoB-ECでは「取引先別価格管理」ひとつとっても、季節変動、キャンペーン価格、数量割引、セット割引など多様なパターンが存在し、発注者が「当然対応されるもの」と考えていた仕様が開発会社には伝わっていなかったというケースが後を絶ちません。この対策としては、要件定義段階で業務フローの詳細を図解し、具体的な数値例(「A社がX商品を100個発注した場合、単価はY円で、合計金額はZ円になる」といった計算例)を添えて仕様書に記載することが有効です。
次に多いのが、スケジュール遅延です。BtoB-ECサイト開発では、基幹システムとのデータ連携部分で予想以上に工数がかかるケースが頻発します。ERPや販売管理システムのAPIドキュメントが不十分であったり、データフォーマットの不整合が発覚したりすることで、連携開発が当初計画の1.5〜2倍の工数を要することも珍しくありません。対策としては、プロジェクトの早期段階(要件定義フェーズ中)に、既存システムのAPI仕様書やデータ項目一覧を開発会社に共有し、技術的なフィジビリティ検証(PoC)を実施しておくことが重要です。PoCに2〜4週間程度の期間を充てることで、連携部分の技術的リスクを事前に洗い出せます。
ベンダーロックインのリスクも見逃せません。特定の開発会社やプラットフォームに過度に依存すると、将来的にベンダーの変更やシステムの刷新が困難になります。対策としては、契約時にソースコードの著作権を発注者に帰属させる条項を盛り込むこと、オープンな技術標準やAPIを採用すること、ドキュメント(設計書、運用マニュアル、APIリファレンス)の整備を契約要件に含めることが有効です。また、開発会社が独自に開発したフレームワークやミドルウェアを使用する場合は、将来的な乗り換えコストを事前に確認しておくことも大切です。さらに、データのポータビリティ(他システムへのデータ移行のしやすさ)を確保するため、データエクスポート機能や標準的なデータフォーマット(CSV、JSON、XMLなど)でのデータ出力に対応しておくことを開発要件に含めておくべきです。
まとめ

BtoB通販・ECサイト開発を外注する際は、まず外注のメリット(専門性の活用、開発スピードの向上)とデメリット(コミュニケーションコスト、ノウハウの社外流出)を正しく理解した上で、自社の体制やプロジェクトの性質に応じて内製と外注の最適なバランスを見極めることが出発点です。EC構築の初期開発を外注し、リリース後に内製へ移行するハイブリッド型のアプローチも有力な選択肢として検討する価値があります。
発注の流れとしては、要件定義・RFPの作成、複数社からの見積もり取得とベンダー選定、契約締結とプロジェクト管理の3つのステップを着実に進めます。特にBtoB-ECでは、取引先別価格管理、掛け売り、与信管理、基幹システム連携といった固有の業務要件を漏れなくRFPに反映させることが、見積もりの精度を高め、開発中の手戻りを防ぐ最大のポイントです。費用相場は、SaaS型で100万〜500万円、パッケージ型で500万〜3,000万円、フルスクラッチで2,000万〜1億円以上と幅広いため、自社の要件と予算に応じた構築手法の選択が重要になります。
見積もりを取る段階では、要件の具体化と仕様書の準備に十分な時間をかけ、複数社の見積もりを工数内訳レベルで横並び比較することで、適正な費用感を把握できます。仕様の認識齟齬、スケジュール遅延、ベンダーロックインといった典型的なリスクに対しては、業務フローの図解、PoCの実施、ソースコードの著作権確保などの具体的な対策を講じることで、プロジェクトの成功確率を大幅に高められます。BtoB通販・ECサイトは、適切に構築されれば受発注業務の大幅な効率化と取引先満足度の向上をもたらす重要な経営資産です。本記事で紹介した手順とポイントを参考に、信頼できるパートナーとともにプロジェクトの第一歩を踏み出してください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
