TMS刷新の選定ポイント/選び方/種類

TMS刷新には、クラウド型TMSへ全面的に置き換える方法、既存資産を生かしながら段階的に手を入れるモダナイゼーション型の方法、独自の運賃体系や連携要件に合わせてフルスクラッチで再構築する方法があります。知名度や導入実績の大きさだけで刷新の方向性を決めると、傭車先や情報システム部門が抱える課題と噛み合わず、刷新後もExcelや電話確認との二重運用が残ることも少なくありません。選定の出発点は、輸送コスト増・積載効率低下・傭車比率上昇のうち、どこに課題が集中しているかを明らかにすることです。

本記事では、TMS刷新に着手する前に整理すべき自社課題、刷新の3つの選択肢、比較すべき評価軸、物流部門・傭車先・情報システム部門を巻き込んだ比較の進め方、クラウドSaaS・パッケージ・フルスクラッチの選び分け、PoC・パイロット導入の進め方を解説します。これから刷新の方向性を検討する担当者の方が、自社に合う進め方を絞り込めるよう整理します。

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TMS刷新の選定を始める前に整理すべき自社の課題

TMS刷新選定前の自社課題を診断する担当者

最初に行うべきことは、製品カタログや刷新事例を集めることではなく、配車計画、実績分析、運賃計算、傭車先との連携のどこに課題が集中しているかを特定することです。課題を一文で説明できれば、比較対象に含めるべき刷新の方向性が見えやすくなります。

輸送コスト増・積載効率低下の実態を確認します

配車担当者の経験と勘に頼った手配が続き、積載率や実車率を数値で把握できていない場合は、配車計画・実績分析の刷新が主な課題です。現状の積載率、走行距離あたりのコスト、繁忙期の傭車依頼件数を数か月分さかのぼって集計すると、老朽化したTMSを放置することでどの程度のコストを余分に支払っているかが見えてきます。車両台数の多さそのものよりも、確認や判断が配車担当者個人の経験に依存していることが、選定上の重要なサインです。特定の担当者しか配車の勘所を把握しておらず、休暇や退職があると途端に配車品質が落ちるような状態であれば、システムによる標準化の効果が大きく出やすい企業といえます。

法令対応と関係者間の合意形成の課題を分けて考えます

拘束時間や荷待ち時間の記録を担当者の手作業に頼っている場合は、2024年問題や改正物流効率化法への対応が課題です。一方、傭車先への専用端末導入や、情報システム部門との基幹システム連携がネックになっている場合は、関係者間の合意形成そのものが課題になります。この二つの課題は解決策が異なるため、どちらが自社にとってより差し迫っているかを分けて整理することが重要です。両方の課題が同時に存在する企業も珍しくありませんが、その場合も優先順位を付けずに一度に解決しようとすると要件が肥大化しやすいため、まずどちらかを主軸に据え、もう一方は次のフェーズで対応するという整理が現実的です。

TMS刷新の3つの選択肢

TMS刷新の3つの選択肢を比較する担当者

TMS刷新の進め方は、大きく分けてクラウドSaaSへの全面リプレース、既存資産を生かした段階的モダナイゼーション、フルスクラッチによる再構築の3つに整理できます。実際のプロジェクトは複数の要素を組み合わせる場合もあるため、分類名よりも、自社が最優先する課題をどの進め方が最も無理なく解消できるかを確認します。

クラウドSaaSへの全面リプレース

既存のTMSを、クラウド型の製品へ全面的に置き換える進め方です。サーバー調達や大規模な開発を必要とせず、法改正への追随もベンダー側の機能更新に任せやすい点が特徴です。標準的な配車計画・実績分析の機能で業務の大部分をカバーできる企業や、短期間での刷新を優先したい企業に向いています。ただし、自社独自の運賃体系や複雑な承認フローがある場合は、標準機能でどこまで対応できるかを事前に確認する必要があります。特に、荷主ごとに異なる運賃計算ルールや、傭車先ごとに異なる支払い条件がある企業では、標準機能の範囲を超える設定が必要になりやすいため、契約前のデモで自社の実際の運賃条件を入力して再現できるかを確かめておくと、導入後の想定外を防ぎやすくなります。

段階的モダナイゼーションとフルスクラッチ再構築

段階的モダナイゼーションは、既存システムの資産やデータ構造を生かしながら、リホスト・リプラットフォーム・リファクタリング・リビルドなどの技術手法を組み合わせて刷新する進め方です。既存の連携資産や運用ノウハウを引き継ぎやすい一方、技術手法の選定と移行計画の立案には専門的な知見が必要です。フルスクラッチ再構築は、独自の運賃計算ロジックや複雑な傭車先連携が事業競争力に直結する企業に向いた進め方で、要件定義から保守まで自社の意思で設計できる反面、投資規模と開発期間が大きくなります。どの進め方であっても、現行システムから引き継ぐべき輸送実績データや運賃マスタの範囲をあらかじめ棚卸ししておくと、移行時のデータ不整合や、刷新後に過去実績を参照できなくなるといった問題を避けやすくなります。

製品・アプローチを比較する評価軸

TMS刷新の評価軸を整理する会議

候補となる製品や刷新アプローチは、業務カバー範囲、法令対応、外部連携、傭車先・ドライバーの使いやすさ、料金体系とTCO、拡張性という軸で比較します。同じ質問を各社・各アプローチへ提示し、回答とデモ結果をそろえると、営業説明の分かりやすさではなく適合度で判断できます。

業務範囲・法令対応・外部連携を確認します

第一に、配車計画、ルート最適化、運賃計算、実績分析、傭車先とのやり取りのうち、どこまでが標準機能で、どこからが追加開発になるかを確認します。第二に、拘束時間や荷待ち時間の記録、法改正への更新方針を確認します。改正物流効率化法で求められる中長期計画の作成に必要なデータを、システムからどの程度自動的に取り出せるかも重要な確認点です。第三に、基幹システム・WMS・販売管理システムとのAPIまたはCSV連携について、対象データ、同期方向、エラー時の復旧方法まで確認します。

傭車先の使いやすさ・TCO・拡張性を確認します

第四の軸は、傭車先のドライバーが操作する画面の分かりやすさです。発注企業側の管理画面だけが便利でも、傭車先が使いにくいと感じれば、専用端末の導入自体が進みません。第五の料金体系では、車両台数、拠点数、機能範囲のどれに課金されるかを確認し、初期費用と月額料金に加えて、移行、連携、教育、問い合わせ対応などの社内工数をTCOに含めます。第六の拡張性では、将来的に拠点や車両台数が増えた場合や、別の基幹システムに乗り換える場合に、蓄積した実績データを取り出せるかも確認します。評価は担当者ごとの自由採点にせず、「デモで確認」「仕様書で確認」「契約条項で確認」のように根拠を残し、未確認事項は点数を付けず保留にすると、営業説明の分かりやすさに評価が引っ張られにくくなります。

物流部門・傭車先・情報システム部門を巻き込んだ比較の進め方

物流部門・傭車先・情報システム部門を交えた比較検討

比較検討を配車担当者や情報システム部門だけで進めると、実際に運用が始まった後に、傭車先や現場ドライバーから想定外の反発を受けることがあります。関係者それぞれの視点を選定プロセスに組み込むことが重要です。

物流部門・ドライバーの声を比較段階から取り入れます

候補の絞り込み段階から、実際に配車業務を担うベテラン担当者や、ドライバー側の意見を聞く機会を設けます。画面の操作感や入力の手間について、営業担当者の説明だけでなく、実際の業務に近い条件でデモを操作してもらうと、稼働後のギャップを事前に把握しやすくなります。特に、ベテラン配車担当者が長年培ってきた判断基準(道路の混雑傾向、荷主ごとの納品時間の融通、車種と荷姿の相性など)は文書化されていないことが多いため、比較段階でヒアリングし、システムの設定項目としてどこまで再現できるかを確認しておくと、刷新後の配車品質を落とさずに済みます。

傭車先・情報システム部門の懸念を早期に確認します

傭車先には、専用アプリや端末の導入負担、教育コスト、運賃交渉への活用可能性について事前に説明し、協力が得られそうかを確認します。情報システム部門には、既存の基幹システムとの連携方式や、移行時のデータ整合性、障害時の切り戻し手順について、候補ごとに具体的な回答を求めます。関係者からの懸念が出そろった段階で、必須要件と希望要件を整理し直すと、比較の精度が上がります。特に傭車先は自社の従業員ではないため、システム変更の説明を後回しにすると、稼働直前になって協力を得られないという事態にもなりかねず、比較検討の初期段階から巻き込んでおくことが望ましいといえます。

クラウドSaaS・パッケージ・フルスクラッチの選び分け

クラウドSaaSとパッケージとフルスクラッチの比較

標準的な配車業務と法改正への継続的な追随を重視するならクラウドSaaSが第一候補です。独自の運賃計算や傭車先連携が事業競争力に直結するならフルスクラッチ、既存資産を生かしつつ一部を刷新するなら段階的モダナイゼーションが適しています。

TCOと50%ルールで判断します

パッケージやクラウドサービスのカスタマイズ費用が本体価格の50%を超える場合、フルスクラッチ開発の方が中長期的なコスト効率で上回りやすいという判断基準があります。自社の運賃体系や承認フローがどの程度標準機能から外れるかを事前に洗い出し、カスタマイズの規模感を見積もっておくと、この判断がしやすくなります。

投資リスクを段階的に抑える進め方を選びます

一括切り替えによる業務停止や現場の反発を避けるため、いずれの進め方を選ぶ場合も、1拠点・1業務からのMVP的な導入を経て段階的に拡張する進め方が有効です。段階的に投資リスクを最小化していることを経営層に示せれば、大規模投資であっても稟議を通しやすくなります。ベンダーを選ぶ際は、要件定義からの伴走可否、段階拡張の提案力、既存システム連携の経験、保守・拡張体制を確認します。あわせて、稼働後にトラブルが起きた際の対応スピードや、休日・夜間の緊急連絡体制がどこまで整っているかも、輸送業務が止まると荷主からの信用に直結するため、事前に確認しておきたい項目です。

PoC・パイロット導入で選定精度を高める方法

TMS刷新のPoCとパイロット導入を検証するチーム

資料比較だけで刷新の方向性を決めると、実際の配車業務に即した検証が不足しがちです。PoCやパイロット導入で、実在する拠点・業務を使って比較することが、選定の精度を高めます。

PoCでは1拠点・1業務をフルパスで検証します

PoCでは、実際に課題の大きい1拠点・1業務を選び、配車計画の作成から実績記録、運賃計算までを一通り試します。正常系だけでなく、急な配送依頼への対応や、傭車先への連絡といった例外的な業務も含めて検証すると、デモだけでは見えない運用負荷を比較できます。合格条件には、配車にかかる時間、手入力の回数、問い合わせが必要になった箇所を記録します。1拠点・1業務に絞ることで、経営層への報告に必要なデータをそろえながらも、PoCの期間や関係者の負担を現実的な範囲に収められる点も、スモールスタートで進める利点です。

検証結果を経営層への報告材料として整理します

PoC前後で、配車時間、積載率、傭車依頼件数、燃料費などを同じ条件で計測し、Worst Caseでも投資回収が成立するかを示す資料にまとめます。公開されている他社事例の数値をそのまま使うのではなく、自社の実測値をもとに算出することで、稟議での説得力が高まります。パイロット拠点の担当者やドライバーから、操作面での気づきや改善要望を定期的に吸い上げる仕組みを設けておくと、本開発・全社展開の段階で仕様に反映しやすくなり、現場の納得感も高まります。

TMS刷新導入前に確認しておきたいポイント

TMS刷新導入前の確認ポイントを整理する担当者

刷新の方向性を絞った後は、対象拠点や車両台数だけでなく、法令対応、傭車先の協力度合い、実案件での操作性まで確認します。比較表の機能欄だけでは見えにくい条件を事前に検証することで、刷新後に運用が止まるリスクを抑えられます。

車両台数が少ない場合は課題の集中度で判断します

車両台数だけではなく、突発的な傭車依頼の頻度や、法令対応の負担で判断します。少人数の配車担当者でも、複数拠点から配車指示が出ていたり、記録を手作業で追っていたりする場合は刷新の価値がありますが、単純な配送が数件だけであれば、現状のTMSを整える方が適切な場合もあります。

クラウドSaaSでもセキュリティとデータ返却条件を確認します

不要ではありません。認証、権限、操作ログ、バックアップ、障害対応に加えて、輸送実績データや運賃マスタをどこに保管し、解約時にどう返却・削除するかを確認します。自社の情報セキュリティ基準とベンダーの責任範囲を照合することが必要です。

PoCでは実案件と例外処理を一通り検証します

実際に課題の大きい拠点・業務を使い、配車計画の作成から実績記録、運賃計算、傭車先とのやり取りまでを通します。配車担当者だけでなく、可能であれば傭車先のドライバーにも操作してもらい、急な依頼変更などの例外処理まで確認します。具体的な候補製品を確認したい場合はTMS刷新のパッケージ・クラウド製品一覧を参照すると、共通軸で比較しやすくなります。

まとめ

TMS刷新の選び方まとめ

TMS刷新の選定では、輸送コスト増、積載効率低下、傭車比率上昇、法令対応、関係者間の合意形成という自社課題を特定し、クラウドSaaSへの全面リプレース、段階的モダナイゼーション、フルスクラッチ再構築のいずれの進め方が適しているかを見極めます。その後、業務範囲、法令対応、外部連携、傭車先の使いやすさ、TCO、拡張性という評価軸で候補を比較し、実在する1拠点・1業務を使ったPoCで運用負荷まで確認することが重要です。

課題診断から進め方の絞り込みへ進みます

自社の課題が配車計画・実績分析にあるのか、法令対応にあるのか、関係者間の合意形成にあるのかを整理し、クラウドSaaS・段階的モダナイゼーション・フルスクラッチのどれが最も無理なく課題を解消できるかを見極めます。

最後は実案件のPoCで運用負荷まで確認します

資料上の機能数ではなく、自社の配車業務を一気通貫で処理できるかが重要です。傭車先やドライバーを含む関係者で例外処理まで試し、削減効果と残る運用工数を測ったうえで刷新の方向性を決定してください。既製のクラウドサービスや段階的モダナイゼーションでは独自の運賃体系や複雑な傭車先連携を吸収できない場合、フルスクラッチ開発やハイブリッド構成も検討対象になります。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、刷新の方向性の整理から、既存システムとの連携を含む構築まで支援しています。

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株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

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