注文管理システム刷新の選定ポイント/選び方/種類

注文管理システムの刷新には、既存のECプラットフォームをまるごと入れ替える進め方、既存の受注管理システムはそのままに顧客向けの通知・追跡機能だけを専用SaaSで補強する進め方、独自の会員体験に合わせてフルスクラッチで作り直す進め方があります。老朽化への対応を急ぐあまり、最初に話を聞いたベンダーの提案だけで進め方を決めてしまうと、問い合わせ削減という本来の目的を達成できなかったり、稟議の場で経営層への説明に窮したりすることもあります。注文管理システム刷新の選定とは、問い合わせ対応コストを定量化したうえで、進め方とベンダーを経営判断として比較し、絞り込んでいくプロセスを指します。

本記事では、刷新の検討前に整理すべき自社課題、進め方の3つの種類、比較すべき評価軸、稟議・予算承認のスケジュールを踏まえた比較の進め方、PoCによる検証、選定の失敗を避ける方法までを順に解説します。これから刷新プロジェクトの進め方を検討する担当者の方が、社内で説明できる形に選定プロセスを整理し、経営層への説明資料に落とし込めるところまでを目指します。

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注文管理システム刷新の選定前に整理すべき自社の課題

注文管理システム刷新の選定前に自社課題を整理する担当者

最初に行うべきことは、ベンダーの提案資料を集めることではなく、注文履歴、配送状況、キャンセル申請のどこで、どれだけの問い合わせと対応コストが発生しているかを特定することです。課題が具体的な金額で説明できれば、比較対象に含める進め方と、不要な機能や過剰な要件が見えやすくなります。

問い合わせ対応コストと部門間の認識ギャップを可視化します

電話・メールでの配送状況確認やキャンセル依頼の件数、1件あたりの対応時間、担当者の時給を洗い出し、年間ベースで合算すると、老朽化したマイページを使い続けることの実質的なコストが具体的な数字として見えます。あわせて、EC事業部門・カスタマーサポート部門・IT部門の間で、刷新後にどのような画面・運用になるかの認識が揃っているかも確認します。

この段階で数字がまとまらない場合は、まず1週間だけでも問い合わせの内容を分類して記録してみると、配送状況の確認とキャンセル申請のどちらが多いか、繁忙期とそれ以外で件数がどれだけ変わるかが見えてきます。感覚値ではなく実測値から議論を始めることで、比較すべき進め方の優先順位も具体的になります。

システムの老朽化度合いとデータ移行の制約を分けて考えます

システム導入から5年以上が経過し、OSやハードウェアのサポート終了(EOSL)が近づいている場合は、老朽化リスクへの対応が優先課題です。一方、過去の大量の注文履歴を新システムへどう引き継ぐか、専用データベースを別途用意して参照させるかといったデータ移行の技術的制約も、進め方を選ぶ際の重要な論点になります。

問い合わせコストの課題と、データ移行の技術的制約は、原因も対策も異なります。前者は主にUI/UXや通知チャネルの見直しで解消できますが、後者はアーキテクチャ設計や既存システムとの連携方式そのものの検討が必要です。どちらが自社にとってより大きな課題かを分けて整理しておくと、比較すべき進め方の方向性が見えやすくなります。

注文管理システム刷新の3つの進め方

注文管理システム刷新の3つの進め方

主な進め方は、ECプラットフォーム刷新型、受注管理システム連携型、フルスクラッチ再構築型の3つです。分類名にこだわりすぎず、自社の最優先課題にどの進め方が適合するかで判断することが重要です。

ECプラットフォーム刷新型

ECサイトの構築基盤ごと刷新し、マイページや注文照会機能もあわせて作り直す進め方です。サイトのデザインや購入導線まで含めて刷新したい企業、EC構築パッケージ自体の老朽化も課題になっている企業に向いています。一方で、基幹システムや受注管理システムとの連携範囲が広がるため、移行対象の切り分けを慎重に行う必要があります。

サイト全体を刷新する分だけ、稟議の規模やプロジェクト期間も他の進め方より大きくなりがちです。マイページ刷新だけが目的であれば過剰投資になる可能性もあるため、EC構築基盤そのものの老朽化が実際に進んでいるかどうかを、この進め方を選ぶ前提条件として確認しておく必要があります。

受注管理システム連携型とフルスクラッチ再構築型

受注管理システム連携型は、既存の基幹・受注管理の仕組みはそのまま維持し、顧客向けの通知・追跡・マイページ機能だけを専用のSaaSで補強する進め方です。ECサイト全体を作り直すほどの予算や期間を確保しにくい企業でも、比較的短期間で問い合わせ削減効果を得やすい傾向があります。フルスクラッチ再構築型は、自社独自の会員体験や通知ロジックが競争優位の源泉になっている企業に適した進め方です。近年はAI駆動開発によって開発速度が従来より大きく向上する例も報告されており、フルスクラッチの初期コストを他の進め方に近い水準まで抑えられる可能性が広がっています。

実際のプロジェクトでは、既存の受注管理システムとの連携部分は専用SaaSに任せつつ、会員向けの通知文面やキャンセル申請の一部だけを自社仕様に合わせて個別開発するというハイブリッドな組み合わせも珍しくありません。3つの型のどれか一つに無理に当てはめるのではなく、自社の業務のどこまでを標準化し、どこから独自性を残すかという視点で組み合わせを検討することが重要です。

進め方・ベンダーを比較する評価軸

注文管理システム刷新の評価軸を確認する担当者

候補は、顧客体験(UI/UX)、通知チャネルの柔軟性、キャンセル申請ワークフロー、基幹連携、セキュリティという軸で比較します。同じ質問を各候補へ提示し、回答の根拠をそろえて比較することが重要です。

顧客体験と通知チャネルの柔軟性を確認します

スマートフォンでの見やすさ、注文履歴・配送状況の更新頻度、キャンセル申請から完了までの導線を、実際の画面で確認します。あわせて、メール・SMS・LINEなど、自社の顧客層に合った通知チャネルへの対応状況も比較します。通知チャネルが自社の顧客と合っていなければ、刷新後も電話での問い合わせが残ってしまいます。

あわせて、キャンセル申請を受け付けた後、社内の受注管理システム側にどのタイミングで反映されるのか、反映までに時間差がある場合に顧客へどう表示されるのかも確認しておくべき点です。表示と実際の処理にずれがあると、かえって問い合わせを増やす原因になります。

基幹連携とセキュリティ、データ移行の範囲を確認します

受注管理システムや配送業者・決済会社のAPIとの連携範囲、対象データ、同期頻度、エラー時の復旧方法を確認します。あわせて、会員の個人情報や過去の注文履歴をどこに保管し、契約終了時にどう返却・削除するかも、セキュリティの観点から確認が必要です。過去の大量データを新システムへ物理的に移行するのか、専用データベースを別途構築して参照させるのかという移行方式の違いも、比較表に含めます。

比較結果は、評価担当者ごとに自由採点するのではなく、確認方法まで統一します。「連携できる」という回答だけでは、CSVを手動で出力できるのか、APIで自動同期できるのかが分かりません。「デモで確認」「仕様書で確認」のように証拠を残し、未確認事項は点数を付けず保留にすると、営業説明の分かりやすさに評価が引っ張られにくくなります。

稟議・予算承認のスケジュールを踏まえた比較の進め方

注文管理システム刷新の稟議スケジュールを比較する担当者

進め方やベンダーの比較は、稟議・予算承認のスケジュールと連動させて進める必要があります。着手が遅れるほど、比較にかけられる時間そのものが短くなります。

データクレンジングと並行稼働を踏まえた逆算スケジュール

会員データや過去の注文履歴のクレンジングには4〜6か月前からの着手が望ましく、配送業者・決済連携の切り替え調整・テストには2〜3か月、新旧システムの並行稼働にも1〜3か月を見込みます。老朽化システムのサポート終了などを契機とする場合、告知から本番稼働までは12〜18か月程度かかることが一般的で、現行システムが限界を迎える最低でも1年半前には、比較・選定を終えて稟議承認を得ておくことが目安になります。

スケジュールに余裕を持たせて比較・選定を進めた企業では、実データを使ったPoCの結果をもとに通知チャネルを絞り込み、稟議の場で問い合わせ削減効果を具体的な数字とともに説明できたという声も聞かれます。着手の早さそのものが、比較・検証にかけられる時間の余裕につながります。

RFPと相見積もりで比較条件をそろえます

RFPには、対象となる会員数、月間の問い合わせ件数、現行の通知チャネル、解決したい課題を明記し、各社へ同じ条件で提案を依頼します。要件は「必須」「望ましい」「将来」の3段階に分けておくと、すべてを必須として候補を失う事態を避けられます。複数社からの相見積もりを取り、営業説明の分かりやすさだけに評価が引っ張られないようにします。

類似の会員規模・業種での導入実績があるかどうかは、自社と近い課題への対応力を推し測る材料になります。稼働後のサポート体制についても、問い合わせ窓口の対応時間や、通知チャネル追加時の対応方針まで具体的に確認しておくと、稟議段階での質問にも答えやすくなります。

PoCで進め方とベンダーの適合度を検証します

注文管理システム刷新のPoCを実施するチーム

資料比較で2〜3候補まで絞ったら、実際の会員データに近い形でPoCを行い、最終確認します。

1会員セグメント・1通知チャネルに限定して検証します

PoCでは、1つの会員セグメントと1つの通知チャネルに範囲を絞り、招待から注文履歴の確認、キャンセル申請、通知の受信までを実際に操作して確認します。EC事業部門は顧客体験指標、カスタマーサポート部門は問い合わせ件数の削減率、IT部門はデータ移行の整合性やAPI連携の安定性を、それぞれの視点で検証します。

PoCの対象を絞りすぎると、本番展開時に想定していなかった契約形態や顧客層で例外処理が発覚することがあります。1セグメントの中にも、通常購入とサブスクリプション、法人会員と個人会員のように性質の異なる顧客が含まれる場合は、その違いも意識して検証対象を選ぶことが望ましいといえます。

Go/No-Go基準を事前に合意しておきます

「問い合わせ件数を◯%削減できれば本番化する、未達であれば中止する」という基準を、PoCを始める前に3部門で合意しておくことが重要です。基準を後付けで決めると、PoCの結果をめぐって部門間の解釈が割れ、意思決定が長引く原因になります。

選定の失敗を避けるための確認事項

注文管理システム刷新の選定失敗を避ける確認事項

よくある失敗は、価格の安さや機能一覧の多さだけで進め方やベンダーを決め、部門間の懸念の違いや、過去データ移行の技術的制約を見落とすことです。

価格だけで選ぶと問い合わせ削減効果が得られません

見積り段階の価格が安くても、自社が必要とする通知チャネルやキャンセル申請フローが追加開発扱いになる場合、実際の総費用は当初見積りより膨らみます。評価点を単純に合計するのではなく、必須要件を満たさない候補は早い段階で除外し、残った候補をTCOと問い合わせ削減効果の見込みで比較する進め方が有効です。

要件定義を十分に詰めないままベンダーへ丸投げすると、開発の後半になって追加要件が発覚し、費用と期間が膨らむ失敗パターンも報告されています。EC事業部門・カスタマーサポート部門・IT部門のキーパーソンを選定の初期段階から巻き込み、「今回は見送る機能」も明確にしておくことが、要件膨張を防ぐうえで役立ちます。

データ移行の技術的限界を軽視しないようにします

過去の大量の注文履歴を新システムへそのまま移行しようとすると、パフォーマンス低下を招くことがあります。専用の参照用データベースを構築するアプローチが取れるかどうかを、選定の早い段階で技術的に確認しておかないと、稟議承認後になってスコープの見直しが必要になりかねません。

データ移行の技術的な検証は、比較表の機能欄だけを見ていても判断できません。候補ベンダーに対して、自社が保有する注文履歴の件数やデータ構造を具体的に提示し、移行方式ごとの想定所要期間と、移行しない場合の参照方法を回答してもらうことをおすすめします。

注文管理システム刷新の選定で確認しておきたいポイント

注文管理システム刷新の選定ポイントを確認する担当者

選定プロセスを進める中で判断に迷いやすい点を整理します。規模や業界にかかわらず、検討段階で一度確認しておくと選定後の後戻りを防げます。

会員数が少ない企業でも選定プロセスは有効です

会員数が少ない企業でも、課題の定量化から評価軸の設定、PoCによる検証という流れは有効です。むしろ規模が小さいほど選定にかけられる工数も限られるため、必須要件を早い段階で絞り込み、比較対象を2〜3候補に抑えることが現実的な進め方になります。

一方、既存の仕組みで問い合わせ件数が少なく、担当者の負担も大きくない場合は、刷新の優先度を下げて他の課題に投資したほうが合理的なこともあります。選定プロセスにかける工数そのものも、見込まれる効果と比較して判断することが大切です。

具体的な候補製品は別記事で確認できます

本記事では進め方と評価軸を中心に解説していますが、具体的な候補となるパッケージ・クラウド製品については、注文管理システム刷新のパッケージ・クラウド製品一覧で紹介しています。評価軸をそろえたうえで各製品を確認すると、比較がしやすくなります。

OMS刷新とは比較すべき製品カテゴリが異なります

受注集約や在庫引当など事業者側の業務オペレーションを扱うOMS刷新とは、比較検討すべき製品カテゴリが異なります。顧客向けの注文照会・追跡・マイページ機能を軸に据えているかどうかを、製品説明で確認してください。

まとめ

注文管理システム刷新の選定方針をまとめる担当者

注文管理システム刷新の選定では、まず問い合わせ対応コストや部門間の認識ギャップ、データ移行の技術的制約といった自社課題を金額と具体例で整理し、ECプラットフォーム刷新型、受注管理システム連携型、フルスクラッチ再構築型のどれを軸にするかを見極めます。そのうえで、顧客体験、通知チャネル、基幹連携、セキュリティという評価軸で候補を比較し、稟議スケジュールと連動させながら、実際の会員データに近いPoCで最終確認することが重要です。

課題の定量化からPoCまでを一連の流れで進めます

進め方やベンダーを機能一覧の見た目だけで比べるのではなく、問い合わせ対応コストという自社の機会損失を起点に必須要件を絞り込み、稟議スケジュールと連動させて比較・検証を進めることが、選定後の後戻りを防ぐ土台になります。

標準化と独自体験の切り分けが進め方選びの土台になります

ECプラットフォーム刷新型、受注管理システム連携型、フルスクラッチ再構築型のいずれを選ぶ場合も、自社の会員体験のどこを標準化し、どこを独自性として残すかという切り分けが土台になります。既製品では複雑な通知ロジックや基幹システム連携を吸収しきれない場合、無理に標準機能へ合わせようとすると、カスタマーサポートの手作業が残ってしまいます。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、進め方の選定段階での要件整理、既製SaaSと基幹システムをつなぐ連携、独自の会員体験に合わせた個別開発まで支援しています。

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株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

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