レガシーシステムリニューアルの発注/外注/依頼/委託方法について

レガシーシステムのリニューアルを外部ベンダーに依頼したいが、「仕様書がない」「旧ベンダーが協力してくれない」「何から手をつければよいかわからない」という声は中小企業を中心に非常に多く寄せられます。通常のシステム開発とは異なり、ブラックボックス化した既存システムを抱えたままの発注は特有の難しさがあります。

本記事では、レガシーシステムリニューアルの外注・発注方法について、発注前の準備からRFP作成、契約締結、旧ベンダーからの乗り換え交渉術、プロジェクト管理の実務まで詳しく解説します。仕様書がない状態や非協力的なベンダーへの対処法など、競合他社の記事では触れられていない実務的なポイントを中心にお届けします。

本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。

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・レガシーシステムリニューアルの完全ガイド

レガシーシステムリニューアルの発注前に準備すべきこと

レガシーシステムリニューアルの発注前準備

レガシーシステムのリニューアルは、新規システム開発と比べて発注前の準備が特に重要です。現行システムの状態を正確に把握しないまま発注すると、見積もり精度が極めて低くなり、プロジェクト途中での大幅な仕様変更や予算超過につながります。発注前の準備に十分な時間と人員を割くことが、プロジェクト全体の成功を左右します。

仕様書・設計書がない場合の現行システム棚卸し手順

レガシーシステムの多くは、当初の仕様書が失われているか、実装との乖離が大きくなっています。このような状態でも、以下の手順でシステムの棚卸しを進めることができます。

ステップ1:業務フロー・画面の洗い出し
まず、実際にシステムを使っている担当者に「どの画面で何の操作をするか」を1つひとつ確認しながら記録します。各画面のスクリーンショットを撮影し、操作手順とともに文書化することで、機能一覧の原型を作成できます。現場担当者が行っている非公式な運用(Excelによる手作業補完・定期的な手動データ修正等)も必ず記録してください。これらは新システムへの移行要件として重要な情報です。

ステップ2:データ構造の把握
データベースのテーブル一覧・カラム情報・件数をエクスポートします。多くの場合、データベース管理ツール(A5:SQL Mk-2・pgAdmin・phpMyAdmin等)を使えば仕様書がなくてもテーブル定義を取得できます。重要なのは「どのデータがどのように使われているか」を業務担当者にヒアリングしながらデータ項目の意味を文書化することです。不明なカラムや使われていないテーブルも記録しておきましょう。

ステップ3:外部連携の特定
他システム・外部サービス(APIやファイル連携)・帳票出力・メール送信など、現行システムが依存している外部要素をリストアップします。これらは新システムへの移行で見落とされやすく、後から発覚すると大幅なスコープ拡大につながるため、発注前に必ず洗い出してください。連携先のシステム担当者にもヒアリングを行い、連携仕様の概要を確認します。

ステップ4:リバースエンジニアリングの検討
ソースコードが入手できる場合は、新しいベンダーに依頼してリバースエンジニアリング(コードから仕様を逆算する作業)を実施することも有効です。ただし、このフェーズには一定の費用が発生するため、調査フェーズとして別途契約を結ぶことが一般的です。後述する「調査フェーズの契約分割」を参照してください。

社内体制の構築(IT担当者がいない場合の対処法)

中小企業では「IT担当者がいない」「システムのことはすべて旧ベンダー任せだった」というケースが多くあります。このような状況でも、以下のアプローチで発注に向けた社内体制を整えることができます。

プロジェクトオーナーの任命:
システム部門がなくても、業務を最もよく理解している部門のリーダーをプロジェクトオーナーに任命します。重要なのは「システムの技術知識があるかどうか」ではなく、「社内の業務要件を代弁できるか」「意思決定の権限があるか」という点です。経営層に近い立場の人物が担うことで、予算確保や関係部門の調整がスムーズになります。

PMO(プロジェクト管理支援)の外部調達:
社内にITプロジェクトの経験者がいない場合は、ITコンサルタントやPMO支援会社を活用することを強く推奨します。開発ベンダーとは別に、発注者側の立場でプロジェクトを管理・監督するPMOを置くことで、ベンダー任せになるリスクを大幅に低減できます。費用はかかりますが、プロジェクト失敗のリスクと比較すれば十分に費用対効果が見込めます。

各部門のキーパーソンの巻き込み:
システムを実際に使う現場部門からキーユーザーを選定し、要件定義への参加を依頼します。キーユーザーは業務知識の提供・テスト実施・新システムへの移行後のサポートを担う重要な役割です。プロジェクト開始時から参加してもらうことで、「使えないシステムができあがった」という失敗を防げます。

経営層の合意形成と予算確保

レガシーシステムのリニューアルは、数百万円〜数千万円規模の投資になることが多く、経営層の強いコミットメントなしにはプロジェクトが途中で頓挫するリスクがあります。

リニューアルしないリスクの可視化:
経営層を動かすには「やらないことのリスク」を具体的な数字で示すことが効果的です。現行システムの障害頻度・対応コスト・保守ベンダーの撤退リスク・エンジニアの採用困難度(COBOLやVB6など旧技術の人材不足)・セキュリティインシデントの発生リスクを定量化します。「このまま5年間維持した場合の総コスト」と「リニューアルした場合の初期投資+ランニングコスト」を比較する資料を作成すると説得力が増します。

予算の段階的確保:
リニューアル全体の費用を一括で確保するのが困難な場合は、「調査・要件定義フェーズ」「設計・開発フェーズ」「移行・本番化フェーズ」に分けて段階的に予算承認を得る方法が現実的です。最初のフェーズは比較的小さな予算で進められるため、経営層の合意を得やすくなります。

RFI・RFPの作成(レガシー特有の注意点)

RFI・RFP作成のポイント

レガシーシステムのリニューアル発注では、通常のRFP(提案依頼書)に加えて、まずRFI(情報提供依頼書)を活用することが有効です。現行システムの全貌が把握しきれていない段階では、ベンダーから技術的なアドバイスや概算費用を引き出し、RFPの内容を洗練させることが重要です。

レガシー特有の記載事項(現行システムの状況説明)

レガシーシステムのRFPには、通常のシステム開発RFPには含まれない「現行システムの状況説明」セクションが不可欠です。ベンダーが適切な提案を行うために、以下の情報を可能な限り詳細に記載してください。

現行システムの基本情報:
稼働開始年・使用技術スタック(言語・フレームワーク・データベース・OS・サーバ環境)・ユーザー数・主な機能一覧を記載します。特に「何年前に構築されたか」「最後にシステムを触ったエンジニアがいるか」という情報は、ベンダーのリスク評価に直結します。ソースコードが入手できるかどうか、バージョン管理がされているかどうかも明記してください。

ブラックボックス化の程度:
「仕様書の有無」「設計書の有無」「ソースコードの可読性(コメントがあるか・変数名が意味をなしているか)」「担当エンジニアが在籍しているか」を正直に記載します。状況を過小評価してベンダーに伝えると、後から追加費用が発生するトラブルの原因になります。

リニューアルの目的と優先課題:
「保守できるエンジニアがいなくなる」「セキュリティ上の問題がある」「現行システムでは対応できない新機能が必要」「クラウド移行によるコスト削減」など、リニューアルの動機を具体的に記載します。目的によってリニューアルのアプローチ(フルスクラッチ・リファクタリング・プラットフォーム移行・クラウドリフトアンドシフト等)が大きく変わるため、ベンダー側の提案の方向性に影響します。

移行方式・データ移行要件の明記

レガシーシステムのリニューアルでは、データ移行が最も難易度が高く、最もトラブルが発生しやすい領域です。RFPの段階でデータ移行要件を可能な限り詳細に記載することが重要です。

データ移行の対象と規模:
移行するデータの種類(顧客データ・取引履歴・マスターデータ等)・件数・更新頻度・保持期間を記載します。「過去○年分のデータを移行する」「○万件の顧客データを移行する」など、具体的な数値で示すことでベンダーが移行の工数を適切に見積もれます。

データクレンジングの必要性:
長年稼働してきたレガシーシステムのデータには、重複・欠損・フォーマット不統一・文字化けなどの問題が蓄積されている場合があります。データクレンジングが必要かどうか、どの程度の品質を期待するかをRFPに明記します。クレンジング作業を誰が担当するか(発注者・ベンダー・共同)も事前に決めておく必要があります。

移行方式の検討:
「一括移行(ビッグバン移行)」か「段階的移行(フェーズ移行)」かを検討します。一括移行はリスクが高い一方でコストを抑えやすく、段階的移行はリスクを分散できますが並行運用期間が生じます。「移行時のシステム停止は何時間まで許容できるか」「移行後のデータ検証はどのように行うか」という観点もRFPに盛り込んでください。

ベンダーへの質問事項と評価基準

レガシーシステムのリニューアルに関する提案を評価する際は、通常のシステム開発とは異なる質問項目と評価基準を設けることが重要です。

確認すべき質問事項:
「過去にリバースエンジニアリングを伴うリニューアルプロジェクトの実績はあるか」「仕様書なしの状態からの移行経験はあるか」「データ移行の失敗事例とその対処法を教えてほしい」「調査フェーズとしてのPoCはどのように進めるか」「移行期間中の並行運用サポートはどのように行うか」といった実務的な質問をぶつけることで、ベンダーの真の実力が見えてきます。

評価基準のポイント:
レガシーリニューアルの評価基準では「価格の安さ」より「リスク対応力」と「コミュニケーション能力」を重視すべきです。不確実性の高いプロジェクトでは、問題が発生した際にどれだけ誠実に対処できるかがプロジェクトの成否を左右します。提案書の完成度より、ヒアリング時の質問の鋭さや懸念点の指摘の的確さを評価することをおすすめします。

契約締結時の重要ポイント

契約締結時の重要ポイント

レガシーシステムのリニューアルは不確実性が高いため、契約段階での取り決めが通常の開発以上に重要です。「やってみないとわからないこと」が多いプロジェクトだからこそ、不確実性をマネジメントする仕組みを契約に盛り込む必要があります。

請負契約 vs 準委任契約の使い分け

レガシーシステムのリニューアルでは、フェーズによって最適な契約形態が異なります。適切な使い分けを理解しておくことで、発注者のリスクを適切にコントロールできます。

請負契約が適するフェーズ:
要件が明確に定まった後の「実装・テストフェーズ」は請負契約が適しています。完成した成果物に対して報酬を支払う形式のため、仕様を確定した後に請負で進めることで、ベンダーに品質責任を明確に負わせることができます。ただし、レガシーリニューアルでは「調査してみたら想定外の問題が発覚した」というケースが多いため、変更対応の条件を契約に明記しておくことが不可欠です。

準委任契約が適するフェーズ:
現行システムの調査・要件定義・基本設計フェーズは準委任契約が適しています。「やってみないとわからない」要素が多い調査フェーズでは、工数に応じた報酬を支払う準委任の形式が現実的です。ただし、準委任は成果物の完成を約束しないため、「何を成果として定義するか」(調査報告書・要件定義書等の文書)を契約に明記することが重要です。

ハイブリッドアプローチ(推奨):
実務では、調査・要件定義は準委任、設計・実装・テストは請負というハイブリッドアプローチが最も多く採用されます。フェーズの区切りと、請負フェーズに移行するための条件(要件定義書の承認等)を明確にしておくことで、双方のリスクをバランスよく分担できます。

調査フェーズの契約分割(PoC・フィジビリティスタディ)

レガシーシステムのリニューアルで特に重要なのが「調査フェーズを独立した契約として分割する」アプローチです。全フェーズを一括契約するのではなく、まず調査フェーズだけを契約することで、発注者のリスクを大幅に軽減できます。

調査フェーズ(フィジビリティスタディ)の内容:
現行システムのソースコード・データ構造・外部連携の詳細調査、リニューアルの技術的実現可能性の検証、概算費用・スケジュールの精度向上のための情報収集を行います。この段階で「想定より大幅に複雑だった」「特殊な技術が使われており対応が困難」などの問題が発覚した場合でも、被害を最小限に抑えられます。

PoC(概念実証)の活用:
技術的に不確かな部分がある場合は、PoCとして部分的なプロトタイプを作成し、実現可能性を検証してから本格開発に進む方法が有効です。「新技術で現行の処理速度を実現できるか」「データ移行のサンプルが正常に移行できるか」などを小規模で確認することで、本番のリスクを減らせます。PoCの費用は数十万円〜数百万円程度が相場で、プロジェクト全体の費用に比べれば小さな投資です。

スコープ変更への対応条項

レガシーシステムのリニューアルでは、調査が進むにつれて「想定外の機能が発覚した」「データの品質が想定より悪かった」などのスコープ変更が避けられません。これらへの対応を契約に明記しておくことが不可欠です。

想定外発見時の対応手順:
「調査の結果、当初の見積もりから○%を超える工数増加が見込まれる場合は、双方で協議の上でスコープまたは予算を再設定する」という条項を契約に盛り込みます。この「協議義務」を明文化しておくことで、ベンダーが一方的に追加費用を請求することを防げます。

変更管理プロセスの明記:
スコープ変更の申請手順・影響評価の期限・承認フロー・変更後の契約更新手続きを書面で取り決めておきます。口頭での変更依頼は「言った言わない」のトラブルの温床になるため、変更はすべて書面で記録することを契約に明記してください。

【独自】旧ベンダーからの乗り換え交渉術

旧ベンダーからの乗り換え交渉術

レガシーシステムリニューアルにおける最大のハードルの一つが、旧ベンダーからのデータ・仕様書の引き継ぎです。長年の保守実績を持つ旧ベンダーが「情報開示に協力的でない」「引き継ぎを拒否する」というケースは珍しくありません。この問題に正面から向き合うことが、リニューアル成功の鍵となります。

データ・仕様書の引き出し方

旧ベンダーからデータや仕様書を引き出す際は、まず「何を要求する権利があるか」を正確に理解することが重要です。

知的財産権の確認:
最初に確認すべきは、ソースコード・データベース設計書・仕様書の著作権(知的財産権)が誰に帰属するかです。発注者が費用を負担して開発した場合でも、契約に「著作権はベンダーに帰属する」と記載されていれば、ソースコードの開示を求める権利がない場合があります。既存契約書を弁護士に確認してもらい、権利関係を明確にしてから交渉に臨むことを推奨します。

データの引き渡し要求:
ソースコードの著作権がベンダーにある場合でも、データベースに格納されたデータは発注者(貴社)の財産です。データのCSVエクスポートやデータベースダンプの提供を要求する権利は発注者にあります。旧ベンダーがデータの引き渡しを拒否する場合は、法的に問題になる可能性があるため、旧ベンダーも最終的には応じざるを得ない場合がほとんどです。

段階的な引き継ぎ要求:
旧ベンダーとの関係を完全に壊さないよう、最初から全情報の開示を求めるのではなく「まずデータ定義書だけでも共有してほしい」「運用手順書の提供をお願いしたい」と段階的に要求する方が円滑に進むケースが多いです。旧ベンダーが「情報を開示するほど不要になる」と感じているなら、「保守業務の引き継ぎ料を支払う」「移行後も一定期間のサポート契約を維持する」などのインセンティブを提示することも有効です。

非協力的なベンダーへの法的対処法

旧ベンダーが情報開示に応じない場合や、引き継ぎを意図的に妨害している場合は、法的な手段も検討する必要があります。

内容証明郵便による正式要求:
口頭やメールでの要求が無視されている場合は、弁護士名義の内容証明郵便で正式に引き継ぎ資料の提供を求めます。内容証明は法的証拠として機能するため、旧ベンダーの態度が変わることが多くあります。費用は数万円程度で、弁護士への相談から内容証明送付まで数日〜1週間程度で対応してもらえます。

契約違反の主張:
保守契約に「契約終了時のドキュメント提供義務」や「引き継ぎ支援義務」が含まれている場合は、その不履行を根拠に損害賠償請求が可能です。弁護士に契約書を精査してもらい、旧ベンダーの行為が契約違反に該当するかを確認してください。

ベンダーロックイン対策の教訓:
非協力的なベンダーへの対処は多大な労力がかかります。新ベンダーとの契約では必ず「契約終了時のソースコード・ドキュメント・データの引き渡し義務」「ソースコードのエスクロー(第三者への預け入れ)」を盛り込み、同じ轍を踏まないようにすることが重要です。エスクロー契約はベンダーが廃業・サービス終了した場合でもソースコードを入手できる仕組みで、特に基幹システムでは強く推奨します。

移行期間中の並行運用と引き継ぎの取り決め

新システムへの移行期間中は、旧システムと新システムを並行運用することが一般的です。この期間中の責任分担と費用負担を事前に明確にしておくことが重要です。

並行運用期間の定義:
「旧システムの保守を継続する期間」と「新システムへの完全移行のタイミング」を旧ベンダー・新ベンダー双方と合意します。並行運用期間が長くなるほどコストが増加するため、明確なカットオーバー日程と、それまでの判断基準(新システムの受け入れ条件)を定めておきましょう。

旧ベンダーへの引き継ぎ支援費用:
旧ベンダーに引き継ぎ作業(仕様説明・質問対応・ドキュメント整備等)を依頼する場合は、その費用を明確にしておく必要があります。一般的には時間単価×工数で見積もりを取得し、上限金額を設定した契約を結びます。旧ベンダーが過大な費用を要求してくる場合は、新ベンダーによるリバースエンジニアリングを選択する方が結果的に安くなるケースもあります。

発注後のプロジェクト管理(発注者の役割)

発注後のプロジェクト管理

レガシーシステムのリニューアルプロジェクトは、ベンダーに任せきりにすると高確率で問題が発生します。発注者としての能動的な関与が、プロジェクト成功の重要な要因です。特に不確実性が高いレガシーリニューアルでは、問題の早期発見と迅速な意思決定が求められます。

ベンダー任せにしない進捗管理

「ベンダーを信頼する」ことと「ベンダー任せにする」ことは全く異なります。発注者は定期的にプロジェクトの状態を確認し、必要に応じて意思決定を行う責任があります。

週次定例ミーティングの設定:
週1回のステータス報告ミーティングを開催し、進捗・課題・リスクを共有します。ミーティングのアジェンダは「①先週の実績 ②今週の計画 ③課題・リスクの共有 ④意思決定が必要な事項」の4項目を基本とし、毎回議事録を残します。発注者側から必ず担当者が参加し、ベンダーが困っていることを早期に把握できる環境を整えましょう。

マイルストーンレビューの実施:
要件定義完了・基本設計完了・実装完了・テスト完了の各マイルストーンで、成果物のレビューと承認を行います。承認の際は「何を確認し、何を承認したか」を文書で残すことが重要です。後から「承認した覚えがない」というトラブルを防ぎます。承認基準(受け入れ条件)を事前に定めておくことで、恣意的な判断を排除できます。

EVM(アーンドバリューマネジメント)の活用:
中規模以上のプロジェクトでは、EVMを活用してスケジュールとコストの進捗を定量的に管理することが有効です。「計画コスト(PV)」「実績コスト(AC)」「出来高(EV)」を週次で追跡することで、プロジェクトの健全性を客観的に評価できます。EVMに慣れていない場合でも、「当初計画に対して何%完成しているか」を数値で把握する習慣をつけることをおすすめします。

「言った言わない」を防ぐドキュメント管理

レガシーシステムのリニューアルは不確実性が高く、仕様変更や認識のずれが発生しやすい環境です。「言った言わない」のトラブルを防ぐためのドキュメント管理が重要です。

決定事項の即時文書化:
ミーティングで決定した事項は、終了後24時間以内に議事録としてまとめ、参加者全員に送付・確認を求めます。特に「仕様変更」「スコープ変更」「スケジュール変更」に関わる決定は、必ず書面で相互確認してから実施します。「メールで送ったが確認されていなかった」という事態を防ぐため、重要な決定事項については返信での確認を必須にします。

課題管理ツールの共有:
Backlog・Jira・Redmine・GitHubのIssue等の課題管理ツールを発注者・ベンダー双方が参照・更新できる形で運用します。口頭での指示や個人メールでの依頼は原則禁止とし、すべての課題・変更要求をツール上で管理することで、作業履歴と決定経緯を一元管理します。

成果物のバージョン管理:
要件定義書・設計書・テスト仕様書などの成果物は、更新のたびにバージョン番号と更新日・更新者を記録します。最新版がどれかが不明になるという事態を防ぐため、共有フォルダの命名規則やファイル管理のルールをプロジェクト開始時に決めておきましょう。

炎上兆候の早期発見と対処

レガシーシステムのリニューアルは、問題が顕在化するのが遅くなりがちです。炎上の兆候を早期に察知し、手を打つことが重要です。

炎上の典型的な兆候:
「報告が遅くなった・曖昧になった」「担当者が頻繁に変わる」「予定していたデモができない状態が続く」「課題管理ツールの更新が止まった」「ベンダーから『問題ない』という言葉ばかりで具体的な説明がない」という状況が続く場合は、プロジェクトが危機的な状況にある可能性があります。これらのサインを見逃さないことが重要です。

早期対処のアプローチ:
兆候を察知したら、まずベンダーのプロジェクトマネージャーに「率直に現状を教えてほしい」と直接問いかけます。問題を隠しているわけではなく、単に報告の仕方が悪い場合もあります。問題が深刻であれば、第三者のプロジェクト監査(PMO支援会社や独立したITコンサルタント)を入れて客観的な評価を行うことも有効です。炎上が確定した場合は、「縮小版リリース(最低限の機能で本番稼働)」と「残機能の段階リリース」に切り替えることで、全面的な失敗を回避できます。

撤退判断の基準:
プロジェクトの継続が技術的・財務的に不可能と判断した場合は、損切りの決断も必要です。「ここまで投資した費用が無駄になる」というサンクコストに引きずられて継続することで、さらに大きな損失につながるケースは少なくありません。定期的に「このまま続けるべきか」を客観的に評価する仕組みを持つことが、経営リスクの管理につながります。

まとめ

レガシーシステムリニューアル発注まとめ

レガシーシステムリニューアルの発注・外注を成功させるには、通常のシステム開発とは異なる特有のポイントを押さえることが不可欠です。本記事で解説した内容を以下に整理します。

①発注前の現行システム棚卸しを徹底する:仕様書がない状態でも、業務フロー・画面・データ構造・外部連携を地道に文書化することで、発注精度を高めることができます。この準備に手を抜くと、後工程でのトラブルと追加費用が増大します。

②調査フェーズを独立した契約として分割する:全フェーズを一括契約せず、まず調査・PoCを別契約で進めることで、発注者のリスクを大幅に軽減できます。「やってみないとわからない」部分を正直に認め、段階的に進めることが成功の近道です。

③旧ベンダーからの引き継ぎは早期に着手する:旧ベンダーが非協力的になることを想定し、データの権利確認・段階的な情報要求・必要に応じた法的対処を準備しておきます。新ベンダーとの契約にはベンダーロックイン防止条項を必ず盛り込みましょう。

④契約にスコープ変更対応の仕組みを組み込む:レガシーリニューアルは必ず想定外の問題が発生します。変更管理プロセスと協議義務を契約に明記することで、追加費用をめぐるトラブルを防げます。請負・準委任のハイブリッドアプローチが特に有効です。

⑤発注者が能動的にプロジェクトを管理する:週次定例・ドキュメント管理・炎上兆候の早期察知など、発注者側のプロジェクト管理能力がリニューアル成否を大きく左右します。社内にIT担当者がいない場合はPMO支援の外部調達を積極的に活用してください。

レガシーシステムのリニューアルは、組織にとって大きな挑戦ですが、適切な準備と発注プロセスによって確実に成功に近づけることができます。今回ご紹介したポイントを参考に、貴社のリニューアルプロジェクトを着実に前進させていただければ幸いです。

本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

 

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