IT戦略コンサルには、現状アセスメントからグランドデザイン策定までを主戦場にする会社、IT投資計画・ロードマップ策定に強みを持つ会社、策定後のITガバナンス運営に常駐して伴走する会社があります。知名度や提案書の分かりやすさだけで依頼先を決めると、実際のプロジェクトで必要な体制と合わず、策定後にあらためて別の会社へガバナンス運営を依頼し直すことにもなりかねません。選定の出発点は、自社がいまどの工程で誰の支援を必要としているかを明らかにすることです。
本記事では、IT戦略コンサルの3つの種類、依頼前に自社課題を整理する方法、依頼先を比較する7つの評価軸、独立系・SIer系・シンクタンク系ファームの選び分け、RFP作成と技術選定PoCの進め方を解説します。これから依頼先を探す担当者の方が、比較の観点をそろえ、自社に合う2〜3社まで具体的に絞り込める内容です。
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IT戦略コンサル依頼前に整理すべき自社の課題

最初に行うべきことは、コンサルティング会社の一覧を集めることではなく、現状の可視化・グランドデザイン・投資計画・ガバナンス運営のどこに不足感やリスクがあるかを特定することです。課題を一文で説明できれば、比較対象に含めるべき会社のタイプと、依頼する必要のない範囲が見えやすくなります。
グランドデザインが必要なのか、投資計画・ロードマップが必要なのかを分けます
既存システムの全体像やデータ連携基盤の構想そのものが描けていない場合は、グランドデザイン策定そのものが課題です。一方、あるべき姿はある程度描けているものの、どのシステムから優先的に投資すべきか、年次のIT予算をどう配分すべきかが決まらない場合は、投資計画・ロードマップ策定が課題です。この二つを混同したまま依頼先を探すと、グランドデザイン策定を得意とする会社に予算配分の細部まで期待してしまうなど、認識のずれが生じやすくなります。
課題の切り分けには、社内の担当者に「いま説明できないことは何か」を挙げてもらう方法が有効です。「システム間の連携構想を図で説明できない」であればグランドデザイン、「来年度どのシステムに何億円かけるべきか根拠を持って説明できない」であれば投資計画というように、説明できない事柄の性質から必要な支援の種類が見えてきます。両方が同時に不足している場合は、後述する策定から運営までを一気通貫で担う会社を検討する余地があります。
経営層と情シス部門の温度差、老朽化対応止まりのリスクを確認します
経営層がコスト抑制と早期のDX成果を求め、情シス部門が老朽化リスクの解消を優先するという温度差は、IT戦略策定プロジェクトでよく見られる構図です。この温度差が続くと、投資計画そのものより前に社内合意形成が停滞します。依頼先に何を期待するかを考えるときは、現状分析の技術力だけでなく、経営層と情シス部門それぞれに説明し、事業目標との紐づけを提示できる調整力を持っているかどうかも重要な観点になります。
IT戦略コンサルの3つの種類

主な種類は、グランドデザイン策定特化型、IT投資計画・ロードマップ策定型、ITガバナンス・PMO常駐型の3つです。実際の会社は複数の特徴を併せ持つため、分類名よりも、自社が最優先する工程をその会社が主戦場としているかを確認します。
グランドデザイン策定特化型
現状アセスメントとITアーキテクチャ全体像の策定を主戦場とするタイプです。策定完了後の投資計画詳細やベンダー選定は、社内または別会社に引き継ぐ前提で契約するケースが多く、比較的短期(1〜3ヶ月程度)で契約が完了する傾向があります。全体構想がまだ描けていない企業や、複数事業部門のシステムをまたぐ全体最適化を客観的に整理したい企業に向いています。
IT投資計画・ロードマップ策定型とITガバナンス・PMO常駐型
IT投資計画・ロードマップ策定型は、「守りのIT」と「攻めのIT」の予算配分見直しや、3〜5年の中期IT計画の数値化に強みを持ちます。ITガバナンス・PMO常駐型は、策定後の月次モニタリングから年次ローリングまで継続的に関わり、ITステアリングコミッティの事務局として稼働します。すでにグランドデザインがある企業や、社内に計画を運用し続ける体制がない企業に向いています。ただし対応範囲が広い分、契約期間も長期化しやすく、稼働率の見積もり方法をあらかじめ確認しておく必要があります。
依頼先を比較する7つの評価軸

候補会社は、業種・規模の実績、ベンダー中立性、体制とスキル、経営層への説明力・調整力、成果物の質、契約形態と費用、稼働後のフォロー範囲という7つの軸で比較します。同じ質問を各社へ提示し、回答の根拠をそろえると、提案書の見た目ではなく実務の適合度で判断できます。
実績・中立性・体制を確認します
第一に、自社と近い業種・規模・システム構成でのプロジェクト経験があるかを確認します。同じ「IT戦略コンサル」でも、グローバル企業のグループガバナンス構築に強い会社と、国内中堅企業のシステム全体最適化に強い会社では、評価できる範囲が異なります。第二に、特定クラウド基盤や特定ベンダーとの提携関係の有無を確認し、完全独立系なのか、一部提携先があるのかを把握します。第三に、実際にプロジェクトへ配置される担当者の経験年数や、複数案件を掛け持ちしていないかといった体制面も確認します。
成果物・費用・フォロー範囲を確認します
第四に、経営層と情シス部門それぞれへの説明・調整をどこまで担えるかを確認します。第五に、現状分析レポート、グランドデザイン資料、投資計画・ロードマップといった成果物のサンプルを見せてもらい、根拠が明確に記載されているかを確認します。第六の契約形態と費用では、中堅企業でコンサルタント2〜3名が稼働する体制で月額300万〜500万円程度、大企業では月額500万〜1,500万円以上という水準を踏まえ、稼働率や工数の算定根拠を確認します。第七の稼働後フォロー範囲では、月次モニタリングから年次ローリングへの稼働率の推移がどのように設計されているかを確認します。
比較結果は、各社の説明を鵜呑みにせず、実績の裏付け、体制の実名、成果物サンプル、費用の算定根拠という証拠まで確認したうえで点数化します。証拠が示せない項目は保留にし、印象だけで評価を埋めないことが、契約後の認識違いを防ぐうえで重要です。
独立系・SIer系・シンクタンク系ファームの選び分け

純粋な中立性を重視するなら独立系ファームが第一候補です。策定後の実装まで一体で任せたいならSIer・通信キャリア系グループ、内部統制や監査対応との整合性を重視するならシンクタンク・大手監査法人系が適しています。どのタイプにも一長一短があるため、優劣で選ぶのではなく、自社が何を最優先するかに応じて使い分ける発想が実務的です。
独立系とSIer系の判断基準
独立系ファームは、特定ベンダーの販売やシステム開発を行わないことを前提とするため、複数クラウド基盤・複数ベンダーの比較評価そのものの中立性を重視する企業に向いています。ただし策定後の実装は別会社へ改めて発注する必要があり、グランドデザインの意図や評価根拠を実装担当へ正確に引き継ぐ工程が別途必要になります。SIer・通信キャリア系グループのファームは、策定からグループ内の開発・運用体制へスムーズに引き継げる一方、自社グループの得意なクラウド基盤や開発体制に寄った提案になっていないかを見極める視点が必要です。
シンクタンク・大手監査法人系は統制・ガバナンスとの整合性が強みです
シンクタンク系や監査法人系のコンサルティング部門は、内部統制やコンプライアンス対応を踏まえたITガバナンス設計に強みを持つ傾向があります。上場準備・内部統制対応と並行してIT中期計画を策定する企業では、システムの機能面だけでなく統制・監査の観点からの助言を受けられる点が利点になります。一方で、個別システムのクラウド移行や技術選定など実装に近い領域については、独立系やSIer系のコンサルタントと役割分担する体制を検討したほうがよい場合もあります。
RFP作成と技術選定PoCの進め方

依頼先を決めるコンペでは、提案書の見栄えではなく、実際の業務課題にどこまで踏み込んだ回答が返ってくるかを見ます。策定したグランドデザインの一部を検証したい場合は、本格投資の前に小規模な技術選定PoCを挟むことで、机上の議論だけでは見えないリスクを洗い出せます。
RFPには現状の課題と求める成果物を具体的に記載します
コンサル会社向けのRFPには、対象範囲(グランドデザインのみか、投資計画・ガバナンス構築まで含むか)、現行システムの概要、業務上の課題、想定スケジュール、経営層が重視する評価基準を記載します。そのうえで、求める成果物(現状分析レポート、グランドデザイン資料、投資計画・ロードマップ、ITステアリングコミッティ運営報告書の頻度など)を明示し、各社の提案が同じ土俵で比較できるようにします。要件を「必須」「望ましい」の2段階に分けておくと、対応可否が分かれた際にも判断しやすくなります。
技術選定PoCで実証してから本格投資を判断します
クラウド基盤の切り替えなど技術的な不確実性が残る部分は、グランドデザインの合意だけで本格投資に進むと、後戻りのコストが大きくなります。技術選定PoCでは、レスポンスタイムやデータ転送コストの上限といったクライテリアをまず厳格に設定し、VPCなどの最小構成でミニマムな環境を構築したうえで、負荷テストや意図的な障害発生シミュレーションを実行します。期間は3週間〜2ヶ月程度、費用はコンサルタントやクラウドエンジニアのスポット支援費用が中心で100万〜300万円程度、インフラの利用料自体は数万〜十数万円程度に収まることが多く、アジャイルに評価して合わなければ別の技術へピボットする前提で進めます。
IT戦略コンサル選定の失敗を避ける方法

よくある失敗は、提案書の内容と実際に配置される担当者のスキルを確認しないまま契約し、プロジェクト開始後に力量不足が発覚することです。依頼目的と社内の責任者を明確にし、経営層・情シス部門・主要事業部門それぞれの視点を選定プロセスに反映します。
提案書の見栄えと知名度だけで決めないようにします
大手ファームの名前があるからといって、自社の業種・規模・システム構成に合った実績を持つとは限りません。反対に、規模が小さいファームでも、特定業界のIT戦略策定に特化した実績があれば、自社課題への理解が早く、無駄な工程を減らせることがあります。評価点を単純に合計するのではなく、必須要件(実績・中立性・体制)を満たさない会社は除外し、残った候補を費用とフォロー体制で比べます。具体的な依頼先候補を確認したい場合は、IT戦略コンサルのパッケージ・クラウド製品一覧を参照すると、実在するサービス提供事業者を比較しやすくなります。
社内の役割分担と責任範囲も明確にします
IT戦略コンサルは意思決定の材料を整理し推進を支援する立場であり、最終的な投資判断や社内調整の責任まで肩代わりしてくれるわけではありません。経営層への説明責任者、各事業部門からのヒアリング窓口、ベンダーとの最終交渉者を社内であらかじめ決めておかないと、コンサルの提案がまとまっても社内の意思決定が進まないという事態になります。また、削減できる予算や工数の見込みはコンサル側の一般値をそのまま信じず、自社の現状アセスメント結果に基づいて具体的に算出してもらうことが重要です。
契約範囲を最初からグランドデザインからガバナンス運営まで一括で決め切ろうとすることも失敗の原因になります。まずは現状アセスメントとグランドデザイン策定までを契約し、その成果物の質を見たうえで投資計画・ガバナンス運営フェーズの継続依頼を判断する段階的な契約方法も検討できます。フェーズを分けて契約すれば、途中でコンサル会社の力量に疑問を感じた場合にも、大きな損失を出さずに軌道修正しやすくなります。
IT戦略コンサル導入前に確認しておきたいポイント

候補を絞った後も、契約範囲や費用の考え方、成果物の質まで確認することで、契約後に「思っていた支援と違った」という事態を避けられます。
中堅・中小企業でも依頼価値はあります
企業規模の大小よりも、社内にシステム全体を俯瞰できる経験者がいるかどうかで判断します。経験者が少ない場合、投資の優先順位を誤ると数年単位の予算が無駄になりかねないため、規模が小さくてもスポットでのグランドデザイン策定を依頼する価値はあります。一方、すでに投資計画やガバナンス方針が固まり、個別システムの実装ノウハウだけが必要な場合は、そのシステムに強いベンダーやSIerへ直接相談するほうが適切なこともあります。
SIer系でも中立性は個別に確認します
SIer・通信キャリア系グループだからといって必ずしも自社グループの基盤へ誘導するとは限りませんが、提案の背景に何らかの利害関係がないかを確認する姿勢は必要です。提案の根拠となったデータや比較基準を開示してもらい、他の独立系ファームの評価と突き合わせることで、偏りの有無を判断しやすくなります。
契約形態と稼働率の推移をあわせて確認します
専門的助言と推進管理を業務目的とする準委任契約が中心になります。策定フェーズはフルタイムに近い稼働、月次モニタリングのフェーズでは0.2〜0.5人月程度へ稼働率が下がるのが一般的です。見積もりを依頼する際は、フェーズごとの想定稼働率と、稼働率が変わるタイミングの判断基準まで確認すると、後から想定外の費用が発生しにくくなります。
まとめ

IT戦略コンサルの選定では、グランドデザイン策定そのものが課題なのか、投資計画・ロードマップ策定が課題なのか、それとも策定後のガバナンス運営が課題なのかを特定し、グランドデザイン策定特化型、IT投資計画・ロードマップ策定型、ITガバナンス・PMO常駐型から方向性を選びます。その後、実績・中立性・体制、成果物の質、契約形態と費用、稼働後のフォロー範囲という7つの評価軸で候補を比較し、必要に応じて技術選定PoCで実務レベルの相性まで確認することが重要です。
独立系・SIer系・シンクタンク系の選択は、知名度ではなく、中立性をどこまで重視するか、実装まで一体で任せたいか、内部統制との整合性が課題かによって判断します。既存の依頼先だけでは自社独自の業務要件や、策定後の既存システムとの深い連携に対応しきれない場合、個別の要件整理や開発を組み合わせる方法も選択肢になります。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、IT戦略コンサル選定前の要件整理や、策定後の既存システムをつなぐ連携、独自業務に合わせた個別開発まで支援しています。
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株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
