通販サイト/システムのリニューアルの選定ポイント/選び方/種類

通販サイト/システムのリニューアルを検討し始めると、ASPの乗り換えで済むのか、クラウド型のEC基盤に移行すべきか、思い切ってフルスクラッチで作り直すべきかで判断に迷う担当者は少なくありません。機能一覧や料金の安さだけで構築方式・製品を選ぶと、定期購入の解約導線やコールセンターとの連携といった自社特有の要件に対応できず、公開後に手作業が残ることも珍しくありません。選定の出発点は、現在どの工程に課題やリスクが集中しているかを明らかにすることです。

本記事では、通販サイト/システムのリニューアル手法の3つの種類、自社課題を整理する方法、構築方式・製品を比較する7つの評価軸、通販・カタログ通販・定期購入特有の要件の落とし込み方、PoCやプロトタイプ検証の進め方を解説します。これから構築方式や候補ベンダーを検討する担当者の方が、比較の軸をそろえ、自社に合う進め方を具体的に絞り込める内容です。

本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。

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・通販サイト/システムのリニューアルの完全ガイド

通販サイト/システムのリニューアル選定前に整理すべき自社の課題

通販サイトリニューアル選定前の課題診断

最初に行うべきことは、製品カタログを集めることではなく、顧客体験、データ移行、外部連携のどこで課題が起きているかを特定することです。課題を一文で説明できれば、比較対象に含める構築方式・製品と不要な機能が見えやすくなります。通販・カタログ通販・定期購入を扱う事業では、一般的なECの課題整理だけでは、解約導線やコールセンター連携といった業態特有の論点が抜け落ちやすい点にも注意が必要です。

顧客体験・購入導線の課題を確認します

スマートフォンでの離脱率が高い、表示速度が遅い、定期購入の解約や周期変更の問い合わせが電話に集中しているといった状況は、UX・UI起点の課題です。アクセスの60〜70%程度がスマートフォン経由になっている実態を踏まえ、まず実機での操作性を診断することが出発点になります。表示速度が3秒を超えると直帰率が大きく増えるという評価もあり、体感速度の低下がどの工程で起きているかを特定すると、比較すべき構築方式が見えやすくなります。カタログ通販やテレビ通販を扱う企業では、電話・FAXでの注文比率や、コールセンターに寄せられる操作関連の問い合わせ件数も、あわせて確認しておくべき指標になります。

データ移行・外部連携の課題を確認します

会員データや注文履歴、ポイント残高の移行仕様が固まっていない、基幹システムや物流、CRMとの連携仕様の確認が後回しになっているといった状態は、開発着手後の遅延要因になりやすい課題です。要件を絞り込む前にこれらを棚卸ししておくことで、比較対象に含めるべき構築方式・製品の範囲が明確になります。特に会員データやポイント残高の換算ルールは、部署ごとの認識が食い違っていることが多く、要件定義の初期段階で関係者間の合意を取っておくことが、後工程での仕様変更を防ぐうえで欠かせません。

リニューアル手法の3つの種類

通販サイトリニューアル手法の3つの種類

主な種類は、ASP乗り換え型、クラウド型SaaS・ヘッドレスコマース型、パッケージ・フルスクラッチ型の3つです。実際には複数の特徴を併せ持つ選択肢もあるため、分類名よりも、自社が最優先する要件を標準機能や標準構成で処理できるかを確認します。分類はあくまで検討の出発点であり、最終的には自社の事業規模、独自性の度合い、社内の開発・運用体制と照らし合わせて判断する必要があります。

ASP乗り換え型

現在利用しているASPから、機能や外部連携がより充実した別のASP・カート型サービスへ乗り換えるタイプです。初期費用は数十万円から300万円程度に収まることが多く、短期間で着手しやすい一方、独自のUI・UXやフロント側の自由度には制約が残ります。定期購入の基本機能を標準搭載したサービスも増えていますが、自社が求めるマイページの細かな挙動まで対応できるかは個別に確認が必要です。乗り換え前提のASPでは、既存カートからの会員データ・注文履歴の移行手順があらかじめ整備されているかどうかも、着手のしやすさを左右します。

クラウド型SaaS・ヘッドレスコマース型

クラウド型SaaSは、初期費用300万円から1,500万円程度が目安とされ、ベンダー側の自動アップデートで決済手段の追加や法改正に追随しやすい点が特徴です。バックエンドとフロントエンドを分離するヘッドレスコマースを採用すれば、カートや在庫管理などの裏側はSaaSに任せつつ、フロント側のUI・UXをフルスクラッチに近い自由度で作り込むことができます。UX刷新を重視する通販事業のリニューアルとは、特に相性のよい選択肢です。標準搭載の機能でパーソナライゼーションやMA(マーケティングオートメーション)まで対応できれば、それらを個別のツールとして契約する場合に生じやすい追加コストを抑えられる可能性もあります。

パッケージ・フルスクラッチ型

パッケージ型は初期費用500万円から数千万円規模、フルスクラッチ・オーダーメイド開発は数千万円から数億円規模になることが一般的です。基幹・複数倉庫との高度な連携や、他にはない独自の受注プロセスがある場合に検討する位置づけであり、老朽化した際の刷新費用や保守コストを自社で継続的に負担できる体制があるかも、あわせて判断材料になります。近年はヘッドレスコマースの考え方を使い、カートや在庫管理はクラウド型のベンダーシステムに任せながら、フロントエンドだけをフルスクラッチに近い自由度で構築する選択肢も広がっており、パッケージ・フルスクラッチを検討する前に確認しておく価値があります。

構築方式・製品を比較すべき7つの評価軸

通販サイトリニューアルの7つの評価軸

候補は、業務適合と通販・定期購入特有機能、外部連携、UX/UIの自由度、料金体系とTCO、セキュリティ、移行性という7つの軸で比較します。同じ質問を各候補へ提示し、回答とデモ結果をそろえると、印象ではなく適合度で判断できます。

業務適合と通販・定期購入特有機能を確認します

第一に、募集・受注・在庫・決済・配送・マイページ・評価といった業務のどこまでを標準機能でカバーできるかを確認します。第二に、定期便のスキップ・周期変更・解約、同梱物連動のQRログイン、電話/FAX受注に対応するクイックオーダーといった通販・カタログ通販特有の機能が、標準機能なのか追加開発が必要なのかを切り分けます。

外部連携とUX/UIの自由度を確認します

第三に、基幹システム、物流・WMS、決済、CRM、コールセンターシステムとのAPIまたはCSV連携について、対象データ、同期方向、頻度、エラー時の対応まで確認します。第四に、フロントエンドのデザイン・UI・UXをどこまで自由に作り込めるか、テンプレートによる制約がどこにあるかを、実際の管理画面とデモ環境で確認することが重要です。

比較結果は、評価担当者ごとに自由採点するのではなく、確認方法まで統一します。「基幹連携に対応」という回答だけでは、CSVを手動で出力できるのか、APIで自動同期できるのかが分かりません。「デモで確認」「仕様書で確認」「契約条項で確認」のように証拠を残し、未確認事項は点数を付けず保留にすることで、営業説明の分かりやすさに評価が引っ張られにくくなります。

料金体系・TCO・セキュリティ・移行性を確認します

第五の料金体系では、初期費用と月額費用に加え、注文件数やSKU数に応じた従量課金の境界、決済手数料、保守・運用費用まで含めた総保有コスト(TCO)で比較します。第六のセキュリティでは、会員情報や決済情報の保護、権限管理、ログ、バックアップ体制を確認します。第七の移行性では、現行システムからの会員データ・注文履歴の移行方法だけでなく、将来別の基盤へ移る際にデータを取り出せるかも確認します。

通販・カタログ通販・定期購入特有の要件を評価軸に落とし込む方法

通販・カタログ通販・定期購入特有の評価軸を整理する担当者

通販・カタログ通販・定期購入特有の要件は、一般的なEC構築の評価軸だけでは見落とされがちです。自社の業態に合わせて、具体的な評価項目まで落とし込んでおく必要があります。マイページ機能とオムニチャネル対応という2つの観点から評価項目を整理すると、比較の抜け漏れを防ぎやすくなります。

マイページ機能を評価軸に落とし込みます

定期便のスキップ・周期変更・解約が何タップで完結するか、解約導線が分かりにくいダークパターンになっていないかを、実際の画面操作で確認します。特定商取引法の観点からも、申込みや解約に関する表示の分かりやすさは重要な確認項目であり、消費者庁が示す考え方を踏まえて画面設計が行われているかをベンダーに確認します。あわせて、会員ランクやポイントの進捗表示、定期便のお届けタイミングに合わせたレコメンド表示など、リピーターの継続利用を後押しする機能が標準搭載か追加開発かも切り分けておくと、比較がしやすくなります。

オムニチャネル対応を評価軸に落とし込みます

コールセンターのオペレーターがWebのカート状況や注文履歴を同じ画面で確認できるか、電話/FAX受注時に商品コードでのクイックオーダーへ対応できるかを確認します。カタログ通販やテレビ通販を扱う企業では、Web専業のEC構築サービスだと想定していない業務フローが必要になる場合があるため、デモの段階で自社の受注チャネルを再現して確認することが有効です。同梱物のチラシやDMに記載したQRコードから、マイページへの自動ログインやクロスセルオファーへ誘導できるかも、リピーター育成を重視する事業では確認しておきたい項目です。

構築方式の選び分け

SaaS・ヘッドレス・パッケージ・フルスクラッチの選び分け

SaaS・ヘッドレスコマース・パッケージ・フルスクラッチのどれを選ぶかは、機能の多さではなく、標準化できる業務と自社独自の業務をどこで分けるかによって判断します。開発期間の目安も判断材料の一つで、ECパッケージ等をカスタマイズする場合は早くても3ヶ月以上を見込んでおく必要があります。

標準業務が中心ならSaaS・ヘッドレスを軸にします

決済手段の追加や法改正への追随など、多くの通販事業者に共通する運用をベンダー側に任せられる標準業務が中心であれば、クラウド型SaaSやヘッドレスコマースが第一候補になります。UX刷新を重視しつつ、裏側の在庫・決済管理は安定したベンダーシステムに任せたい場合、ヘッドレス構成は投資対効果を高めやすい選択肢です。

独自業務が事業競争力に直結するならフルスクラッチを検討します

定期便の複雑な組み合わせ販売や、独自の会員ランク制度、基幹・複数倉庫との高度な連携など、標準機能では対応しきれない独自性が事業競争力に直結する場合は、フルスクラッチ・オーダーメイド開発を検討します。ただし、開発期間が長期に及び、保守・運用の負荷も自社で抱える前提になるため、その独自性に投資する事業上の理由があるかを見極める必要があります。

PoC・プロトタイプ検証の進め方

通販サイトリニューアルのPoCとプロトタイプ検証

候補を絞ったら、資料上の機能比較だけで決めず、PoCやプロトタイプ検証で実際の使用感を確かめます。デモは説明を聞くだけで終わらせず、自社の商品・会員データに近い条件で操作して確認します。

ワイヤーフレームとデザインモックで購入導線を検証します

本格開発前に、購入導線を可視化したワイヤーフレームを作成し、無駄なステップがないかを確認します。続けてデザインモックの段階では、スマートフォン実機でカートボタンの押しやすさや画像のスワイプ操作、入力項目数を検証し、実際の利用者に近いモニターにタスクを試してもらうユーザビリティテストを行うと、手戻りを防ぎやすくなります。

PoCでは1案件をフルパスで通します

PoCでは、実在の商品・会員データに近い条件で、注文から決済、マイページでの定期便管理、コールセンターからの照会までを1つのシナリオとして通します。正常系だけでなく、解約手続きや周期変更、返品といった例外処理も試すことで、デモでは見えない運用負荷を比較できます。具体的な候補製品を確認したい場合は、通販サイト/システムのリニューアルのパッケージ/クラウド製品一覧を参照すると、共通の評価軸で比較しやすくなります。

通販サイト/システムのリニューアル導入前に確認しておきたいポイント

通販サイトリニューアル導入前の確認ポイント

候補を絞った後は、対象規模だけでなく、セキュリティや例外処理、実案件での操作性まで確認します。比較表の機能欄だけでは見えにくい条件を事前に検証することで、公開後に運用が止まるリスクを抑えられます。ここでは、選定時に判断が分かれやすいポイントを整理します。

小規模な通販でもこの選定プロセスは必要ですか

事業規模が小さくても、定期購入や複数チャネルでの受注を扱っている場合は、評価軸を簡略化しつつも同じ手順で比較することをおすすめします。単純な単品都度購入のみを扱う小規模サイトであれば、評価項目を絞り込んでも大きな支障はありません。

セキュリティはSaaSでも確認が必要ですか

必要です。決済情報や会員の個人情報を扱うため、権限管理、ログ、バックアップ体制に加えて、解約時にデータをどのように返却・削除するかを契約前に確認します。自社の情報セキュリティ基準とベンダーの責任範囲を照合することが欠かせません。

PoCではどこまで検証すればよいですか

実在に近い商品・会員データを使い、注文から決済、マイページでの定期便操作、コールセンターからの照会までを一通り検証します。管理側の画面だけでなく、実際の購入者・定期購入者の視点でも操作し、例外処理やエラー時の挙動まで確認することが重要です。

まとめ

通販サイトリニューアルの選び方まとめ

通販サイト/システムのリニューアルの選定では、顧客体験の課題とデータ移行・外部連携の課題を特定したうえで、ASP乗り換え型、クラウド型SaaS・ヘッドレスコマース型、パッケージ・フルスクラッチ型のどれが自社に合うかを見極めます。そのうえで、業務適合、通販・定期購入特有機能、外部連携、UX/UI自由度、TCO、セキュリティ、移行性という7つの評価軸で候補を比較し、実案件に近いPoCで例外処理まで確認することが重要です。マイページの解約導線やコールセンター連携といった業態特有の要件は、一般的なEC構築の評価軸には含まれていないことが多いため、意識して評価項目に加える必要があります。

最優先課題から評価軸を組み立てます

すべての評価軸を同じ重みで比較しようとすると、判断に時間がかかりすぎます。顧客体験の改善が最優先なのか、データ移行・外部連携の整備が最優先なのかを最初に決め、そこから評価軸の優先順位をつけると、比較検討を効率的に進められます。

標準化できる業務と独自業務を切り分けます

既製のクラウドEC・SaaSでは、独自の販売プロセスや複雑な基幹連携に対応できない場合があります。無理に標準機能へ業務を合わせようとすると、現場に手作業が残り続けます。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、選定前の要件整理、既製SaaSと基幹システムをつなぐ連携、独自業務に合わせた個別開発まで支援しています。

▼全体ガイドの記事
・通販サイト/システムのリニューアルの完全ガイド

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

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