データモダナイゼーションを検討し始めると、既存のオンプレミスRDBMSをそのままクラウドへ移す方法から、データモデルを全面的に見直してデータレイクハウスへ刷新する方法まで、選択肢の幅の広さに戸惑うことがあります。どの手法を選ぶかによって、必要な期間、費用、社内の負担は大きく変わり、選定を誤ると移行途中でデータの不整合や業務停止のリスクが表面化します。
本記事では、データモダナイゼーションに着手する前に整理すべき自社の課題、主な進め方の3つのアプローチ、比較すべき評価軸、移行方式の選び方、クラウド型基盤とフルスクラッチの判断基準、RFPとPoCの進め方を解説します。これから移行計画を立てる担当者の方が、自社に合った方向性を具体的に絞り込めるように整理しています。
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データモダナイゼーション着手前に整理すべき自社の課題

製品や手法の比較を始める前に、自社のどこに問題が集中しているかを特定することが選定の出発点です。課題を一文で説明できるようになれば、比較検討すべきアプローチと後回しにしてよい要件が見えやすくなります。
データのサイロ化と検索性の低下を確認します
部署ごとに似たようなデータが別々の形式で存在し、全社横断の分析に時間がかかっている場合は、サイロ化の解消が優先課題です。どの部署がどのデータを持ち、どの項目が重複しているのかを一覧化するだけでも、必要な統合範囲の見当がつきます。全社データ活用基盤への統合を進めた企業の事例でも、まず散在するストレージとバッチ処理の棚卸しから着手している点は参考になります。
バッチ処理時間の長さと運用コストの構造を確認します
夜間バッチが所定の時間内に終わらなくなってきている、データ量が増えるたびにハードウェアの増強が必要になっているといった状態は、ストレージとコンピュートが一体化したオンプレミス特有の制約が原因であることが多くあります。あわせて、サーバー保守や専任のデータベース管理者にかかる固定費が、今後のデータ量増加にどこまで耐えられるかも整理しておくと、後述する移行方式の判断がしやすくなります。
これら2つの課題は独立しているようで、実務上は絡み合っていることが少なくありません。サイロ化した状態のまま個別にバッチ処理を積み増してきた結果、処理時間が延び、それを補うために部署ごとに個別のハードウェアや処理サーバーを追加してきたという経緯を持つ企業も見られます。課題を整理する際は、どちらが先に発生した問題で、どちらを解消すればもう一方も改善に向かうのかという因果関係まで踏み込んで確認すると、選ぶべきアプローチの優先順位が明確になります。
データモダナイゼーションの主な進め方:3つのアプローチ

データ層の刷新は、既存構造をどこまで変えるかによって、大きく3つのアプローチに分けられます。課題の深刻度と使える期間・予算によって、適したアプローチは変わります。
リホスト・リプラットフォーム型:既存構造を保ったまま基盤を移します
既存のスキーマやコード体系をほぼ維持し、稼働環境だけをクラウドの仮想サーバーやマネージドサービスへ移すアプローチです。短期間で着手でき、業務ロジックへの影響も抑えやすい一方、データモデル自体の老朽化という根本課題は残ります。まずハードウェア保守から解放されたい、まとまった予算が組めるまでの一時的な措置としたいといった事情がある企業に向いています。
リファクタリング・リビルド型:データモデルを再設計します
既存データを保持しながらテーブル設計やコード体系を整理し直す、または業務要件を見直したうえでスキーマを新規設計するアプローチです。部署ごとに異なっていたデータ形式の統合やクレンジングが工程の中心になり、着手にはある程度の期間を要しますが、サイロ化の解消という根本課題に直接アプローチできます。
リプレース型:新しいデータ基盤へ全面移行します
既存のオンプレミスRDBMSを前提とせず、クラウド型のデータウェアハウスやデータレイクハウスへ全面的に切り替えるアプローチです。データパイプラインもゼロから設計し直すため取り組みの範囲は最も広くなりますが、ストレージとコンピュートを分離した構成による運用コストの転換や、リアルタイムに近い分析基盤の実現といった効果を最大限に引き出しやすい進め方です。
3つのアプローチは、どれか一つを選んで終わりというより、段階的に組み合わせて使われることも多いのが実態です。まずリホストで一時的にクラウドへ避難させ、並行して業務要件を整理したうえで、後続フェーズでリファクタリングやリプレースに踏み込むという二段階の進め方も現実的な選択肢になります。自社の予算執行のタイミングや、経営層への説明のしやすさによって、どの順序で進めるかを柔軟に検討すると無理のない計画になります。
アプローチを比較する際の評価軸

アプローチや候補製品を比較するときは、機能の多さではなく、移行性、コスト構造、セキュリティ・ガバナンスという3つの軸で確認すると、印象ではなく根拠に基づいた選定がしやすくなります。
データ移行性・互換性・拡張性を確認します
既存のオンプレミスRDBMSからどの程度自動的にデータを取り込めるか、独自のコード体系や日本語特有のデータ形式をどこまで吸収できるかを確認します。将来的にデータ量が増えた場合や、新しい分析ツールを追加した場合に、どの程度柔軟に拡張できるかも移行後の後悔を避けるうえで重要な確認事項です。
あわせて、将来的に別の基盤へ乗り換える可能性も視野に入れ、蓄積したデータやパイプライン定義を一般的な形式で取り出せるかどうかも確認しておくと安心です。特定製品の独自形式に依存しすぎると、数年後に基盤を見直す際の移行コストがかえって膨らむことがあります。
コスト構造・TCO・運用体制を確認します
クラウド型データ基盤の料金は、ストレージ量、コンピュート使用量、クエリ実行量など課金の単位が製品によって異なります。初期の移行費用に加えて、日常的な運用でどの程度の従量課金が発生しうるか、社内に運用を担える人材がいるかを含めた総保有コストで比較することが欠かせません。セキュリティ・ガバナンスの観点では、権限管理、操作ログ、データの保管場所、契約終了時のデータ取り出し方法まで確認します。
比較の際は、各評価軸について「デモで確認した」「公式ドキュメントで確認した」「契約条項で確認した」というように、確認方法まで記録に残しておくことをおすすめします。営業担当者の説明が分かりやすいかどうかで印象が決まってしまうと、実際の移行段階になってから想定外の制約が見つかることがあります。未確認の項目は点数化せず保留にしておき、PoCやベンダーへの追加ヒアリングで埋めていく姿勢が、選定後の認識違いを防ぎます。
移行方式の選び方:ビッグバン移行と段階移行

どのアプローチを選んだ場合でも、実際の切り替えをどう進めるかという移行方式の選択が残ります。一度にすべてを切り替える方法と、段階的に対象範囲を広げる方法では、リスクの現れ方が大きく異なります。
ビッグバン移行はリスクが一点に集中します
すべてのデータを特定の期日に一斉に切り替える方式は、移行完了後の運用がシンプルになる一方、切り替え時にトラブルが起きた場合の影響範囲が広く、業務への影響も大きくなります。移行対象のデータ量が比較的小さく、業務システムの数も限られている場合には現実的な選択肢になりますが、大規模な基幹データを扱う場合はリスクが高くなりやすい方式です。
段階移行・並行稼働はリスクを抑えつつ検証を重ねられます
一部の業務領域やデータソースから先行して移行し、旧環境と新環境を一定期間並行稼働させながら結果を突き合わせる方式です。切り替えごとの影響範囲を小さく保てるため、大規模なデータ基盤の刷新ではこちらが基本的な進め方になります。並行稼働の期間中に発見した不整合を次の移行範囲へ反映できる点も、段階移行の利点です。
段階移行を選ぶ場合は、どの順番でデータソースを移すかという優先順位付けも選定作業の一部になります。利用頻度が高く、かつ既存のサイロ化による損失が大きい領域を先行させると、早い段階で成果を示しやすくなり、社内での次フェーズへの合意も得やすくなります。反対に、業務影響が大きすぎる基幹データをいきなり最初の対象にすると、検証が不十分なまま進めることになりかねないため、優先順位の付け方自体をあらかじめ関係部門と合意しておくことが望まれます。
クラウド型データ基盤とフルスクラッチの判断基準

移行先の基盤をどう作るかについても、既製のクラウドデータ基盤を使うか、自社独自に構築するかという選択が生じます。多くの企業にとって、この判断は思っている以上にシンプルです。
既製クラウドデータ基盤の活用が基本方針になります
データウェアハウスやデータレイクハウスのエンジン自体を自社開発することは、多くの企業にとって過剰投資になります。既製のクラウドデータ基盤を土台にし、そこに至るまでのデータパイプラインやクレンジングの仕組みを自社の業務にあわせて設計するという役割分担が、現実的な出発点です。具体的な製品の候補は、データモダナイゼーションのパッケージ・クラウド製品一覧で紹介しています。
フルスクラッチが正当化される特殊なケースを見極めます
極めて低いレイテンシが求められる処理や、ペタバイト級のデータを独自の方式で扱う必要がある場合など、既製のクラウド製品では要件を満たせない極めて限られたケースでは、独自基盤の構築が検討対象になります。一方で、基幹システムとの独自連携部分や、業界特有の規制にあわせたデータモデルの設計には、既製品では吸収しきれない開発が必要になる場面も少なくありません。どこまでを既製品に任せ、どこから自社の要件として開発するかを切り分けることが判断の中心になります。
RFP・比較表の作成とPoCの進め方

候補となるアプローチや製品を絞り込んだら、実際のデータで検証するPoCへ進みます。データモダナイゼーションのPoCは、画面の使いやすさではなく、データの連携・処理性能とコストの実測が中心になる点が他のシステム導入と異なります。
RFPにはデータ量と処理性能の要件を具体的に記載します
RFPには、現在のデータ量、想定される増加ペース、日次バッチにかかっている時間、必要な同時分析ユーザー数などを具体的に記載します。あわせて、移行対象システムの数、既存のコード体系、既製品では対応が難しい可能性がある独自要件も明示することで、各社から現実的な提案を引き出しやすくなります。
RFPの記載内容は「必須」「望ましい」「将来的な要件」の3段階に分けて整理すると、すべてを必須要件にしてしまい候補を無用に絞り込みすぎる事態を避けられます。特に移行性やセキュリティに関わる項目は必須要件として明確にし、分析機能の細かな使い勝手など優先度が下がる項目は望ましい要件に位置づけるといった切り分けが有効です。
PoCは1〜2データソースに絞ってフルパスで検証します
すべてのデータソースを対象にPoCを行うと期間と費用がかさむため、優先度の高い1〜2データソースに絞った縮小版のパイプラインで検証します。移行元からの実データ取り込み、変換、クレンジング、目的の分析処理までを一通り通し、バッチ時間の短縮幅とクラウド従量課金のコストを実測します。あわせて、クエリ実行時間やデータ量増加時の挙動を確認するパフォーマンステスト、整合性・欠損・重複を確認するデータ品質テスト、実際の利用者によるUATも実施すると、本格移行前の判断材料がそろいます。
PoCの結果は、成功したかどうかだけで終わらせず、本番移行時の作業量を見積もる材料として活用します。クレンジングに要した工数、手作業での確認が必要だった項目、想定より時間のかかった処理があれば、その原因が製品側の制約なのか、移行対象データ固有の複雑さなのかを切り分けて記録しておくと、本番移行のスケジュールと体制をより現実的に見積もれます。
データモダナイゼーション選定前に確認しておきたいポイント

アプローチと候補を絞り込んだ後も、開発期間の見積もり、既存システムとの並行運用、小規模からの着手可否など、判断が分かれやすい論点が残ります。
開発期間はデータクレンジングの工程が左右します
全面的なリプレース型の場合、要件定義とデータソース調査、PoC・アーキテクチャ検証、データパイプラインの構築とクレンジング、BIツール連携やテスト・並行稼働までを合わせて半年から1年程度を見込む企業が多く見られます。工程の中でもデータクレンジングが最も時間を要しやすいため、移行対象データの状態を早い段階で把握しておくことが、全体スケジュールの精度を高めます。
小さな範囲から始める場合も評価軸は変えません
1つの業務領域から着手する場合でも、移行性・コスト構造・セキュリティという評価軸を省略すべきではありません。小規模なPoCで確認した内容が、後から対象範囲を広げる際の判断材料になるため、最初から本番移行を意識した検証設計にしておくことが重要です。
フルスクラッチとクラウド製品はどちらを優先すべきか
データ基盤本体は既製のクラウド製品を優先し、自社独自の要件が生じる部分だけを個別に開発する組み合わせが基本方針になります。全体を自社開発でまかなう判断は、極めて特殊な性能要件がある場合を除き、慎重に検討する必要があります。
まとめ

データモダナイゼーションの選定では、サイロ化とコスト構造という自社課題を特定し、リホスト・リプラットフォーム型、リファクタリング・リビルド型、リプレース型から進め方を選びます。そのうえで移行性、コスト構造、セキュリティ・ガバナンスという評価軸で候補を比較し、1〜2データソースに絞ったPoCで処理性能とコストを実測することが重要です。
クラウド型データ基盤とフルスクラッチの選択は、機能の多さではなく、標準化できる基盤部分と自社独自のデータ要件をどこで分けるかによって判断します。既製のクラウド製品では基幹システムとの独自連携や業界特有のデータモデルに対応できない場合、無理に標準機能へ合わせると現場でのデータ加工作業が残ります。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、移行前の要件整理、既製クラウド基盤と基幹システムをつなぐ連携開発、独自のデータパイプライン構築まで支援しています。
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株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
