アプリ更改の選定ポイント/選び方/種類

アプリ更改の検討を始めると、目前の期限をまず部分改修で乗り切るべきか、この機会に根本から作り直すべきか、あるいは既製のパッケージに業務を合わせるべきかで判断が割れることがあります。方式選びを技術トレンドや担当者の好みだけで決めてしまうと、期限に間に合わなかったり、対応後すぐに次の期限が来て投資が無駄になったりすることも少なくありません。判断の出発点は、自社が抱える期限がいつまでにいくつあり、それぞれにどの程度の技術的負債が絡んでいるかを明らかにすることです。

本記事では、アプリ更改の選定前に整理すべき自社の期限とリスク、部分改修・フルスクラッチ・Fit to Standardという3つの対応方式、方式を判断する評価軸、PoCでの検証の進め方、ベンダー選定・RFPの進め方、目前の期限と根本対応を両立させる『2段階移行』計画の立て方を解説します。これから対応方針を経営層へ説明する担当者の方が、自社に合う進め方を具体的に組み立てられる内容です。

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アプリ更改の選定前に整理すべき自社の期限とリスク

アプリ更改の選定前に期限を整理する担当者

方式を比較する前に行うべきことは、自社のアプリにどのような期限が、いつまでに、いくつ存在しているかを一覧化することです。期限の数と近さ、そして既存コードの技術的負債の深さという2つの軸で現状を把握しておくと、後の方式選びが具体的になります。

各種期限を洗い出し、対応にかかる工数とあわせて一覧化します

OSのメジャーアップデートとそれに伴うストア審査要件の変更、開発フレームワークやライブラリのサポート終了、連携している外部サービスのAPI仕様変更という4種類の期限を、まずは個別に洗い出します。OS側の期限は年に一度のペースで繰り返し訪れ、フレームワークのEOLは半年から1年程度前にアナウンスされ、外部APIの仕様変更は3ヶ月から半年前に通知されるというように、それぞれ性質が異なります。SNS連携などの外部APIでは、新バージョンのリリースから概ね2年程度で旧バージョンが非推奨・停止になる運用も一般的で、連携先ごとに見通しを立てておく必要があります。個々の期限だけでなく、複数の期限が近い時期に重なっていないかを確認することが、方式選びの前提になります。

既存コードの技術的負債の深さを確認します

期限の一覧化とあわせて、現在のコードがどの程度の技術的負債を抱えているかも確認します。軽微なバージョンアップで済むのか、破壊的な変更を伴い作り直しに近い対応が必要になるのかによって、選べる方式の幅は大きく変わります。旧バージョンのまま延長保守を続けている場合は、対応できるエンジニアの希少化によって保守費用がすでに高騰し始めていないかもあわせて確認しておくと、方式選びの判断材料になります。あわせて、現在の運用保守にかかっている費用が構築費用に対してどの程度の比率になっているかを概算しておくと、後の評価軸でTCOを比較する際の土台になります。

アプリ更改の3つの対応方式

アプリ更改の3つの対応方式を比較する担当者

アプリ更改の対応方式は大きく、部分改修による暫定対応型、フルスクラッチ・リプレースによる根本対応型、既製の基盤を活用するFit to Standard型の3つに分けられます。優劣ではなく、期限までの猶予と技術的負債の状態に応じて選ぶという考え方が基本になります。

部分改修による暫定対応型

目前の期限に対して、影響範囲を絞った改修で乗り切る方式です。要件定義から本番稼働までの期間を短く抑えられるため、期限まで数ヶ月しかない場合の現実的な選択肢になります。ただし、あくまで暫定対応であり、既存コードの技術的負債そのものは解消されないため、次の期限が来るたびに同じ対応を繰り返すことになりやすい点には注意が必要です。改修範囲を新機能開発まで広げず、期限に定められた要件だけに絞り込むことが、短期間でのリリースを実現するうえでの前提になります。

フルスクラッチ・リプレースによる根本対応型

既存コードの技術的負債が限界に達している場合や、差別化に直結する独自のUI/UXを確保したい場合、特定ベンダーへの依存から脱却したい場合に適した方式です。要件定義から設計、開発、テスト、ストア審査までを含めると半年から1年以上を要するため、着手判断はデッドラインの1年から1年半前が目安になります。初期投資は部分改修より大きくなりますが、その後の保守費用を抑えやすく、3〜5年のスパンで見るとTCOが逆転するケースもあります。

Fit to Standardによる標準化対応型

期限に間に合わせることが難しく、かつコードの老朽化も進んでいる場合に検討する方式です。独自に作り込んできた機能の一部を見直し、既存のSaaSやパッケージが備える標準機能に業務要件を合わせることで、開発・テスト工程そのものを短縮します。独自機能をどこまで手放せるかが判断の分かれ目になるため、業務側の合意形成に時間がかかることも踏まえてスケジュールを組む必要があります。

対応方式を判断する評価軸

アプリ更改の評価軸を整理する会議

3つの方式のどれを選ぶかは、機能の新しさや担当者の印象ではなく、期限までの猶予期間、TCOと技術的負債の深さという軸で評価すると判断がぶれにくくなります。評価結果は確認方法まで記録に残すことで、後から見直しても納得感のある判断根拠になります。

期限までの猶予期間という軸で判断します

猶予が数ヶ月しかない場合、要件定義から本番稼働まで半年から1年以上を要するフルスクラッチはスケジュール上の選択肢から外れ、部分改修による暫定対応が優先されます。猶予が1年から1年半程度確保できる場合は、根本対応であるフルスクラッチやFit to Standardも現実的な選択肢に入ります。猶予期間の見立てを誤ると、着手してから期限に間に合わないことが判明する事態になりかねないため、対応にかかる期間は余裕を持って見積もることが重要です。

TCOと技術的負債の深さという軸で判断します

初期費用の安さだけで部分改修を選び続けると、延長保守費用の高騰や技術的負債の蓄積によって、3〜5年のスパンで見た総保有コストがかえって高くつくことがあります。TCOを「初期費用に運用費・保守費・ライセンス費の累計を加えたもの」として捉え、部分改修を続けた場合とフルスクラッチやFit to Standardに踏み切った場合を比較します。あわせて、更改を先送りした場合に想定されるインシデント対応の潜在コストも、判断材料として社内で共有しておくと、経営層への説明がしやすくなります。旧バージョンのまま延長保守を続けると、対応できるエンジニアの希少化によって保守費用が通常の数倍規模まで高騰することもあるため、部分改修を選ぶ場合もこの上振れリスクをTCOの見積もりに織り込んでおくことが望まれます。

PoCでの検証の進め方

アプリ更改のPoCを実施するチーム

方式を机上で比較しただけでは、実際に新しい環境へ移行できるかどうかまでは分かりません。更改のPoCは、業務適合性やUI/UXの検証を目的とするのではなく、既存機能が新しい環境でも問題なく動作するかという技術的な裏付けを、ベンダー候補を絞り込んだ後に短期集中で確認することが目的になります。

新フレームワーク・ライブラリへの移行可能性を検証します

既存の複雑な画面遷移や独自UIが、新しいフレームワークやライブラリの上でも再現できるかを確認します。描画速度やメモリ消費が劣化していないかもあわせて検証し、パフォーマンス面で致命的な問題がないかを早期に見極めます。この検証は3〜6週間程度の短期集中で行い、表面的なUI議論よりも技術的に実現可能かどうかに範囲を絞ることが鉄則です。

外部API仕様変更後の疎通確認を行います

連携先の外部サービスが仕様を変更する場合は、新しい仕様での送受信が問題なく行えるか、エラーハンドリングが想定どおりに機能するかをバックエンド疎通確認用のモックアップで検証します。あわせて、新旧OS双方への対応可否も確認し、新OSの新仕様に対応しながら旧OSでの後方互換性も両立できるかを、実機に近い環境でチェックします。

PoCの結果は、処理時間や手戻りの発生箇所、想定外に工数がかかった項目を記録に残し、本開発の見積もりへ反映します。検証で見つかった課題を先送りせずに整理しておくことが、根本対応の計画づくりにもつながります。

ベンダー選定・RFPの進め方

アプリ更改のRFPとベンダー比較を進める担当者

方式が固まった後は、実際に対応を依頼するベンダーを比較します。初期費用の見え方だけで選ばず、期限からの逆算スケジュールを明示したRFPを用意し、複数の候補を同じ条件で比較することが重要です。

RFPには期限からの逆算スケジュールと非機能要件を記載します

RFPには、対応が必要な期限、現行アプリの技術構成、洗い出した技術的負債の内容を具体的に記載し、期限から逆算した際に候補ベンダーがどの程度の期間で対応できるかを提示してもらいます。あわせて、ストア審査のリジェクト対応を含めたバッファの見立て、データ移行方法、対応後の保守体制といった非機能要件も明記します。要件を「必須」「望ましい」「将来」の3段階に分けておくと、すべてを必須として候補を絞りすぎる事態を避けられます。具体的な候補製品を確認したい場合は、アプリ更改のパッケージ・クラウド製品一覧を参照すると、比較の観点をそろえやすくなります。

実績とリファレンスチェックで比較します

提案書の分かりやすさだけで選ばず、同様の期限管理案件での実績、対応スピード、リジェクト対応の経験を複数社に確認します。フルスクラッチによる根本対応を依頼する場合は、要件定義から保守までを一貫して任せられる体制があるかも確認しておくと安心です。部分改修による暫定対応を依頼する場合も、次の期限に向けた根本対応まで見据えた提案ができるベンダーかどうかを見極めておくと、繰り返しの暫定対応に終始する事態を避けやすくなります。初期費用の安さだけで選定した結果、当初の想定より対応範囲が狭く、追加の改修費用がかさんだという事例も見られるため、見積もりに含まれる作業範囲を契約前に文書で確認しておくことが望まれます。

『2段階移行』計画の立て方

アプリ更改の2段階移行計画を立てる担当者

ベンダーが決まった後も、目前の期限と根本的な課題解決を一度に両立させようとすると計画が破綻しやすくなります。暫定対応と根本対応を分けて計画する『2段階移行』の考え方が、期限管理を伴う更改では有効です。

目前の期限は部分改修で乗り切ります

デッドラインまでの猶予が少ない場合、まず影響範囲を絞った部分改修で目前の期限を乗り切ります。この段階では新機能の追加や大規模なリファクタリングには手を広げず、期限に定められた要件を満たすことだけに集中し、確実にリリースを終えることを優先します。

並行して根本対応の計画を進めます

暫定対応と並行して、1年から1年半程度をかけたフルスクラッチやFit to Standardといった根本対応の計画を進めます。暫定対応の担当チームと根本対応の検討チームを分けておくと、目前の期限対応に追われて根本対応の検討が後回しになる事態を避けやすくなります。根本対応の着手時期は、ベンダー選定や要件定義にかかる期間を含めて逆算し、次の期限が来る前に本番稼働できるよう計画します。2〜4週間程度のイテレーションを重ねるアジャイル型の進め方を取り入れておくと、根本対応の途中で新たな期限が判明した場合にも、優先順位を組み替えながら計画を調整しやすくなります。

アプリ更改導入前に確認しておきたいポイント

アプリ更改の選び方に関する質問を確認する担当者

方式を絞り込んだ後も、期限までの余裕、内製か外部委託か、旧OS利用者への対応といった判断が残ります。ここでは、選定時によく生じる疑問を整理します。

期限まで数ヶ月しかない場合はどうすればよいか

フルスクラッチは選択肢から外れるため、まず影響範囲を絞った部分改修で期限に間に合わせることを優先してください。そのうえで、根本対応が必要かどうかを並行して検討し、次の期限までの猶予を確保できるよう計画を立てます。

内製か外部委託かをどう判断するか

毎年繰り返される期限対応を安定してこなせる体制が社内にあるかで判断します。特定の担当者だけが対応方法を把握している状態であれば、外部の開発パートナーと継続的に連携できる体制を整えておくほうが、担当者の異動や退職によって対応が滞るリスクを抑えられます。

旧OS利用者への対応をどう考えるか

旧OSの利用者は一定数残っている場合がありますが、サポートを打ち切ると強制的な離脱につながります。旧OS利用者は全体の数%から十数%程度に達することもあり、その比率と売上への影響、対応を継続した場合の保守・テスト工数を天秤にかけ、いつまで旧OSに対応するかを計画的に決めておく必要があります。方式を選ぶ段階でこの判断を後回しにすると、根本対応の設計途中で対応範囲が二転三転しやすくなるため、早い段階で社内の合意を取っておくことをおすすめします。

まとめ

アプリ更改の選び方をまとめるチーム

アプリ更改の選定では、自社が抱える期限とその近さ、既存コードの技術的負債の深さを整理したうえで、部分改修による暫定対応型、フルスクラッチ・リプレースによる根本対応型、Fit to Standardによる標準化対応型のいずれが適しているかを、期限までの猶予期間とTCOという評価軸で判断します。そのうえでPoCによる技術検証、RFPを用いたベンダー比較、暫定対応と根本対応を両立させる『2段階移行』計画という順序で進めることが、期限に間に合わせながら根本課題も解決するために重要です。

対応方式は期限とTCOの両輪で選びます

期限までの猶予だけで方式を決めると、目先の対応に追われて技術的負債が積み上がっていく事態を招きかねません。猶予とTCOの両方を踏まえ、暫定対応と根本対応をどう組み合わせるかを早い段階で決めておくことが、繰り返しの場当たり対応を避けるために重要です。

次の一歩は期限の棚卸しとPoCの計画です

まずは自社アプリが抱える期限を棚卸しし、技術的負債の深さとあわせて整理してください。フルスクラッチによる根本対応やFit to Standardへの移行を検討する場合は、前段で紹介した候補製品の一覧もあわせて参照すると、比較の観点をそろえやすくなります。既製品では吸収しきれない独自業務やコア領域の作り込みが必要な場合、riplaはフルスクラッチ開発の立場から、期限管理を踏まえた方式選定から本開発までを一貫して支援しています。

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株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

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