AIモダナイゼーションの選定ポイント/選び方/種類

AIモダナイゼーションには、レガシーコードの解析・再文書化に強いツール、コード変換そのものを自動化するツール、要件定義から実装・テストまでを担うエージェント型のAI開発ツールがあります。話題性や知名度だけで選ぶと、自社のシステム規模や機密情報の扱いに合わず、結局は人手による確認作業が想定以上に残ることも少なくありません。選定の出発点は、対象システムのどの工程に解読・変換・検証の負荷が集中しているかを明らかにすることです。

本記事では、AIモダナイゼーション導入前に整理すべき自社の課題、ツール・アプローチの3つの種類、比較すべき7つの評価軸、クラウド提供ツール・カスタム開発・ハイブリッドの選び分け、RFPやPoCの進め方を解説します。これから候補ツールやベンダーを探す担当者の方が、比較項目をそろえ、自社に合う2〜3の候補まで具体的に絞り込める内容です。

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AIモダナイゼーション導入前に整理すべき自社の課題

AIモダナイゼーション選定前の課題整理

最初に行うべきことは、ツールのカタログを集めることではなく、対象システムの仕様把握、コード変換、テスト検証のどこに時間とリスクが集中しているかを特定することです。課題を一文で説明できれば、比較対象に含めるべきツールの種類と、不要な機能が見えやすくなります。

仕様書の消失と有識者の不在を確認します

長年運用してきた基幹システムほど、仕様書が更新されないままコードだけが実質的な仕様になっている状態が起こりやすくなります。開発当時の担当者が退職・異動していて、なぜその処理が存在するのかを説明できる人がいない場合は、リバースエンジニアリングによる解析・再文書化に強いツールを優先候補にする必要があります。逆に仕様がある程度整理されている場合は、解析工程よりもコード変換や自動テストの精度を重視して比較を進められます。社内で「仕様書が最後に更新されたのはいつか」「実装の意図を説明できる担当者が何人残っているか」を棚卸しするだけでも、解析工程にどれだけの比重を置くべきかの目安が見えてきます。

期間短縮とコスト削減、どちらの優先度が高いかを分けて考えます

刷新プロジェクトが止まっている理由が「着手までの検討期間が長い」ことにあるのか、「変換・テストにかかる人件費が重い」ことにあるのかによって、優先すべきツールの特性は変わります。開発ライフサイクル全体を圧縮したいのか、既存のリライトやリファクタリング作業だけを加速したいのかを社内で合意しておくと、ベンダーへの説明も一貫させやすくなります。あわせて、対象がメインフレーム上の基幹システムなのか、業務部門が使う中規模アプリケーションなのかによっても、必要な変換精度や検証体制の重さが異なる点を整理しておきます。優先度をあいまいにしたまま複数のツールを並行検討すると、評価軸がぶれて比較そのものに時間を取られてしまうため、最初に「今回はどちらの課題を主に解決するのか」を経営層や関係部門と合意しておくことが遠回りに見えて近道になります。

AIモダナイゼーションツール・アプローチの3つの種類

AIモダナイゼーションツールの3つの種類

主な種類は、解析・再文書化特化型、コード変換特化型、要件定義から実装までを担うエージェント型開発ツールの3つです。実際のサービスは複数の特徴を併せ持つため、分類名よりも、自社が最優先する工程を標準機能で処理できるかを確認します。

解析・再文書化特化型

既存ソースコードを読み込み、コンポーネントの構成や処理の分岐、データの流れを可視化し、失われた仕様書を再構築するタイプです。LLMと静的解析の組み合わせによって、制御フローやデータフローをマッピングし、依存関係や変更影響範囲を洗い出す手法が代表的です。刷新の方針自体がまだ固まっていない企業や、仕様書が実質的に存在しない企業では、変換ツールを選ぶ前にこのタイプの導入から検討する価値があります。解析結果として得られる依存関係図や処理フローは、変換対象の優先順位付けやPoCで検証すべきモジュールの選定にもそのまま活用できるため、後工程の準備を兼ねられる点も評価しておきたいところです。

コード変換特化型とエージェント型開発ツール

コード変換特化型は、COBOLやPL/Iなど旧言語のソースを、機能等価性を保ちながらJavaなどの新しい言語へ変換することに強みを持ちます。自動テストによる検証機能を備えるツールもあり、変換後の妥当性確認まで一連の流れで扱えるかが比較点になります。エージェント型開発ツールは、要件の整理から実装、テストまでを自律的に進める点が特徴で、単発の言語変換にとどまらず、開発体制そのものを変える選択肢になり得ます。ただし対応できる範囲や自律性の度合いはサービスによって差があるため、自社が任せたい工程とツールの得意領域を照らし合わせる必要があります。

ツール選定で比較すべき7つの評価軸

AIモダナイゼーションツールの7つの評価軸

候補ツールは、変換精度・対応言語・データの扱い・レビュー体制・開発体制との統合・料金体系・ベンダーの実績という7つの軸で比較します。同じ質問を各社へ提示し、回答とデモ結果をそろえると、営業説明の分かりやすさではなく適合度で判断できます。

変換精度・対応言語・データの扱いを確認します

第一に、機能等価性、つまり変換前後で同じ処理結果を返せるかを、自社が実際に使っている言語・フレームワークの組み合わせで確認します。第二に、対応できるシステム規模がメインフレームの大規模資産まで届くのか、中規模の業務アプリケーション向けなのかを見極めます。第三に、レガシーコードや業務データをクラウド側へ送信して解析する構成なのか、自社環境内で処理が完結する構成なのかを確認します。機密性の高い業務ロジックを扱う場合、データの送信範囲や保存場所は変換精度と同じくらい重要な判断材料になります。特に金融・製造業など規制の厳しい業種では、情報システム部門やセキュリティ部門を選定の初期段階から巻き込み、データ持ち出しに関する社内規程との整合を早めに確認しておくと、後工程での差し戻しを防げます。

レビュー体制・開発ツールとの統合・料金・サポートを確認します

第四に、AIの変換結果を人がレビューし、問題があれば差し戻す仕組みが用意されているかを確認します。ハルシネーションによる誤変換は完全にはなくせないため、現新比較テストや承認フローをツール側がどこまで支援するかが実務上の分かれ目になります。第五に、既存のバージョン管理やCI/CDパイプラインと連携できるか、第六に、利用量課金なのか席数課金なのか、超過分の従量単価はいくらかを確認します。第七に、変換対象の言語や業界で実績があるか、サポート窓口の対応言語や時間帯が自社の体制に合うかも比較材料に含めます。回答は「デモで確認」「仕様書で確認」のように根拠を残し、未確認事項は点数を付けず保留にすると、選定後の認識違いを防げます。

クラウド提供ツール・カスタム開発・ハイブリッドの選び分け

クラウド提供ツールとカスタム開発とハイブリッドの比較

標準的な言語変換とツールの継続的な機能更新を重視するならクラウド提供ツールが第一候補です。自社独自の業務ロジックや基幹システムとの深い連携を重視するなら、変換パイプラインを自社仕様に合わせて組み立てるカスタム開発、両者を組み合わせるハイブリッドが適しています。

クラウド提供ツールとカスタム開発の判断基準

クラウド提供ツールは、契約すればすぐに変換や解析を試せる手軽さがあり、ベンダー側での機能更新も受けられます。ただし、業界固有の帳票形式や独自の通信プロトコルなど、標準ツールの変換ルールでは扱いきれない要素が多い場合、そのままでは変換精度が上がらないことがあります。カスタム開発は、静的解析やLLMを組み合わせた変換パイプラインを自社の対象システムに合わせて構築する方法で、初期の構築負荷は大きいものの、独自要素への対応力を高められます。どちらを選ぶかは、変換対象に占める標準的な処理と独自処理の比率で判断します。判断に迷う場合は、まず対象コードのうち標準的な処理が何割を占めるかをサンプリングで見積もり、独自処理の割合が一定水準を超えるようであれば、最初からカスタム開発を軸に検討したほうが手戻りを防げます。

ハイブリッドでは責任分界を明確にします

大規模な基幹システムでは、一次変換をクラウド提供ツールに任せ、業務ロジックの複雑な部分だけを専門ベンダーによるカスタム変換や人手のリファクタリングで補うコア・サテライト型の進め方もあります。この場合、どこまでをツールの標準変換で終わらせ、どこからを個別対応にするかの線引きを事前に決めておかないと、途中で工程が行き来して期間がかえって延びることがあります。変換対象をモジュール単位で分割し、標準変換の対象範囲と個別対応の対象範囲を最初に一覧化しておくことが有効です。

比較表・RFPとPoCの進め方

AIモダナイゼーションのRFPとPoC

比較表やRFPでは、機能の有無だけでなく、実際に変換したい対象モジュールと合格条件を示します。デモは説明を聞くだけで終わらせず、自社のコードの一部を使って変換結果を確認します。

RFPには対象システムの規模と非機能要件を記載します

RFPには、対象言語、コード規模、変換後の稼働環境、現行の仕様書の有無、解決したい課題を記載します。そのうえで、変換精度の確認方法、レビュー体制、データの取り扱い、既存の開発ツールとの統合要件、料金の課金単位を「必須」「望ましい」「将来」の3段階に分けて示します。段階を分けずにすべてを必須とすると、候補ツールを不必要に絞り込みすぎてしまうため注意が必要です。中規模システムでコードの一部修正を含む案件では、ベンダー支払いの目安が数千万円規模、期間が半年以上に及ぶこともあるため、想定予算と期間の妥当性も見積り段階で確認します。あわせて、社内の稟議に必要な情報として、現状の課題を放置した場合に想定される追加コストや保守リスクも整理しておくと、経営層への説明がしやすくなります。

PoCでは実際のモジュールを使い現新比較テストまで行います

PoCでは、業務上重要度が中程度で、かつ複雑な分岐やデータ連携を含むモジュールを1つ選び、解析から変換、テストまでを実際に通します。正常系の変換だけでなく、想定外の入力や例外処理がどう扱われるかも確認し、変換前後で同じ結果が得られるかを現新比較テストで検証します。合格条件には、変換にかかった時間、人によるレビューで見つかった誤りの件数、修正にかかった工数を記録します。PoCを小さな本番として扱うことで、デモでは見えない運用負荷を比較できます。

AIモダナイゼーション選定の失敗を避ける方法

AIモダナイゼーション選定の失敗回避

よくある失敗は、変換精度の宣伝文句だけで比較し、レビュー体制や運用ルールを確認しないことです。導入目的と責任者を明確にし、開発、品質保証、情報システムの視点を選定に反映します。

変換精度の高さだけで判断しないようにします

変換精度が高いと訴求するツールでも、自社が使う言語の組み合わせやシステム規模での実績がなければ、想定どおりの結果は得られません。評価点を単純に合計するのではなく、必須要件を満たさないツールは除外し、残った候補をレビュー体制とサポート内容で比べます。具体的な候補を確認したい場合は、AIモダナイゼーションのパッケージ・クラウド製品一覧を参照すると、共通軸で比較しやすくなります。

システム外の運用ルールと責任者も決めます

誰がAIの変換結果をレビューするか、どこまでの誤りなら手戻りとして扱うか、現新比較テストの合格基準を誰が判定するかが曖昧では、導入後も品質が安定しません。ハルシネーションによる誤変換のリスクを踏まえ、レビュー担当者、承認フロー、問題発生時のエスカレーション先をあらかじめ決めておきます。また、削減効果はベンダーの一般的な事例をそのまま使わず、自社の対象コード量と人件費で検証時間や修正工数を実測してください。根拠のある実測値を使えば、追加展開の判断もしやすくなります。

AIモダナイゼーション導入前に確認しておきたいポイント

AIモダナイゼーション導入前の確認ポイント

ツール選定は、変換対象の規模だけで決まるものではありません。データの扱い、レビュー体制、既存開発ツールとの統合まで含めて整理することで、導入後の想定外や定着不足を防げます。

小規模なシステムでも導入効果は見込めます

規模が小さくても、仕様書がなく解析に時間がかかる場合や、変換後のテスト工数が負担になっている場合は検討価値があります。一方、規模が小さく仕様も明確で、既存のエンジニアが無理なく手作業で刷新できるなら、ツール導入のコストと運用負荷が上回ることもあります。

既存の開発ツールとの役割分担を決めます

必ずしも不要にはなりません。AIモダナイゼーションツールが変換やテストの一部を担うことはありますが、既存のバージョン管理やCI/CDと連携して利用する構成が一般的です。どの工程をツールに任せ、どこから既存の開発体制で確認するかを決めることが重要です。

機密情報の扱いは契約前に必ず確認します

レガシーコードには業務上の機密情報が含まれることがあるため、解析・変換のためにコードをどこへ送信し、どこに保存するか、学習データとして利用されないかを契約書と仕様書の両方で確認します。自社の情報セキュリティ基準とベンダーの責任範囲を照合したうえで導入を判断してください。既存の情報システムポリシーで外部送信が制限されている場合は、自社環境内で処理が完結するオプションの有無や、オンプレミス提供の可否もあわせて確認すると選択肢を狭めずに検討できます。

ベンダー選定では実績と支援体制まで確認します

ツールの機能だけでなく、自社が対象とする言語やシステム種別での導入実績、変換後のトラブル対応体制、レビュー支援の有無まで確認します。実績が乏しい組み合わせの場合は、小規模なPoCから始めて、変換精度とサポート対応の両方を見極めることが安全です。

まとめ

AIモダナイゼーションの選び方まとめ

AIモダナイゼーションツールの選定では、仕様書の有無や優先したい効果といった自社課題を特定し、解析・再文書化特化型、コード変換特化型、エージェント型開発ツールから方向性を選びます。そのうえで、変換精度、対応言語、データの扱い、レビュー体制、開発ツールとの統合、料金体系、ベンダーの実績という7つの評価軸で候補を比較し、実際のモジュールを使ったPoCで現新比較テストまで確認することが重要です。

クラウド提供ツール、カスタム開発、ハイブリッドの選択は、変換対象に占める標準処理と独自処理の比率によって判断します。既存ツールでは複雑な業務ロジックや基幹システム連携を吸収できない場合、無理に変換を進めると誤りの見落としや手戻りが残ります。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、ツール選定前の対象システム整理、変換結果のレビュー体制構築、既存システムとの連携を含む個別開発まで支援しています。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。

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